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果菜類と一緒に育てるコンパニオンプランツ
木嶋利男
1948年栃木県生まれ。1987年東京大学農学博士。栃木県農業試験場生物工学部長、自然農法大学校長、環境科学総合研究所長、農業・環境・健康研究所理事長を歴任。著書は『コンパニオンプランツの野菜づくり』(家の光協会)ほか多数。
目次
“仲よしコンビ”で畑をデザインしよう!
コンパニオンプランツとは?
植物は1種類だけで繁殖することはほとんどなく、何種類かの植物で群落を作って共栄します。中でも、互いに助け合って生育する、相性のよい植物同士のことを「コンパニオンプランツ」といいます。農業では、互いに助け合う組み合わせだけでなく、収穫を目的とする野菜など、一方だけに都合がよい場合もコンパニオンプランツとして扱います。
ここでは、コンパニオンプランツのメリットと相性のよい植物の組み合わせをご紹介します。
どんなメリットがある?
①あいたスペースの有効利用
タネまき直後・植え付け直後の野菜類が小さいころや、ナスやトウモロコシのような草丈の高い野菜の株元にはすき間があります。通常、このあいたスペースには、雑草が繁茂しますが、コンパニオンプランツは、この空間を活用します。
②病害虫予防
虫には好みがあり、決まった種類の植物しか食べることができません(食草)。また、微生物にも好みがあり、寄生できる野菜類が決まっています(寄生性)。つまり、虫が好む野菜の近くに食草でない野菜を植え付けると、その虫を忌避することができます。また、寄生できない野菜が近くにあると、病原菌の増殖が抑制されるなどの効果が期待できます。
③生育促進
マメ科の植物の根には根粒菌が共生し、空気中のチッソを固定して植物に供給する性質があります。そのため、野菜類と一緒に植えると、マメ科の植物が作った栄養物をほかの野菜類も利用することができ、生育が促進されます。また、日陰を好むミツバやショウガなどを、ナスなど草丈の高い植物の株元で育てると、生育環境が良好になって生育が促進されます。さらに、多くの野菜類の根に共生する菌根菌(植物の根に共生している菌類)が野菜と野菜を結ぶネットワークを作り、ミネラルを供給するなどのメリットがあります。
仲よしコンビ① トマト×バジル
イタリア料理にぴったりのコンビ!
トマトは雑草を含め、ほとんどの野菜類と共栄しにくい野菜ですが、例外的に共栄できる野菜があります。その一つがバジルで、トマトの根の周囲の水分を適度に保ち、糖度などの品質を向上させる効果と、根の周囲の微生物を多様にして土壌病害を予防する効果が期待できます。トマトとバジルは調理の際にも相性がよく、家庭菜園には特におすすめの組み合わせです。
栽培のコツ
- 肥料の分量は、トマトを栽培する分のみで、バジルの分を増やさなくてもOKです。
- 地植えの場合は、トマトを通常の株間(40~50cm)で植え付け、活着したらバジルを株間に植え付けます。
仲よしコンビ② トマト×ニラ
ニラがトマトの連作障害を回避!
トマトは連作すると、萎凋病などの土壌病害が発生しやすくなります。ニラの根には土壌病原菌を抑える根圏微生物が生息するため、トマトとニラを一緒に植え付けると、トマトの連作障害を回避することができます。
混植したニラも収穫でき、葉が伸びてきたら適宜刈り取って収穫します。収穫開始後、約3週間までがやわらかく、おいしいニラを収穫できる期間です。
栽培のコツ
- 肥料はトマトに必要な分量のみ施します。
- 植え付け時に、ニラの根の上にトマトの根鉢を置き、根を重ねるようにして植え付けます。
仲よしコンビ③ ナス×ショウガ
生物相が豊かになり、病害虫を軽減!
ナスは強い光と水分を好む野菜で、ショウガ、パセリ、ラッカセイなど多くの野菜と共栄します。草丈が高く、株元にはすき間ができるので、そのあいたスペースを利用します。ショウガは水と日陰を好み、ナスの日陰でも十分生育できます。ナスは双子葉、ショウガは単子葉なので、生息する根圏微生物や虫が異なり、生物相が豊かになって病害虫の被害が抑えられます。
Point
ナスとショウガを4月下旬に植え付けると、ナスは6月上旬頃から収穫がスタートし、遅れてショウガが萌芽します。萌芽直後のショウガは繊細で、簡単に折れるので、株元を除草する際は注意しましょう。
栽培のコツ
- どちらも水分、肥料分を好む野菜です。ナスの葉色が落ちてきたら油かすなどを追肥します。
- ショウガは、葉ショウガ、新ショウガの収穫も楽しめるので、根ショウガを残して適宜収穫します。
ナスとの相性がよいおすすめの組み合わせ
仲よしコンビ④ キュウリ×長ネギ
キュウリのつる割れ病を予防する!
キュウリを連作すると、つる割れ病などの土壌病害が発生します。長ネギの根の周囲には病原菌を抑える微生物が生息するため、キュウリと長ネギを一緒に植えると、この連作障害を回避できます。また、キュウリは長ネギの根から排泄される老廃物を利用し、同じように長ネギはキュウリの老廃物を利用する性質があるので、ともに生育が促進されます。
栽培のコツ
- キュウリは樹勢が弱ると、うどんこ病やベと病が発生し、収量が減ってしまいます。樹勢を維持するため、畝や畝間に生えてきた草はそのまま残すなどして、浅い根を保護するとよいでしょう。
仲よしコンビ⑤ ピーマン×マリーゴールド
ハダニやコナジラミの発生を抑制!
夏の間次々に実をつけるピーマンは、ハダニやコナジラミが寄生しやすく、被害にあうと生育が著しく悪くなります。そこで畝間の通路にマリーゴールド(またはナスタチューム)を混植します。マリーゴールドは次々と連続して開花するので、多くの訪花昆虫や天敵が集まります。その結果、昆虫相が豊かになりハダニやコナジラミの発生が抑えられます。
栽培のコツ
- ピーマンを植え付け、活着したら、畝間にマリーゴールド(またはナスタチューム)を植え付けます。
- たくさん収穫するには、強い側枝を出させて初期生育を旺盛にすることが大切です。そのため、第1果を早めに摘み取ります。
仲よしコンビ⑥ サツマイモ×オオムギ
雑草を生えにくくして生育促進!
サツマイモはつるが伸び始めると旺盛に生育しますが、挿し苗(つる)を畑に直接挿して植え付けるため、根が発生して伸長を始めるまで、生育は緩やかです。生育初期のこの時期はちょうど梅雨の時期で雨が多く、株間や畝間に雑草が繁茂しやすくなります。サツマイモは日陰になると生育が抑制されるため、雑草は大敵です。そこで、畝間にオオムギのタネをまき、雑草がはびこるのを防ぎます。
栽培のコツ
- 畝を立てたら、速やかに畝間にオオムギのタネをまきます。その後、サツマイモの挿し苗を植え付けます。
- 雑草を抑えるため、オオムギは気温が上昇する前に畝間に繁茂させることが大切です。
オオムギはカボチャとも相性バツグン!
カボチャの代表的な病気の一つにうどんこ病があります。うどんこ病の予防には、オオムギを混植するのが有効です。畑に畝を立てたら、先に通路部分にオオムギのタネをまき、発芽したらカボチャを植え付けます。オオムギは気温の上昇に伴ってひ弱になり、うどんこ病が発生します。やがてオオムギのうどんこ病には菌寄生菌の「アンペロマイセス・クイスクアリス」が寄生します。この菌は、カボチャのうどんこ病にも寄生して病気を防除します。真夏になって暑さで枯死したオオムギは、敷き草のように地面を覆い、カボチャの根を守ります。