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煎れば香ばしく、ゆでれば甘みを楽しめるラッカセイ。
現在でも、新しい品種が生まれ続けています。
その食べ方や品種、栽培方法について基本を学んで、
ラッカセイの栽培を楽しんでみませんか。
ラッカセイについて
ラッカセイ(落花生)の名の由来
明治初め、文明開化でにぎわう港町横浜で、ラッカセイは異人豆として売られていました。1871(明治4)年、秦野の油屋、梅原太平が横浜で食べた「蒸しピーナッツ」がおいしかったため、タネを持ち帰りました。それを親戚である中郡国府村寺坂(現在の神奈川県大磯町)の渡辺慶次郎に渡し、その年の秋に日本で初めてラッカセイが栽培されました。
慶次郎が育てたラッカセイは、葉が茂り、茎が地面を這い始めたので、支柱を立てて株を直立にしました。花が多く咲きましたが、何も実ができないので、こんなものと足蹴にしたら、土中から豆が出てきてびっくり。花が地面に落ちて土の中に実を作ることから「落花生」と呼ばれます。

参考:『作物』堀江武編著、p173、農文協(2005年)
国内生産の約8割が千葉県
1955年、農林省指定落花生育種試験事業が三重県から千葉県に移管されて以降、ラッカセイの公的な品種改良は千葉県農業試験場(現千葉県農林総合研究センター落花生研究室)が行うことになりました。これまで多くの品種が育成され、現在も重要な役割を担っています。ʻ千葉半立ʼといった代表的な品種のほとんどが千葉県生まれです。
なお、神奈川県では1959年にʻ改良半立ʼが育成され、神奈川県の主要品種になっています。
国内のラッカセイ流通量は全体の9割が外国産で、国内産は約1割と、輸入品に押され年々減少しています。2021年度の国内の栽培面積は6020ha、うち千葉県は4890haで、全国の8割を占めます。千葉県を含む関東での栽培が多いのですが、その理由は、土壌が関東ローム層に覆われた火山灰土からなり、水はけがよく粒子の細かい土質のため、咲いた花が地中に潜って実をつける、ラッカセイの生育に適しているからです。
「ゆでラッカセイ」とジャンボ品種の登場
ラッカセイは、これまで主に煎り加工品として流通していましたが、生産者の間では、掘りたてを旬の味として塩ゆでして食べる習慣がありました。ゆで豆は日もちが悪いため広域での流通に向かず、直売所などでの販売に限られていました。
その中で、新しいゆで豆用品種として育成されたのがʻおおまさりʼです。ゆでると甘みが強く、実が従来の2倍の大きさで、人気が高まりました。また、2022年にはʻおおまさりʼを改良したʻおおまさりネオʼが発表されました。

ラッカセイ四つのタイプ
ラッカセイには大きく分けると、バージニア、ランナー、スパニッシュ、バレンシアの四つのタイプがあります。
日本で栽培されているラッカセイのほとんどはバージニアタイプです。大粒で食味がよいため、主に煎り豆用に栽培されています。海外ではアメリカ等の温暖地で小中粒莢のランナータイプの栽培が多く、ピーナッツバターなどに加工されています。スパニッシュタイプは亜熱帯で多く栽培され、小粒で赤みがかった茶色の薄皮で覆われ、脂質が多いためピーナッツオイルやお菓子に利用されています。バレンシアタイプも亜熱帯で栽培され、小粒で莢には2粒以上入っており、甘みが強くお菓子などに利用されています。
ラッカセイ主な品種
品種を選ぶ際には、煎り豆用か、ゆで豆用か、まず用途を考え、次に豆の大きさや種皮(薄皮)の色に着目して選びましょう。そのほか、栽培するうえで草型(枝の伸び方)も念頭におきましょう。株全体が立っているものを「立性」、枝が地面を這うものを「ほふく性」、その中間を「半立性」と呼んでいます。「ほふく性」の品種は、株同士の枝が絡み合い、管理や収穫作業が煩雑になるため、現在は国内の栽培はありません。なお、収穫適期が品種ごとに異なり、適期は半数の株が開花した日から算出します。

基本の栽培法
土づくり
事前に1㎡当たり苦土石灰150gを畑全体に散布して耕しておきます。タネまきの1週間前に、深さ20~30㎝の溝を70~80㎝間隔で掘り、溝1m当たり化成肥料※(10―10―10)50gと堆肥2㎏を施し、土とよく混ぜ、溝を埋め戻します。
※化成肥料は、チッソ、リン酸、カリ各成分10%。

タネまき
幅30㎝程度の畝を立て、タネは25~30㎝ほどの間隔で2粒まきます。鳥よけのために、トンネル状にネットを掛けるか、不織布でベタがけをします。

畑の都合や鳥害回避のために、小型ポットで育苗後、植え付けることもできます。

水やり
発芽までは水を十分与え、その後はやや乾かしぎみにします。夏の乾燥は実の太りに影響するので適宜水やりするとよいでしょう。梅雨明け後に雨が少なく、畑が乾いている時期(特に7月下旬~8月中旬)は、1週間おきにたっぷりと水やりします。
土寄せ
開花後に株元に土寄せをします。この土寄せは子房柄が地中に入りやすくするための重要な作業です。


収穫
ゆで豆として利用する場合は早生品種を使うことが多く、莢が十分に肥大したころに品種に応じ、開花期(株全体の半数に開花が始まった時)からの日数で判断しますが、念のため試し掘りで確認するとよいでしょう。
煎り豆用の収穫適期は、品種に応じた開花後日数を参考にするほか、見た目としては、莢が膨らみ、網目がはっきりと見えたころが目安で、そうなると中の豆の皮は茶色に着色しています。
初めにできた莢が収穫期でも、後から開花したものは未熟です。しかし、収穫が遅れると引き抜く時に熟した莢の柄が切れてしまうことがあるので、大きい粒が多い初期のものを基準に、掘り時期を決めます。
茎葉が枯れるまで待つと、品質が落ちてしまうので気をつけましょう。

マルチ栽培もおすすめ
マルチ栽培によって地温は5℃程度高くなり、中間地の早まきでは露地と比べて発芽(出芽)を5日程度早く、開花も7日程度早めることができ、冷涼地でも効果的な方法です。
注意一般のマルチフィルムは、開花後の子房柄がフィルムに刺さらない(土中に入らない)ため、開花後7~10日に必ず除去します。
病害虫などの防除
収穫期になると主にカラスの被害があり、一度被害が起きると再度飛来してきます。株の上にテグスを張るだけでは被害を防げませんので、株全体(もしくは畝全体)に防鳥ネットを被覆しましょう。
コガネムシ類など土壌害虫の幼虫が、豆莢を食害することがあります。掘りとった時に幼虫が見つかったら、必ず捕殺しましょう。次年度はコガネムシ類に適用がある薬剤で防除します。

乾燥と保存
掘りとり後は、畑の場合は莢を上向きに立てて、数日間乾燥させます。この時、必ずネットで覆い、鳥害を防ぎましょう。または、その場で生莢をもぎとり、自宅に持ち帰って天日で十分に乾燥させます。
乾燥莢はむき豆にせず、莢のまま保存袋に入れ、食べる時に莢を割って焼くなどの加工をします。
なお、この乾燥莢は来年の自家用タネとして使えます。
連作障害を防ぐ
ラッカセイを含むマメ科の野菜は連作を嫌います。エンドウほどではありませんが、連作すると徐々に収量が低下します。その主因はキタネコブセンチュウとされますが、同時に、コガネムシ類などの被害による莢の表皮の変色も観察されます。生産農家では3~4年に1回作付けする輪作のほか、冬にライムギを作付けする、植え付け位置をずらすなどの工夫をしています。
栄養豊富なラッカセイ
ラッカセイの成分のおよそ半分が脂質。その中の脂肪酸はオレイン酸、リノール酸で、血液中の悪玉コレステロールを減らし血圧を下げる働きが期待されます。また、ビタミンEや種皮(薄皮)に含まれるポリフェノールには優れた抗酸化作用があるといわれます。

ラッカセイの食べ方
煎り豆や煎り莢、ゆで豆に加え、家庭でできる簡単な調理法を紹介します。
煎り莢、煎り豆
- オーブントースターを利用する
- 煎り莢の場合、乾燥莢を耐熱皿などに入れ、150~160℃(予熱済み)で30分程度焼きます。後半に一気に焼き上がるので、様子を見ながら焼き時間を調整します。煎り豆(むき身)の場合は、耐熱皿に載せて160℃で10分程度焼きます。どちらも焼きすぎると風味が飛んでしまうので気をつけましょう。
- 電子レンジを利用する
- 煎り莢の場合、乾燥莢50gを耐熱皿に並べ、500Wで1分半加熱した後にかき混ぜ、再度1分間加熱し、もう一度かき混ぜた後、さらに500Wで1分間加熱します。加熱の過程でかき混ぜることで、煎りムラを少なくできます。電子レンジの出力を低く設定し、加熱時間を長くとることでも煎り莢ができます。
煎り豆(むき身)の場合、水に10秒ほど漬け、紙封筒に入れて、50gを500Wで3分程度加熱します。いずれも分量が多い場合は調理時間が長くなり、少ない場合は短くなります。
ゆで豆
[材料]生ラッカセイ(莢付き):200~250g、食塩:10~15g、水:500cc
- 生ラッカセイを水で洗った後、食塩と水を入れた鍋でゆでる。
- 加熱時間は、普通の鍋では45~50分ほど、圧力鍋では蒸気噴出後、弱火で5分ほど加熱。その後10分ほど放置し、蒸らす。
- ゆでた豆は傷みが早いため、冷蔵庫に入れる。野菜室で2~3日、冷凍室で6カ月程度は食味が保持できる。解凍は自然解凍か電子レンジの解凍モードで1~2分。
煮豆
[材料(4人分)]生ラッカセイ:250g、砂糖:200g、塩:小さじ4分の1
- 薄皮付きラッカセイを洗い、一晩水に漬ける。
- 鍋に水を切ったラッカセイと新しい水(300cc)を入れて、やわらかくなるまで煮る。
- よく煮えたら砂糖を入れ、弱火で味を煮含める。
- 仕上がり直前に塩を入れ、少し煮た後、火を止めて煮汁に漬けておく。