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トンネル栽培で葉物野菜を収穫!

冬の寒さが厳しさを増すこの時期、新鮮な葉物野菜を栽培してみませんか。保温シートで防寒対策をする「トンネル栽培」なら、寒い時期でもコマツナやホウレンソウのような葉物野菜も栽培可能です。今回はトンネル栽培の効用、設置方法、おすすめの品種などを詳しくご紹介します。寒さに負けず、早春に自分で育てた新鮮な葉物野菜をぜひ味わってみましょう。

渥美治久さん

あつみ はるひさ渥美 治久種苗会社で野菜の育種、栽培技術指導業務に約30年間携わり、ニンジンなどの主力品種開発に貢献。退社後、静岡県浜松市で「恵み一色ファーム」設立。認定農業者として露地野菜20品目以上を生産。小学校の食育など地域活動にも貢献。

トンネル栽培向きオススメ品種はこちら

1.基礎知識

保温効果で生育促進

「トンネル栽培」とは、作物を保温して生育を促進させる目的で行われる技術です。この方法はただ成長を促すだけではなく、霜や風によるダメージを防ぎ、害虫の侵入を抑制し、また雨による病害を避ける効果もあります。低温で花芽を形成する野菜に対しては、トウ立ちの抑制にも役立ちます。
中間地、暖地では、トンネルを利用して発芽や生育に必要な温度を確保すれば、多くの葉物野菜が冬季でも栽培できます。ただし最低気温が0℃を下回る期間が長い寒冷地では栽培は難しいため、最低気温が0℃以上になる春まで待ち、その後トンネルまたはベタがけで栽培するのがおすすめです。

2.品種選び

栽培適期をチェック

厳寒期に栽培できる葉物野菜は、アブラナ科のコマツナ、チンゲンサイ、タアサイ、カラシナ、ミズナ、キク科のシュンギク、リーフレタス、ヒユ科のホウレンソウなどです。

例えばコマツナでも品種によって適した栽培時期が異なります。カタログやタネ袋の説明書きを確認し、寒さに強い(耐寒性)、低温下でも成長が早い(低温伸長性)、トウ立ちしにくい(晩抽性)など冬季の栽培に適した特性をもつ品種を選びましょう。

3.防寒対策

保温シートでトンネル掛け

中間地や暖地で秋冬作を行う場合、最低気温が10℃を下回るころから保温シートによるトンネル掛けを行います。
保温シートの種類には、素材や厚み、換気用の穴の有無などさまざまなタイプがあるので、使用する環境によって使い分けます。年明けから栽培を始める場合、1月~2月中旬の厳寒期に発芽させる必要があるため、保温性の高い厚さ0.1~0.075mmの農ビや農POを使用するとよいでしょう。

冬のトンネル栽培の様子。保温シートをトンネル掛けし、寒さから作物を守る。

また、最低気温が5℃以上となる3月上旬から中旬に栽培を始める場合は、換気効率を高めるため穴あきタイプの農POを使用するとよいでしょう。ただし、天候の影響で日中のトンネル内の気温が25~30℃に達しない日が連続すると、花芽の形成(不時抽苔)が発生する可能性があるため注意が必要です。

4.畑の準備

ポリマルチで生育促進

栽培を始める1カ月前までに1㎡当たり苦土石灰100~150g、完熟堆肥2㎏を施して耕します。2週間前までにチッソ、リン酸、カリを成分量で各10~15g施し、よく耕します。
幅70~80cm、高さ約10cmの畝を立てます。ポリマルチを張ると地温上昇、土壌水分保持、雑草抑制などの効果があるのでおすすめです。葉物野菜の栽培では、95cm幅のマルチの場合、コマツナやミズナ、ホウレンソウなどは15cm間隔で5列、レタスやタアサイは30cm間隔で2列の穴があいたタイプで、色は黒または透明のマルチが管理しやすく便利です。
畑ではできるだけ早めにトンネルやマルチを準備して、最低地温15℃くらいを確保すると、初期生育がよくなります。

栽植図(コマツナ、ミズナ、ホウレンソウなど)

5.タネまき、植え付け

ベタがけも効果あり

スタート方法は、200穴のセルトレイなどで育苗して植え付ける方法、直まきする方法の2通りがあります。厳寒期の育苗にはハウスや「農電園芸マット」などを利用した保温設備が必要ですが、タネまきから植え付けまでの期間を前進させて栽培することができ、発芽や初期生育を安定させるメリットがあります。

厳寒期には、トンネル内部に不織布をベタがけするとさらに保温効果が高まります。また、植え付けや直まき直後に適度な水やりを行って、活着や発芽を促します。

育苗中の加温に便利な「農電園芸マット」。安全のためサーモ(温度制御装置)とセットで使用する。
育苗
200穴のセルトレイにタネをまいた例。
育苗中のコマツナ。
育苗中のカラシナ‘コーラルリーフフェザー’。

6.追肥、水やり

葉面ようめん散布でカバー

肥料は基本的に全量元肥とします。生育が悪い場合には有機質系の「バイオール液肥」などを数日おきに3~4回葉面散布するとよいでしょう。直まきした場合、発芽が揃うまでは土壌が乾燥しないよう適度な水やりを行いますが、その後は極度に乾燥した場合を除き、水やりは控えて徒長を防ぎます

植物の生育を活性化する「バイオール液肥」。規定倍率の水に希釈して使用する。

7.換気

シートのすそは埋めない

最低気温が5℃を下回るようになるころからはトンネルを閉めた状態で管理しますがシートのすそは埋め込まないで少し空気が通るようにしておきます。
2月下旬以降は、トンネル内の最高気温が35℃を超えないように換気を行います。日中、トンネルの片側のすそを開けて換気をし、15時ぐらいまでに閉じます。
最低気温が10℃を上回るころ(4月上中旬以降)に、トンネルを外します。収穫しやすいうえ、風通しや日当たりがよくなり、生育も健全になります。

8.収穫

とり頃を逃さずに収穫

それぞれの野菜の収穫サイズになったものから順次、根元を切り取って収穫します。生育中に低温感応して花芽ができてしまった場合には、温度上昇に伴いトウ立ちが始まることもありますので、とり遅れないように注意しましょう。

収穫適期のミズナ‘京しぐれ’。
赤紫色の葉が美しいミズナ‘紅法師’。
収穫適期のチンゲンサイ。
タアサイ。寒さに当たると葉がロゼット状になる。

強風に負けない!トンネルの設置方法

農園のある浜松市は冬季に北西の強風「遠州のからっ風」が吹きつける地域にあり、トンネルは特に強固に設置しています。ぜひ参考にしてください。

用意するもの
トンネル用支柱
(FRP製ポール直径8mm以上、金属製アーチパイプ直径11mm以上、長さ210~240cmなど)
保温シート
木製の杭(3×4×70cm)...2本
押さえバンド(トンネルバンドなど)
バンド固定用のペグ など

①両端の支柱を差す

両端は最も負担がかかる部分なので45度の角度に傾ける。両端の2カ所は支柱を2本ずつ差して強度を高める。

②1mおきに支柱を差す

約1m間隔でトンネル支柱を差す。深さは20cm程度。片側を差し、反対側から傘の柄などを使って引き寄せてもう一方の側を差す。

③両端に杭を打つ

畝の両端に杭を深さ40cmほど打ち込む。角度は地面に対して60度。傾けすぎると打ち込む部分が浅くなり抜けやすいので注意。

④ペグを打つ

バンドを引っ掛けるためのペグを打つ。支柱の足下に1本おきに打つのが一般的だが、支柱と支柱の間すべてに打つと強度が増す。角度は地面に対して60度。

⑤端の支柱をバンドで固定

両端の支柱に風圧がかかるため、トンネルバンドでつないで杭に結んで固定する。

⑥保温シートを固定する

トンネル両端の杭に固定する。たるまないよう適度に引っ張り、固定する。

⑦バンドで押さえる

畝の両サイドのペグにバンドを交互に引っ掛ける。棒の先に取り付けた針金に、バンドを通しておくと作業がはかどる。

⑧完成!

作業完了。ピンと張っているので風圧に強い。

シートの片づけと保管

シートを片づける際は、手前に引き寄せて蛇腹にたたみ、端の部分でくるんでおきます。短時間でたため、引き出すのも容易です。
保管状態がシートの耐久性に大きく影響します。保管場所には直射日光の当たらない乾燥した場所を選びましょう。

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