いちょう芋やつくね芋等、山芋(ヤマイモ)の栽培方法を紹介!
日本の食卓に昔からなじみ深い食材、イモ。ひと口にいっても、バレイショ(ジャガイモ)、サトイモ、ヤマイモなど食感も味も、さらには調理方法も、実にバラエティに富んでいます。おいしくて栄養価も高く、しかもどこか気持ちもほっとさせてくれる……。こんな身近な野菜だからこそ、今、家庭菜園でチャレンジしてみませんか?
今回は、品種によって形も粘り具合も違い、おいしく滋味あふれるヤマイモです。
畑の土質や耕土の深さ、さらには気候によって、品種特性の出方も異なります。慣行の栽培方法を十分検討し、また利用用途や調理方法などを考慮して品種を選びます。例えば、ナガイモ群はつるを這わせず高く誘引する必要がありますので、支柱の準備をしなくてはなりません。そのような栽培特性もよく知ったうえで、品種を選びましょう。
- ヤマイモとは…
- ヤマイモとは、広く利用される栽培品種の「ナガイモの仲間」を指すのが一般的です。ヤマイモ(山芋)という名称は、サトイモ(里芋)に対する総称であり、いろいろな群・品種があります。
ヤマイモとして市場に多く出回るのは、おなじみのナガイモ群をはじめ、イチョウイモ群、ツクネイモ群の3群で、そのほかに日本原産のジネンジョやダイジョ等々が存在します。地域性がかなり濃いのですが、中でも全国的に広く利用され、特に東北・北海道に多いのがナガイモ群です。また、関東ではイチョウイモ群が、近畿・関西ではツクネイモ群が多く作られており、暖地向けのダイジョは主に九州南部で栽培されています。
近年は人々の好みが多様化し、ヤマイモも地方の在来種に関心がもたれるようになりました。おかげでタネイモの流通・販売も増え、さまざまに楽しめるようになっています。
主な品種と特長、その楽しみ方
- 長芋
- 長い棍棒状をしており、全国的に一番多く出回っているおなじみのヤマイモ。さらりとした食味は、主にとろろ汁やスライスに用いられるが、煮物にも向く。右巻きのつるが3mほどにも長く伸びるので、支柱をしっかり立てて栽培する必要がある。あらかじめ畑を深く耕し、掘り取りしやすくしてから植え付ける。
- つくね芋
- 主に西日本で栽培され、関西では別名‘ヤマトイモ(大和芋)’と呼ばれる。ムカゴができず、栽培もやや難しいが、丸形でヤマイモの中で特に粘りが強い。栄養価も高く、昔から滋養強壮食品として親しまれている。スライスして生食、すりおろしてとろろ汁、また強い粘りから和菓子の材料などにと、広く利用される。
- トロフィー1066
- ナガイモの突然変異種で、長さ50〜60cmと短く、家庭菜園向き。産地直送の商品としても扱いやすい形状である。適度な粘り気は、お好み焼きなどに用いて好評。
- 山の芋
- ‘丹波ヤマノイモ’の名で知られるツクネイモ群の仲間で、丹波地方在来の黒皮種とされる。前項の‘つくね芋’と同じく粘り気に富み、とろろ汁、酢の物、お好み焼きなどの食材にすると美味。
- ねばり芋
- ナガイモからの選抜系と見られるが、ナガイモより粘りがあり、多くの用途に向く。ほどよい長さで栽培しやすい。
- 伊勢芋
- 三重県原産のツクネイモ群の仲間。アクが少ないため、すりおろした後に変色しにくく、白く粘り気が強いのが特長とされ、とろろ汁や菓子材料にも重宝される。コクのある濃厚な味わいが堪能できると人気。
- いちょう芋
- 産地の中心である関東では、‘ヤマトイモ(大和芋)’と呼ぶ。関西方面で多く作られる丸形の‘ツクネイモ’(別名‘大和芋’)と混同されやすいが、イモの形がイチョウの葉に似ることからこの名がある。形によってバチ形、棍棒形などにも分けられ、変異がある。やや栽培が難しく、収量も少ないが、粘りが強く栄養価も高い。すりおろして、生食やとろろ汁などに利用される。
- 加賀丸芋
- ツクネイモ群の仲間で、漢方では「山薬」とも呼ばれ、強壮食品とされるほど栄養価が高い。粘り気が強く、とろろ汁にも最適。
- 短形じねんじょ
- 従来のいわゆる自然薯に比べると、短形で作りやすく、やや粘りとアクが少ない。肉質はヤマイモとナガイモの中間ほど。
畑の準備
連作障害が出やすいので、3〜4年はヤマイモを作ったことのない畑を選びます。早めに準備し、適期に栽培にとりかかりましょう。
タネイモの準備
切り口の断面に消石灰をふり、暖かく風通しのよい所で切り口を乾燥させておきます。
植え付け
水はけの悪い畑は畝を高くする。ツクネイモ群は特に乾燥に弱いため、あまり高くはしない。
ナガイモの場合、タネイモは首の部分と胴の部分で部位別に分け、列ごとに植えると萌芽が揃うので、後の管理がしやすい。株間も部位別にする。
覆土はあまり厚くしない。
支柱立て
ナガイモの場合は、つるが伸び始めるまでに支柱を立ててください。
追肥
敷きわら
乾燥防止のため、イモの肥大期(施肥の2回目ごろ)に敷きわらをします。
収穫
茎葉が黄変し、枯れ上がってきたころから収穫します。晴天の日に、枯れたツルは刈り取り、イモを掘り取ります。
貯蔵
貯蔵する場合は、穴を掘って埋めておきます。
- 板木利隆板木技術士事務所 所長
- 島根県生まれ。千葉農業専門学校(現千葉大学園芸学部)卒業。千葉大学助手、神奈川県園芸試験場長、神奈川県農業総合研究所所長、全農農業技術センター技術主管を経て、現在、板木技術士事務所所長、JA全農委託調査員、茨城県立農業大学校非常勤講師などを務める。著書多数。