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温州みかん

オーチャード(orchard)とは英語で果樹園のこと。欧米では自宅に小さな果樹園をもつのが憧れのライフスタイルなのだそうです。それは皆さまも同じではないかと思います。本連載では、自宅でも栽培しやすい人気の果樹と、その育て方を詳しくご紹介していきます。
まずは、家庭果樹として不動の人気を誇る温州みかんです。

品種がとても豊富!
食べ比べが楽しめる

温州みかんは日本で最も多く生産されている果樹です。受粉樹が不要で苗木1本でも収穫できるほか、ユズやレモンなどの柑橘かんきつ類とは異なりトゲがないのもうれしい特徴です。品種改良が盛んで、さまざまな品種が育成されているので、ぜひとも栽培にチャレンジしてみてください。

ただし、栽培時に押さえるべきポイントがいくつかあります。まず、寒さに弱く、マイナス5℃を下回ると枯れてしまうことがあるため、寒冷地では鉢植えにして冬は氷点下にならない場所で管理しましょう。また、豊作と不作の年を繰り返しやすいので、摘果などを適切に行い未然に防ぐ必要があります。庭植えにすると2.5m程度かそれ以上の大木になることもあるので、毎年剪定してコンパクトな樹高を維持することが重要です。

日常の管理

置き場(鉢植え)

日当たりや風通しがよい場所で育てると実つきがよくなります。かいよう病や黒点こくてん病などの病気から守るには、雨の当たらない軒下などがおすすめです。つまり春から秋は軒下で、かつ日当たりや風通しがよい場所がベストです。冬の気温がマイナス5℃を下回る地域では、鉢植えにして日当たりのよい屋内などに取り込まないと、寒さで枯れることもあるので注意が必要です。

水やり

庭植えは7~9月に2週間程度降雨がない場合には水やりしますが、それ以外は不要です。
鉢植えは鉢土の表面が乾いたらたっぷりと水やりします。春や秋は2~3日に1回、夏は毎日、冬は5~7日に1回が目安です。

肥料

庭植え、鉢植え共に、2月(油かすなど)、6月(化成肥料など)、11月(化成肥料など)の年間3回に分けて施すとよいでしょう。肥料の袋などに記載されている情報を目安に樹の大きさに応じた量の肥料を施します。

植え付け(適期:3月)

枝葉や根の生育が緩慢で、寒さによる傷みの心配の少ない3月が植え付けの最適期です。4月以降に植え付ける場合は萌芽ほうが前に完了させましょう。

左図を参考にして植え付けます。庭植え、鉢植え共に、苗木が1本の長い棒状をしている場合は、接ぎ木部から25~35㎝で切り詰めて新梢の発生を促すのがポイントです。支柱を立てて誘引し、水をたっぷりとやったら完成です。枝が何本も分かれている苗木は、以下(温州みかんの剪定の基本)を参考に剪定します。

栽培カレンダー

年間の管理・作業

摘果(適期:7~9 月)

柑橘類は、果実がなりすぎると翌年の実つきが極端に悪くなることがあります。このように豊作の年と不作の年を交互に繰り返す性質を隔年結果といいます。温州みかんは特に隔年結果しやすく、豊作の翌年に収穫が皆無になることもあります。若木のうちは毎年収穫できていても、老木になると隔年結果が発生することもあるので、若木のころから樹に負担をかけないように留意しましょう。

隔年結果を防ぐには、7~9月に小さな果実を間引き、果実の数を適正な範囲にすること(摘果)が重要です。果実1個当たりの葉の枚数が25枚程度になるように間引くとよいでしょう。つまり、葉が250枚程度ついた樹には、10個の果実を残してほかの果実はすべて間引きます。

小さい果実や傷のある果実、形の悪い果実を優先的に間引きます。また、枝の先端に上向きでついている果実(天成り果)は大きくて立派ですが、果実の食味が悪いのでこれらも優先的に間引きます。作業に慣れるまでは葉の枚数を数えながら摘果しますが、慣れたら毎回数える必要はなく、「この太い枝には葉が100枚くらいありそうだから4果残そう」といった具合に、枝の大きさから葉の枚数を推測しながら摘果します。

①摘果前の鉢植え。葉100枚に対して15個の果実がついている。
②摘果の様子。残す果実の位置は木の全体にバランスよく配置された方が理想的だが、結実状態によっては偏ってついてもよい。
③摘果後の鉢植え。11果を落として4果残した。

収穫(適期:9~12月)

黄色や橙色に色づくと食べることができます。色づいた果実を順次収穫していきましょう。収穫した果実の軸(果梗かこう)がほかの果実を傷つけないように二度切りして切り口を短く、滑らかにします。

生産農家では、輸送や価格などを考慮して早めに収穫することもありますが、家庭では完熟果のみを厳選するとよいでしょう。

剪定(適期:3月)

温州みかんは寒さに弱い植物で、秋から冬に枝を切ってしまうと、人間でいえば衣服を脱がされたのと同じ状態になり、支障が生じます。そのため、寒さが緩み始め、萌芽する前の3月ごろが剪定の最適期といえます。適期を逃さず剪定しましょう。放任して大木になってからバッサリ切るのではなく、樹齢4年以上の樹では毎年剪定してコンパクトな状態を維持します。

剪定によって切り取る枝の量は、全体の枝葉の量の1~3割が目安で、葉と葉が軽く触れ合う程度になるのが理想的です。樹勢が強い(枝の伸びがよい)樹では3割ほど、樹勢が弱い(枝の伸びが悪い)樹では約1割程度にとどめるなど、樹の状態で調整するとよいでしょう。

手遅れにならないように予防と対策を!
気をつけたい病害虫

黒点病

果実や葉に小斑点や褐色の汚れが広範囲に発生する。発生源となる落ち葉や枯れ枝などを処分するほか、薬剤散布も効果的。

かいよう病

果実や葉に斑点が発生し、コルク状になる。温州みかんでは多発しにくいが注意は必要。落ち葉拾いや薬剤散布が効果的。

カイガラムシ類

果実や枝葉が吸汁されて傷むほか、分泌液によって周囲にすす病が発生する。見つけ次第、歯ブラシなどでこすり取る。

ミカンハモグリガ

葉に白色の線状の加害痕が発生する。生育にはほぼ支障がないので、発生が少数であれば気にしすぎる必要はない。

3ステップで覚えよう!
温州みかんの剪定の基本

剪定は経験を必要とする難しい作業ですが、下記の三つのステップに分けて考えると理解しやすくなります。
どこから手をつけてよいか分からない場合はステップ1から始めてみましょう。

樹の広がりを抑える

まずは理想とする樹の形を上図の青線のようにイメージし、そこからはみ出る複数の枝を樹冠内部の分岐部(枝分かれした部分)までさかのぼって大きく切り落とします。この際、1年で樹高をいきなり低くしすぎると3年程度は実つきが悪くなるので、1年で下げる樹高は1m程度に収めるとよいでしょう。

不要な枝を間引く

次に徒長した枝や込み合った枝、同じ場所で何本も枝分かれしている枝、交差している枝、枯れた枝などの不要な枝を切り取り、枝葉が軽く触れ合う程度の込み具合にします。切る際には不要な枝を切り残すことなく、付け根で切り取ります。切り取る枝の量の目安は枝の全体量の1~3割です。

残った枝の先端を切り詰める

最後にステップ1~2で残した枝のうち、25㎝以上の長い枝だけを選んで先端を4分の1程度切り詰めます。すべての枝先を切り詰めると翌シーズンの収穫量が減ることがあるので、長い枝だけを切り詰めるということがポイントです。特に短い枝は切らずに残します。

よくある失敗Q&A

Q植え付けてから一度も収穫できません。
A植え付けからの年数や置き場、剪定、施肥などの作業を見直しましょう。

まずは若木ではないか確認しましょう。接ぎ木1年生などの若木の枝分かれしていない苗木を植え付けた場合は、初結実までに鉢植えは3年程度、庭植えは5年程度はかかります。次に、冬の気温が氷点下程度まで下がる場合は、寒さで樹が弱っている可能性があるので、鉢植えは日当たりのよい室内などに取り込みましょう。そして、剪定で切りすぎたり、肥料をやりすぎると太くて長い徒長枝が大量に発生し果実がつきません。剪定で切り取る枝の量は1~3割程度にし、肥料のやり過ぎにも注意して、枝を落ち着かせます。

三輪みわ 正幸まさゆき

千葉大学環境健康フィールド科学センター助教。教育研究活動のほか、家庭でも果樹を気軽に楽しむ方法を提案している。「12か月栽培ナビ6 かんきつ類」(NHK出版)など著書多数。

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