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タキイの栽培コンテンツ
ヒマワリとコスモス特集
夏の花壇といえば、背丈以上に伸びたヒマワリが支柱に支えられて咲く様子を、秋の花壇といえば、長く伸びて倒れながら咲くコスモスをイメージされる方が多いようです。大きくなるから、狭い庭では無理と思われがちですが、最近の品種はそのイメージを覆すものが多いです。かわいく咲かせて、夏から秋を楽しみましょう。
奥隆善
千葉大学園芸学部卒業。専門は植物バイオテクノロジー。三重県伊賀市にて品種改良と生産を手掛ける一方、園芸教室や雑誌で植物栽培のコツを科学的に紹介している。バイオ技術を応用して世界で初めてチョコレートコスモスの交配種育成に成功した。
目次
タネまきの注意点は土のかぶせすぎと乾燥
ヒマワリもコスモスも、タネまきが簡単な植物の代表選手です。けれど、意気揚々とタネをまいたものの、うまく花が咲かなかった経験をもつ人も多いでしょう。
タネまきで大事なことは、タネに土をかぶせすぎないことと、芽が出て本葉がしっかり出るまで絶対に乾かさないことです。
植物の発芽に必要な条件の一つに酸素があります。タネは酸素を吸って呼吸することで、重い土を押しのけて地上に芽を出す大きな力にしています。かけすぎた土はタネを酸欠にしてしまい、発芽するまでにタネを腐らせてしまうのです。
また、ヒマワリもコスモスも少々の乾燥ではなかなか枯れない丈夫な草花ですが、発芽してから地中深くに根を伸ばすまでは、極端に乾燥させると干からびて枯れてしまいます。
分枝性品種をうまく組みあわせよう
ヒマワリもコスモスも、次々に発表される草丈の低い品種と中程度の品種は、簡単な支柱で育てられるので、組みあわせて植えることによって、花壇に立体感が生まれます。
さらに、品種ごとに少しずつずれて咲くので、1品種だけ植えておくよりも長く花を楽しむことができます。ヒマワリの花は一輪だけでもとても印象的で、花壇での存在感は抜群です。しかし一つの花の咲いている期間が短く、あまり長くは花を楽しめません。
そこで、分枝しながら次々に咲く性質のコスモスと混ぜて植えておけば、いつも花いっぱいの花壇になります。
昔ながらのイメージ通りに草丈が伸びる品種は、支柱さえしっかりすれば大きな花壇の背景や中心に抜群。特に分枝性が強いヒマワリは開花期も長く魅力的です。
ヒマワリ
ヒマワリの咲かせ方
タネまきの方法(花壇・鉢)
タネをよく観察すると、尖った端と丸い端があります。あらかじめ湿らせた土に尖った端を下にして挿すようにして植え付けると、揃ってきれいに発芽します。深く埋めすぎると酸欠で腐ってしまうので、タネの頭が2~3mm土に埋もれる深さにしましょう。どちらが尖っているか分かりにくい場合は、地面を指で軽くへこませて穴をつくり、そこに寝かせてまき、2~3mmの厚さに土をかけておきましょう。まいた後は軽く水を与えておきます。
栽培のコツ
水やり
タネをまいてから本葉がしっかりと大きくなるまでは、乾かさないようにしなければいけません。特に、梅雨明け後の高温乾燥期にまいた場合はこまめに水やりをしましょう。その後は土の表面が乾いてきたら与えるようにして、少し乾燥ぎみにすることで茎をかたく育て、倒れにくい株に仕立てましょう。また、蕾が見え始めてから開花までは特に水を必要としますので、こまめな水やりが欠かせません。
病害虫
アブラムシが寄生すると、新芽が縮れて大きくならなくなったり、排泄物で葉が汚れ、その後に黒くカビが生えたりします。大きく広がった葉には、透き通って軍配のような形の羽をもったグンバイムシが発生し、多発すると緑がかすれたようになります。どちらも風通しをよくすることで発生は減りますが、薬剤散布が効果的です。葉に黒い斑点が発生するのは黒点病です。土にマルチングをして泥はねを防いだり、連作を避けたりすると発生が減ります。
支柱立て
生長にあわせて支柱を立てますが、いったん倒れた茎を立てても曲がってしまうので、早めに支柱を準備しておきましょう。苗が小さいうちにアサガオのツルを絡ませるような行灯を挿しておくと、その中に勝手に伸びていきます。茎を支柱に結びつける際は、茎が生長につれて太くなるのを見越して8の字状に余裕をもたせてくくりつけるか、古着を裂いて伸縮性のある紐をつくって使うと茎が傷つきません。
おすすめヒマワリ品種と使い方
大雪山
秋遅くまで咲かせたい
草丈100~150cm
タネまき後60~70日で開花
ヒマワリでは珍しいシルバーリーフ。枝をたくさん伸ばしながら晩秋まで次々に花を咲かせます。大きく育って倒れてしまった株をそのままにしておいても、枝が伸び上がり花を咲かせ続ける丈夫な品種です。
サンリッチ フレッシュオレンジ
背景に組みあわせやすい
草丈100~170cm
タネまき後55~70日で開花
咲き始めの花芯はグリーンで、次第に美しい褐色になる姿がおしゃれな品種。鉢植えで草丈100cmほどからと「サマーサンリッチパイン45」よりも草丈が高く開花も遅いので、組みあわせてその背後に植えても影に隠れず、長く楽しめます。切り花用に改良された品種なので花粉が出ずに水揚げもよいのが特長。
サマーサンリッチ パイン45
密植して小さく咲かせる
草丈70~120cm
タネまき後最短45日で開花
鉢植えだと草丈70~80cm、花壇でも1mちょっとで咲くので、短い支柱だけで栽培可能。切り花用に改良された品種なので、水揚げがよく花粉が出ないのが特長で、花瓶の周りも汚しません。名前の通り、タネまきから最短45日程度で咲くのも大きな魅力。密植するほど小さくかわいい花が咲きます。その際の間隔は、直径18cmの鉢に5株が目安です。
パチノゴールド
小さな花壇にちょうどよい高さ
草丈30~40cm
タネまき後60~65日で開花
小さな花壇の背景や中心にちょうどよい高さです。株間を広めにとって大きく育てると自然に分枝し、たくさんの花が楽しめます。草丈は低いので支柱がなくてもまっすぐ育ちます。明るい色の花芯はクリアな黄色の花弁と相まって、輝くような雰囲気です。
下の方の葉を枯らしたくない!元肥にはリン酸をたっぷりと
「花はきれいに咲いたのに、どうしても下の方から葉が枯れてきてみっともない」。はたまた、「花が奇形になってしまった」との声をよく聞きます。
ヒマワリの葉は、若い苗の時は青々としていても、蕾が大きくなり始めると、下の方から急に黄色くなり、どんどん枯れていきやすいものです。私もかつてこの症状に悩まされていました。ですが、基本に立ち返り、肥料の性質を考えてみると答えが見えてきました。
葉が枯れるタイミングは、蕾が大きくなる時です。花や実を育てる成分はリン酸です。そこで、「これは蕾が大きくなる時にリン酸を必要としていたのだな?」と感じた私は、リン酸分の多い肥料を与えることにしました。
ただ、ヒマワリの花芽は急激に大きくなるので、必要になってから与えたのでは追いつきません。そこで、元肥に多めにリン酸を入れて、小さいうちからたっぷり体内に蓄えをつくっておき、さらに毎週リン酸の多い液体肥料を与えることにしました。すると、花も葉も見違えるくらいきれいになりました。
コスモス
コスモスの咲かせ方
タネまきの方法(花壇・鉢)
1カ所に2~3粒ずつタネを落とし、タネが見えなくなるくらいの土をかけておきます。かぶせすぎるとヒマワリ同様に酸欠で発芽不良になります。株と株の間隔は、15~20cm程度を基本としますが、8月末以降は遅くまくほど小さな株で花を咲かせるので、株間を狭くしないと土が目立ち、さびしい花壇になってしまいます。間引きは必要ありません。
遅くまく場合は、株が大きくならずに咲くので、間隔を狭くする。
栽培のコツ
水やり
タネをまいた後は、しっかりと水やりをします。土を乾燥させると発芽が悪くなりますから、本葉がしっかり大きくなるまでは、土を乾かさないようにこまめに水やりをしましょう。梅雨明け後の花壇の土はからからに乾燥していることがありますので、水がしっかり染み込むのを待ってから、土に指を挿してみて地中10cm程度まで湿っているかどうかを確認しましょう。
支柱立て
ヒマワリ同様、生長にあわせて行灯などで支えましょう。コスモスは早い時期にタネをまくほど、花が咲くまで背が高くなります。支柱立てが間にあわず倒れてしまった株は、起こさなくても、倒れたまま茎の先端を摘芯しておくと、わき枝が伸びてきて、低い位置で花をたくさん咲かせることもできます。
倒れてしまった株は、先端を摘芯しておけば、各節からわき芽が伸びる。
病害虫
生育期間を通じてうどんこ病が発生します。日当たりと風通しのよい場所で育てることで発生が減ります。発生を見かけたら、できるだけ早く殺菌剤を散布しますが、一度発生した株は病気にかかりやすい軟弱な株であることが多く、すぐに再発してしまいます。チッソ肥料の与えすぎや、逆に何かの肥料成分が少ない株には発生しやすいので、リン酸を多く含んだ肥料を定期的に追肥して病気に強い株に育てておきましょう。
おすすめコスモス品種と使い方
サニー
暑い夏に咲かせたい
草丈20~30cm
花径4~5cm
キバナコスモスは暑さに強いので夏場におすすめです。野生のキバナコスモスは草丈が2mを超えることもありますが、「サニー」はとても背が低いので場所をとりません。暑さに強い反面寒さには弱いので、3~4月に早くまいたり、8~9月に遅くまくのには適しません。
ソナタ
巨大輪で花壇にアクセント
草丈50~70cm
花径7~10cm
ピンクや紫の花をつけるコスモス・ビピナタスの中で最も草丈の低い品種の一つ。花径10cmにもなる巨大輪品種です。草丈の低い品種は高い品種に比べて肥料を多く与えないと花数が少なくなってしまいますので、置き肥と液肥で定期的に追肥しましょう。(写真は「ソナタプレミアムミックス」)
ダブルクリック
豪華なポンポン咲きは庭の主役に
草丈約1m
花径約8cm
いったい何枚の花弁があるのか数えきれないくらい、豪華なポンポン咲きの品種です。小鉢に植えて根を詰まらせたり、肥料が欠乏したりすると、花が小さくなり花弁の数も減ってしまうので注意が必要です。若干一重や筒状の花が混じって咲きますが、それもかわいらしいものです。
ピコティ
高く低く咲かせて濃淡を楽しむ
草丈約1m
花径約7cm
白地に赤紫の覆輪や縞、ぼかしが入る花をつけ、背が高くなる品種です。微妙に模様が異なる花が入り混じって咲く姿は絶妙の濃淡がある風景を醸し出します。15~20cmに伸びてきた時に摘芯すると分枝が増え、背も低く咲かせることができます。
センセーション
一面のコスモス畑をつくろう
草丈70~100cm
花径約8cm
タネが安価で、性質も丈夫なことから、公園や休耕田で一面のコスモス畑をつくるのによく使われます。真夏にまくと草丈1mを超えますが、8月にまくと70~80cmで低く咲かせることができます。350m²当たり約500gのタネが必要です。
イエローキャンパス オレンジキャンパス
混植して秋色の風景を演出
草丈約130cm
花径6~7cm
コスモス・ビピナタスの黄色品種です。世界初の黄花品種「イエローガーデン」の改良品種で、黄色が濃くなり花弁も幅広になりました。日が短くなると花が咲く短日性が強いため、早くまいても背が伸びるだけで9月末まで咲きません。タネまきは8月末ごろに行うとよいでしょう。兄弟品種の「オレンジキャンパス」と混植するとコントラストがよく、10月の気温の低下とともに色がさえ、すばらしい秋色の風景が楽しめます。
季節の移ろいを演出
「大雪山」とキバナコスモスで
6~7月タネまき→8~10月開花
暑さに強いキバナコスモスと開花時期の異なるヒマワリを一緒に使って、にぎやかな花壇をつくりましょう。小型や中型のヒマワリの近くには秋まで咲き続けるキバナコスモスを配置することで、ヒマワリの花が散ってしまった後も花がなくなってしまうのを防げます。背景や中心部には高性で分枝性のよい「大雪山」を植えれば、秋遅くまで花が途切れません。
「サマーサンリッチパイン45」は、開花が終わったら根元で切りとって片づける。
コスモスをミックスまき
8~9月初めタネまき→10~11月開花
8月末から9月初めは、どのコスモスもタネまきの適期です。この時期にまけば、背の高い品種も草丈50~80cm程度で咲いてきますので、倒れにくく扱いが簡単です。いくつかの一重咲きの品種をミックスまきして、いろんな色あいの花壇をつくることができます。白とピンクを混ぜればまさに秋の桜のように、またキャンパスシリーズをミックスすれば紅葉する秋の景色に溶け込みます。
白とピンクの混色
黄とオレンジの混色
大きい花壇のタネまきは大変!ほうきを使って鼻歌まじり♪
暑いさなかの園芸作業は楽しくも厳しいものです。まして細かいタネをもくもくと1粒ずつまくのは根気のいる作業です。鉢や小さな花壇であれば集中力ももちますが、広い場所に一面まくのは大変です。
そこで、私はほうきを使って、立ったまま楽々タネまきをしてしまいます。よく耕した花壇に安いセンセーションのタネを多めにバラまきして、その上をほうきで掃くようにして土をかけていきます。少々土に埋もれようが土から出ていようが気にしません。発芽が悪くなる分だけ、少し多くまいておけば大丈夫です。ただ、そのあとはホースでしっかり水やりして、本葉が大きくなるまでは乾かさないことだけは忘れません。