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オーチャード ラズベリー・ブラックベリー

家庭栽培で人気の高い果樹が、ラズベリー、ブラックベリー。特に子どものいる家庭では、果実が実れば気軽に摘んで食べられ、熟す過程を自然に学べて食育にもよいとされています。お菓子のトッピングに用いても美しい、これらのベリーを栽培してみませんか?

寒さや病害虫に強く、大木になりにくい
園芸ビギナーにもおすすめの果樹

ラズベリー、ブラックベリーは、アメリカやヨーロッパ原産のキイチゴの仲間です。寒さや病害虫に強く、大木になりにくいほか、受粉樹が不要で手間もあまりかからないので、園芸ビギナーでも育てやすい果樹だといえます。収穫した果実は生で食べるのはもちろん、冷凍保存やジャムやジュースなどへの加工もでき、楽しみ方は多彩です。

枝が地面を這うように伸びることも多く(特にブラックベリー)、直立しにくい品種が多いので、植え付けの際には、苗木と共にオベリスクやフェンスなどの支柱も入手して、設置する必要があります。これらの支柱に誘引することで、日当たりや風通しがよくなるほか、見た目もよくなります。栽培上で最も重要なのが剪定です。毎年多くの枯れ枝が発生するので、残さず切り取ります。生きている枝は先端を切り詰めて、株をコンパクトに維持することも大事です。

日常の管理

置き場所

日当たりを好み、直射日光が当たらない枝は徐々に元気がなくなります。特に二季なりの品種は、夏に日当たりが悪いと9〜10月の果実の実つきが悪くなるので、直射日光が少しでも長く当たる場所に鉢植えを置きます。

病気の発生は少ないので、多少の風雨にさらされても問題ありませんが、灰色かび病が毎年のように発生して困る場合には、5〜9月はなるべく軒下などの雨が当たらない場所に移動させるとよいでしょう。

株の全体に直射日光が当たることで樹の形がバランスよくなります。どの面にも均等に日光が当たるように、1週間に1回程度の頻度で鉢を90度ずつ回転させるのがおすすめです。

冬はマイナス35〜マイナス20℃程度の低温まで耐えるので、基本的には屋外で冬越しさせます。

水やり

ラズベリー、ブラックベリーは根の張りがよいので、ほかの果樹に比べると乾燥には強い傾向にあります。そのため、庭植えでは水やりは基本的には不要です。しかし、土がかたくて根が深く伸びていない場合には猛暑の7〜8月に枝葉がしおれることもあるので、2週間ほど降雨がなければ、樹の様子を見ながら水やりをします。

鉢植えの場合には、ほかの果樹と同様に水やりが重要です。表土が乾いたらたっぷり水やりするのが基本ですが、春と秋は2〜3日に1回、夏は毎日、冬は1週間に1回を目安とします。

肥料

3月(油かすなど)、5月(化成肥料など)、9月(化成肥料など)の年3回に分けて施しましょう。ただし、肥料を与えすぎると新梢が伸びすぎて、実つきに悪影響を及ぼすことがあるので、どちらかというと肥料は少なめにするのがポイントです。

植え付け(11月~翌年3月)

イラストを参考にして、11月〜翌年3月に庭や鉢に植え付けます。植え付け時に枝先を軽く(2〜4芽分程度)切り詰めると、春先に発生する新梢が充実して生育がよくなります。

支柱を設置しよう

ブラックベリーは枝が地面を這うように伸びるので、フェンスやアーチ、オベリスクなどの支柱を必ず設置して、誘引しましょう。ラズベリーの枝は上に向かって伸びる傾向にあるものの、果実の重みで枝が垂れることもあるので、棒状の支柱やフェンスなどに誘引すると見た目や風通しがよくなります。

オベリスク仕立てにした鉢植え。
棒状の支柱を設置した鉢植え。
地植えでフェンスに仕立てた例。
栽培カレンダー

年間の管理・作業

開花・人工授粉(5~6月、8~9月)

5〜6月ごろ(二季なり品種は8〜9月も)に開花します。基本的にはミツバチなどの昆虫によって受粉するので、人工授粉は必須の作業ではありません。ただし、毎年のように実つきが悪い場合は、乾いた絵筆などを使って同じ花の中の雄しべと雌しべを交互に触れて人工授粉します。

ラズベリーを人工授粉している様子。

誘引(5〜10月)

伸びた枝を放任すると、枝同士が重なって見た目が悪くなるだけでなく、日当たりや風通しが悪くなって、実つきや病害虫の発生に影響します。植え付け時に設置した支柱に、ひもなどを使って誘引します。

ひもや園芸用ビニールタイを使って誘引する。

収穫(5〜8月、9〜10月)

果実全体が色づいたら収穫の適期です。品種によって収穫のタイミングが異なるので、しっかりと色づいた果実のみを順次収穫します。果実を優しく支え、下に引き抜くと収穫できます。

ラズベリーは花托という果実を支える部位が果実に残らない。

ラズベリーは収穫の際に花托かたくが枝に残って果実の中が空洞になり(上右写真)、ブラックベリーは白い花托が果実に残ったまま収穫できます(下右写真)。この点が両者を分ける大きな特徴といえます。

ブラックベリーは果実の中に花托が残る。花托はやわらかいのでそのまま食べられる。

トゲに注意!

枝にトゲがある品種があるので、管理作業をする際には注意しましょう。特にラズベリーはトゲありの品種が多いのが特徴です。トゲが刺さって痛い思いをしたくない場合は、ʻジョンスクエアーʼなどのトゲなしの品種を選ぶのがおすすめです。ブラックベリーはトゲなしの品種が多いですが、ʻカイオワʼなど鋭いトゲがある品種もあります。

トゲあり品種のラズベリー‘インディアンサマー’。
トゲなし品種のラズベリー‘グレンモイ’。

気をつけたい病害虫など

日焼け

強い直射日光が当たった果実の表面が傷んで白く変色する。ブラックベリーでは発生しやすい。水やりをして根の乾燥を防ぐと発生しにくい。ある程度の発生は仕方ない。

アオバハゴロモ

幼虫は、写真のように白い蝋状の物質を分泌しながら枝葉を吸汁する。成虫になると黄緑色の羽が生えるが、引き続き枝葉を吸汁する。見つけ次第、捕殺する。

ハダニ類

ハダニ類に吸汁きゅうじゅうされた部位の緑色が抜けて、葉がスポット状に白く変色する。晴天時に葉の表裏に水をかけて洗い流す。冬にマシン油乳剤を散布しても効果的。

灰色かび病

成熟した果実の全体に白いかびが生える。枯れ枝や落ち葉に病原菌が潜んでいることが多いので、剪定時にこれらをすべて処分する。

3ステップで覚える
ラズベリー、ブラックベリーの剪定

剪定の適期は、12月〜翌年2月ごろです。暖かくなると樹液が動き始めるので、2月末までには終わらせましょう。大木になりにくいとはいえ、ブラックベリーは特に枝が伸びやすく、2〜3年で株が大きく広がるので、毎年必ず剪定します。ラズベリー、ブラックベリーはほかの果樹とは剪定の方法が大きく異なるので、その性質をしっかりと理解して作業しましょう。

枯れ枝を切り取り、ひこばえを間引く

果実がついた枝は、株元まで枯れます。まずは、枯れている枝をすべて切り取ります。枯れずに生きている枝(ひこばえ)が交差するなど、込み合っている場合は適宜間引きます。

枝分かれした枝を切り詰める

次に、生きている枝のうち、先端が枝分かれしている枝については、すべて3〜5芽残して切り詰めます。枝先を切り詰めることで、株をコンパクトに維持することが可能です。この切り詰めは、株が大きくなりやすいブラックベリーでは特に重要な切り方です。

枝分かれしていない枝を切り詰める

最後に、生きている枝のうち枝分かれしていない棒状の枝は、株元から30〜40㎝の長さを残して先端を切り詰めます。ステップ2と同様に、株をコンパクトに維持するには重要な切り方といえます。

ブラックベリーの鉢植え
(オベリスク仕立て)の剪定前後

果実のなり方

ラズベリーとブラックベリーの果実のなり方は、ほかの果樹と比べると特に変わっています。前年に株元から伸びた枝(ひこばえ)が越冬し(1月)、6月ごろになると枝の先端付近から新梢が伸びて果実がつきますが、果実がついた枝は10月までに株元付近まで枯れるという点が特に珍しく、この性質のおかげでカキやクリのように5mを超えるような大木になることはありません。6月ごろには、周囲の地面から新たなひこばえが発生して、二季なり品種では、新たに発生したこのひこばえに結実することがあり、10月ごろに2回目の収穫ができます。その後、果実がつかなかったひこばえは、落葉した後に越冬して翌春に果実がつきます。

三輪みわ 正幸まさゆき

千葉大学助教。教育研究活動のほかに、家庭で果樹を気軽に楽しむ方法を提案している。『おいしく実る!果樹の育て方』(新星出版社)など著書多数。

ラズベリー、ブラックベリーの販売