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タキイの栽培コンテンツ
野菜作りの上作テクニック ネギ
ネギ(根深ネギ)の3カ条
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根は酸素を好むので、畑の水はけをよくする。
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2
肥料が切れると病気の原因になるので、肥料切れさせない。
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3
立派なネギを育てるには、回数を分けてこまめに土寄せをする。
川城英夫
千葉県農林総合研究センター育種研究所長などを経て現在、JA全農主席技術主管。農学博士。主な著書に「いまさら聞けない野菜づくりQ&A」、「野菜づくり畑の教科書」(家の光協会)、高等学校教科書「野菜」、「新野菜つくりの実際」(農文協)など多数。
ネギの基礎知識
ネギは葉鞘(ようしょう)部と葉身部からなり、土寄せをすると葉鞘部が軟白(なんぱく)されてやわらかく多汁になります。生育適温15~20℃、軟白適温15℃前後で、寒さや暑さに強く、乾燥にも耐えます。冬の低温で花芽ができ、気温が上昇する3月上旬ごろからトウ立ちが始まります(写真1)。
根は浅く張り(写真2)、酸素を多く必要とするため湿害を受けやすく、過湿に高温が重なると被害が大きくなります。根は肥料焼けを起こしやすい一方で、肥料切れすると病気になりやすいため、追肥重点の施肥を行います。
(写真1)冬の低温で花芽分化し、春にトウ立ちする。
(写真2)根は酸素を好み、地表に向かって伸びる。
品種の選び方
秋どりは暑さや病気に強い「名月一文字」や生育旺盛で食味がよい「ホワイトスター」、冬どりは寒さに強く低温伸長性のよい「ホワイトソード」、トウ立ちしやすい4月どりは晩抽性(ばんちゅうせい)の「初夏一文字」がおすすめです。
栽培のプロセス
1育苗
タネまきの適期は、4月上旬〜5月上旬。多めに作る場合は地床育苗、少なめならセルトレイでの育苗がよいでしょう。
栽培カレンダー(地床育苗・中間地4月上旬まきの場合)
セル育苗
128~200穴のセルトレイに「タキイ タネまき培土」を詰め、深さ5~6㎜のまき穴をあけ、1穴4~5粒のタネをまいて覆土(ふくど)をします(写真3)。灌水(かんすい)後、乾燥防止のために新聞紙で覆い、発芽が始まったら取り除きます。
本葉1枚のころに1穴3株に間引きます。葉色が淡くなってきたら液体肥料を施し、育苗日数50~60日、本葉3枚、太さ3㎜、葉長25~30㎝に仕上げます。
(写真3)1穴4~5粒ずつタネをまく。
地床育苗
1㎡当たり堆肥(たいひ)約2㎏、苦土石灰100g、過リン酸石灰100g、チッソ、リン酸、カリを成分量で各10g施用して耕し、ベッド幅約70㎝、高さ10~15㎝の播種(はしゅ)床を作ります。
約15㎝おきに深さ約1㎝の溝を作り、約1㎝間隔にタネをまいて覆土をします(写真4、図1)。発芽後、1カ月後と2カ月後にチッソ成分で1㎡当たり3~5gの肥料を条間にばらまき浅く耕します。本葉2枚までに1.5~2㎝株間に間引き、本葉4~5枚、太さ6~8㎜、葉長25~30㎝の苗に仕上げます。
(写真4)まき溝をつけ、タネを約1㎝間隔でまく。
(図1)地床育苗のタネまき
2畑の準備
定植2週間前に1㎡当たり堆肥2㎏、苦土石灰100g、過リン酸石灰100gを施用して深く耕します。クワで畝(うね)間90~100㎝、幅約15㎝の植え溝(深さは図2、図3を参照)を掘ります。
3植え付け
セル苗の場合
植え付け前にたっぷり灌水し、溝の中央に株間8~10㎝に苗を植え付けて1~2㎝土をかぶせ、根元を押さえて根鉢と土を密着させます(図2、写真5)。植え付け後に苗の周りに元肥として1㎡当たりチッソ、リン酸、カリを成分量で各5g施用します(写真6)
(図2)セル苗の植え付け
(写真5)セル苗は1セルずつ植え付ける。
(写真6)植え付け後に元肥の化成肥料を施す。
地床苗の場合
できるだけ根を切らないようにクワで苗を掘り上げ、細いものや病気に侵されたものを除きます。株間は3~4㎝とし、南北畝の場合は溝の西側に、東西畝の場合は北側に配置します(写真7、図3)。植え付け後に3~5㎝覆土をし、セル苗と同量の施肥を行ってから乾燥と倒伏防止のために稲わらを敷きます(写真8)。
(図3)地床苗の植え付け
(写真7)地床育苗の大苗は、倒れないように1本ずつ溝の端に植える。
(写真8)乾燥と倒伏防止のため、稲わらを敷く。
4溝の埋め戻し(削り込み)
植え付け20日後と40日後、1㎡当たり成分量で2~3gの化成肥料を溝に追肥し、除草を兼ねて、通路の土を溝に3~4㎝埋め戻し、40日後には少し盛り上がる程度に土を寄せます。
5追肥、土寄せ
本格的な追肥・土寄せは、新葉が伸びだす9月上中旬ごろから始め、3週間おきに3~4回に分けて行います。生育を停滞させないため1回の土寄せ量は5~7㎝、葉が4~5枚地上に出るようにし、首元部分が低くなるようにM字形に土を盛ります(図4)。土寄せ前に、追肥として1㎡当たり成分量で3~4gの化成肥料を施用します。最後の土寄せは2葉目の元まで盛り上げます。
(図4)
6収穫
葉鞘部が軟白されたら収穫の適期です(写真9)。最後の土寄せから軟白に要する期間の目安は、11月と3~4月どりで約30日、12月どりで約40日、1~2月どりで約50日です。クワでネギの片側の土を崩してから抜き取ります。
(写真9)葉鞘部が軟白されたら収穫する。
こんな病害虫に注意!
春と秋に雨が多いとべと病(写真10)やさび病(写真11)が発生します。
こまめな追肥と土寄せで病害の発生を抑制します。気温が高くなるとアザミウマやネギハモグリバエ、シロイチモジヨトウなどの害虫の被害が多くなります(写真12)。病虫害がみられたら早めに適用農薬を使用して防除します。
(写真10)べと病。
(写真11)さび病。
(写真12)ネギハモグリバエの被害。
上作のワザ!
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1
肥料切れは病気の原因に!
肥料が切れると、葉色が淡くなり、べと病やさび病の発生を助長します。植え付け後、活着して葉身が伸び始めたら、肥料切れさせないよう心掛けます。
元肥は、全面散布して耕うんすると、溝を掘った後に崩れやすくなるので、苗を植え付けてから溝の中にばらまきます。追肥は、削り込みや土寄せ前に、溝もしくは通路に施用します。なお、高温期に肥料を与えると軟腐(なんぷ)病が発生しやすくなるので、夏は追肥を控え、9月以降に本格化させます。 -
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土寄せは、回数を分けて行う!
根深ネギは、土寄せによって軟白し、葉鞘部(白い部分)を長く、太く育てます。
土寄せの量が多いほど伸びが早まりますが、土寄せ時には浅く張った根を切断するため、肥りが遅くなります。そのため、立派なネギを育てるには、こまめに回数を分けて土寄せを繰り返すことが大切です。ただし高温期に根を切ると、軟腐病などの病気を助長するので、本格的な土寄せは涼しくなる9月以降に行います。 -
3
お手軽! 溝を掘らない「平床植え」
溝を掘って植える方法のほか、直径3~4㎝の棒で深さ10㎝ほどの穴をあけ、そこに地床育苗の大苗を放り込む「平床植え」もあります。元肥は定植前に全面散布し、株間約5㎝で、2条植えの場合は条間を5~10㎝とって植え付けます。溝を掘らない分、植え付けが手軽にでき、湿害による生育不良を軽減できます。