親イモが中心にあり、その周りに子イモ、孫イモをつけるサトイモは、肥大してイモとなる部分の違いによって、親イモを食べる親イモ用品種、子イモと孫イモを食べる子イモ用品種、その両方を食べる兼用品種、ズイキと呼ばれる葉柄を食べる葉柄用品種に分けられます。
品種のほとんどは中国に起源し、長い歴史の中で日本各地の地名がついた、極めて多くの品種が生まれてきました。とはいえ、ほかの多くの野菜に比べると積極的な品種改良は進まず、流通する品種も極めて限られている状況です。しかし、最近は地方在来野菜が見直され、特徴ある品種への関心が再び高まりつつあります。近ごろは町おこしのイベントなどに、サトイモを主役とした東北生まれの「芋煮会」が見られるなど、人気が高まってきました。
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日本の食卓に昔からなじみ深い食材、イモ。ひと口にいっても、バレイショ(ジャガイモ)、サトイモ、ヤマイモなど食感も味も、さらには調理方法も、実にバラエティに富んでいます。おいしくて栄養価も高く、しかもどこか気持ちもほっとさせてくれる……。こんな身近な野菜だからこそ、今、家庭菜園でチャレンジしてみませんか?
今回は、ねっとりもっちりした食感が煮物に欠かせない、サトイモです。
●品種選び
●主な品種とその特長、その楽しみ
改良石川早生 ![]() |
子イモ用早生品種。草丈が低く、病害にも強くて育てやすい多収性。親イモは小さいが、子イモ、孫イモの肥大がよく丸みがある。肉質は緻密でやや粘りがあり、食味もよくて、小イモのうちに皮ごと蒸す「きぬかつぎ」としても利用される。早出しに最適。 |
大和里芋 ![]() |
親イモ・子イモ用の土垂系早生品種。生育が早く、マルチ栽培などでの早出しに適する。イモは色白できめ細かく、粘りが強くて煮崩れしにくい肉質で、煮・揚げ・蒸し料理や菓子など幅広く利用できる。 |
愛知早生 ![]() |
子イモ用早生品種。イモは長めの長卵形で、肉質はやや粘りがあり、多収性。最近は、コレステロールを抑える物質が多く含まれるといわれ、注目を集めている。 |
女早生 ![]() |
子イモ・孫イモ用中生品種。蓮葉芋系に属し、愛媛県特産。イモは粘りがあって食味がよく、市場評価も高い人気品種。 |
赤芽大吉 ![]() |
親イモ・子イモ用晩生品種。‘大吉’ はセレベスとも呼ばれ、芽が赤いのでこの名があり、葉柄基部も濃紅赤色で美しい。葉と葉柄は草丈高く大きく生長し、親イモ・子イモともよく肥大して多収。粘りがあって食味がよい。 |
大野里芋 ![]() |
子イモ用中生品種で福井県特産。子イモの着生が極めて多いところから、「親ぜめ」の別名があるほど。よくしまり、やや粘りのある肉質は大変好評。 |
えび芋 ![]() |
親イモ・子イモと葉柄を利用する品種。‘唐の芋’ とも呼ばれる。栽培中、何回も土寄せする特殊な栽培方法により、独特なエビ形に仕上げる。晩生で収量は少ないが、やや粉質なイモはやわらかく、煮ると粘りが出て大変おいしく、特に京料理で好まれる。葉柄は和え物や汁の実に利用できる。 |
八つ頭 ![]() |
親イモ・子イモと葉柄を利用する品種。サトイモの中では最も葉が小さく、葉柄も短い叢状の大株となる。親イモ・子イモは分球せずに大きな塊状となり、孫イモがエビ状となって分球し、独特な形を作る。イモは粉質で味に定評。葉柄も利用でき、用途が広い。 |
タケノコ芋 ![]() |
親イモ専用品種。‘京いも’ とも呼ばれる。親イモの半分以上が地上に露出しており、その姿がタケノコに似るところからこの名がある。子イモの着生は少なく、ほとんど肥大しない。晩生で収量は少ないが、粉質の独特な風味が好まれる。 |
●サトイモとは…
サトイモは東南アジアが原産で、縄文時代に早くも中国を経て渡来しており、稲作が始まる前は日本の主食だったと推定されるほど栽培歴の古い作物です。山でとれるヤマイモに対し、低地の里でとれるのでサトイモと呼ばれ、昔から寒冷の北海道を除く全国各地で栽培されています。 主成分はでんぷん質ですが、イモの中では最も低カロリーで、カリウムを多く含み、高血圧予防にもよいといわれるヘルシー野菜。家庭料理には欠かせません。


●栽培方法

早く収穫するためには、日当たりのよい所を選びます。ビニールハウス内なら最適です。

連作畑は避けましょう。根は広範囲に張るので、あらかじめ深くよく耕しておきます。

芽を斜め上方へ向け、株間30~40cmで植え付けます。





貯蔵用は収穫時と同様にし、親株からイモが外れないよう特にていねいに取り扱います。






- 板木 利隆板木技術士事務所 所長
- 島根県生まれ。千葉農業専門学校(現千葉大学園芸学部)卒業。千葉大学助手、神奈川県園芸試験場長、神奈川県農業総合研究所所長、全農農業技術センター技術主管を経て、現在、板木技術士事務所所長、JA全農委託調査員、茨城県立農業大学校非常勤講師などを務める。著書多数。
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