限られたスペースでも、菜園計画をきちんと立てれば驚くほどの収穫が実現できる──。
体験農園で年間約20品目の野菜栽培を指導する加藤正明さんに、
失敗しない菜園プランニングの秘訣を教えていただきます。

加藤 正明
体験農園園主、東京都指導農業士。
東京都練馬区の体験農園「百匁の里」園主として野菜の植え付けや管理作業、調理法までさまざまな指導、アドバイスを行う。著書に『農家の加藤さんが教える おいしいプランター野菜づくり』(玄光社)など。

無理なく育てるための年間計画の立て方入門
春夏のプランニングは「ナス科」の連作に注意
プランづくりで真っ先に考えたいのは「連作障害」の回避です。連作とは、同じ科の野菜を同じ場所で栽培し続けることで、生育不良や病害虫が発生しやすい土壌になり、せっかく野菜を育てても満足のいく栽培ができなくなることがあります。
春夏作では特に、トマトやナス、ジャガイモなどナス科野菜の品目が多くなるため、ナス科の連作をしないプランを作ることが先決です。トマトやナス、ピーマンなどのナス科は連作障害が起こりやすく、同じ場所で栽培すると萎凋病などの土壌病害が発生しやすくなるためです。
また、キャベツやダイコンなどアブラナ科野菜も秋冬シーズンに多く栽培する野菜なので、春夏プランニングを作るうえで連作にならないよう配慮が必要です。
基本のレイアウトは「畝単位」で考える
連作障害を回避する最も有効な手立てが「輪作」です。「輪作」とは、栽培するスペースをローテーションさせることで、連作にならないよう一定の期間をあけて計画的に栽培することです。当農園では、春夏、秋冬を通した年間のレイアウトを決め、畝ごとに栽培する場所をずらす(ローテーションさせる)ことで輪作を実現。毎年ゼロから計画を練る手間を省いています。
畝ごとに管理するために、まずは菜園の広さを測り、畝(サイズの目安は幅約70㎝、通路約60㎝)が何本作れるかを計算します。そのうえで育てたい野菜をピックアップし、畝ごとになるべく同じ科の作物を当てはめ、畝を毎年ずらして栽培するのがおすすめです。


善玉菌や天然ゼオライトの力で連作障害を防ぐ「連作障害ブロックW」(①)、善玉菌の培養液「菌の黒汁」(②)。セットで使うと連作障害対策に◎。連作を避けられない小面積の農園や前作で何を育てたか分からない市民農園などに。


「何を・どこに・いつ」植える?モデルプラン活用術
体験農園で実際に使用している約15㎡、約30㎡の春夏・秋冬プランと、大まかな栽培スケジュールをご紹介します。
30㎡
多品目を楽しむ 欲張りプラン
ある程度栽培経験のある方向けの充実プランです。連作障害の回避を考慮しつつ、多品目を効率よく配置。支柱やマルチを利用してスペースを立体的に活用することでたくさんの収穫を目指します。


30㎡
秋冬の人気野菜を網羅!
リレー栽培プラン
キャベツやハクサイなどアブラナ科野菜を中心とした秋冬プランです。春夏で培った土の力を生かしながら、連作を避けつつ、春夏からの切り替えタイミングも考慮した実践的なプランです。


秋冬プランも考えておくと畑が回る
春夏プランで使った畝を、すぐに秋冬野菜に切り替えると、畑の空き時間を減らしてフル活用できます。当農園では、8月いっぱいでトマトやキュウリを終わらせ、9月上旬から秋冬野菜の土づくりをスタートします。一つの畝ごとに計画的に切り替えを進めることで、1回の作業負担が重くなりすぎず、スムーズに次の栽培へと移行できます。できる限り間をあけないように後作のことを想定した年間プランにすることで、畑全体の効率性がぐんとアップします。

畑を効率活用できる
一石二鳥のおすすめリレー栽培
❶ エダマメ→ニンジン
エダマメの根につく根粒菌(空気中のチッソを固定する微生物)が土を肥沃にするため、ニンジンの土づくりは苦土石灰のみ。エダマメが残した肥料成分でニンジンの甘みとうまみが向上します。
❷ スイートコーン→キャベツ・ブロッコリー
肥料を多く必要とするスイートコーン。栽培後の肥料成分でキャベツやブロッコリーを栽培。元肥は通常の半分程度で、十分な栄養のある土づくりが完成。

15㎡
基本を押さえた コンパクト菜園
家庭菜園を始めたばかりの方や、管理に不安がある方にぴったりのプランです。品目を厳選し、基本的な仕立て方で確実に収穫できるよう工夫しています。





加藤流の技術で差をつける「栽培の工夫」実践ガイド
テク 1トマト、キュウリ
「ジョイント仕立て」で作業性と省スペースを両立!
長年の栽培経験で編み出したトマトの「合掌仕立て」とキュウリの「スクリーン仕立て」を組み合わせた独自の仕立て方です。限られたスペースで効率的に栽培でき、大収穫が実現します。

- ●最小限の支柱の本数で資材を節約
- ●2品目同時栽培でスペース効率が1・8倍向上
- ●支柱の交差により強風でも倒伏しにくい
- ●設置や管理がしやすく時間短縮

テク 2ナス、シシトウ、ピーマン
3~4本仕立てで10月まで長期収穫
ナスは主枝と1番果のすぐ下から出る元気なわき芽(側枝)を2本残し、それより下のわき芽を取り除く3本仕立てに。7月下旬に各枝の長さを3分の1~4分の1に切り、マルチの肩から通路にかけて1㎡当たり有機入り化成肥料50gを追肥し、水をたっぷりやって再生を促します(更新剪定)。
シシトウやピーマンは1番果の下に出るわき芽を取り、それより先の枝を伸ばす4本仕立てが基本です。枝が込み合うと風通しが悪くなり、病気や実つきの悪さにつながるため、適宜株の内側に伸びた枝をハサミで切ってすっきりさせましょう。

テク 3ズッキーニ
支柱を立てれば長く収穫できる
草丈が伸びるにつれて茎が畝からはみ出て、隣の畝の邪魔になることも。さらに実の重みでぐらついたり、葉が風であおられて茎が折れやすい状態に。株元に長さ約150㎝の支柱を挿し、短めの支柱数本を立てて固定すると茎が真上に伸び、長い期間収穫を続けられます。

テク 4ジャガイモ、スイカ
掘ったらすぐ!のリレー栽培
つるを長く伸ばすスイカは、早めに収穫が終わるジャガイモの畝の端に植え付けましょう。ジャガイモの収穫(6月中旬)後に、畝の端にスイカの苗(1株)を植え付けることで、入れ替えがスムーズに済み、スイカはつるを伸ばして成長するのでスペースを無駄なく使えます。
- ●ジャガイモの収穫前にスイカの土づくりを実施
- ●ジャガイモ収穫後すぐにスイカを定植
- ●畝を空けずに連続栽培が可能


テク 5エダマメ
根を軽く刺激する「根切り」と「摘芯」で実つきをよくする
エダマメは生育旺盛で、葉ばかりが茂って実がつきにくくなることがあります(つるぼけ)。そんな時に効果的なのが「根切り」。タネまきから約2週間、初生葉(子葉の次に出る葉)が開きかけたころ、株元にスコップ(移植ゴテ)を差し込んで根を部分的に切ることで根の再生が促され、つるぼけを防いでガッチリした株に育ち、収穫量がアップします。さらに本葉5~6枚のころ、茎の先端を「摘芯」して成長点を止めると、わき芽が増えて莢数の向上につながります。

テク 6根菜、葉菜類
「穴あきマルチ」を使って畝を賢く活用!
畝に張るマルチは、雑草を防ぎながら地温を確保できる優れもの。さまざまな種類がありますが、特に使いやすくておすすめなのが等間隔に穴があいた「穴あきマルチ」。30㎝間隔で2列に穴があいたタイプは、トマトやナス、スイートコーン、エダマメなどの果菜類向け。場合によっては1穴飛ばしで植え付けることで、株間に余裕を持たせる工夫も。15㎝間隔・5列のタイプは、カブやダイコンなど密植に適した根菜だけでなく、株間が必要な葉物類も等間隔に植えられるため、間引きや収穫もスムーズです。


近年の夏は、家庭菜園にとっても厳しい環境。暑さを少しでも和らげる対策が大切です。スイカは果実が肥大し始めたころ、遮光率70%程度の遮光ネットや黒寒冷紗をベタがけして、果実内部が高温で傷む「うだり」を防止。ナスやピーマンは南側の果実を小さめで収穫することで、直射日光による実焼けを回避できます。「小ぶりな実はやわらかくて甘い!」これも家庭菜園ならではの楽しみで、気候変動に対応した新しい栽培の知恵といえます。







