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タキイの栽培コンテンツ
もぎたて果樹園 カキ
里山を思わせるような、優しい甘さがぎゅっと詰まった干し柿や、おしゃれなジャムやお菓子に加工されたりと、幅広く愛されているカキ。 栄養価も高く、ビタミンC含有量は果物内トップクラス。 カリウムや渋み成分のタンニンなどは、アルコールの排出作用も期待でき、お酒好きな人にももってこい?です。
真のおいしさを味わう・カキ
「秋の味覚」だけではない、カキのさまざまな用途
露地栽培のあの巨木、平家物語の時代から屋敷の敷地内に植えられていたカキ。 故郷を離れ、都会に住んでいる人の中にも、自然の景色が秋の気配を見せ始めると思い出す果樹といえばカキなのではないでしょうか。
季節がくればカキが実る田舎へ帰りたくてもなかなかそうはいかない方、そんな里はないけれど、ぜひともわが家でカキをならせたいという方に朗報です。
今回は、庭がなくとも鉢植えでカキの果実を収穫し、食することができる、そんな楽しみの手引きをさせていただきます。
カキの英名は「パーシモン」といいます。 ゴルフをする人にはなじみ深い言葉だと思いますが、昔のゴルフクラブはパーシモン、つまりカキの木で作られていたのです。
かたくてしなりがあるので、ゴルフクラブにはうってつけだったのでしょう。
ほかにも、食する以外の用途としては、カキのシブを防腐剤として利用したり、最近では抗菌効果が強いカキの特性を生かした、柿渋入りの石鹸なども売り出されています。
カキを生で食べるのは当たり前ですが、渋柿は干すことで保存が効くようになるので、昔は旅の携行食などによく持ち歩かれていたようです。
そのなごりか、今でも各地の高速道路のサービスエリアや道の駅には、その土地由来の品種からできた干し柿加工品が販売されています。
カキには殺菌作用以外にも、整腸作用や、その豊富な栄養成分があることからか、「柿が赤くなれば、医者が青くなる」といった言葉もあるくらいです。
流行でも新しいわけでもない果物ですが、「医食同源」ともいえるカキに、今再び注目してみませんか。
あえて挑戦!渋柿栽培のススメ
最近では、カキといえばほとんど甘柿が主流です。 苗木を販売している者の視点からいっても、渋柿の需要はほぼ皆無といえます。 確かに、収穫して皮をむけばすぐに食べられる甘柿に比べ、渋柿はそのままで食べることは不可能です。
いくつかある方法でシブを抜くことが必要不可欠なため、面倒なことが嫌いになってきた現代人(私も含みます)に人気がないのはわかります。
しかし、しっかりと渋抜きをした渋柿を食したことのある方はお分かりでしょう。 あのまったりとして、とろけるような食感と濃厚な甘さは、どんな優れた甘柿も及ばないのでは、というほど美味なことを。
その証拠に、道の駅などで扱われている渋抜きした渋柿は、甘柿では到底及ばないような高価格で取引されています。
収穫後の手間は少々かかるものの、買えば高いが作れば安価で保存性に富み、そのおいしさも格別の渋柿。 ぜひともご家庭で味わっていただきたいと思います。
栽培のポイント
①植え付け1年目の管理と作業
※甘柿、渋柿ともに栽培方法は同じです。
<苗木の植え付け>
苗木は1年生のものを植え付けます。 時期は10月中旬~12月上旬、または2月下旬~3月下旬がよいでしょう。 カキは亜熱帯果樹に属します。 冬の寒さの強弱によっては、鉢そのものから防寒対策が必要な場合もあります。
植え付けは10号鉢を用います(ただし、「ごぼう根」といわれるような長く伸びた1本の根だけで、細根のほとんど見られないような苗木の場合は、一度8号程度の鉢に植え込み、細根の発生を促してから、3年目に大きな鉢に植え替える方が、後の生育が旺盛になります)。
鉢は10号まではスリット鉢が望ましいです。
植え付け用土は、市販の花の培養土に赤玉土大粒10%と川砂20%の割合で混ぜたものを用います。 鉢底から高さ3分の1まで培養土を入れ、その上に苗木を乗せてみて、接ぎ木部分が隠れない程度の高さに根を切って調整してから植え付けます。
植え付け後は、必ず苗木を接ぎ木部分から高さ30cm程度のところで切り戻します。
活着すれば新梢が数本伸び始めますが、この時、鉢の水を切らすと生育は止まり、その後の新梢の伸長は望めません。 特に夏場の乾燥は生長が止まるだけでなく、ひどい場合には立ち枯れのような状態になり、最後は枯れてしまうので注意します。
また、1年目はしっかりと肥料をやり「落葉病」を防いでやりましょう。
②植え付け2年目・枝の誘引
1年目に伸びた新梢が複数の場合は、3本に間引き、バランスが均等になるようにそれぞれの枝を誘引します。 この時、枝の誘引角度は60度くらいが理想です。 誘引した枝の先端から3分の1程度で切り戻し、そこから発生する新梢を各枝3本になるよう間引き、さらに伸ばします。
③植え付け3年目・摘果
この年になると、早い枝では花芽が枝の先端部分から発生してきます。 カキは隔年結果性が強い果樹なので、花が咲いたといっても果実の間引き「摘果」が必要になります。
そうしなければ、結果過多となり、個々の果実は小玉になり、ひいては樹体を弱らせることにもつながるので、結果調整は大事な作業です。
摘果の目安は、果実1個に対して葉数13~15枚程度とします。
特に結実1年目は木に無理をさせず、気持ちは「腹八分目」程度で抑えるようにしましょう(8号鉢に植え付けていた場合は、10号鉢に植え替えをします。植え替え時期は3月中下旬ごろがよいでしょう)。
④収穫
収穫適期の判断は品種によって違いがありますが、基本的には濃く色づいてから収穫します。 ただし、渋柿の場合は、早すぎると干し柿にした場合にあとの色がどす黒くなり、熟しすぎると干している途中で落果することがありますので、収穫期は注意します。
甘柿と渋柿
渋みの成分であるタンニンという物質が、果実を口にした時に唾液で溶ける構造(水溶性)の場合、味覚は渋みを感じます。
もともとタンニンは、甘柿、渋柿の両方に含まれますが、甘柿の方は渋柿に比べて渋みが5分の1程度ということも、感じる渋みに影響しています。
さらに生長過程で、甘柿のタンニンは唾液では溶けない構造(不溶性)に変わるために、すぐに食べても甘いのです。
「渋抜き」とは、渋柿のタンニンを水溶性から不溶性に変化させることをいいます。
カキの脱渋
『渋抜き』という処理をすると、カキのなかにアセトアルデヒドという成分が作られ、それがシブの正体タンニンとくっつくことで不溶性になり、渋く感じなくなるのです。
方法はいくつかあり、その一つ、カキを袋にいれて焼酎を吹きかけ密閉する「アルコール脱渋」の場合は、アセトアルデヒドの原料であるアルコールを強制的にカキに吸わせるやり方です。
アルコールに含まれるアセトアルデヒドが、酒を飲んだ翌日まで体内に残っているのが二日酔いですが、カキはこの二日酔いの状態が長く続くほど、シブがしっかりと抜けることになります。 そのため密封し分解させにくくするのです。
このほか「ドライアイス脱渋」や「温湯脱渋」はどちらも空気を遮断することで、カキ自身がもつ糖分からアルコールを作らせてアセトアルデヒドを作る方法です。
干し柿の場合も、皮をむいて乾燥させるとアセトアルデヒドができることを利用した方法です。
大森直樹
1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。
カキの販売