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タキイの栽培コンテンツ
タネから丈夫に育てた一年草で暑さに負けない夏の庭づくり
東京・多摩市にある恵泉女学園大学には、春から晩秋まで一年草を中心にした美しいガーデンがあります。暑さの厳しい夏でも元気に花を咲かせ続けることができる理由を、花壇管理チームのお二人に教えていただきました。
恵泉女学園大学 園芸教育室 花壇管理チーム
丸山 美夏
恵泉女学園短期大学(現在は大学に統合)園芸生活学科卒業。恵泉園芸センター・奥沢ガーデン店長を経て独立。2001年より「moG」を立ち上げ、個人宅のガーデン設計、管理を行う傍ら、母校のキャンパスガーデンの管理に当たる。
http://mog-garden.jp
君塚亜紀
恵泉女学園大学人文学部人間環境学科卒業後、恵泉園芸センター・フラワーショップに勤務。現在は母校にて「生活園芸」「欧米の園芸芸術」などの授業補佐を担当。同時にキャンパスガーデンの管理にも当たる。ガーデンの植物と日々真摯に向き合う。
タネから育苗し、草丈を抑えどっしりと丈夫に育てた苗だから暑い時期でも元気に咲き続ける
恵泉女学園大学では、授業(正課)の一環として草花をタネから育苗しています。夏の花壇は、4~5月に学生たちがタネまきし、育てた苗で構成されていますが、毎年のように続く猛暑にもかかわらず、このガーデンでは、夏から秋まで元気に花が咲いてくれます。
暑さに負けずに花を咲かせるには、育苗期間に摘芯し、丈夫な苗に育てることが大切です。摘芯は1番花が咲くころに行います。摘芯をすると、根がしっかり張り、側枝がたくさん出てどっしりした株になり、さらに主茎を切ることで、薬剤処理をしなくても草丈を抑えられます。早い時期から花が咲くと株の力が消費されてしまうため、梅雨の間は花が咲いたら切り戻しをします。梅雨後半の晴れた日に定植すると、土が程よく湿っていて、根が活着しやすくなります。苗を丈夫に管理できるのは、タネから育てているからこそ。タネまきガーデニングは、暑い夏の庭づくりにとって有効な手段の一つだと思います。
もう一つ、定植後の管理でも過保護にしないことが肝心です。このガーデンでは、定植時にたっぷりと水やりしたら、それ以降は雨まかせで水やりはしません。水分を多く与えないことで、根が土の深い部分にある水分を吸収しようと太く長く伸び、多少の暑さではへこたれなくなります。もちろん、有機肥料を加えて排水性、保水性よく育ててきた土のお陰もあるので、ほかの庭では環境によって水やりが必要な場合もありますが、水のやりすぎは禁物です。
ここで紹介するタネまき、育苗のプロセスは、恵泉女学園大学に入り、初めてタネまき・育苗を経験する学生たちでも失敗なくできるように考えられたものです。タネからの栽培が初めての方もぜひチャレンジしてみてください。
タネまき
1
清潔なタネまき用土(タキイ「たねまき培土」など)を用意し、まず用土の湿り具合を確認する。用土をギュッと握り、手を開いた時に塊が二つに分かれるくらいの湿り具合が最適。それを目安にジョウロで水を注ぎ、よくかき混ぜる。
2
直径15cmほどの浅めの鉢を用意し、鉢穴にネットを敷き、鉢の深さの4分の1程度まで鉢底石を入れ、鉢の縁から1cmほど下までタネまき用土を加え、平らにならす。セルトレイに直接まいてもよいが、鉢にまくこの方法の方が芽を間引く必要がなく、タネを無駄にしないですむ。
3
鉢全体にまんべんなくタネを散らしてまく。
4
覆土はタネの厚みの2~3倍に(横長のタネの場合は短い方)。手やシャベルだとむらになるので、ふるいながら覆土するとよい。
5
ジョウロを左右に動かして1カ所にたまらないようにたっぷりと水やりする。鉢底から出る水が透明になるくらいまで行う。
セルトレイに移植
10日前後で芽が出揃ったら、セルトレイに移植する。あらかじめ適度に湿らせたタネまき用土をセルトレイに詰め、先が尖った箸などで3~4芽の塊を手のひらにすくい取り、次に1芽ずつ箸でそっとつまんで植え付ける。根は切らないように気をつける。最後にジョウロでたっぷり水やりし、その後約1カ月、土が乾かないように水やりしながら管理する。
ポット上げ
葉の枚数が増えて土面が隠れるくらいになったら、直径10.5cmのポットに移植する。
1
トレイの底を押し上げるようにして苗を取り出す。
2
ポットに培養土を3分の1の深さまで入れ、取り出した苗を入れる。株元がポットの縁から1cm下になるように、培養土を加える。
3
すき間まで土が入るように、最後にポットを上下にトントンする。
4
ポット上げ後の水やりも、底穴から出る水が透明になるくらいたっぷりと。
ポット上げに使う用土
ポット上げでは、通気性、排水性、保水性のバランスがよい土(タキイ「育苗培土」など)を使うことが大切です。市販の園芸培養土を利用してもOK。ご家庭で配合する場合は、下記を目安にしてください。
- [配合の目安]※10.5cmポットで約50ポット分
- 黒土 … 5ℓ
- 赤玉土(小粒) … 5ℓ
- 腐葉土…3ℓ
- バーミキュライト … 1.5ℓ
- 鶏ふん(粉末) … 0.5ℓ
摘芯
1番花が咲いたら摘芯を行う。ひょろっとさせずにどっしりした苗を育てるには、育苗中に摘芯をして、草丈を抑え、苗を作ることが大切。上の写真はサルビア‘サクラプルコ’。
①ご家庭では下から4~5節でカット。
②恵泉ではさらに下、3節くらいでカットしている。
摘芯後の苗。草丈が低くなったけれど、この後わき芽が出て側枝が増えます。
フレンチマリーゴールドの場合
下から3節くらいでカット。ここまで低くしても大丈夫。
センニチコウの場合
花芽が見えてきたら、大きくなっている葉の下でカット。センニチコウは草丈が70~80cmくらいまで高くなるので、低い位置で摘芯してどっしりした株に作るのがポイント。
おすすめ!夏から秋まで楽しめる一年草
恵泉女学園大学のガーデンで、夏の間も元気に咲いてくれる花をセレクトしました。どれもタネから手軽に栽培できるので、ぜひ試してみてください。
サルビア ‘プルコ’シリーズ
コクシネア種で、耐暑性、分枝性に優れる品種。スプレンデンス種に比べると花姿が繊細で、風にそよぐような雰囲気が魅力。花色は赤、ピンク、白、淡紫があり、ほかの草花ともコーディネートしやすい。花がらをこまめに摘むと、次々と花が咲く。暑い夏を越え、秋まで咲き続けてくれる優秀な花。
マリーゴールド ‘ファイヤーボール’ ‘ストロベリーブロンド’
今までのマリーゴールドにはない、咲き進むにつれ花色が変化する品種。‘ファイヤーボール’は濃赤から朱赤、オレンジ色へと鮮やかな変化が美しい。‘ストロベリーブロンド’は、濃赤からオレンジ色、黄色へと変化するが、少しくすんだ花色もあり、アンティーク感がしゃれた雰囲気。花つきがよくボリューム感もあり、花壇でよく目立つ。
アフリカンマリーゴールド ‘バニラ’
ボリューム感のある八重咲きで、淡いクリーム色が夏の花壇を涼しげに彩ってくれる。花がかなり重いので、草丈が高くなったら支柱を立てておくとよい。育苗中も定植後も摘芯を繰り返し、花がら摘みの際にも1節分下で切り戻すとこんもりした姿に育つ。
ジニア(百日草) ‘プチランド’シリーズ
矮性のリネアリス種で、丈夫でよく茂り、ぱっちりした一重の小さな花がたくさん咲き続ける。葉が細いので花の邪魔にならないのもよい。草丈が低めなので、花壇の縁取りに植えるのがおすすめ。恵泉女学園大学のガーデンでは、白花が特に節間が短く、株姿がコンパクトにまとまった。
ジニア(百日草) ‘パープルプリンス’
最近、魅力的な花色が多く登場しているエレガンス種の品種。濃桃紫色の気品ある花色で、蕾からかわいらしい姿で楽しませてくれる。高性種なので、花壇の後方に入れても花はよく目立つが、うどんこ病になりやすいので、風通しのよい場所を選んで植えるとよい。
ヘレニウム ‘ダコタ ゴールド’
夏の花には黄色が多くあるが、風車に似た軽やかな花姿はこの品種ならではの魅力。繊細な株姿ながら、暑さにとても強く、真夏の日差しのもとでも丈夫に育つ。よく茂るので、蒸れないように風通しのよい場所に植える。
センニチコウ ‘ストロベリーフィールズ’
黄花センニチコウ(ハーゲアナ種)で、イチゴのように真っ赤なボール状の花(苞)がとても愛らしい。‘オードリー’シリーズなどグロボーサ種に比べると咲き出しが少し遅いが、晩秋まで花が続いてくれる。茎が細めなので、風で倒れないように支えになる草花と混植しておくとよい。
センニチコウ ‘オードリー’シリーズ
グロボーサ種で、茎がかたく、直立する。ほとんどの茎の先端にボール状の花(苞)がつくので、花数が多く楽しめる。ポンポンとリズミカルに咲く花が花壇の表情に変化を与えてくれる。育てやすさでは、ハーゲアナ種よりグロボーサ種のほうがおすすめ。
トレニア ‘カウアイ’シリーズ
ほかの草花が花を休んでいる真夏でも咲き続けてくれ、夏の花壇に欠かせない存在。コンパクトで栽培しやすく、花色も鮮やか。濃紫×白、黄色×白、どちらも鮮やかな花色で、かつ涼しげな印象を与えてくれる。
ユーフォルビア ‘グリッツ’
白い雪が降っているように涼しげな白花(苞)を咲かせる。ふんわりと軽やかなボリューム感で、花と花のすき間を自然に埋めてくれる名脇役。花がら摘みの必要がないのもうれしい。育苗中は弱そうに見えるが、定植後にもりもりと元気に育つ。花壇に繊細さが欲しい時にぜひ利用してほしい。
ハツユキソウ ‘氷河’
花ではなく、涼しげな白い斑入り葉を楽しむ品種。名前からして涼しそうな印象で、くっきりした白斑は色鮮やかな夏の花壇の中でよく目立つ。風通しのよい場所に植えると元気に育つ。株が大きくなるので、ボーダーの端に加えるのもおすすめ。タネが大きく、扱いやすい。
恵泉女学園大学のガーデンでは、毎年梅雨後半の晴れた日に定植をしている。まず、すべてのポットをバランスよく配置し、1株ずつ植え付けていく。植え付け後にたっぷりと水やりして、根をしっかり活着させることが大切。このガーデンでは株元に最低でも5秒以上水を与えるようにしている。