柿(カキ)のおすすめ品種は?植え付け〜収穫のポイント解説!
古くから日本で愛されてきたカキは、甘ガキ、渋ガキともに人気が高く、どちらも多様な品種が出回っています。後編ではいよいよ実践編として、カキの上手な育て方について詳しく解説します。
植え付けと仕立て方
脚立などが必要になる高所での作業をできるだけ軽減し、作業管理がしやすくなるように、樹高を抑える低樹高仕立てにします。
●鉢植えでの中間育苗
入手した1年生の接ぎ木苗を10号以上のスリット鉢に植え付けます。
培養土には通気性と保水性に優れた砂壌土が最適ですが、埴土や埴壌土のように粘土質の多い土に対しては山砂を2〜3割混用します。また、良質な堆肥を2〜3割程度、1鉢当たり熔リン5gと苦土石灰10g程度を混ぜ込みます。
●鉢植えでの仕立て方
植え付け当初は1年生苗木を地際から50〜60pの位置で切り、支柱を立ててまっすぐに誘引します。1年目でも根域環境がよいため、かなり新梢が伸長します。冬の剪定は、先端の枝が2m以上伸びている場合は、管理者の身長にあわせて手の届く範囲で作業管理できるように目の高さまで切り、そこまで伸びていない場合には、10p程度先端を切り返します。
植え付け2年目はかなり新梢が伸びるため、6月下旬に誘引します。長く伸長した新梢は、適度な長さに切り返すと再伸長せずに花芽が形成されます。
植え付け3年目以降、長くなった側枝はなるべく主幹部に近い位置で切り戻し、主幹部から直接発生した新梢は側枝の更新用に残しておきます。主幹部の上限は2m前後とし、仕立て方は主幹形に、全体としては垣根状にします。側枝は支柱に誘引し、着果による枝折れを防止します。主幹部の先端付近から徒長枝が発生するために、不必要な新梢は6月下旬〜7月上旬に元から間引きます。
秋にたわわに実ったカキ。低樹高仕立てにすると作業しやすい。
●露地への植え替え
植え付け前に水はけのよい土壌づくりを十分に行います。落葉期に鉢から根鉢を崩さないよう、注意しながら株を抜き、あらかじめ掘っておいた植え穴に定植します。
●樹形づくり
自然に放置すれば大木になるカキを、作業のしやすい樹高の低い木にします。樹形は変則主幹形を基本にし、主枝や亜主枝の本数をできるだけ少なくします。これにより剪定には頭を悩まさず、比較的早い時間で済ませることができるようになります。また、第2亜主枝は方向に注意しながら、小さくつくり、木の懐まで日が入るようにします。側枝は、やや強めの枝を残し、2〜3年の充実した若い母枝が常に骨格枝の近くにあるように更新します。
●主枝の扱い
主枝は木全体に養水分がバランスよく流れるように、基部を開きぎみにしますが、先端は立てて常に強く保つようにします。樹高が高くなりすぎるようであれば、代わる側枝を養成し、切り戻して調整します。
●亜主枝の扱い
第1亜主枝は長めにつくりますが、第2亜主枝は日光が入りやすいように短めに調整します。主枝に対して斜め横に伸ばし、全体に下垂しないしっかりした骨組みを目指し、また、先端が下垂しないように切り返します。
●側枝の扱い
側枝は主枝の周辺や、亜主枝の横向きに30〜40p間隔で交互に発生させます。樹勢を維持強化するため、また樹形を乱さないため、3年までで更新するか短く切り、新しい側枝が亜主枝などから離れないようにします。結果枝が下向きになると果実の肥大が悪くなるので、結果母枝は斜め上向き、または横向きの充実した枝をなるべく選んで残します。
剪定
学校の校庭や近所の家の庭に大きく育ったカキの木があるのに、あまり実がならないことがあります。そんな時は、カキの枝や芽のつき方をよく観察してみましょう。果樹では、実をならすことのできる枝(結果枝)や、体を大きくするための枝(発育枝)など、同じような枝でもそれぞれ役割が違っています。そのためどの枝を伸ばし、どの枝を切るかで実のつき方が明らかに違ってきます。
果樹はあまり剪定しないでおくと枝が込みあってしまい、木の内部に光が当たらなくなるのが原因で枝が弱って枯れてしまいます。木の内部に光を入れるには、主枝がクリスマスツリーのような三角形になるように側枝を配置して、元の側枝にたくさんの結果母枝を、先の側枝に少ない結果母枝を出させるようにします。結果母枝から出る枝のうち、普通は先の方から出る枝が結果枝、元の方から出る枝が発育枝となります。さらに、木の内側に向く枝(内向枝)、同じ所から放射状に伸びる枝(車枝)、枝の途中から真上に伸びる枝(徒長枝)、枝同士が重なる枝(交叉枝・重なり枝)などの枝を切るようにします。
剪定のポイントは、
@枝の途中で切らないこと。
A二叉や三叉の枝は、1本だけ残すこと。
B長く伸びた枝は、枝が下がって途中から枝が出るので、その枝の少し下まで切り戻すこと。
以上の3点に注意します。
夏季剪定
カキは不定芽の発生が容易で、これらは枝の屈曲部、切り口付近、日当たりのよい部分などに発生しやすくなります。この不定芽は発芽する時期が遅く、また遅くまで伸び強勢な枝になるので、発芽後なるべく早めに芽かきを行うようにします。樹形改造などで大きな切り口をつくった付近には不定芽の発生が多く、樹形を乱したり、日陰をつくったりするので特に注意して行います。
授粉と種子形成
カキは虫媒花で、風による花粉の飛散がほとんどないので、授粉が必要です。自然条件下では、カキの受粉はミツバチなどの訪花昆虫によって行われますが、栽培主要品種の多くは雄花を着生しないので、受粉樹からの距離および訪花昆虫の密度や開花期の気温などが種子形成に影響を及ぼします。授粉によって行われる種子形成は、カキの結実と果実発育を高めるうえで重要な役割を演じています。また、不完全甘ガキの栽培では、渋果の混入を防ぐために手による授粉作業をしっかりと行い種子形成を向上させることが重要です。一方、カキには種子がなくても結実する単為結果という現象があります。元々、無核品種は単為結果しやすく、受精しても種子形成の過程で発育不全が生じ、種子が形成されません。また、有核品種では種子が形成されなければ生理落果しやすいため、生理落果防止には授粉が重要であるとされています。
「八珍(平核無)」や「刀根早生」では、受精後の種子の発育不全により得られた無核果実は偽単為結果によるものですが、不受精により得られた無核果実は単為結果によるものです。
摘蕾
極端にいえば、果実の大きさを決定するのはその果実の細胞数であり、大果を生産するためには細胞数を多くする必要があります。果肉細胞の分裂期は満開から40日ごろまでで、発芽からこの時期までは前年の貯蔵養分でまかなわれているので、なるべく早く摘蕾して枝の着果負担を軽くするとともに、限られた貯蔵養分を有効に利用する必要があります。
目安としては、開花する20日程度前の5月初めごろから、着花が多い年には1枝1〜2蕾にするのを原則とします。また、着花が少ない年には中、長果枝に2蕾程度残して摘蕾します。残すのは、基部の元成り果を除いて、2〜3番目の日焼けが出にくい斜め下向きや下向きのへたが大きな蕾を残すようにします。
摘果
着果管理の基本は摘蕾で、摘果は摘蕾の仕上げという位置づけです。
●摘果の効果
@隔年結果の防止(花芽分化の促進)
花芽分化は概して7月上中旬から始まりますが、新梢伸長期の早い西南暖地では6月中下旬から始まります。花芽分化前に摘果すれば花芽分化が促進され、隔年結果が抑制されます。また、葉果比(10〜30の範囲)が大きいほど翌年の花蕾数が多く、隔年結果を抑制する効果があるので、結実数の判断に葉果比は大変重要になります。
A果実肥大の促進
B果実品質の向上
摘果は果実糖度を増やす効果があります。摘蕾・摘果をすると無処理のものより糖度が1度高くなるほか、果実肥大が進む結果、腰高で見栄えのよい果実が生産され、果実間の接触が回避されることから汚損果の発生が減り、着色が向上します。
C省力化と作業効率の向上
摘果によって大玉果・良品果が生産でき、小玉果や奇形果、病害虫の被害果などの果実を木上選果することにより、収穫の作業効率が向上します。
●摘果の仕方
摘果の作業は、生理落果がほぼ終わった6月末ごろから始めます。基本的には1結果母枝に1〜3果を目安に摘蕾と同様に摘果します。摘蕾時にある程度は整理されているはずですが、残す果実は、結果枝基部から2〜3番目の斜め下向きから下向きの大きな果実を残し、結果枝の基部果、下向きの結果枝についた果実、葉数5枚以下の結果枝の果実、上向き果、遅れ果、病害虫果、奇形果を除きます。また、結果母枝の長さで、45p以上は1〜2果、15〜45pは1果、15p以下は3〜5枝に1果を目安として併用し、着果量を調整します。
水やり
カキはほかの果樹より水不足に弱く、土が乾燥すると極端に葉の光合成能力が低下します。特に夏場の乾燥には要注意です。梅雨明け以降は雑草との水分競合を避けるために除草を怠らず、十分に水やりします。
施肥
次年に回す貯蔵養分を少しでも多く蓄えるために、お礼肥は重要と考えています。葉が十分活動できるよう、早めに施用することが大切です。できるだけ収穫の30日前ごろに油かすや有機配合肥料を施します。遅くなると地温が下がり、施した肥料が効果を発揮できません。特に晩生種では、作業が遅れないように注意が必要です。
また、12月に元肥として有機配合肥料と堆肥を、6月下旬に夏肥として有機配合肥料を施します。そのほか、2〜3年間隔で苦土石灰や熔リンを補給します。
病害虫防除
開花結実期/スリップスによる被害果の発生率が高いので注意します。開花初期にチャノキイロアザミウマの防除を行います。また、フジコナカイガラムシの多い所では、6月中下旬に防除します。病害では、落葉病中心の防除として6月中に2回薬剤散布をして防除します。
休眠期/近年、フジコナカイガラムシが多くなっていますが、多発した場合薬剤防除だけでは発生を抑えることが難しくなります。そのため、剪定終了後の1〜2月、発生の多い箇所を中心にできるだけ粗皮削りをします。
収穫
カキの果実は収穫期になっても、肥大、果皮の着色、成熟が進んでいるため、収穫期の判定が難しい果樹です。栽培している品種の特性(特に、成熟期の果皮色、果実重)をしっかりと覚えておき、それに準じて行います。その際に注意することは、
@果皮色は全体にムラなく色が均一になるまで待つこと
A夏至を過ぎると午後の光は赤みが強く見えるので赤を控えめに見る
B緑の葉のある木上の果実を下から見ると実際より赤が強く見える
C果皮色のムラが続く場合は、果実に日光がよく当たるように周辺の葉をとり2〜3日待ってから収穫する
……といった点です。また、特に中期以降に収穫する品種については、適期に収穫し、その後の春の生育に使われるための貯蔵養分の蓄積のじゃまをしないようにすることが大事です。
収穫した果実は、果頂部の軟化、裂果、汚れや傷の多いものは早めに消費します。
大森 直樹 (おおもり なおき)
1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。