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独特の風味が食欲をそそるニンニクは、疲労回復や滋養強壮の効果が期待されるスタミナ野菜。
一度植え付ければそれほど手がかからないので、家庭菜園でも思いのほか簡単に栽培できます。
今回は、上手に作るコツと収穫後の貯蔵法を紹介。ぜひ参考にしてください。
古くから栽培されてきた健康野菜
ニンニクの起源は数千年前。古代エジプトで早い時期から食用化、栽培されていたとされますが、日本に広まったのは戦後のことです。
特有の強いにおいの成分はアリシン(硫化アリル)で、ビタミンB1、B2、B6も多く、古くから香辛料、あるいは疲労回復や強壮薬などに用いられてきました。抗菌・殺菌作用が高く、ウイルスや細菌から体を守る機能性が評価され、家庭菜園での人気も高まっています。
暖地向きと冷涼地向き 栽培地域で品種を選ぶ
ニンニクの品種には、暖地向きと冷涼地向きがあります。冬期の低温要求量が違うなどの生育特性があるので、球を大きく肥大させるためには、栽培する地域の気候に合った品種選びが大切です。
暖地では、外皮が赤くて鱗片が多く、強い香りと濃厚な味わいが特長の「紫にんにく」などがおすすめです。一方、冷涼地では、作りやすさ、味、貯蔵性ともに優れた、青森産の優良品種「ニューホワイト六片」などを選ぶとよいでしょう。「ニューホワイト六片」は冷涼地だけではなく、弱暖地までの幅広い地域で栽培が可能です。
植え付ける種球(タネ球)は、通信販売などで品質の確かなものを入手しましょう。
生育期間が長いので黒マルチ栽培がおすすめ
ニンニクの生育は、土質のよしあしや畑の準備いかんによって大きく左右されます。肥沃(ひよく)で排水性がよく、耕土の深い状態になるように、土づくりの際は完熟堆肥(たいひ)をたっぷりと施し、十分に耕しておきます。植え付け前にあらかじめ畝(うね)に黒色のポリマルチを張っておくとよいでしょう。冬の地温を高め、雑草防止や肥料の流亡を軽減する効果があります。
種球(タネ球)は植え付け前に、1片ずつに手で分割します。その際、基部が腐敗ぎみのもの、病斑のあるもの、小さいものなどを取り除いておきます。
植え付け後、芽が伸び始めて葉が10~15㎝のころ、1球から二つ以上の芽が出てきたら、小さい方の芽(わき芽)を早めに根元からかき取ります(芽かき)。
追肥は、1回目は11月下旬、2回目は芽が伸び始めるころ(翌年2月中旬)に行います。マルチのところどころに小穴をあけ、化成肥料をまきます。
春の生育期には、花蕾(からい)が伸びてトウ立ちしてきます。花を咲かせると株が疲れて球が大きくなりにくいので、適宜摘み取ります(花蕾摘み)。摘み取ったものは、ニンニクの芽として食べられます。
栽培スペースは連作圃(ほ)場を避け、早めに良質の完熟堆肥・石灰を施し、深く(20cm以上)耕します。 |
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種球用として市販されている大きくて形のよいものを使用します。 |
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穴あき黒マルチを敷き、種球(タネ球)のとがった方を上にして5~6cmの深さに指先で押し込みます。 |
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大玉に育てるため、わき芽が出てきたら、適宜手で引き抜きます。 |
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1回目は11月下旬、2回目は翌年2月中旬、マルチのところどころに穴をあけて肥料を施します。 |
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翌年の5月ごろ、花蕾が出てきたら手で折り取ります。トウは一斉に伸びないので、時々見回って摘み取りましょう。 |
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葉が4~5割黄変し、球が十分肥大し、尻部が平らになったころが収穫の適期です。とり遅れると球割れしたり、光沢を損ねますので適期収穫を心掛けます。 |
収穫後、根を切って畑で乾かしたニンニクを、球の部分から30cmほど茎葉を残して切り、10株ぐらいずつひもで束ねて風通しのよい日陰(軒下など)につるして貯蔵します。 あるいは、よく乾かしてから茎葉を基部から切り離し、球の部分だけをネット袋などに入れてつるしてもよいでしょう。
おいしく貯蔵するには、球のまま新聞紙に包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫のチルドルームなどで保存します。ニンニクを1片ずつ、もしくは使いやすい量に小分けにして保存パックやラップに包んで冷凍するのも手です。すりおろしたものを保存パックに詰めて冷凍してもよいでしょう。また、しょうゆ漬け、ニンニク味噌、ニンニクオイルなどに加工すれば、より長い期間貯蔵することができます。
ニンニクは1年に1回の短い期間しか収穫できません。そのためニンニクの生産業者では、周年の需要に応えるため、長期間にわたり品質を保持する工夫をしています。
これまで貯蔵の最大のネックになっていたのは、休眠からさめてからの芽の伸び出し(萌芽)や発根で、10年ほど前までは萌芽抑制剤による処理が行われていました。しかし、平成14年にこれが農薬登録から抹消されて以来、氷点下での低温貯蔵が行われています。
最近の研究では、低温貯蔵の温度については、左表のように、高い(マイナス1℃以上)と貯蔵中の芽・根の伸長停止や、出庫後の芽の伸長抑制の効果が劣り、低すぎる(マイナス5℃)と凍結や低温障害が回避されず、鱗片表面の窪みや変色、鱗片と外皮の間にすき間ができるなどで品質を損ねることが明らかとなり、貯蔵庫の平均温度をマイナス2~マイナス1.5 ℃にするのがよいとされています。産地では性能の優れた低温貯蔵庫が整備され、1年を通して良質なニンニクが提供されています。家庭ではこのような厳密な温度管理は難しいため、冷蔵庫のチルドルーム(約0℃)や氷温室(約マイナス1℃)などで保存し、なるべく早く食べきることをおすすめします。
板木技術士事務所所長、農学博士。千葉農業専門学校(現千葉大学園芸学部)卒業後、神奈川県園芸試験場場長、神奈川県農業総合研究所所長、全農農業技術センター技術主管を経て現職に就く。家庭菜園の普及に力を注ぐと同時に、自らも自宅の菜園で汗水を流している。「カラー版 家庭菜園大百科」など著書多数。人気本の「からだにおいしい野菜の便利帳」の監修も行う。 |
ニンニクの苗の販売