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トンネル栽培とは?トンネルの作り方・野菜の選び方とおすすめ品種
害虫の少ない冬だからこそ、寒さに負けずに野菜づくり!
畑作業が一段落する冬ですが、寒い時期でも防寒用資材をトンネル状にかければ 12 月からの栽培も可能です。今回は、冬のトンネル栽培のポイントと、おすすめの資材をご紹介します。
加藤正明
体験農園園主。東京都指導農業士。体験に裏打ちされた、ていねいな技術指導に定評がある。新刊『農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)が好評発売中。
トンネル栽培とは?
「トンネル栽培」とは、防寒用シートを畝(うね)にトンネル状にかけて冷気を遮る栽培法。シート越しに日光が当たるとトンネル内の温度が上がり、発芽や生育に必要な温度を保つことができるので、真冬でもおいしい野菜を作ることができます。また、トンネルをすれば霜や雪が当たらないので野菜が長持ちし、長期間収穫できるメリットもあります。
どんな野菜が栽培できる?
寒さに強いホウレンソウ、コマツナ、ミズナ、タカナなどの葉菜類、ニンジン、ダイコン、カブなどの根菜類などいろいろな野菜が栽培できます。例えば10月中旬まきのホウレンソウなどは、本格的に寒くなる11月下旬からトンネルをすれば、年末年始の葉物野菜が高騰する時期にちょうど収穫サイズに成長します。その後は寒さに当たってさらに糖度が増し、甘みのあるホウレンソウを2月ぐらいまで楽しめます。
ただし、東北地方以北などの冷涼地は、低温などの理由で育ちが悪く、難しい場合があります。お住まいの地域の気候や環境に合わせて無理のない栽培を心掛けましょう。
どんな品種を選べばいい?
気をつけるポイントは、冬でも育てられる品種を選ぶこと。栽培カレンダー(適期表)で冬でもタネまきが可能かどうか確認してから選ぶとよいでしょう。また、冬から春にかけての栽培では、寒さに当たるなどの一定の条件下でトウ立ち(花茎が出て蕾(つぼみ)や花をつける)が起こりやすいので、トウ立ちしにくい品種を選ぶことも大切です。カタログなどに「トウ立ちが遅い」「晩抽性(ばんちゅうせい)」などの表示があるものを選ぶとよいでしょう。
どんな資材を使う?
トンネル栽培では、トンネルの骨組みとなる支柱や冷気をシャットアウトする防寒用シートなどを使用します。防寒用シートには、保温効果が高い厚手の「ビニール」や低温でもかたくならない「農PO」、軽くて薄い「農ポリ」などさまざまな素材があり、換気用の穴があいている「穴あり」と「穴なし」タイプがあります。
おすすめは「ダブルがけ」
関東以西で11~12月からの栽培におすすめなのは、「防虫ネット+防寒用シート(穴あり)」のダブルがけ。1枚だけより保温効果があり、穴から適度に空気が入るので、日中の日差しで内部が高温になっても蒸れにくいメリットがあります。
ココに注目!
トンネル栽培の可否をチェック!
厳寒期に栽培できる品種は限られている。トンネル栽培が可能かどうかは、カタログやタネ袋に表示されている適期表をチェックしよう。
【カタログの表示例】
ホウレンソウ「弁天丸」の適期表。「トンネル」と書かれた時期に合わせて、トンネルを設置する。
実践!トンネルの作り方
ここでは「防虫ネット+防寒用シート(穴あり)」のダブルがけのトンネルの作り方をご紹介します。トンネルを張る際は、強風でシートが飛ばされたり、積雪でトンネルが潰れたりしないように、支柱で骨組みを作って強度を保ちます。
これが完成形!「防虫ネット+防寒用シート(穴あり)」のダブルがけ!
Point
- ①穴から通気できるので、内部の温度の上がりすぎや蒸れを防ぐ。
- ②内側に防虫ネットをかけてダブルで防寒。
- ③不織布のベタがけで保湿・保温を強化。
- ④穴から雨水が入るので基本的に水やりは不要。
用意するもの
- マルチフィルム
- トンネル支柱(長さ210㎝程度)
- 不織布
- 防虫ネット
- 防寒用シート(穴あき)
- 留め具(Uピンなど)
防虫ネット
主に害虫の侵入を防止するために単体で使われるが、軽い霜よけ、風よけにも有効。冬の栽培は防寒用シートと組み合わせて使うとよい。
アブラムシ予防効果のある、銀線入りの「防虫サンサンネット」。
網目の大きさが0.25㎜の「防虫ネットAJメッシュシート」。
防寒用シート
穴なし(「保温POフィルム」など)と穴あきがあるが、今回は穴あきタイプを使用。穴が小さく、数が少ないほど防寒効果は高くなる。
不織布
特殊繊維をシート状に加工したもの。「テクテク ネオ」などがある。軽い素材なので、作物の上に直接かぶせて使うことも可能(ベタがけ)。
トンネル支柱
曲げて使うタイプのトンネル支柱「ダンポール」。畝の幅に合わせて、骨組みの形状を変えられる。
1畝立て
育てる野菜に適した量の石灰や元肥を入れて、しっかりと耕します。その後、畝を立てて表面を平らにならしましょう。
タネまきの前に土壌pHを調整する。元肥を入れ、しっかりと耕す。
畝を立て、表面を塩ビパイプなどで平らにならす。
2マルチ張り
冬の栽培ではマルチが保温材代わりになり、作物がスピーディーに育ちます。マルチは「穴あき黒マルチ」を使うと便利ですが、自分であける場合は「マルチ穴あけ器」を使うとよいでしょう。
「穴あき黒マルチ」のすそに土をしっかりのせて固定する。
「マルチ穴あけ器」を使って自分で穴をあける方法も。
これは便利!
一人でも上手に張れる!マルチパートナー
マルチを手軽に張れる「マルチパートナー」なら、ロールのマルチをセットして畝の上を転がすだけでマルチ張り完了。一人でも手軽に作業できるので、畑作業の“時短”につながります。
コロコロと転がすだけ!
3タネまき
各穴にタネをまき、土をかぶせます。土が乾いている時は多め、湿っている時は少なめに覆土します。
4不織布のベタがけ
発芽を促すため、畝の上に不織布をかぶせ、周囲を土で固定します。
不織布の上から水を与えます。
成長後の草丈を考慮し、あらかじめ中央にたるみをもたせておくと作物を傷めにくい。
5トンネル支柱を立てる
畝の上をまたぐように、トンネル支柱を40~60㎝間隔で立てます。ポイントは土に挿す深さを一定にすること。骨組みの天井部の高さが揃い、強風にも強くなります。
反対側の土にも同様に支柱を挿す。トンネル天井部の高さが揃っているか確認する。
Point
トンネル支柱の中には、挿す深さの目安として目印がついているものも。土に挿す深さを同じにすることで、トンネル天井部の高さが揃う。
6防虫ネット+防寒用シートをかぶせる
内側に防虫ネット、外側に防寒用シートがくるようにかぶせ、固定します。
骨組みの上に防虫ネットをかぶせる。
結び目の間をUピンで挟み、土に挿す。
防寒用シートを同様にかぶせて固定する。すそを土で埋めてすき間をなくし、冷気の侵入を防ぐ。
7補強用の支柱を挿す
強風対策として、補強用のトンネル支柱を挿す。
トンネル用パッカー(留め具)などで防寒用シートのすそをめくって固定し、外気を入れる。防虫ネットはかけたままでOK。
Point
穴あきタイプは基本的に換気は不要だが、2月中旬以降、日中の日差しが強い日は、トンネル内の温度の上がりすぎを防ぐため、すそをめくって換気をしよう。夕方以降は元に戻す。