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サツマイモを親株から育てる方法

- メリクロン苗
高温や乾燥に強く、痩せた土地でもよく育つサツマイモ。ビタミンCや食物繊維などの栄養素も豊富で、家庭菜園でも広く親しまれています。
今回は、メリクロン苗と呼ばれる親株からサツマイモを育てるメリットや、その方法をご紹介します。

尾曲 修二
アネット(有)代表取締役会長。1999年アネット(有)設立。2010年よりバイオ技術を駆使した工場を稼働。サツマイモのメリクロン苗を安定的に生産・供給するシステムの確立や6次産業化などの取り組みが評価され、平成29年度民間部門農林水産研究開発功績者表彰にて農林水産大臣賞を受賞。
基礎知識
1. メリクロン苗とは?
ウイルスに感染していない培養苗
メリクロン苗(ウイルスフリー苗ともいう)は、つるの先端0.3~0.5mm部分の組織(成長点)を無菌状態の試験管で培養した、ウイルスに感染していない苗のことです。
サツマイモは、まれに花をつけるものの種子はとれないため、つる(穂)を畑に植え付けて育てます。つるは、挿し穂や切り苗として販売されていますが、メリクロン苗を親株として育苗し、つるを採取する方法もあります。
2. なぜメリクロン苗がいいの?
生育が旺盛で育てやすい
サツマイモのように栄養繁殖で殖える植物の多くは、親株の病気が子株にも伝染する確率が高く、ウイルス病を受け継いでしまうことがあります。
一方、メリクロン苗から採取した、無病のつるで栽培すると、本来のサツマイモの形質が現れやすく、生育旺盛で高品質のイモが収穫できるため、生産農家はもとより、家庭菜園での需要も高まりつつあります。下記で、メリクロン苗を利用した、サツマイモ栽培の主なメリットをご紹介します。
栽培カレンダー(平坦地、暖地の場合)

育苗方法
1. 苗を入手したら?
植え替えて育苗しよう
メリクロン苗は、ポット苗の状態で販売されていますが、そのまま植え付けてもごくまれにくびれたイモがつく程度で、満足のいく収穫ができません。苗から伸びる細い根は、養分や水分を吸い上げる吸収根でサツマイモにはならず、節の部分(葉柄の付け根)から伸びる根(不定根)の一部が成長して塊根(イモ)になります(図1)。
そのためメリクロン苗を入手したら畑にそのまま植え付けるのではなく、プランターなどに植え替えます。その後、伸びてきたつるを切り取り、畑に植え付ける(最も塊根をつけやすい2~3節を土に埋める)作業を行います。
2. 苗の植え替え方法
温度を上げる工夫をしよう
品種や苗床の状況によって異なりますが、植え替えからつるがとれるようになるまでの日数はおよそ30~40日、一つのポットからとれるつるの数はおよそ7~8本程度です。
苗を入手したら、プランターや地床などに植え替えます(図2、図3)。サツマイモは寒さに弱く、つるを出させるには、十分な温度(25~30℃)と湿度が必要です。苗づくりのスタート時期はまだ気温が低いので、ビニールトンネルなどを利用し、十分な温度を確保することが大切です。平坦地・暖地では、畑へのつるの植え付け作業を6月下旬までに行うことが望ましいので、早めにメリクロン苗を確保しておくことをおすすめします。
3. 植え替え後のプロセス
摘芯して側枝を伸ばそう
植え替え後、中心のつる(主枝)の葉が7~8枚に伸びたら、株元から3~4節を残して先端を摘み取り(摘芯)、側枝を伸ばします。その側枝が8~10枚の葉をつけたら先端から7~8節の所をハサミで切り取ります。切り取ったつる(図4)は、水を深さ3~4cmほど入れたバケツなどに切り口をつけ、直射日光の当たらない場所で3~4日置き、不定根が少し伸びかけたものを畑に植え付けます。
栽培方法
1. 植え付けのポイント
4月下旬ごろからが目安
栄養分の少ない痩せ地でもよく育ち、日当たりと水はけのよい場所を好みます。植え付けは、平均気温が18℃以上、地温15℃以上、遅霜の心配がなくなったころに行います。メリクロン苗を3月下旬に親株として育苗した場合、平坦地や暖地では、4月下旬ごろからが植え付けの目安です。
①元肥を入れる
シャベルなどで土をよく掘り起こし、1㎡当たり約2㎏の堆肥、成分量でチッソ3~6g、リン酸4~8g、カリ8~12gの化成肥料をまきます(図5)。チッソ分が多すぎると茎葉ばかりが生育してイモが育たない「つるぼけ」になりやすいので、肥料のまきすぎに注意しましょう。前作でほかの野菜を作った畑では、無肥料でも育てられます。
②マルチの利用がおすすめ
高さ20~30cm、ベッド幅50~60cmの畝をつくります。黒マルチをすると、イモの肥大がよくなり、雑草が生えにくくなります。
③株間約30cmでつるを植え付ける
マルチの中央に株間約30cm、長さ約15cmの切れ込みを入れ、つるを植え付けます(図6)。さまざまな植え付け方がありますが、「水平植え」や「斜め植え」と呼ばれる方法が一般的です(図7)。
2. 生育中の管理
①活着までは乾かさない
植え付け後、条件がよければ3~5日で活着します。活着には水分が必要なので、土が乾燥している場合は、植え付け後にたっぷり灌水します。
②初期はこまめに除草
生育初期は成長スピードが遅く、1カ月程度はマルチの切れ込み周辺の除草を行います。マルチをしていない場合は、つるが広がるまで畝全体の雑草をこまめに取り除きます。
③追肥は基本的に不要
追肥は特に必要ありませんが、真夏に葉が黄色くなっていたら、つる先に化成肥料を少量追肥します。
④つる返しをする
つる返しとは、伸びたつるの節が地面につき、そこから根が張ってイモがつくのを防ぐため、つるを持ち上げて根を土からはがす作業のこと。つるが旺盛に伸びる、夏から秋にかけて行います。品種によっては、つる返しが不要なものもあります。
3. 収穫の方法
霜が降りる前に済ませよう
植え付けから、120〜150日くらいで収穫できます。暖地では9月下旬〜11月下旬、関東北部以北の東日本では10月上旬〜11月上旬ごろが目安です。
試し掘りをし、大きさを確かめてから収穫します。地上部のつるをカマなどで刈り取り、イモを傷つけないようにシャベルなどで周囲の土をやわらかくしてから掘り上げます(図8)。霜が降りると腐敗したり、貯蔵性が悪くなるので、初霜前には収穫を済ませましょう。
Point
収穫後のサツマイモは、土を軽く落として新聞紙で包み、ダンボール箱などに入れて13~15℃の冷暗所で貯蔵します。すぐに食べるよりも2~3週間おいた方が、でんぷんが糖に変わって甘みが増し、おいしくなります。
サツマイモの苗の販売