もぎたて果樹園 ラズベリー&ブラックベリー
イチゴはもちろんのこと、ブルーベリーもいまや家庭園芸の定番ともいえるほどの果樹になったと思います。しかし、ラズベリーやブラックベリーといったキイチゴは、ジャムや洋菓子のトッピングで目にするくらいで、家庭で育てられる果樹という視点では見られていないのではないでしょうか。じつは病害虫もほとんどなくて育てやすく、しかも1鉢あればおしゃれな雰囲気も楽しめるキイチゴ類。ぜひチャレンジしてみてください。
特におすすめは作りやすいブラックベリー
キイチゴ類には、ラズベリー、ブラックベリー、そしてこの2つの中間的な性質をもつデューベリーなどがあります。
ラズベリーには、レッド、パープル、ブラックラズベリーなどがあり、多くが株立ち性で、冷涼な気候を好みます。地域的にも冷涼で西日を避けた涼しい場所での栽培に向きます。国内でも中高冷地では自生種が多くありますが、これらを標高の低い所で栽培すると、たちまち病気に侵されて2~3年で枯死してしまうほど、高温と雨に弱い果樹です。夏の夜温が高い所や収穫期に雨の多い所では、露地ではなく鉢植えで楽しむとよいでしょう。
意外なことに、温暖な地域でも、やせた土地であまり肥料も与えず放任すると、収穫量は少ないながらも栽培を楽しむことが可能です。
ブラックベリーは多くがつる性で、温暖な所でも十分夏を越せるので、家庭園芸では冷涼地を除けばブラックベリーをおすすめします。春と秋の2回開花し、今注目の緑のカーテンとしても利用できます。甘い果実も収穫できる緑のカーテンとして、魅力倍増です。また、半日陰にも耐えます。
ラズベリーとブラックベリーの性質を併せもつデューベリーは、半つる性で寒さ暑さに強く、トゲがなく扱いやすいので、こちらも家庭園芸におすすめです。
ラズベリー、ブラックベリー、デューベリー、いずれも1本で実がなります。
見た目でわかる系統の違い
見分けるポイント1
成熟したラズベリーの小核果(食用になる果実部分)は、花托から簡単に離れます。
ブラックベリーとデューベリーの小核果は、花托に密着しています。
見分けるポイント2
ラズベリーの小核果は有毛で、花托がなくても相互に密着しています。
ブラックベリー、デューベリーの小核果は無毛です。
ラズベリーとブラックベリー、両方を育てる場合は注意!
同じキイチゴ類として、ラズベリー、ブラックベリーはいつも兄弟のように扱われていますが、じつはよい仲間とはいえません。というのも、お互いに耐性の少ない病原菌の宿主同士であり、一緒に植えると一生、ある特定の病気にかかり続けるのです。 ですから、両者は少なくとも10m以上は離して栽培しなければなりません。剪定などの作業でも、片方を切った後には必ずそのハサミを水でしっかり洗うなどしてから使います。
栽培のポイント
1.植え付け
植え付けは3月ごろ、少し深植えにします。夏の高温期は敷きわらなどを株元に敷き、暑さ対策をしましょう。
2.仕立て方
トゲのある品種が多いので、放任せず、フェンスなどに誘引するとよいでしょう。アーチなどに仕立てることもできます。露地植え、鉢植えともにしっかりと支柱をしてやり、地面に這わせずに栽培しないと、トゲの中を這いながらの管理となり、収穫も億劫になるので要注意です。どのように誘引しても花が咲きます。
3.肥料
ラズベリーもブラックベリーも、土地に合えばとても大きくなるので、肥料はほとんど必要ありません。植え付け時と、果実がたくさんとれた時に、油かすと骨粉のぼかし肥を一握り与える程度でかまいません。
4.剪定
今年花が咲いた枝には翌年花が咲かないので、その枝は元から切り戻します。母枝は3年ほどで株元から剪定して、新しい枝に更新しましょう。
翌年のシュートを伸ばしておくことと、冬の剪定時に花芽のついた結果枝を切らないように注意します
5.収穫
特に手をかけなくてもよく実をつけます。熟したものから手で摘みとりましょう。
果実は生食のほか、ジャムやゼリーなどで楽しめます。生食で比較すると、ブラックベリーの方がコクのある甘さでおいしいです。ラズベリーの甘酸っぱさは、ジャムなどに最適です。
6.病害虫
ラズベリーとブラックベリーを近づけて栽培しない限り、気をつける病害虫はほとんどありません。
ブラックベリーはコクのある甘さで生食で楽しめる。
大森直樹
1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。