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昔から親しまれてきたカキは、品種が多様に揃うのが特徴の一つ。かためで歯応えのよいもの、やわらかく口溶けのよいものなど、食感がさまざまで選ぶ楽しみがあります。今回は家庭栽培で持て余さないためのコンパクトな仕立て方など、管理のコツを解説します。
雌花と雄花の区別があり
受粉樹の要不要を確認
和のイメージが強いカキですが、栽培種の祖先の原産地は中国で、奈良時代ごろに渡来したといわれています。日本の気候風土に適応し、北海道・沖縄・鹿児島の一部を除いて全国で栽培でき、防除を徹底すれば無農薬栽培も可能です。品種数は一説には1000を超えるとされ、多様な種類からお気に入りの品種が見つかると思います。収穫してすぐに食べたいのであれば甘柿がおすすめで、シャキっとしたかための食感を楽しむことも可能です。渋柿は甘柿にはない上品な甘みと滑らかな舌触りを味わえ、渋を抜く作業も楽しむことができます。
雌花と雄花の区別があり、実つきや渋の抜け方には受粉樹の要不要が重要なポイントとなります。また、7~8月の摘果や12月~翌年2月の剪定も重要な作業です。
日常の管理
置き場所
カキは鉢植え栽培に特に向いており、庭植えに比べて樹がコンパクトになり、実つきがよくなる効果が高いです。
春から秋の鉢植えは、日当たりと風通しがよい場所に置きます。炭そ病などの病気の発生が多い場合は、日当たりと風通しの条件に加えて、軒下などの雨が当たらない場所に移動させることも重要です。梅雨や秋雨の時期だけでも移動を検討しましょう。
冬はマイナス13℃程度の低温まで耐えるので、屋外で冬越しさせます。
水やり
太くて長い根が深く伸びる直根性なので、庭植えは相当乾燥しないと樹が枯れるようなことはありません。そのため、庭植えでは水やりは基本的には不要です。しかし、意外と微妙な土の変化に敏感で、根が乾燥すると落果したり、果実の先端やへたの部分が割れたり(果頂裂果やへたすき)することがあります。猛暑の7~8月に、10日間ほど降雨がなければ、樹の様子を見ながら水やりをしましょう。
鉢植えではさらに水やりが重要です。春と秋は2~3日に1回、夏は毎日、冬は1週間に1回が目安です。ただし、これらはあくまで目安で、表土の乾き具合や枝葉の状態を観察して、水やりのタイミングを見極めることが大切です。
肥料
一度に大量の肥料を施すと吸収しきれないばかりか、根が傷むこともあります。2月(油かす)、6月(化成肥料)、10月(化成肥料)の年間3回に分けて施すのがおすすめです。
植え付け(11月~翌年3月)
イラストのように1本の枝が棒状に伸びた苗木を購入した場合は、枝先を接ぎ木部から25~50㎝の長さで切り詰めることが、低樹高に仕立てるポイントになります。ある程度、枝分かれした大苗を入手した場合は、根の部分はイラストを参考にして植え付け、枝の部分は剪定を参考にして切ります。

受粉樹が必要な品種に注意
雌花と雄花が両方咲く‘禅寺丸’や‘太秋’、‘西村早生’などの一部の品種は受粉樹が不要です。また、受粉しなくてもタネなし果として結実する性質(単為結果性)が強い‘大西条’や‘次郎’、‘平核無’などの品種も受粉樹が不要です。一方、‘輝太郎’や‘富有’、‘甘百目’などの品種はタネが入らないと落果することが多いので、ぜひとも受粉樹を用意しましょう。ただし、受粉樹は別品種であれば何でもよいわけではなく、‘禅寺丸’などの雄花が咲く品種を選ぶことが重要です。


年間の管理・作業
開花・人工授粉(5月)
カキには雌花と雄花があります。萼が大きくて1花が単独で咲くのが雌花で、すべての品種で咲きます。一方、雄花はスズランのような小さな花が2~3個まとまって咲き、‘禅寺丸’などの一部の品種にしか咲きません。

雄花が咲かない品種のうち、受粉しないと落花しやすい品種やタネが多く入らないと渋くなる甘柿では、受粉樹を植えて人工授粉するとよいでしょう。家庭で行う人工授粉は、雄花を摘んで花びらをちぎって取り去り、むき出しになった雄しべを雌花の雌しべにこすりつけるのが最も簡易でおすすめです。

摘果(7~ 8月)
カキは豊作と不作の年を繰り返す隔年結果が起こりやすい果樹です。主な原因は果実のなりすぎなので、果実が小さいうちに間引くことが毎年安定して収穫するポイントです。摘果することで果実の品質も向上します。摘果の適期は落果が一段落した7~8月です。
摘果をする際に目安となるのが葉の枚数です。1果当たり葉25枚を目安に摘果しましょう。長い枝は1本で1果、短い枝は2~3本で1果となる計算です。

収穫(10~12月)
果実全体が橙色に色づいたら、ハサミを使って収穫します。果梗を残すとほかの果実を傷つける原因になるので、残さずに切り取ります。

❶
Q甘柿のはずが、完全に着色した果実でも渋いことがあります。
A雄花が咲く受粉樹を用意して、開花時に人工授粉をしましょう。
甘柿でも未熟な果実には渋み成分が蓄積しており、果実が色づくとともに渋が抜けていきます。しかし、‘禅寺丸’‘筆柿’‘西村早生’‘甘百目’などの甘柿はタネが入らないと渋が抜けないという性質があるので、雄花が咲かない品種であれば受粉樹を用意したり、人工授粉をしたりすることが重要です。
また、寒冷地では、成熟時期の晩夏から秋にかけて気温が低いことが原因となって、甘柿の渋が抜けないこともあります。以上のように渋いままの甘柿が収穫できてしまった場合は、渋柿同様にへたに焼酎などのアルコールを一瞬浸してポリ袋に入れて2週間ほど放置するか、干し柿などにすることで渋を抜くことができます。
気をつけたい病害虫など

カイガラムシ類

カキノヘタムシガ

すす病

炭そ病
3ステップで覚える
カキの剪定
剪定の適期は、12月~翌年2月です。カキは大木になりやすいので、毎年のように剪定する必要がありますが、その一方で下手な切り方をすると翌シーズンの収穫が皆無になることもあります。ステップ1~3に分けることで、剪定のポイントを理解しやすくなります。

樹の広がりを抑える
樹の大きさを縮小もしくは現状維持する場合には、何本かの枝をまとめて切り取ります。分岐部を切り残しのないように切るのがポイントです。上方向だけでなく、横方向にも縮めると樹がコンパクトになります。植え付けたばかりで、樹が幼木の場合はステップ1は不要なので、ステップ2から始めるとよいでしょう。

不要な枝を間引く
次に不要な枝を切り取ります。不要な枝とは、1m以上の長い枝(徒長枝)、同じ場所で何本も枝分かれしている枝、交差している枝(左写真)、枯れ枝などです。切る際には不要な枝を切り残すことなく、付け根で切り取ることを心掛けます。ステップ1~2で全体の7割程度の枝を切り取るのが目安です。

残った枝の先端を切り詰める
最後にステップ1~2で残った枝のうち、30㎝以上の長い枝だけを選んで、先端を4分の1程度切り詰めます。カキは枝の先端付近に翌シーズン用の花芽があることが多いので、すべての枝を切り詰めるのではなく、長い枝だけを選んで切り詰めましょう。‘太秋’のように雄花が咲く品種では、短い枝には雄花ばかりが咲いて収量が減少することがあります。枝先を切り詰めることで適度な長さの枝が発生して雌花の割合が増えるので、カキの剪定ではステップ3は重要です。
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Q実つきが悪く、全然収穫できません。どうしてですか?
A受粉樹、人工授粉、摘果、剪定などを見直しましょう。
実つきが悪くなる原因はたくさん考えられます。一つだけの原因とは限らないので、いろいろな可能性を疑って栽培方法を改善しましょう。
5月に咲く花の数自体が少ないのであれば、樹が植え付けから5年未満の若木であることや、剪定による枝の切りすぎが疑われます。また、前年に豊作だった場合にも開花数が激減します。摘果をすることで果実間の養分競合を減らすことができ、実つきが安定します。ほかにも、肥料の与えすぎや天候不順でも開花数が減少することがあります。
5~6月の結実初期の段階で果実が落ちる場合には、まずは、【ポイント】を参考にして受粉樹の要不要を確認しましょう。‘富有’や‘輝太郎’などの品種は受粉に失敗してタネが入らないことで実つきが悪くなっている恐れがあります。受粉樹を用意するほかにも、人工授粉をすることで確実に受粉・受精して結実を安定させることができます。害虫、特にカキノヘタムシガの発生も疑われます。
8~10月の大きな果実が落ちる場合には、天候不順や日当たり・風通しの悪化、台風などの強風の影響、炭そ病などの病気や害虫の発生の可能性が高いといえます。
カキの販売