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志村富男さんのブリーダー人生に迫る

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志村富男さんのブリーダー人生に迫る

長年にわたり仕事でブドウと向き合うだけではなく、プライベートでもブドウを愛し続ける志村富男さん。栽培から醸造までに精通したブドウのエキスパートが作り出すブドウの新品種が、注目を集めています。そんな志村さんに、ブドウと歩んだ半生と、ブドウに掛ける思いを伺いました。

志村富男

志村 しむら 富男 とみお

長年にわたりマンズワイン(株)に勤務し、ブドウ栽培、ワイン醸造に関する技術開発に携わる。退職後、志村葡萄研究所を設立。生食用、醸造用いずれの栽培にも詳しいだけでなく、ワインの醸造にも精通するブドウとワインのエキスパートとして知られ、日本各地やアジア諸国でのブドウ栽培の技術指導も行う。また、数多くのブドウ品種を作出している。

ブドウイラスト

ワインメーカーの技術部門からの独立

私はもともとマンズワインというワインメーカーの技術部門で34年ほど仕事をしていました。55歳の時に役職定年を迎えることになり、それを機に退職して、志村葡萄研究所を設立し独立。自分でブドウの仕事をすることにしました。
独立してからはブドウ栽培やワイナリー立ち上げのコンサルティングや指導をするほか、ブドウの育種も行っています。育種は会社勤めをしている時代に、仕事として多少やっていましたが、個人でも趣味で手掛けていました。今、自分で育種する際にも、そのころ作った品種を親にして交配することがあります。
世間ではシャインマスカットという品種が人気になったり、ワインブームで全国に新しいワイナリーができたりということもあり、全国から新規にブドウを作りたいという相談が持ち込まれます。北は青森県の下北半島から南は鹿児島県まで、さまざまな気候、風土の条件がある場所でブドウ畑をつくってきました。どこも今でもしっかりと収穫できる畑に育っています。
高知でもブドウ畑をつくりましたが、ここは年間の降水量が3000mmあります。ワインの銘醸地として知られるフランスのブルゴーニュでは年間降水量が400〜700mmであることを考えると、これはブドウにとってかなり雨が多い地域であるといえます。
ブドウの産地として知られる山梨県の勝沼であっても年間降水量は1000mmです。フランス産のワインに使われるメルローやピノ・ノワールなどのヨーロッパのブドウ品種を栽培するのはかなり困難です。
こうした気象条件の中でブドウを栽培したり、ワインを造るためには、条件に合った強健な品種を使い、多雨・高温多湿でも可能な栽培方法を取る必要があります。新しくワイナリーをつくる場合、立ち上げスタッフの中に熟練のブドウ栽培家がいるとは限りません。栽培技術が不十分な人が育てやすくワインとしての個性を打ち出しやすい品種が必要なのです。

圃場で交配を行う志村さん。

圃場で交配を行う志村さん。

交配され、タネができるのを待つブドウの房。

交配され、タネができるのを待つブドウの房。

志村さんの最高傑作「富士の輝」。

志村さんの最高傑作「富士の輝」。

ブドウイラスト

粒が小さいヤマブドウを使ってワイン品種を育種

ワイン用のブドウを作りたいという場合には、日本原産のヤマブドウとヨーロッパのブドウ品種を交配した品種を推薦しています。ヤマブドウは果実の粒が小さいのですが、ワイン用のブドウとしては、これがメリットになります。
生食用ブドウの巨峰でワインを造ると、いまひとつパッとしない味になってしまいます。巨峰は一つの粒が大きいため、ワインの個性を生み出す皮の量が少ないためです。
ワインを造る時には果実の果汁はもちろん大事なのですが、個性を生み出すためには皮に含まれる色素や風味が重要になります。果粒が小さいと同じ重さの房であっても果皮の量が増え、個性豊かなワインを造るために有利となります。
生食用ブドウでは現在はシャインマスカットがとても人気です。ただ、ネオ・マスカットもそうでしたが、緑のブドウは人気が長続きしないというジンクスがあります。
巨峰や甲斐路、ピオーネなどの濃い色のブドウは、温度や日照などの条件が整わないと果実に本来の色がつきません。これは狙い通りに作りにくいという一面もありますが、逆に考えるとできが悪いものは流通しないということでもあります。
しかし、果実が緑のブドウは、果粒が大きくなればきれいにできているように見えてしまいます。シャインマスカットは一房数千円という価格で販売されていましたが、最近は千円台でも流通するようになってきました。品種が普及した結果ともいえますが、品種がもつブランド価値が下がってきたためともいえます。せっかく開発するからには長く愛されるものにしたいので、やはり果粒に濃い色がつくブドウというのは作り続ける必要があると思います。
今の私の目標としては、糖度の高さはもちろんですが、果粒が大きくて形も特徴があり、皮の色が濃くて風味の強いものを目指しています。
皮が薄くて食べやすいことも重要な要素ですが、同時に病気に強く、長期の保管や輸送にも耐える日もちのよさも大事です。

直径2mm足らずの大きさしかないブドウの花の交配

直径2mm足らずの大きさしかないブドウの花の交配は細やかな作業。授粉はピンセットなどを使って行われることが多いが、指で行うのが志村流。「新しいものを生み出すのには想いの熱が必要。その熱をブドウに伝えるためにも、道具を使わず、手で授粉を行っています」

日本全国を飛び回り技術指導を行う

北は青森県、南は鹿児島県まで日本全国を飛び回り技術指導を行う。ベトナムの熱帯気候でも可能な栽培技術を確立させたこともある。

志村さんの圃場。

志村さんの圃場。交配、採種、試験栽培などを行い、新品種ができるまでには最低でも4〜5年程度は掛かる。

ブドウイラスト

ブドウが苦手な雨をレインカットで克服

日本は、ブドウを栽培するには雨が多い気候です。根が過湿の状態だと果実の糖度も酸度も上がりにくくなってしまいます。また、急な大雨で根が水を吸い上げすぎてしまうことで、果実が割れる裂果が起きてしまいます。こうしたことを避けるためには、水はけがよい資材を使って畑の土壌改良をしたり、暗渠パイプを埋設して排水性を高める必要があります。
また、果房がぬれた状態が長く続くと、灰色かび病が発生してしまいます。これを防ぐために考案したのが、レインカット方式という手法です。
これは、垣根仕立てに1列に植えたブドウの木を、野菜栽培で使うビニールトンネルのようなもので覆うという手法です。生食用であれ、ワイン用であれ、ブドウの果粒は一粒一粒が密になった房になりますから、腐敗した粒ができにくくなることは、どちらにとってもメリットになります。
また、ブドウの花は、ちょうど梅雨入りする6月ごろに開花するのですが、花が咲いている時に雨が降ってしまうと受粉しにくくなり、よい果実ができにくくなってしまいます。しかし、開花の前からレインカットをしておけば、よい果実がたくさんつくので、生食用ブドウで行う房づくりもしやすくなるというメリットもあります。
近年は、コンパクトな設備でブドウの房にだけ雨よけをするグレープガード方式という手法も登場しています。見た目もよいため、観光農園などでも採用されるようになってきています。

 

グレープガード方式

 

グレープガード方式

 

列植にした垣根仕立てのブドウの上にビニールトンネルをかけて雨を避け、病気などを防止する。

ブドウイラスト

家で育てる時は水はけに注意して

ブドウを育ててみたいなら、私が育種した果粒がハート形をした品種などいかがでしょうか?
果粒の先端が凹んでハート形をしているもののうち、最も果粒の形が特徴的なのは「マイハート」です。果皮が赤く糖度は20度になります。ハート形の果実は果粒一粒でも観賞価値が高く、ケーキの飾りに好んで使ってくださるパティシエさんもいます。
同じく果粒の形に特徴がある「富士の輝」は果皮が黒いタイプ。パプリカのような形の果粒をしています。まだ苗も果実も生産量が少ないにもかかわらず、色が濃くて特徴のある形をした果実は高い糖度と、強い風味があり、すでに多くの問い合わせをいただいています。まだまだ苗が手に入りにくいかもしれませんが、ぜひ育てて味わっていただきたい品種です。家庭で育てる場合に気をつけて欲しいのは、土が乾きすぎたり、湿りすぎの状態が長く続かないようにすることです。営利栽培では、30cmほどの高さの枠で囲ったスペースに土を入れて高植えにしていることがあります。ご家庭で同じことをするのは大変かもしれませんが、花壇のようなスペースを作って水はけをよくして植えるのは有効な方法です。
鉢であれば、水切れに気をつければ水のコントロールはしやすくなります。使う鉢はできるだけ大きな鉢を使うとよいでしょう。

ブドウイラスト

志村葡萄研究所オリジナルおすすめワイン用ブドウ品種

北天の雫

北天の雫

ドイツなどで盛んに栽培される白ワイン用ブドウ品種「リースリング」と「ヤマブドウ」を交配して作られた品種。耐病性が高く育てやすい。しっかりとした味わいのワインを造ることができる。

富士の夢

富士の夢

フランスのボルドー地方などで栽培される赤ワイン用品種の「メルロー」と、日本在来の「ヤマブドウ」を交配した品種。果皮にポリフェノール「アントシアニン」を豊富に含み、濃厚な果汁を得ることができる。高温多湿な日本の環境でも栽培に適し、病気にも強い。

暑さに強い低地産のヤマブドウを使い高温多湿に強い品種づくり

ヤマブドウは「行者の水」などとも呼ばれ、山の中でみずみずしい果実をつける果樹。交配には標高100~300m の低地に自生する、温暖な気候に強い個体を用いることで、高温多湿な日本の気候でもよく育ってたくさん果実をつける品種を作り出している。

ブドウイラスト

志村葡萄研究所オリジナルおすすめ生食用ブドウ品種

富士の輝

富士の輝

志村さんが30年以上前に作出した大粒の黒ブドウ品種「ウインク」と、人気の「シャインマスカット」を交配した極大粒品種。果実の糖度は30度にも及び、ハチミツのような濃厚な甘みが持ち味。志村さんも「これまで自分が作った品種の中でも最高傑作」というほど。先端が凹んだパプリカ形の果粒も個性的。

我が道

我が道

「富士の輝」と同じ「ウインク」と「シャインマスカット」の交配から生まれた赤色品種。夏の猛暑にも強い。

クイーンセブン

クイーンセブン

細長い果粒が特徴の「マニキュアフィンガー」と「シャインマスカット」の交配によって生まれた赤色品種。独特の細長い果粒と、20~25度の糖度という親のよいところを受け継いだ。有名パティスリーで使用されるなど、パティシエからの評価も高い。

バイオレットキング

バイオレットキング

「富士の輝」と同じ「ウインク」と「シャインマスカット」の交配ながらこちらは赤ブドウ。「雄宝」同様大粒になり、糖度も23度に達する。果梗がしっかりしているので日もちがよいのも特長。

小指の思い

小指の思い

「ピッテロ・ビアンコ」と「シャインマスカット」の交配による細長い果粒の品種。裂果しにくく育てやすい。糖度は20度ほどまで上がる。

コトピー

コトピー

「甲斐乙女」と「シャインマスカット」の交配によって生まれた赤色品種。果粒に色がつきやすく、病気にも強い育てやすい品種。

雄宝

雄宝

雄宝

志村さんが育種した極大粒品種の「天山」と「シャインマスカット」の交配によって生まれた。ジベレリンを使ったタネなし処理をすることで、果粒一粒が鶏卵ほどの大きさにまで育ち、果重25gにまで及ぶ。皮が薄くて食べやすく、一粒でも十分満足できるほどの食べ応えがある。

ココロ

志村葡萄研究所が運営する「ココロ」では志村さんが育種した品種を購入したり、カフェでブドウを使ったスイーツを楽しむことができます。ブドウの苗や果実はオンラインショップでも購入可能です。

山梨県笛吹市御坂町下黒駒520-1
電話070-4107-2844 
営業時間10時~(商品がなくなり次第閉店) 水曜定休

https://www.dr-tomio.com/cocoro
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