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タキイの栽培コンテンツ
バラエティーに富むヒマワリサンリッチシリーズの使い分け
発売から30年目を迎え、切り花用ヒマワリとして世界中で長く 親しまれている‘サンリッチ’シリーズ。豊富に揃った品種の 花色や咲き方の違い、栽培面についてご紹介します。
世界中で愛されて30年目! ‘サンリッチ’シリーズ
タキイ研究農場
池口英明
おかげさまで‘サンリッチ’ヒマワリは、1991年の‘サンリッチ レモン’の発表から今年で30年目を迎えました。日本国内はもちろん、世界最大の花市場であるオランダのフローラホランドにおいても常に取り扱い本数1位と、世界中で愛される切り花ヒマワリとなりました。近年ではベストファーザー・イエローリボン賞への協賛や、全日本空輸(ANA)のイメージフラワーであるヒマワリに‘サンリッチ’が採用されたり、競泳ジャパンオープンのビクトリーブーケへの採用、オランダ・ゴッホ美術館とのパートナーシップ協定の締結など、メディアでもさまざまな方面で取り上げていただいています。
1992年に発売を開始した‘サンリッチ オレンジ’は無花粉で端正に整った花形、花もちのよさ、また栽培面では早生で揃いがよいという優れた特性をもっていました。この‘サンリッチ オレンジ’の普及に伴い、当時はまだ少なかったヒマワリの営利用切り花栽培が急速に広まっていきました。その後30年の歳月を掛け、マーケットの要望に応えるべく花色のバラエティーを増やし、栽培面では極早生品種を開発するなどシリーズの強化を図ってきた結果、切り花ヒマワリの普及・発展の一端を担えたのではないかと思います。さらに、2018年にはアレンジメント向けとして世界で初めて真上を向いて花が咲く切り花ヒマワリ‘サンリッチUP(アップライト)’をリリースし、試験販売品種を加えると‘サンリッチ’シリーズは全21品種となりました。
ここでは、‘サンリッチ’シリーズの用途に合わせた品種の使い分けについて、少し解説します。
ひまわり(キク科)
- 6月中旬~10月
- 100~170cm
- 4~8月
- 25℃前後
F₁サンリッチ ソレイユミュージアム
ゴッホ美術館とのパートナーシップ協定を記念して作られたF₁サンリッチ系ミックス。
F₁サンリッチ オレンジ
濃いオレンジ色。芯は黒褐色。世界で一番切り花に利用されている品種。
F₁サンリッチ レモン
明るい黄色。芯は黒褐色。
花色の好みや切り花利用面から品種を選ぶ
スタンダードなオレンジ色
誰もがヒマワリといえば思い浮かべるような、オレンジ色の花弁に中心部が黒くなる品種です。世界で最も流通量が多い‘サンリッチ オレンジ’や‘オレンジ50’‘サマーサンリッチ オレンジ45’からお選びください。これらのオレンジ品種よりやや花色の明るい‘マンゴー50’や、シリーズ内で最も濃くさえたオレンジ色の‘バレンシア50’もおすすめです。
F₁サンリッチ バレンシア50
濃いオレンジ色で、濃緑葉。
F₁サマーサンリッチ オレンジ45
明るいオレンジの花弁で黒芯。
F₁サンリッチ オレンジ50
オレンジ花で芯は黒褐色。
明るいレモン色
庭先や部屋に明るさが欲しい時に適する、黄色の花弁に中心部が黒くなる品種です。‘サンリッチ レモン’、‘レモン50’、特に鮮やかな黄色の‘サマーサンリッチ レモン45’から選ぶとよいでしょう。また、一段と淡い黄色の‘サマーサンリッチ パイン45’は、夏のヒマワリの中でも涼やかさを感じられる品種です。
F₁サマーサンリッチ パイン45
澄んだ淡黄色花。芯は黒褐色。
F₁サマーサンリッチ レモン45
鮮やかなレモン色。黒芯。
F₁サンリッチ レモン50
明るいレモン色で芯は黒褐色。
緑芯ヒマワリ
花の中心部が緑色の緑芯品種は、意外と「これもヒマワリ?」と思われる方も多く、珍しい印象を与えることができます。また、花の中心部まで明るい色をしているので、切り花として利用する際には明るさと洋花感を印象づけられます。‘サンリッチ’シリーズ内には‘フレッシュオレンジα’‘フレッシュオレンジ’‘フレッシュレモン’があります。
F₁サンリッチ フレッシュレモン
さわやかなレモン色。芯は緑色から次第に美しいオレンジ色に変化。
F₁サンリッチ フレッシュオレンジ
花弁は濃いオレンジ色で芯はグリーンから美しいオレンジ色に変化。
F₁サンリッチ フレッシュオレンジα
花弁はやや幅広になり、緑芯の咲き進みはゆるやかに。
ユニークカラー
花弁が2色に色づくバイカラーの品種もあります。淡い黄色地に基部が濃い黄色の‘サンリッチ バナナ50’や、生花店ではオータムカラーとして秋に重宝される少しシックな色の‘ライチLD’(クリーム色地にパープルローズ)、試験販売を開始した‘マロンLD’(黄色地に茶)です。これらの品種は栽培時期や個体それぞれで着色の程度が異なり、切り花1本1本の個性も楽しめます。
F₁サンリッチ ライチLD(TH-795)
バイカラーで濃淡ある花色。ほかのサンリッチ系と異なり、長日開花性。
※まれに単色株や花粉株が出る場合があります。
F₁サンリッチ バナナ50
淡い黄地の花弁に基部が黄色。
アレンジメント利用
アレンジメントには、ガーベラのように真上を向いて咲く‘サンリッチUP(アップライト)’シリーズがおすすめです。花首が真っすぐでオアシスなどに手軽に挿せるため、これまで通常のヒマワリではワイヤーをかけてアレンジすることもありましたが、‘サンリッチUP’の利用で、手間なく自然な状態で上向きにアレンジできるようになりました。黒芯の‘UP オレンジ’、緑芯の‘UP フレッシュオレンジ’‘UP フレッシュレモン’の3品種があります。
- ※‘サンリッチUP’シリーズは遺伝的に真上を向いて咲く性質をもっていますが、栽培条件によってはまれに花首が傾くことがあります。
F₁サンリッチUP フレッシュオレンジ
オレンジの花弁に緑芯で真上を向いて開花。45日タイプでは草丈はやや低め。
F₁サンリッチUP オレンジ
花色は、黒芯に少し濃いめのオレンジ色花弁。草丈はやや低め。
F₁サンリッチUP フレッシュレモン
透き通るような美しい黄色花の緑芯。草丈はやや低め。
栽培面から品種を選ぶ
早生性
‘サンリッチ’シリーズは開花特性で、45日、50日、55日、LDの4タイプにグループ分けされています。
①45日タイプ
シリーズ内で最も開花の早いタイプです。最短となる夏の最適期にはタネまき後、約45日で開花します。早く咲くため草丈も低めに抑えられ、環境にもよりますが露地植えで100~120cm程度の草丈になります。
葉や草丈が大きくなりがちな夏の栽培でも、コンパクトで見栄えのよい切り花に仕上がります。一般家庭でのおすすめのタネまき時期は6~7月です。
②50日タイプ
タネまき後、最短約50日で開花します。ちょうど45日タイプと55日タイプの中間的な性質で、草丈は露地植えで130~140cmです。一般家庭でのおすすめのタネまき時期は6~7月と9月上旬です。同じ50日タイプの中では‘バレンシア50’と‘バナナ50’はやや開花が早く、‘オレンジ50’ʻマンゴー50’‘レモン50’は、やや開花が遅くなります。
③55日タイプ
タネまき後、約55日で開花します。‘サンリッチ’の中で成長期間が最も長く、草丈が最も確保しやすくなります。一般家庭では大きくなりがちな夏場を避け、5月中旬~下旬、6月、9月上旬のタネまきをおすすめします。草丈は露地植えで150~160cmです。
④LDタイプ
「LD」とはLong Dayの頭文字で、相対的長日開花性品種であることを示しています。これは、前述の45~55日タイプの品種が相対的短日開花性であることから区別する必要があったためなのですが、一般家庭の適期での栽培では特に長日性、短日性を気にする必要はありません。
「LD」タイプは季節により45~60日程度で開花し、夏の方が春秋に比べ、開花に至る日数が短くなります。草丈は到花日数に左右され、露地植えでは45日開花で130cm程度、60日で160cm程度となります。5月下旬~8月までタネまきできます。
- ※開花までの日数や草丈は栽培地域、栽培条件に左右されますのであくまで目安となります。
耐病性
家庭園芸で目にすることは少ないかもしれませんが、ヒマワリの重要病害の一つにべと病があります。べと病が心配される場所に植える場合は「DMR」品種がおすすめです。「DMR」とは英語のDowny Mildew Resistanceの略で、べと病耐病性を意味します。ʻサンリッチ’の耐病性品種はʻDMRオレンジ’とʻDMRオレンジ50’の2品種です。
- ※べと病の新しいレースや特異なレースに対しては耐病性が十分発揮されない場合があります。
F₁DMRサンリッチ オレンジ
切り花品質や基本特性は「サンリッチオレンジ」と同等で、病気(べと病)の発生しやすい梅雨の時期に有効。
矮性種
切り花用のʻサンリッチ’シリーズのほかに花壇向け品種もあります。花壇やプランターで楽しむために草丈が低く、分枝するように品種改良されています。おすすめはʻスマイルラッシュ’です。直まきで広く根を張らせると分枝が旺盛になり、たくさん花を咲かせます。家庭園芸に矮性種を加えてみるのはいかがでしょうか。
F₁スマイルラッシュ
上部で枝分かれして花が次々楽しめる新しいタイプの矮性ヒマワリ。無花粉で花もちもよく長期間楽しめる。花壇では草丈30~40cm。