ビタミンCを多く含み、甘みと酸味のバランスが絶妙なキウイフルーツ。産地はニュージーランドをイメージされがちですが、日本での家庭栽培も容易です。つる植物なので、棚仕立てにすれば真夏の日除けとしても活躍します。ぜひ栽培にチャレンジしてください。
雌木と雄木をセットで植えて
人工授粉をするのがポイント
さわやかな酸味が特徴のキウイフルーツは、日本へは約50年前に導入された、果樹界のニューフェイスです。果肉の色は赤、黄、緑とバラエティー豊かで、自身で育てることであまり流通していない珍しい品種を収穫して食べることもできます。病害虫に比較的強く、多少の被害に目をつぶることができれば、無農薬でも栽培可能です。
育てる際にまず注意すべきなのが、雌木と雄木の両方を入手することです。加えて入手する際には、開花期の相性がよい雄木を選ぶことが重要です。雌花と雄花が咲くようになったら、必ず人工授粉をしましょう。人工授粉をすることで、実つきがよくなるほか、収穫果のサイズや食味などの品質が飛躍的によくなります。収穫後の追熟や落葉後の剪定も重要な作業です。
日常の管理
置き場所
日当たりを好み、春から秋は直射日光が長く当たることで実つきや果実品質がよくなります。鉢植えの置き場所はなるべく日当たりのよい場所を選びましょう。加えて、雨が直接当たらなければ果実軟腐病やかいよう病などの病気の発生が激減するので、可能であれば軒下などに置くとよいでしょう。梅雨の間だけでも軒下に移動させると、病気の発生率がかなり減少します。多少の日当たりを犠牲にしてでも置き場所を工夫するのがポイントです。
冬はマイナス7℃程度の低温まで耐えるので、基本的には屋外で冬越しさせますが、寒冷地では冬の置き場所に注意します。
水やり
ほかの果樹に比べて根が乾燥に強い傾向にあるので、庭植えの水やりは基本的には不要です。ただし、植え付け時に土づくりが不十分で根の張りが悪い場合には、夏の高温時に葉や果実が焼けて落ちることがあります。7〜8月に2週間ほど降雨がなければ、水やりをするのが無難です。
鉢植えの場合は表土が乾いたらたっぷり水やりをします。春と秋は2〜3日に1回、夏は毎日、冬は1週間に1回が目安です。果実に水がかかると果実軟腐病が発生する恐れがあるので、株元の鉢土に向けて水やりします。
肥料
2月(油かすなど)、6月(化成肥料など)、11月(化成肥料など)の年間3回に分けて施すとよいでしょう。中でも特に重要なのが2月の元肥で、油かすなどの有機質肥料を与えて、土をふかふかにすることが重要です。
植え付け(11月~翌年3月)
果実がなる雌木の品種に加え、受粉用の雄木品種の苗木も入手しましょう。キウイフルーツの枝はつる状に伸びるので、棚やフェンス、オベリスクなどの支柱も購入して設置する必要があります。苗木は、棒状の枝が1本伸びた状態で売られているのが一般的です。こうした棒苗を植えて支柱に固定(誘引)します。
庭植え
植え付け前に、まずは棚やフェンスなどの支柱を設置します。キウイフルーツでは棚栽培を強くおすすめします。フェンスに仕立てると地際付近の枝を維持するのが難しいので、初心者にはおすすめできません。
次に植え穴を掘ります。棚栽培では、棚の支柱の脚元に植え穴を掘って、苗木を植えることで棚の下が広く活用でき、机や椅子を置いて憩いの場にすることができます。雌木と雄木を用意し、両者の苗木を支柱の脚元の対角に配置して植え付けます。その後苗木の枝の先端を40〜60㎝で切り詰め、支柱の脚に誘引します。
鉢植え
8〜10号(直径24〜30㎝)の鉢を用意して苗木を植え付けます。用土は果樹用の培養土がおすすめです。入手できなければ野菜用の培養土と鹿沼土小粒を7:3で混ぜて用います。支柱はオベリスクがおすすめです。苗木は地際から30㎝程度で切り詰めた後、らせん状に誘引することで株元付近からも新梢を発生させることができます。


年間の管理・作業
誘引・摘芯(4月下旬~9月)
4月以降に伸びた新梢を支柱に固定する作業を誘引といいます。日当たりや風通しをよくするために新梢を支柱にバランスよく配置するのがポイントです。新梢が伸びたら葉を15枚残して先端を切り詰め(摘芯)、込み合うのを防ぎます。

開花・人工授粉(5月)
キウイフルーツは雌木に雌花が、雄木に雄花が咲きます。雌木と雄木は物理的に離れて咲くので、人工授粉をすることで実つきがよくなるほか、大きな果実を収穫できます。人工授粉では、開花して花粉が出ている雄花を必要量採取して、雌花のすべての柱頭の先端に花粉がつくようにこすりつけるとよいでしょう。


摘果(6月)
小さな果実を間引くと(摘果)、大きくておいしい果実を収穫することができます。摘果は2段階で行います。1カ所に最大で3個の果実がつくので、まずは予備摘果として1カ所1果になるように間引きます。次に仕上げ摘果として、葉5枚につき1果になるように、さらに間引きます。予備摘果と仕上げ摘果は同時期に行ってもよいですが、予備摘果は早いほど効果があるので、蕾の時期に行うとより高品質な実の収穫が見込めます。

1カ所1果に間引く。大きくて傷がない果実を優先的に残す。

摘芯後、1本の新梢に15枚の葉がある場合は、3果残す。
収穫・追熟(10〜11月)
収穫適期は果実の色やかたさでは判断しにくいため、果肉の色や品種ごとの適期を目安にします。赤肉種は10月上中旬、黄肉種は10月下旬〜11月上旬、緑肉種は11月が目安です。収穫果はリンゴと一緒にポリ袋に入れて涼しい場所(15〜20℃)に6〜12日置き、追熟させて食べます。


気をつけたい病害虫など

カイガラムシ類

コガネムシ類

かいよう病

果実軟腐病
3ステップで覚える
キウイフルーツの剪定
剪定の適期は12月〜翌年2月です。春に枝の中の樹液が動き出すのが早く、剪定が遅いと切り口から樹液がぽとぽとと流れ出ることもあるので、2月中には剪定を完了させましょう。枝の生育が旺盛で、放任するとジャングル状態になりやすいので、付け根の枝を残してその先の枝をバッサリと切り詰め、樹の拡大を抑えることが重要です。
庭植え

鉢植え

付け根の枝を残して切り取る
まずは枝を間引いて日当たりや風通しをよくします。付け根にある長い枝を1〜4本程度残して、その先はバッサリと切り取り、棚では1㎡当たり2本程度の枝を残すのが目安です。❶上から見た図のように3.2㎡の棚なら6〜7本の枝を残しましょう。オベリスク仕立てなら❷横から見た図のように株元に近くて長い枝を2〜4本残します。枝が少なくなってスカスカになるまで枝を減らすのがちょうどよい切り方です。
❶ 上から見た図

3.2㎡の棚なら雌木は6~7本程度の枝を残す。雄木は雌木を邪魔しないように仕立てる。
❷ 横から見た図

枝先を5〜9芽で切り詰める
ステップ1で残した枝の先端を切り詰めます。枝を切り詰めることで充実した新梢が発生しやすくなります。果梗(果実のなり痕)がついている枝は、最も先端にある果梗から3〜6節残して切り詰めます。果梗がついていない枝は、7〜11節残して切り詰めます。細い枝は短く、太い枝は長く残すのがポイントです。
上から見た図

果梗の有無に応じて、切り詰める長さを調整する。
横から見た図

残した枝を誘引する
ステップ1〜2で残した枝をひもなどを使って棚などの支柱に誘引します。前年に誘引で使用したひもが残っている場合もすべて切り取り、新しく誘引し直します。棚では樹液が効率的に流れるように、枝は延長線上に真っすぐ伸びるように方向を修正してから固定するとよいでしょう。
上から見た図

横から見た図

Q雌花と雄花の開花期が合いません。
A雄花から花粉を取り出し、雌花の開花まで冷凍保存します。
果肉の色に応じた雄木を用意することで雌雄の開花期は合いやすくなるため、相性のよい雄木の品種を選ぶのが基本です。ただし、どうしても開花期が合わない場合は、開花したばかりの雄花を摘み取って、紙の上に雄花の葯を取り出し、12時間程度放置して花粉を出した後、乾いた瓶などに密封して、冷凍庫で雌花の開花期(当年〜翌年)まで保存しましょう。雌花が咲いたら、絵筆などで授粉します。

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