完熟すると傷みやすくなるスモモ、プルーン。流通時の振動などで売り物にならなくなるのを防ぐため、完熟より少し前に収穫されることがほとんどです。家庭で栽培すれば、甘みも香りも最高潮の完熟果を味わえるのがメリット。生食はもちろん、ジャムやゼリー、コンフィチュールなど、さまざまに加工して味わえます。
完熟果は絶品!!
受粉樹選びなどに注意
スモモにはアジア、ヨーロッパ、北アメリカを原産地とする三つのグループがあります。国内で広く栽培されているのはアジア原産のニホンスモモで、果実が丸い‘大石早生’や‘太陽’、‘いくみ’など多くの品種がスモモとして流通しています。また、ヨーロッパ原産で果実が細長いヨーロッパスモモは、プルーンとして流通しています。スモモやプルーンは「甘酸っぱい」というイメージが強いようですが、それは果物コーナーに並べる果実が完熟状態ではやわらかすぎて輸送に適さず、どうしても未熟な状態で収穫されることに由来します。家庭で栽培して完熟果を収穫すれば、スモモやプルーンが本来もつ、最高の甘みを楽しむことができます。栽培する際に特に注意すべきなのは、受粉樹の用意、摘果、そして灰星病への予防と対処です。
日常の管理
置き場所
鉢栽培する場合、春から秋はなるべく直射日光が長く当たる場所に置いて、しっかりと光合成させた方が実つきや果実品質が向上します。加えて、灰星病などの病気が多発する場合は、雨が株に直接当たらない軒下などに置くことが重要です。特に梅雨の時期は、多少日当たりが悪くなっても雨の当たらない場所に鉢を移動させるとよいでしょう。マイナス18℃程度まで耐えるので、冬は屋外で冬越しできます。
水やり
細根が多くて乾燥に比較的強いので、庭植えでは基本的に水やりは不要です。ただし、果実肥大が盛んな4~5月および猛暑の7~8月に、2週間ほど降雨がなければ、水やりした方が無難です。
鉢植えの場合は、表土が乾いたらたっぷり水やりします。春と秋は2~3日に1回、夏は毎日、冬は7日に1回が目安です。収穫前に水分ストレスをかけると甘い果実が収穫できますが、家庭では過度な乾燥で枯れる場合も多いので注意しましょう。
肥料
2月(油かすなど)、5月(化成肥料など)、9月(化成肥料など)の年間3回に分けて施すとよいでしょう。中でも果実肥大が盛んな5月ごろに肥料分が足りなくなることがあるので、忘れずに施します。
植え付け(11月~翌年3月)
植え付けの適期は11月~翌年3月で、庭植え、鉢植え共にイラストを参考に植え付けます。甘い果実を収穫するためには、排水性がよい土に植え付けて、根張りをよくすることが重要なので、庭植えの場合は植え付け時に腐葉土などの土壌改良材を混ぜ込むとよいでしょう。鉢植えの場合には果樹用の培養土がおすすめです。
苗木が1本の棒状をしている場合は、接ぎ木部から庭植えは30~50㎝、鉢植えは25~35㎝で切り詰めることで、低い位置からも収穫できるような樹形に仕立てることができます。これらの作業は植え付け時にしかできないので、忘れずに行います。

スモモ、プルーンを
より豊かに実らせるコツ
品種と受粉樹の要不要をチェック!
スモモとプルーンは、受粉樹が必要な品種と不要な品種に分けることができます(表参照)。スペースが狭く1本しか植え付けられない場合は、受粉樹が不要な品種を選ぶとよいでしょう。ただし、受粉樹が不要な品種でも、受粉樹があると実つきがさらによくなる傾向にあります。
受粉樹の要不要
スモモ
受粉樹が不要 | 受粉樹が必要 |
---|---|
ビューティ | 太陽 |
サンタローザ | いくみ |
メスレー | ソルダム |
花螺季 | 大石早生 |
プルーン
受粉樹が不要 | 受粉樹が必要 |
---|---|
スタンレイ | プレジデント |
シュガー | ペイラー |
サンプルーン | トレジディ |
※ 受粉樹の要不要が不明な品種を育てている場合は、受粉樹を用意した方が無難。

年間の管理・作業
人工授粉(3月下旬~ 5月上旬)
放任状態でも実つきがよい場合には人工授粉は不要ですが、年によって実つきが悪い場合や、少しでも多くの量を収穫したい場合は、人工授粉をしましょう。
受粉樹が不要な品種では、下写真のように乾いた絵筆で一つの花の中の雄しべと雌しべを交互に触れるだけで大丈夫です。

受粉樹が必要な品種では、片方の品種の花を摘んで、もう片方の品種の雌しべにこすりつけます。片方の品種の人工授粉が完了したら、花粉を授ける側と授けられる側を交代して再び授粉します。

摘果(5月~ 6月上旬)
受粉・受精が成功すると、驚くほどたくさんの果実がつきます。すべての果実を残すと収穫果が小さくなったり、甘みが不十分になったりするので、果実が小さなうちに間引く摘果を必ず行いましょう。間引く際には葉16枚に対して1果が目安です。大きな枝ごとにおおよその葉のつき具合を推測して、残す果実の数を計算します。例えば、80枚程度の葉がついている枝には5果残して、ほかの果実をすべて落とします。

果実がなっている枝には、大きな葉が80枚程度ついている。80枚÷16=5果として、5個の果実を残してほかは落とす。
5果を残した摘果後の様子。傷のある果実や小さい果実などを優先的に間引く。果実間のスペースを広くあけると理想的。
収穫(6~9月)
果実全体がしっかりと色づいたものから順次収穫します。酸味が苦手な場合は、完全に着色した後も3~4日程度は樹につけておき、果実が少しやわらかくなるまで待つのがおすすめです。果実を軽くつまみ、下に向かって引き抜くと収穫できます。
スモモは果皮にえぐみが少し残っていることが多いので、気になる場合はむいてから食べるとよいでしょう。

気をつけたい
病害虫と生理障害

灰星病

シンクイムシ類

アブラムシ類

樹脂障害
3ステップで覚える
スモモ、プルーンの剪定
スモモ、プルーンは11月ごろから落葉が始まり、12月ごろにはほぼすべての葉が落ちます。開花は3月下旬ごろから始まるので、剪定は落葉期の12月~翌年2月に行いましょう。
スモモやプルーンは長くて太い徒長枝には花のもととなる芽(花芽)がつきにくく、短い枝にはつきやすいです。このため、長い枝よりも短い枝の方が実つきがよい傾向にあります。剪定で枝を切りすぎると、徒長枝が多く発生して実つきが悪くなるので注意しましょう。横向きになった枝や適度に切り詰めた枝から発生する新梢は無駄伸びが抑えられ、短い枝になりやすいです。 剪定は経験を必要とする難しい作業です。どこから切ってよいか分からない場合は、ステップ1~3に分けて考えるとよいでしょう。まずはステップ1から始めます。果実がつきやすい短い枝は残し、長い枝は付け根で切り詰めるか、先端を軽く切り詰めるのがポイントです。

縦や横への樹の拡大を抑える
樹を小さくしたい場合は、樹の末端付近の枝を何本かまとめて切り取ります。枝分かれしている場所を切り残しがないように切るのがポイントです。若木の状態で樹を大きくしたい場合にはステップ1は不要です。


不要な枝を間引く
次に不要な枝を付け根で間引きます。不要な枝とは、50㎝以上の長くて太い枝(徒長枝)や込み合った枝、交差している枝、枯れ枝などです。短い枝は花芽がたくさんついていて実つきがよい傾向にあるので、なるべく切り取らずに残します。


残した枝のうち、長い枝だけ切り詰める
ステップ1~2で残した枝のうち、30~50㎝程度の適度に長い枝だけを選んで先端を5分の1~4分の1程度切り詰めます。枝の先端を切り詰めることで適度に充実した枝が発生して樹が若返り、樹勢を強く保つことができます。長い枝だけ切り詰めるのがポイントです。

Q収穫前の果実に白い粉が吹きます。
A灰星病の防除をしましょう。
収穫前の果実に白い斑点が発生し、白い粉を吹いたような状態になった場合は、灰星病が疑われます【気をつけたい病害虫と生理障害】。スモモやプルーンを栽培する際に高い割合で発生し、多発すると収穫が皆無になる恐れがあるので、栽培時には特に注意が必要です。対策として、まずは樹に雨が当たらないとほぼ発生しないので、鉢植えは軒下などに置きます。水やりの際にも果実や枝葉には水がかからないように株元に向かって与えるとよいでしょう。庭植えの場合には雨から守ることは難しいので、多発する場合には摘果後の果実に市販の果実袋をかぶせることや、冬に病原菌が潜む落ち葉を拾い集めることが重要です。それでも手に負えないようなら、予防のために梅雨の前後に農薬登録のある薬剤を散布することをおすすめします。
スモモ、プルーンの販売