剪定時期は、隔年結果が少ない木でも、収穫量の多い表年は早くし、逆に少ない裏年は遅くします。徒長枝の剪除をすれば80%剪定が終わったも同様ですが、あとは充実していない緑枝や側枝の込んだ所を、間引き剪定します。主枝数を3本以下とし、収穫、病害虫防除などの作業がしやすい状態にします。
樹冠は夏秋梢(徒長枝)によって形成されるので、夏秋梢を放任しておくと分岐角度が狭くて直立状になるうえ、下枝がなくなり、ホウキを逆さに立てたような樹形になります。そうなると結果位置が樹冠の上部だけになってしまい、収穫作業が困難になるうえ、果実に傷がつきやすくなります。また、病害虫の防除など栽培管理全般がやりにくくなるので、次のように整枝・剪定を行います。
ユズを育てよう〜庭先で育てるおいしい果樹〜
ユズ独特のさわやかな風味は、和食の引き立て役として果汁や果皮が用いられてきました。冬至にはユズ湯を楽しむなど、昔から親しまれている果樹を、ぜひ育ててみましょう。
栽培に適した気温、降水量
ユズは、かんきつ類の中では寒さに強い方ですが、マイナス9℃では成木が枯死し、マイナス7℃では3年生以下の幼木が枯死します。そのため、最低気温の極温はマイナス7℃で、それより下がらない所が栽培できる環境です。ただし、マイナス5℃以下では葉は凍傷によって落葉するので、気温の高い所ほど栽培に適します。また、降水量の多い方が果実の発育がよく、大玉になります。
優良系統の品種を選ぶ
大玉で早期結実性が高く、トゲの小さい系統を選びましょう。また、ステムピッティング病や、かいよう性虎斑症の発生が少ない品種がおすすめです。
かんきつ類の中では、寒さに強いユズ。降水量が多い方が果実の発育がよく、大玉になりやすい。
土づくりと水やり
土づくりでは、堆肥を毎年6kg以上施し、土壌中の腐植含量を高めます。また、土壌の酸度(pH)を調整し、土壌酸度が6または5前後の微酸性の土壌にします。
石灰および苦土については、土壌検定した結果に基づき中和石灰量を施用しますが、年間のチッソ施用量が300g以上になると土壌が強酸性に傾きやすいので、これを中和するのに苦土石灰が200gくらい必要となります。2月にこれらを施し、軽く中耕しましょう。
また、夏季の乾燥する時期は、適宜水やりをして光合成を促すことも、大変重要です。
施肥
春肥は元肥とも呼ばれ、発芽した新梢葉の伸長、緑化充実、開花結実、果実の肥大に必要とされるため、最も重要です。しかし、量の面でいえば夏秋期に多く施します。夏秋期は気温、地温が高く、根の伸長が旺盛なので、肥料の吸収量が多くなって肥効も高いので、この時期は多めに施すのです。このように、夏肥(6月)、初秋肥(9月)は果実の発育、樹勢維持に必要とされるので、結果量の多い木は施肥量を多くしましょう。
秋肥は果実の収穫と重なるので、収穫後の11月に行いがちですが、気温が低くなると肥効が悪いので、収穫前の10月までには必ず施肥を完了しておきます。
6月、9月の施肥量が多くて果実の着色が遅れることがあっても、果実の品質には何ら問題はありません。割合はチッソ10、リン酸6、カリ8とします。そのほか石灰、苦土、マンガン、亜鉛などは、ボカシ肥や堆肥マルチなどを施すことで補えます。
整枝・剪定
徒長枝の剪除を中心に行う
幼木(樹齢10年まで)の整枝
基本作業は行うが、初期生育を旺盛にし、枝の伸長はほぼ自然にまかせ、結果期に入る4年目まではあまり整枝・剪定をせず、ひたすら木を育てます。(4年目までの管理は、イラストや本文参照)
樹齢4〜5年で樹高1.5m以上になった時期に、整枝を行い、主枝、亜主枝候補の枝を確定します。主枝は2〜3本、亜主枝は主枝1本につき1〜2本とします。
次に主枝、亜主枝の先端部の同じ時期に伸張した枝を間引き剪定し、1〜2本とします。誘引して開いた主枝と主枝の間隔は1m以上とし、一番下の枝はその先端が地面に接するほど低く誘引します。それより上の枝は、分岐点と枝先の高さが同じか枝先が下になるように誘引し、枝を弱らせます。枝の分岐角度が狭い場合は、強く誘引すると裂けやすいので、誘引前に分岐点の上で縛っておくようにします。誘引後、倒した部分から発生する徒長枝は、すべて剪除します。あくまでも目標とする樹形は開心自然形なので、それらを放置すると樹形が乱れるので注意しましょう。
主枝、亜主枝の先端部に発生した夏秋枝は1〜2本だけ残し、残りは剪除します。残した枝が長くて下垂するようであれば3分の1くらいで切り返します。主枝、亜主枝基部から発生した徒長枝は、早めに芽かきします。樹齢が進んでくると、側枝が太く大きくなり、枝が込みあってしまいます。また主枝、亜主枝から直立した緑枝が気がつかないうちに大きくなっていることがあるので、これらは間引き剪定します。ただし、3年生以上の太枝は切り口に枯れ込みが起こるので、基部からは切らずに、一番下の枝だけを残して切り返し剪定をしておき、翌年基部から剪除するといった2度切りをします。しかし剪除したい枝が直径2cm以上の時や、枝の基部に緑枝がない時には、緑枝の発生を待って剪除するようにします。なお、切り口には必ず癒合剤を塗布し、枯れ込みを防ぎましょう。また、枯れ枝はていねいに剪除し、トゲも太枝にはないように剪定時はもちろん、日頃から剪除するよう心掛けます。
これらの誘引および剪定は、発芽 前の3月中に終わらせることが大事です。剪定時期が遅いほど春枝の発芽数、伸長量が少なくなります。
植え付け
接ぎ木部の上30〜40cmで切り、高めに埋め戻した植え穴に根を広げて、下の根から順に土をかけ、根に土がつくように軽く押さえて植え付けます。植え穴の盛り土の周りに土俵状の輪をつくり、十分に水やりをします。水が浸透し盛り土が十分湿るのを待って、マルチと支柱をします。植え付け適期は、3月下旬〜4月上旬の発芽前で、その際は土を乾燥させないように水やりすることが非常に大切です。3〜4週間経って発芽し始めたら施肥します。
1年目の管理
木の生育を旺盛にし、樹冠の拡大に努めます。
肥料は毎月1回1本当たりチッソ15g、リン酸12g、カリ9gを、6月から10月まで施します。化学肥料だけでなく、ボカシにした牛糞、油かすなどを株元から離して施します。夏は1週間に1回、1本当たり30l以上水やりします。また、時々株元の除草を行います。
そうか病、アブラムシ、ハモグリガなどの病害虫は発生初期に徹底的に防除します。
冬場の凍害対策として、保温力の高い防寒資材を用いますが、寒冷地では主幹部を土で覆うことなどが必要です。
2年目の管理
2年目も樹冠の拡大を図ります。
施肥、夏季の水やり、樹冠下の敷草などは徹底して行います。また、枝葉を病害虫から保護することが大切であり、徹底的に防除します。
伸長の旺盛な枝を主枝候補枝とし、その枝の分岐している角度が狭い場合は広くなるように支柱を立てて誘引します。その先端から発生する束状の夏枝は2本だけを残して残りは摘芽します。秋枝も夏枝の先から出た芽を2芽だけ残して残りは摘芽します。そのほかの枝は伸びるだけ伸ばしておきますが、10月には枝が充実して生育が終了するよう、遅れて伸長した枝は除去します。そうか病、アブラムシ、ハモグリガが発生した時は防除します。
防寒は、丈夫な支柱を立ててから、「寒冷紗」を用いて行います。
施肥量は1年目よりも少し多くし、チッソ16g、リン酸12g、カリ10gを3月から10月まで毎月1回施します。1年目同様に化学肥料だけでなくボカシにした牛糞、油かすなどを株元から離して施します。
3年目の管理
一部着花する木もありますが、着果させると木の発育伸長が鈍くなるので、すべて摘蕾・摘花し、果実をつけないようにして、木づくりをします。
主枝候補枝とした枝の途中から、徒長枝(直上枝)が発生しますが、軟弱なうちにすべてかきとります。そのままおくと枝の強弱のバランスがくるってしまい、整枝がうまくいかず、樹形が乱れる原因になります。主枝候補枝の先端部に発生した枝は、夏枝、秋枝ともに2本だけ残し、ほかは早めに除去します。
病害虫(そうか病、アブラムシ、ハモグリガ、ハダニ)は発生初期に徹底防除します。黒点病の発生の多い所では、6月中旬以降は防除をします。
施肥は2年目と同量を3〜10月の間毎月1回施します。化学肥料のほかにボカシにした牛糞、油かすを施し、堆肥などでマルチを行います。ユズはかんきつ類の中では耐寒性が強い方ですが、5年目までは防寒対策を十分に行います。
4〜5年目の管理
4年目になれば着花する木が多くなり、結実させますが、主枝先端部には着果させず、内枝や下部の枝に着果させます。
施肥量は今までより多くし、チッソ25g、リン酸18g、カリ13gを3〜10月の間は毎月1回施します。5年生になったらより多くし、チッソ30g、リン酸24g、カリ18gを3〜10月の間は毎月1回施します。
病害虫はそうか病、アブラムシ、ハモグリガ、ハダニのほかに、着花結実させる木には灰色かび病、黒点病の防除をします。
整枝・剪定は主枝と亜主枝の確立を図ります。防寒対策は主幹部を稲わらや「寒冷紗」などで束ねます。樹冠部は「ベタがけネット」などの軽い防寒資材で被覆します。
6年目以降の管理
6年目になれば、整枝・剪定は、樹冠内部の込みあった枝を間引き剪定し、主枝途中から発生する徒長枝を剪除するか、早めにかきとるようにします。主枝候補は支柱により固定し、ほかの亜主枝および亜主枝候補、またそれらから発生する側枝については、誘引によって亜主枝、側枝の確立を図るようにします。「木が大きくなってから実がつかない」というケースを多く聞きますが、それは剪定のしすぎが原因と考えられます。強く切りすぎると、木がさらに大きくなろうとして樹勢が強くなりすぎるので、軽い間引き剪定で樹勢を調整しましょう。
収穫
ユズは冬至用と、加工(ユズ酢)用が主な利用方法です。ユズ酢用は、少し緑色が残った7分着色の果実からサラッとした香りの高いものがとれるので、7分着色期が収穫適期といえます。また青果用もこの時期に収穫した果実は浮皮がなく、貯蔵性も高く品質も安定しています。浮皮になった果実は貯蔵性が低くなるので、完全着色期までおいて浮皮になるようであれば、少し緑色の残る8〜9分着色果を収穫すれば、冷所での貯蔵により長期貯蔵ができます。収穫の際は、果実にトゲ傷をつけないよう、果実近辺のトゲを切りながらていねいに収穫します。よく切れるハサミを使用し、果梗を2度切りすると傷めずに収穫できます。その時、多くの果実は果梗が窪んでいるので、ほかの果実に果梗が触れても傷がつかないよう短めに切ります。
早めに収穫すると、長期貯蔵ができる。
大森 直樹 (おおもり なおき)
1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。