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ジャーマンアイリス 魅力と栽培ポイント

驚くほど強健、豪華で気品のある「虹の花」
ジャーマンアイリスは、虹の花といわれるように、白・赤・黄・紫・青・紺・黒・オレンジ・ピンクと多彩な花色を持ち、それらが覆輪(色の縁取り)や複色(上弁色下弁色の色違い)となる品種もあります。さらに花びらはラッフルやレースに飾られ、その独特な形はとても印象的です。花の大きさは、子どもの手のひらの大きさからレタスくらいの超巨大輪まで大小さまざまで、中にはすばらしい芳香を放つ品種もあります。
また、暑さ寒さにも強健で、北海道の極寒地から九州の暖地まで広範囲に栽培が可能です。大きく充実した株は極度の乾燥にも耐え、鉢植えで半年間水を与えなくても枯れることはないほどです。寒さに強いことを考えれば、サボテンより強い植物といえるかも知れません。
瀬戸の金波
これほど魅力あふれる花ですが、一般にジャーマンアイリスは栽培が難しいといわれてきました。それは日本の梅雨や秋の長雨に弱く、株が腐ってしまう軟腐病という病気にかかることがあるからです。
しかしこの軟腐病は、ジャーマンアイリスの原種の育つ気象条件や生育環境を理解すれば、容易に対処することができますので、初心者の方でもとても育てやすい花だということがおわかりいただけると思います。
次々に開花するジャーマンアイリス。
栽培のポイント
ジャーマンアイリスの自生地は、冬季に雨が降り土は適度な湿潤環境ですが、春の生育期から夏の高温期を経て秋までの間は雨がほとんど降らない、半砂漠気候(地中海性気候)です。つまり、多くの植物が休眠するような低温期でも、あるいは乾燥した土壌状態でも、ジャーマンアイリスは水や養分を吸収して蓄えることのできる植物であるといえます。この、あるだけの水分や養分を取り込んでしまう性質が、高温多湿な日本(主に中間地〜暖地など)では、吸収過多となり軟腐病が発生しやすいメカニズムになるのです。
ですから、梅雨のない北海道では多肥栽培をせずに育てると軟腐病が発生しにくく、中間地〜暖地では少肥栽培でいかに長雨を防ぐかが軟腐病発生を抑えることにつながります。
植え付け
基本的には土が凍りついている時以外は年中植え付け可能ですが、地域による違いを表にします(表1)。
株の植え付け場所は、いずれの地域も日当たりよく排水のよい場所が適し、株の背中が出るように植え付けます(第1図)。花壇では、生育方向を考えて盛り土をして植え付けます(第2図)。
また、鉢やプランターの植え付けは第3図を参考にしてください。
◆第1図 植え付け
◆第2図 庭や花壇への植え付け
上から見たところ
◆表1 地域による植え付けと梅雨時期の管理
寒冷地 | 中間地 | 暖地 | |
---|---|---|---|
植え付け時期 | 早春~夏まで(春苗)。 | 春~早秋。 晩秋になると表土が凍った り溶けたりをくり返し、 株・根が浮いて活着しない。 |
初夏~晩秋。 |
日当たり | 日当たりのよい場所。 | 日当たりのよい場所。 | 日当たりのよい場所 (半日で十分)。 |
施肥 | 草木灰。 チッソ肥料は控えめに。 |
草木灰のみ。 肥料なし。 |
草木灰のみ。 肥料なし。 |
水管理 | 高畝や盛り土にして 水はけよく。 |
高畝や盛り土にして 水はけよく。 |
高畝や盛り土にして 水はけよく。 |
植え方 | 背中が見える程度に覆土。 雪の少ない地方…敷きわら などでマルチング。 降雪地域…マルチ不要(地 温は安定している)。 |
背中が見える程度に覆土。 雪の少ない地方…敷きわら などでマルチング。 降雪地域…マルチ不要 (地温は安定している)。 |
無霜地帯…冬場も生育可能。 |
雨対策 | 必要なし。 | 梅雨や秋の長雨前にビニー ルトンネルの中や軒下など に移す。 |
2日以上の長雨には注意。 9月の長雨後、9月下旬~ 10月上旬に植え付け。梅雨 入り前の対策は中間地同様。 |
軟腐病対策 | 病株のみ抜き取る。 | 1株でも発生したら、ほか の株も全部抜き取り、よく 乾燥して保管。梅雨後に改 めて植え付ける。 |
1株でも発生したら、ほか の株も全部抜き取り、よく 乾燥して保管。梅雨後に改 めて植え付ける。 |
◆第3図 鉢やプランターでの植え付け
排水がよく水もちのよい土(みじんを抜いた赤玉土や真砂土などに腐葉土を混ぜたもの)に、チッソ分の少ない遅効性の肥料と草木灰を少量混ぜて用土にする。
水管理
植え付け後は極力株に水がかからないように潅水します。秋から開花までの低温期は、表土が乾いてから2〜3日して鉢土の中が軽く湿った状態を保つように少なめに潅水し、毎日の潅水は避けてください。開花後から秋までは、土の状態を乾きぎみに保ちます。
病害虫防除(早春〜開花前後)
わらマルチは、霜が降りなくなったら取り去ります。株の枯れ葉は白絹病などの病気を誘発するので取ります。
早春はアブラムシが葉の付け根のすき間に発生しやすいので、殺虫剤で防除します。新葉が伸長してきた時と、花茎が見えてきた時は白絹病や斑点病などの防除のために殺菌剤を散布します。また、雑草が茂ると風通しが悪くなり、ヨトウムシの発生や病気の原因となりますので、早めに除草します。
葉や花を食害するアオムシ(写真1)やケムシ(写真2)と、株を食害するヨトウムシなどの害虫は、捕殺したり殺虫剤を散布して防除します。
花が咲き終わったら、順次花の付け根から手で折り取って、花がらを摘み取ります。切り花にする場合はできるだけ下部に近い所から切り取ります。ジャーマンアイリスは生育旺盛なほど葉や茎の粘り気がなく、傷口や切り口から軟腐病が発生しやすいので、雨降り前後の花がら摘みは避けます。除草作業なども同様に、晴れの日に行いましょう。
写真1 花や葉を食害するアオムシ。
写真2 葉を食害するケムシ。
軟腐病対策
軟腐病を完全に防除できる薬剤はありませんが、状態によっては復活できます。露地植えでは雨水で伝染しますので、開花後の雨の多い時期は株や葉の状態に気をつけましょう。葉の付け根や花茎が湿って濡れたようになったり、株が腐って倒れる状況(写真3)があれば、栽培地により適宜対応します(表1)。
元気に生育している株を掘り取るのは勇気がいるものですが、ジャーマンアイリスは旺盛に生長する植物なので、植え付け後はすぐに発根し、遅れを取り戻して翌年開花させることが可能です。
写真3 腐敗して弱っている株。
植え替え
植え替えは毎年行いましょう。2年間は植えっぱなしでもよく花を咲かせてくれますが、3年目くらいになると株が込みあって、花が少なくなったり貧弱になってくるので、株分けをし植え替えます(第4図)。
寒冷地で植え土が凍結している時期を除けば、植え替えは周年可能ですが、寒冷地は開花後1カ月以内に、中間地では6月下旬〜8月上旬に、暖地では7月上旬〜8月下旬に株分けするのが最適です。
◆第4図 株分け
株を鍬やスコップで掘り取り、扇状に伸びた子株のくびれた部分を手で折り取る。親株についている小さな子株や開花直後の花茎の横芽は無理に株分けせず、親株につけたまま種株にする。
株分け後の子株
苗完成
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植え付け後の管理
夏に極度に乾燥する中間地や暖地では、土が乾ききると潅水したくなりますが、潅水でなくネット等で遮光をするとよく育ちます。追肥は必要なく、むしろ前作の残肥を心配しなければなりません。草木灰を散布すると生育がよくなり、軟腐病の予防にもなります。