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タキイの栽培コンテンツ
もぎたて果樹園 温州ミカン&オレンジ類
今月より毎号、具体的に品目を取り上げて栽培のポイントなどをご紹介していきます。まず第一弾は、ミカン、オレンジなどの柑橘類です。ビタミンCたっぷりの甘酸っぱくジューシーな果実を目指して頑張りましょう!
温州ミカン&オレンジ類
栽培は簡単!鉢なら寒地でもできる
同じ柑橘類の鉢栽培でも、温州ミカン(以後、温州)にオレンジ類と、ユズやレモンなどの香酸系とでは樹の生長の性質が違います。ここではそれらを分類してお話し、香酸系については次号以降にご紹介します。
温州の耐寒温度はマイナス5℃くらい。ここでいうオレンジ類とは、温州よりも収穫期が遅く、春先まで収穫が続くものをすべて含みます。耐寒温度は温州よりは若干弱い程度ですが、両者とも、温室か室内で冬越しさせれば寒地でも栽培は十分できます。
柑橘類は人工授粉の必要もなく、栽培も非常に簡単です。ただし、夏の高温には強いのですが蒸散量が非常に多いので、水分不足にならないように潅水には注意しましょう。また、強風によって葉や果実が傷みやすく、特に冬の冷たい北西風は寒害を招きやすいので、防風対策も大切です。特にオレンジ類では、袋かけは防寒と鳥害対策に有効です。
グレープフルーツも鉢植えで栽培できる。
●生育のサイクル
落葉果樹と違い、花芽ができるのは1~3月です。4月初めに新梢が伸び始め、5月中下旬に花が咲きます。温州では9~12月ごろまでが果実の肥大・成熟期ですが、オレンジ類では早いものでも12月下旬~翌年4月下旬と、品種によって違いがあるので、収穫期は前もってよく調べておきましょう。
新梢は、春枝、7月~8月中旬まで伸びる夏枝、8月下旬~9月に伸びる秋枝があります(昨年は秋の訪れが遅かったため、秋枝の伸びが9月では止まらず11月初旬まで続きました)。
一方、根は、5月~7月中旬、8月~9月上旬、9月下旬~11月上旬と、新梢が伸び終えた後に遅れて伸長します。肥料もこの時期に合わせて施しますが、オレンジ類では果実が冬にも着果しているので、11月下旬~12月にも施す必要があります。
●花芽のつき方
前年に伸びた新梢の頂芽や先端の2~3芽につきます。春枝や夏枝によくつきますが、秋枝が徒長した春枝や夏枝にはつきません。秋枝にも花芽はつきにくく、ついても充実した花芽にはなりません。
また、前年に果実のなった枝から出た新梢にも花芽はつきません。しかし、その枝にも翌年には花芽がつき、実もなります。そのために、花芽のついた枝が多すぎると翌年は隔年結果しやすいので、実のならない新梢が全体の6割程度になるように剪定して調整します。
果実のならせすぎや日陰の管理では枝が衰弱し、葉をつけずに花だけが咲くようになります。このような花には実がついてもよい実にはならないので、置き場所や結実量にも注意が必要です。
●植え付けのポイント
①植え付け適期と苗木の選択
植え付けは芽が動き出す前の3月初旬~4月上旬の春植えがメインになりますが、温暖な地域では10月上旬~11月初旬の秋植えも適期です。
苗木はポット苗が多く流通していますが、旬の時期であれば地掘りの根巻き苗の方が、根の量が多く植え付け後の活着は良好です。
②鉢はスリット鉢がおすすめ
8号、または10号鉢からスタートしましょう。できれば最初はスリット鉢をおすすめします。最初の植え替えは8号であれば2年後に、10号では3年後に行います
③用土
市販の草花用の培養土に、赤玉土または真砂土を40%ほど混ぜたものを用います。その際に熔リンを少々、苦土石灰を軽く一握り加えるようにします。
④植え付け方
鉢底から3分の1ほどまで培養土を入れ、その上の中心部に苗をまっすぐ置きます。その際、長い直根は下部を切除して高さを調整して植え付けます(第1図)。
植え付け後は支柱をしますが、その前に、必ず苗木を接ぎ木部分から高さ40cm程度の所で切り戻します(第2図)。
その後しっかりと潅水し、直射日光と風を避けた所で2週間ほど管理します。新芽が動き始めたら、直射日光に当たるよう置き場所を移動させます。 を目指し、ストレスをできるだけ与えないことが大事です。
●収穫までの管理
1~2年はしっかり木を作り、3年目からの収穫を目指します。
1年目の管理 | |
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肥料 | 2ケ月に一回、親指大の玉肥を鉢の4ヶ所に1個ずつ施用。 |
水やり | 夏……朝夕にたっぷり。 春秋…1日1回。 冬……4日に1回程度。 |
剪定 | ●放任してもそう大きくはならないので、あまり剪定の必要はなく、翌年の1~3月に主幹から出た3~4本の主枝を残し、枯れ枝やひ弱な小枝、込んだ枝、花芽のつきにくい秋枝などを切除する程度でよい。 ●主枝が直角に伸びて樹勢が強い場合は、ひもなどで枝を下方に誘引するとよい。 |
2年目の管理 | |
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肥料 | 3年目の開花結実のために6~7月に肥料を切り、夏枝や秋枝の伸長を抑える。 |
水やり | 1年目と同様。 |
剪定 | 1年目の冬と同様だが、1~3月に新梢の先端に花芽ができるので、込み合った枝を間引く程度にし、先端を切り詰めないようにする。 |
3年目の管理 | |
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肥料 | 花芽がつき始めたら、3・6・11月の3回のみ施用。 |
摘果 | 結実量をコントロールするため、6月下旬~7月中旬に葉30枚に対し1果を目安に摘果する (夏ミカンでは120枚、ハッサクでは80枚、伊予柑、オレンジでは100枚程度)。 収穫時期の見分けがつきにくいので果皮がしっかり着色してから行う。 |
剪定 | 1、2年目と同様だが、枝が長く伸びすぎたら主枝の株元を枝を残し、その上を切除してコンパクトにする。 |
植え替え | 3月中に行う。 |
見るからにジューシーな、とても甘くて人気の高い‘石地温州’。
大森直樹
1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。
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