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秋の季節に咲く冷凍ユリの魅力や育て方のポイントを解説
ユリの球根は、冬の寒さに一定期間当たった後に春の暖かさにあうことで芽が出て成長します。その性質を利用して、咲かせたい時期に合わせて球根を冷凍したものが「冷凍ユリ」です。ユリの本来の花期は6~7月ですが、冷凍ユリを利用することで秋にも花が楽しめます。
片岡 信義
新潟県の園芸会社(株)日園代表取締役社長。大学を卒業後、(株)日園(当時は日本園芸株式会社)に入社。父が専務を務めており小さいころから手伝いをしていたことで球根植物の魅力にひかれる。
秋の涼しい時期に咲かせることでより鮮やかな色を楽しめる
冷凍ユリの技術は、もともとユリの切り花を一年中安定して出荷できるように開発されました。通常は初夏に咲く花ですが、冷凍ユリの場合は季節を問わず花を咲かせることができます。
タキイ種苗では、冷凍処理をして成長を抑制した球根を解凍してからお届けします。冷凍期間中は芽の成長を抑えられており、解凍すると一気に芽が伸びてくるので、球根が届いたらすぐに植え付けましょう。冷凍ユリを6~8月ごろに植え込んでおくと、通常のユリが咲き終わった後に花がついてリレー形式で楽しむことができます。秋の涼しい時期に咲かせることで花もちがよくなり、花色が鮮明になることも特長です。
ユリの王様「オリエンタル系」愛らしく多彩な「スカシユリ系」
ユリは、大きく2系統に分けられます。オリエンタル系は一輪でも豪華で丈夫、スカシユリ系は多種多様な花色が魅力です。
オリエンタル系
オリエンタル系は花に香りがあり、豪華な花姿はまさにユリの王様のようです。丈夫で作りやすく、茎もしっかりしていて庭を華 やかにしてくれます。最近、切り花市場では八重系のユリの出荷が増えてきています。花弁の重なりが多い品種などは、まるでハスの花のようです。
花色は、赤に白覆輪のʻサマンサ’、白に淡いピンクのʻアヌースカ’、豪華な八重咲きで純白のʻホワイトアイズ’など長く愛される美しい品種が多数あります。一輪でも豪華な雰囲気になるので、一輪挿しで楽しむのもおすすめです。
スカシユリ系
スカシユリ系は球根の価格がお手頃で、さまざまな花形をもつものや小さくてかわいらしい雰囲気のものが多く、多彩な楽しみ方ができます。遺伝的な矮性品種もおもしろく、草丈が非常に低いので庭でも鉢植えでも強風に倒れにくく、しっかりした茎を維持してくれます。
この系統は花蕾数も多いので、切り花にしてテーブルに飾れば、まるでブーケのようになります。小さなカップや一輪挿しでかわいく演出するのも一興です。
冷凍ユリのおすすめ品種
オリエンタル系
クロッサー
ホワイトアイズ
オーラタムゴールドバンド
アヌースカ
カメレオン
サマンサ
アイシャ
ガウチョ
スカシユリ系
冷凍ユリの栽培ポイント
球根が届いたら
球根は、少し芽が出た状態か、まもなく芽が出る状態で届きます。冷凍で成長が抑制されていたため、みるみるうちに芽が伸びてくるので、できるだけ早く植え付けましょう。
冷凍ユリの球根は芽が出た状態か、あるいはもうすぐ芽が出る状態で届く。
植え付け方
植え付けの深さは、球根の高さの1個半以上の深さになるようにします。ユリは、球根の下に生える「下根」と、球根の上の茎に生える「上根」が出ます。上根は生育するうえで非常に重要なので、上根がよく張れるよう、土はある程度の深さが必要となります。
鉢植えの場合
植え付け後はたっぷりと水をやり、夏の暑い時期はできるだけ涼しい場所(日陰でも可)で発芽するまで保管します。その後、西日の当たらない場所へ移動します。
上根がしっかり伸びるようスペースを取って植え付ける。
庭植えの場合
夏場の庭植えはできるだけ地温を下げるようにしましょう。植え付け後は寒冷紗で40%くらい遮光し、加えて敷きわらなどでマルチングするのも有効です。鉢植え、庭植え、いずれの場合も芽が出て20~30cmになったら日陰から半日陰に移動したり、遮光を外してください。ユリは、基本的に風通しがよく明るい場所を好みますが、夏の猛暑は少々厳しいです。半日陰であれば順調に生育するでしょう。
風通しがよく明るい場所に、上根が成長できるスペースを取って植え付ける。
植え付けから2~3週間ほどたった球根を掘り返して見てみた様子。上根は水分や養分を吸って茎と葉を育て、蕾、花へと栄養を送る重要な働きをする。下根は地上部を支える役割をする。
Point
夏から育てるなら必ず遮光を!
春に植え付ける場合はまだ気温が高くないので素直に生育しますが、夏に植え付ける場合は植え付け後の気温が高いので、遮光などをしてなるべく気温を下げるようにしてください。
日々の管理
水やり
鉢植えの場合
植え付け後にたっぷりと水をやった後は、土の表面が乾いたら適度に水をやりましょう。
庭植えの場合
植え付け後にたっぷりと水をやりましょう。その後は特に日照りが続いた時に水を与える程度とします。
肥料
植え付け後に、緩やかに効く緩効性肥料を土の表面に1株当たり5g程度施します。その後、蕾つぼみが見え始めるころに化成肥料を5g程度与えます。
花後の管理
花数が多いので、1番花から頂点花が咲くまで長く楽しめます。咲き終えた花はこまめに摘み取りましょう。また鉢植えの場合は、開花が始まったら少し半日陰に移動すると、より長く観賞できます。ただし、スカシユリ系は日照不足で花が咲かないことがありますので気をつけましょう。
開花後は、茎葉が枯れるまで水やりを続け、枯れた後はそのまま据え置きにすると、次の年の初夏には再び花が咲き始めます。
病害虫防除
ユリにはアブラムシがつきやすいので、生育中に何度か予防が必要です。アブラムシはユリに大敵のウイルス病を媒介するので気をつけましょう。
ウイルス病にかかると翌年に葉が萎縮したり花が咲かなくなったりします。また比較的、灰色かび病にもかかりやすいので、アブラムシ予防と同じように殺菌剤も併用して春先ごろから予防しましょう。