コンパニオンプランツは各種の野菜で、病害虫の防除や生育促進に利用されています。利用が一番多いのは実物野菜です。実物野菜は連作されることが多く、また栽培期間が長いのもあって、土壌病害による連作障害が多々発生します。このため、実物野菜では主に土壌病害の対策に用いられます。
次に利用が多いのは葉物野菜で、収穫する部分が地上部の茎や葉ということもあり、害虫による食害が問題となります。このため、葉物野菜では害虫対策へ用いられるのが中心です。残る根物野菜は収穫部位が根なので、混植は障害を発生させる恐れがあります。よって、混植はあまり利用されず、間作や輪作が中心になります。
今回は、葉物および根物野菜のコンパニオンプランツを紹介します。
コンパニオンプランツ
昭和23年栃木県生まれ。昭和62年農学博士(東京大学)。栃木県農業試験場生物工学部長、自然農法大学校長を経て、現在は(財)環境科学総合研究所常任理事兼所長。ほかに(財)微生物応用技術研究所理事、NPO法人MOA自然農法文化事業団理事、NPO法人有機農業技術会議理事、NPO法人全国有機農業連絡協議会理事、世界永続農業協会専務理事。
モンシロチョウはアブラナ科、アゲハチョウはセリ科を好む
ダイコンやカブにはモンシロチョウ、ニンジンにはアゲハチョウが飛来し、幼虫がそれぞれの野菜を食害します。つまり、モンシロチョウはアブラナ科、アゲハチョウはセリ科の植物を食餌植物として繁殖するわけですが、逆の野菜では繁殖することができません。
このため、モンシロチョウはアブラナ科の植物、アゲハチョウはセリ科の植物を探して飛翔し、産卵します。この時、それぞれの昆虫は繁栄のため、好む植物が集団で生育あるいは栽培されている場所に集まります。アブラナ科の野菜畑で、盛んに飛び回るモンシロチョウが観察できるのは、このような理由からです。間作で相互の害虫被害を軽減
モンシロチョウの飛翔行動を観察していると、おもしろいことに気づきます。モンシロチョウはただ飛び回っているのではなく、どうやら子孫が繁殖しやすい株を選んで着葉し、産卵しているようなのです。この時、近くに食餌植物でないニンジンなどの野菜があると、避けて飛翔しています。
一方、ニンジンの害虫であるアゲハチョウも、モンシロチョウと同じような飛翔行動をとります。このため、ダイコンやカブとニンジンが近くで栽培されていると、モンシロチョウとアゲハチョウの飛翔行動が抑制され、これらの害虫による被害が軽減されます。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
ソラマメをおとりにアブラムシを呼ぶ
マメ科のソラマメは栄養豊富なため、害虫が好んで繁殖します。この性質を上手に利用したのが、ソラマメのコンパニオンプランツです。
ソラマメを栽培した人は経験していると思いますが、早春、ソラマメが花を咲かせる時期になると、アブラムシは好んでソラマメに飛来し、生長点部分で繁殖して、真っ黒になるほど増殖します。ソラマメ栽培では大変困ることですが、コンパニオンプランツでは、このアブラムシが繁殖しやすい性質を上手に利用します。
天敵を増殖させて、害虫を防ぐ
秋にソラマメを、ハウスの入り口、野菜畑の周囲、野菜を植えた畝(うね)の所々へ播種します。すると、春先にソラマメでアブラムシが増殖するため、これを求めて天敵が集まり繁殖します。ソラマメで増殖した天敵が、野菜類に飛来する害虫を防いでくれます。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
エンバクがハクサイの害虫を防ぐ
ハクサイの畝間にエンバクを生育させる栽培は、畑作地帯で行われてきた伝承農法です。ウイルスを媒介するアブラムシを遮蔽(しゃへい)し、またヨトウムシ、アオムシ、コナガの幼虫の食害を防ぐといわれています。
エンバクとハクサイは肥料の競合があるので、ハクサイ単作より元肥を2〜3割多めに施します。エンバクの間にハクサイを2〜3列植え付け、そのまま収穫期まで育てます。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
アブラナ科野菜とレタス、相互に害虫を防除する
アブラナ科野菜にはアオムシ(モンシロチョウの幼虫)、ヨトウムシ(ヨトウガの幼虫)、コナガの幼虫が好んで寄生し、大きな被害を与えます。
科学的には解明されていませんが、モンシロチョウ、ヨトウガ、コナガは、キク科の植物を嫌います。このため、近くにレタスなどのキク科植物があると、これらの害虫は避けて飛翔します。また、アブラナ科野菜には、レタス害虫のタバコガを忌避する働きがあるので、混植すると相互に害虫を防除することになります。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
葉ネギがホウレンソウの萎凋病(いちょうびょう)を防除
ホウレンソウは収穫までの期間が短いため、同じ場所に年間を通じて栽培することが多くなります。ホウレンソウを連作した場合、気温の高い時期に萎凋病が発生して問題となります。
萎凋病菌には、ネギ属植物の根に共生するバークホーデリア・グラジオリーが、効果をもつと知られています。そこで、夏場のホウレンソウに葉ネギを混植し、萎凋病を防除します。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
畑の周囲で天敵を育てる
家庭菜園や有機栽培で行われている方法で、畑の周囲に草花を栽培し、そこに天敵を繁殖させて野菜を害虫の食害から守るものです。
ナスやピーマンなど草丈の高い果菜類には、ヒマワリやソルゴーなど草丈の高い植物を用い、逆に葉根菜類では草丈の低いコスモス、マリーゴールド、クリムソンクローバーなどを利用します。タマネギ栽培では、クリムソンクローバーを使うと、アザミウマとアブラムシに高い防除効果があるといわれています。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
センチュウなどの土壌病害を軽減
ニンジンは根物野菜であるため、未熟な有機物の施用は、又根や土壌病害の発生原因となります。そこで、ニンジン栽培では有機物の少ない畑を選びます。一方、エダマメの根には、根粒菌(こんりゅうきん)が共生して空中のチッソを固定する能力があり、やせ地でもよく生育するため、肥料や有機物の施用量を減らして栽培します。また、収穫後に肥料はほとんど残りません。この両者の性質を上手に利用したのが、ニンジンとエダマメの輪作です。
さらに、エダマメには、ニンジンに寄生するネグサレセンチュウやネコブセンチュウを少なくする働きがあります。そのため、ニンジンをエダマメの後作として、有機物は施用せずに栽培すると、肌がきれいになって、センチュウなどの土壌病害も減少します。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
ニラを植えて、ハムシ類の被害軽減
ミズナ、フダンソウ、コマツナなどのアブラナ科野菜を栽培すると、ダイコンサルハムシやキスジノミハムシなどが寄生して大きな被害を与えます。幼虫は土の中で育つので、農薬を用いても防除の困難な害虫です。
その対策として、科学的に作用機構は解明されていませんが、アブラナ科野菜の近くにニラを植え、ハムシ類の被害を少なくする伝承技術があります。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
相互に生育を促進する
シュンギクとバジルは病害虫に強く、作りやすい野菜です。このため、多くの野菜類に害虫防除の目的で混植されます。最近、家庭菜園などで、このシュンギクとバジルを混植する方法がとられています。効果は定かでありませんが、互いに生育を促進するといわれています。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
サトイモでダイコンを夏の暑さから守る
夏ダイコンは暑さや病害虫の多発から、平地では作りづらいため、もっぱら高冷地産となります。ところがその夏ダイコンを、平地で栽培する伝承技術が存在します。サトイモの株元へ、夏ダイコンを播種する方法です。サトイモの株元に播種したダイコンは、サトイモの日陰となり、暑さや害虫から守られるため、夏場でもよく生育します。
◎コンパニオンプランツにおすすめの品種
クロタラリアが水はけのよい土をつくる
ラッキョウは水はけのよい畑を好み、また秋から冬は根を土中深くまで伸ばします。このため、ラッキョウの適地は、水はけのよい砂地などになります。水はけが悪いと根を伸ばすことができず、センチュウやフザリウム菌などが寄生しやすくなります。
クロタラリアはマメ科の植物で、センチュウの対抗植物として知られています。また、根には菌根菌(きんこんきん)や根粒菌が共生し、土を豊かにする働きがあります。さらに、高い草丈と同じように、根を土中深く伸ばして土を耕し、水はけをよくする働きがあります。