もぎたて果樹園 クリ
秋になると、大木の下に落ちたイガグリを拾った子どものころを、思い出す方も多いのではないでしょうか。秋の味覚を代表するともいえるクリ。見上げるほどに高い木のイメージがありますが、今回は鉢植えで収穫する栽培方法をご紹介します。
1粒にぎっしり詰まった栄養素・クリ
「ずんぐりむっくり」がクリ栽培の基本
露地植えでは大木になってしまうクリも、鉢植えであればせいぜい2mの樹高で果実を収穫することができます。子どもの目線くらいの高さで花が咲き、緑色の小さな塊だったものがどんどん大きく太り、やがてハリネズミのような緑色のトゲで全面を覆われた果実(「毬果」といいます)になります。夏が過ぎ秋の訪れとともに、それが茶色に色づき、先端が裂けて中からこげ茶色の果実が顔を出す。山の中ではとても見ることのできないシーンが、臨場感たっぷりで展開し、それを家庭の庭やベランダで楽しむことができるのです。
クリをならせるには、しっかり太い枝を作ることがポイントになります。発生させた新梢が細ければ、開花しても雄花だけで雌花は少なく、当然、結実量も少量になってしまいます。そこで「ずんぐりむっくりな枝」を作ることにより、コンパクトな樹形で多くの果実をならせることができるのです。
品種を選ぶ・中国グリと日本グリ
クリは自分の花粉では結実しません。したがって、2品種以上の混植が必要となります。通常は、他の果樹同様に、熟期をずらした2品種以上を選びます。しかしクリの場合は、国内で入手できる品種の中には、天津甘栗で知られるような中国グリの系統と、和菓子や料理で使われる、いわゆる日本グリの2系統があります。中国グリは渋皮がむけやすいのに比べ、日本グリは簡単にはむけません。また肉質も、中国グリはねっとりとした粘質で、日本グリは総じて粉質、また調理すると甘いという特徴があります。栽培の方法は一緒なので、どちらの系統を選ぶかは利用目的にあわせて決めるとよいでしょう。
ただし、1つ注意点があります。中国グリと日本グリを混植すると、できた中国グリは渋皮のむけにくいクリになってしまう可能性がありますので、中国グリを植える場合は、同じ系統同士を混植するようにします。逆に日本グリの渋皮は、中国グリと混植してもむけやすくなることはありませんが、元々の性質で渋皮のむけやすい日本グリの品種に、'ぽろたん'や'白栗(はくり)'などがあります。
植え付けポイント
(1)植え付け用土と鉢の大きさ
クリは乾燥に弱く、また過湿でも生育は著しく劣ります。市販の培養土に赤玉土40%と川砂10%を混ぜたものを使うとよいでしょう。生長が早いので、鉢は最初から10号以上のものを用いますが、プラスチック鉢は避け、素焼きテラコッタかファイバークレイポットを選びましょう。
(2)植え付け時の最大のポイント
植え付け適期は11月上旬~12月上旬、または1月下旬~2月中旬となります。
植え付け後は、接ぎ木の部分から30㎝くらいの高さで先端を切り戻します。もったいないからと、苗木の切り込みを甘くすると、そこから発生する新梢は細くなります。クリの場合、この枝が翌年の結果枝を導く結果母枝となるので、これが細いと発生した新梢には雌花の着花が少なく、結実量が相当に減少してしまいます。一方、苗をきちんと切り込むことで発生させた太い新梢は、翌年の結果枝も太く伸ばし、しっかりと雄花・雌花を咲かせることができます。これぞ「ずんぐりむっくりな枝作り」の最も大事な秘訣です。
日常管理のポイント
(1)とにかく日当たりよく管理
苗木を太く切り込んでも、その後、管理する場所の日当たりが悪いと生育が劣ります。また、多くの枝が発生して樹幹内部に日が当たりにくくなると、ひどい場合は樹が枯れることもあるため、置き場所と、大きくなってからの枝の管理は要注意です。また、クリの花芽分化は4月中旬から始まるので、この時期に日当たりが悪いと充実したよい花を咲かせることができなくなります。
(2)乾燥に注意
水やりは、真冬は1週間に1回程度、春・秋は3~5日に1回程度で十分ですが、夏場は毎日欠かさないようにします。一度乾燥させてしまうと生育が極端に劣り、ひどい時にはすぐに枯れてしまうので注意しましょう。
(3)肥培管理
植え付け1年目は、玉肥を30g、翌年は50gを、春の発芽が落ち着くころの5月下旬~6月上旬と、少し暑さが和らぐ8月下旬~9月上旬の2回に分けて施します。収穫が始まったら100gほどを、初春と収穫後の2回に分けて施用します。
(4)剪定
2年目の剪定
3月中旬までに、前年に伸びた新梢のうち、バランスのよい3本だけを残して、ほかはすべて切除します。残した枝は、それぞれ先端から3分の1程度のところで切り戻します。
3年目以降剪定
前年に結実した枝も、3月中に先端を軽く摘芯してやると、その近辺から発生した側枝にも花が咲きます。そのため、この先端を軽く切り戻す剪定を繰り返すことで、毎年結実させることができます。
収穫
以上の点に注意するだけで、植え付け3年目からは、 大きな木でしか見られなかったクリが鉢植えでも収穫できるのです。
大森直樹
1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。
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