キュウリは、果実の鮮度がよいほど、みずみずしく、おいしくいただける野菜です。とれたてを食卓にすぐ並べることができる家庭菜園では、キュウリを必須アイテムとお考えの方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、「もっと収穫したかったのに、栽培が終わってしまって…」と、悔いを残した経験のある方もおられるはず。近年の夏は猛暑日や集中豪雨が増え、春に定植したキュウリで、ひと夏を乗り切るのが、難しくなっています。
そこで今回は、より長い期間キュウリを楽しんでいただくためのご提案を紹介します。
ぜひ栽培にチャレンジしてみてください。
おすすめのキュウリ
長期間収穫を楽しむにはこちら!
まず、‘VR夏すずみ’で栽培をスタートしましょう。5月定植になるよう進めます。
- ‘VR夏すずみ’の特長
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家庭菜園で定番の'夏すずみ'の改良種。みずみずしく歯切れのよい肉質は'夏すずみ'ゆずりで、食味に優れる。うどんこ病、べと病の耐病性に、ウイルス病(ZYMV)の耐病性*が加わり、'夏すずみ'に比べてつるもちがよく、作りやすくなっている。また、栽培後半まで形のよい果実が収穫できることと、枝の伸びがゆっくりなので整枝作業に追われることがないのも、大きな特長。
(*条件により発病することがあります)
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一般的によく見かけるタイプのキュウリで、耐病性品種では特長を生かして栽培するとよいでしょう。
長期間の収穫を目指すために、夏野菜の植え付けシーズンが到来する5月に定植する作型と、その1カ月半後に定植する作型との2つを組み合わせて栽培します。こうすることで、最初のキュウリが衰えを見せ始めても、次の作型への切り換えがスムーズに進みますので、絶え間なく収穫を続けられます。
こちらは、一回目の定植から1ヵ月半後に定植する作型なので、夏本番を迎えて病虫害の発生も激しくなります。そのため耐病性があり、長期にわたって栽培できる‘Vロード’と‘Vアーチ’がおすすめです。
- ‘Vロード’と‘Vアーチ’共通の特長
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(1)最も進んだ複合耐病性
うどんこ病、べと病、ウイルス病(ZYMV)に耐病性をもつだけでなく、栽培後半に発生しやすい褐斑病にも強い品種です。
(2)優れた耐暑・耐旱性
スタミナがあり、生育後半までつるもちがよいことも大きな魅力で、盛夏期以降も枝が止まることはありません。
(3)高い雌花性
高温期でも、子づるや孫づるに雌花が多く着生し、収量が上がります。 -
また'Vアーチ'は、'VR夏すずみ'や'Vロード'よりも葉がひと回り小さく、立性で混みにくい草姿をしています。
下段の孫枝3~4本を1葉摘芯すれば、以降はあまり枝整理をしなくても過繁茂にならず、収穫を続けることができます。

- タキイ研究農場
- 新 久紀
キュウリの病害と防除
どの野菜も多くの病気にかかりますが、キュウリには現在30種類以上の病気が知られており、野菜の中では最も多い部類に属します。ここでは、中でも代表的な12種類の病気をとり挙げました。キュウリは主要野菜のため、さまざまな研究がなされています。感染条件や感染方法を理解し、それらの条件をとり除く栽培を心掛ければ、被害を軽減できます。
家庭菜園で最も問題になるのが、土壌伝染性の病害です。これは土壌消毒剤で防除できるものの、残念ながら家庭用には販売されておらず、また、使い方の難しい製品が多いといえます。そのため栽培時に重要なことは、健全苗を購入して病原菌をもち込まないこと、また、万一発生したら発生源をとり除くことが大切です。
収穫の終わった作物や生育途中で枯れた茎葉を、堆肥の一種として畑にすき込むようなことは、絶対にやってはいけません。病原菌の多くは作物残さに付着して越冬するので、土壌にすき込む行為は病原菌を拡散させることになります。
病気は初期症状の時、適正な薬剤を選んで散布すると、被害の拡大が防げます。糸状菌(かび)が感染場所に胞子を作るまで放置すると、薬剤による防除は難しく、胞子が飛散して病気は拡散していきます。早期発見・早期防除を心掛けましょう。

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つる割病
- 症状
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夏場の昼間に下葉がしおれるものの、夕方に回復するという、水不足と勘違いするような症状が初期症状。徐々にしおれる葉の枚数が増え、被害葉は黄変して株全体が立ち枯れてしまう。地際部分の茎は褐変し、縦に割れたり、白色の赤褐色のかびが生じたりする。被害茎を切ると、導管部分が褐変している。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。つる枯病が低温時に発病するのに対し、これは夏場の高温時に発生する。被害作物に付着して土中で10年以上もの長期間生存して根から感染するので、被害株は早めに抜きとり、周辺の土を除去するか細い根までていねいに探してとり除く。また、一度発生した場所での栽培は避け、特に自根苗が被害を受けやすいので、接木苗を栽培するようにする。土壌伝染性の病害のため、散布剤での防除は困難。土壌消毒剤で防除するとよいのだが、家庭での使用は難しいのが現状。
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うどんこ病
- 症状
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葉の表面に、白いかびで小斑点を生じるのが初期症状。次第に数が増えるとともに拡大し、ほかの葉に次々と広がっていく。やがて葉全体がうどん粉をまいたようにかびで白く覆われ、生気を失って葉は枯れてしまう。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。生育期間中に発病しやすく、特に初夏の発生が目立ち、密植・過繁茂状態で多発する傾向がある。ほかの病原菌と異なり葉の表面で繁殖しているため、初期のうちに防除すると元に戻る。
防除薬剤はサプロール乳剤、パンチョTF顆粒水和剤、ベニカグリーンVスプレーなど。また、食品系の薬剤であるカリグリーン、アーリーセーフ、ベニカマイルドスプレーなども効果はあるが、これらの薬剤に予防効果はないため、発病したら散布する。
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炭疽病
- 症状
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葉・茎・果実に発生し、中でも葉の被害が目立つ。黄褐色の小斑点を生じるのが初期症状。次第に拡大して円形の病斑になり、縁は黄褐色で内部は退色して白色化する。その部分がもろくなるため破れたり、抜け落ちて穴があく。茎や果実では、細長あるいは円形の黄褐色病斑を生じ、へこむこともある。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。生育期間中に発生し、特に降雨後などの過湿条件下で多発する。降雨や水やり時のはね返り水などで下葉が感染し、その後は水滴の飛沫とともに周囲に飛散して次々と伝染することが多いため、株元に敷きわらなどでマルチングすることが予防に効果的。
防除薬剤はダコニール1000、ビスダイセン水和剤、トップジンM水和剤などの薬剤を、初期感染しやすい梅雨期に散布する。
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黒星病
- 症状
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古い茎葉よりも、生長点付近の若い葉や茎、幼果に発生する。新葉では水浸状の小斑点が生じ、褐色化して中心部が抜け落ち、穴があくこともある。未展開葉が被害を受けると、葉縁が丸まったり、波を打ったような葉になる。新芽部分に発生すると生育が止まり、摘芯したようにわき芽が伸びる。果実に発生すると、病斑がかさぶた状になり、病斑部を内側にして曲がる。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。低温多湿条件下で多発する。病原菌は被害作物だけでなく、使用した支柱などの資材類にも付着し、越冬して発生源になるので、発生した作物に使用した支柱の再利用は避ける。
防除薬剤はダコニール1000、トップジンM水和剤などの薬剤を使用する。ただし、同じ病名のバラの黒星病とは病原菌が異なるので、注意する。
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べと病
- 症状
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葉に発生し、非常に特徴のある病斑を形成する。葉脈に仕切られた多角形の部分が黄褐色に変色する。次第に数が増え、集合して全体に広がり、葉縁から巻き上げたり、カサカサになり破れやすくなる。幼苗では葉縁から淡褐色に変色し、多湿条件下ではくさび形に大きく変色する。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。低温多湿条件下や、肥料切れなどで草勢が衰えると多発する。被害植物上で越冬し、降雨や水やりのはね返り水などで一次感染し、形成された胞子が飛散して感染を拡大させる。落葉した被害葉は放置せず焼却し、肥培管理にも気をつける。また、苗を購入する場合、健全な苗を選ぶことが大切。
防除薬剤はダコニール1000、ビスダイセン水和剤、サンヨール、オーソサイド水和剤など。
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灰色かび病
- 症状
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花弁・果実・葉・茎に発生し、最初に花弁が被害を受ける。花弁には染み状の斑点が生じ、果実では花部より腐敗していく。葉や茎では落ちた花弁や病果の付着した部分から発病。葉には灰褐色の大型病斑を生じ、茎も灰褐色に変色して上部の茎は枯死する。いずれも被害部分は灰色~淡褐色のかびに覆われ、飛散して被害を拡大させる。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。低温多湿条件下で多発する。同じ病原菌でウリ科の作物以外にも非常に多くの作物が被害を受けるため、周辺の作物にも気をつけることが大切。
防除薬剤はベンレート水和剤、トップジンM水和剤、ダコニール1000、カリグリーンなどがあり、数種類の薬剤を交互に散布する。
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モザイク病
- 症状
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葉・果実に発生し、特に葉の症状が目立つ。本来は緑色である葉が、濃淡の不規則なモザイクになり、濃淡の境がはっきりする場合と不明瞭な場合がある。また、葉脈と葉脈の間がくさび状に黄色くなることもある。新葉では小葉化や葉縁が巻き上がるなどの奇形葉の症状が現れる。果実でもモザイク状の濃淡が現れ、奇形果になる。
- 発生原因と対策
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病原菌はウイルス、キュウリモザイクウイルスなど数種類のウイルスの単独あるいは複合で感染する。いずれもアブラムシによる虫媒伝染と刃物などによる汁液伝染によるもの。アブラムシが寄生して汁吸すると感染するため、退治よりは飛来防止を心掛けることが大切。
防除薬剤はない。被害株は感染源となるので、早めに抜きとって処分する。
手軽に行えて病気にかかりにくくする方法はいくつかあります。代表的な方法は以下の通りです。
- 作物残さは畑に残さず、きれいにとり除きましょう。枯れた作物残さには病原菌が付着しており、病気の発生源になります。
- 耐病性品種や接木苗を選ぶこと。接木苗は、土壌伝染する病気に強い台木に接いでいるので病気にかかりにくいといえます。
- 株元に敷きわらなどのマルチングをします。水のはね返りでの感染を防ぐとともに、保温・保水効果があります。
- 連作を避けます。同一作物だけでなく、同じ科の作物も含まれます。
- 自家採種には気をつけます。種子伝染する病気も多く、病気にかかった作物からの種は使用しないことです。
- 肥培管理に注意。早く大きくしたいからと、チッソ成分を多く与えると軟弱に育ち、病気にかかりやすくなります。
- 水はけをよくします。土壌病害は水によって移動します。高畝にするなど、排水性をよくしましょう。
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つる枯病
- 症状
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茎・葉・果実に発生。特に茎が被害を受けやすく、致命傷になる。茎では地際部や節の部分が被害を受け、被害部は淡褐色に変色する。進行すると被害部の上部が立ち枯れてしまう。葉では葉縁から変色し大型の病斑を生じ、果実では先端が細くなり、内部は淡褐色に芯腐れを起こす。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。低温多湿条件下で発生する。病気の進行は基本的には緩やかだが、肥料不足などで草勢が弱いと、急激に進行する。病原菌は罹病作物に付着して越冬し、降雨や水やりのはね返り水などで移動感染するため、残さはきれいにとり除く。株元に敷きわらなどでマルチすると予防に効果的。
防除薬剤はベンレート水和剤、トップジンM水和剤などを散布するが、茎の感染部分にトップジンMペーストを塗布する方法もある。
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菌核病
- 症状
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果実・茎・葉に発生し、最初に果実が被害を受ける。先端の花落部が軟化腐敗し、白色のかびが密生する。茎や葉では落下した感染花や被害果実が付着した部分が感染し、茎では水浸状に軟化して白いかびに覆われる。本来かたいはずの茎がやわらかくなったら、この病気に感染している場合が多く、被害部から上部は枯死する。葉では灰緑色の大型の病斑を生じる。いずれの被害場所でもネズミの糞状の黒い菌核を作る。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。土中で越冬した菌が春先の降雨後などに茶褐色の5mm程度のキノコをつくって胞子を飛散し、花弁に付着して発病させる。本病原菌は多くの作物に感染するため、ほかの作物も注意して観察する。表層の土と深い土を入れ替える天地返しも有効。
防除薬剤はベンレート水和剤、トップジンM水和剤などを散布する。
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疫病
- 症状
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茎・葉・果実に発生する。茎では地際部が被害を受けやすく、暗緑色の水浸状になり、くびれて株全体が枯死する。根が侵されることもあり、同様に枯死する。葉では下葉から暗緑色の大型の病斑を生じ、果実では水浸状の病斑の上に白いかびが生え、1~2日で軟化腐敗する。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。被害作物に付着して土壌中で越冬するため、残さはこまめに集めて焼却する。病原菌は降雨や水やりのはね返り水などによって作物に付着感染するため、株元に敷きわらなどでマルチすることも予防には有効。また、排水不良や過湿土壌の環境では被害を受けやすいので、高畝にして植える。周辺で被害を受けた事例がある場合は、接木苗を植えるようにする。
本来なら土壌消毒で防除するが、それは家庭での使用は難しいため、茎葉に発生した場合はジマンダイセン水和剤を散布する。
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褐斑病
- 症状
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葉に発生する。発病初期は小さな淡褐色の斑点を生じる。それが次第に拡大して5~10mmの円形病斑を生じ、中心部は輪紋状になる。多湿条件下では病斑上に黒褐色のかびが発生する。病斑は融合して葉全体が褐変し、枯れたまま枝について非常に見苦しくなる。
- 発生原因と対策
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病原菌は糸状菌。梅雨期など降雨の多い時期に多発する。肥料切れや、逆にチッソ成分が多いと発病しやすいため、バランスのとれた施肥を心掛ける。枯れた被害葉は放置せずに集めて焼却し、発病作物に使用していた支柱の再利用は避ける。
防除薬剤にはダコニール1000、ビスダイセン水和剤、オーソサイド水和剤などがある。ただし、多発生してからでは防除が難しいので、発病初期の薬剤散布が大切。
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斑点細菌病
- 症状
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主に葉・果実に発生する。葉では褐色の小斑点が生じ、次第に拡大して葉脈に囲まれた多角形の淡褐色~黄白色病斑を形成する。病斑部分は破れやすくなり、裂けたり穴があく。果実では数mmの淡褐色のくぼんだ状態の斑点を生じ、白色の粘着性のあるヤニのようなものを分泌し、果実を軟化させる。
- 発生原因と対策
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病原菌は細菌。梅雨明けごろから発生し、多湿条件下で多発する。被害葉などに付着して長期間土中で生存して被害を及ぼす。水とともに移動するため、はね返り水で一次感染し、その後は水滴とともに飛散して感染が拡大していく。
糸状菌防除のための薬剤では効果がなく、カスミンボルドーなどの薬剤を散布する。被害症状がべと病など糸状菌で起きる症状と間違いやすいため、発見当初に糸状菌防除剤を散布しても病気が進行する場合は、本病のための薬剤を散布する。
植物にも相性があり、一緒に植えたり近くに植えたりすることによって、病害虫を軽減、生育促進するなどの作用があります。これらをコンパニオンプランツ(共栄植物)と呼んでいますが、科学的に実証されたもの、経験上いわれているものなどがあります。キュウリのコンパニオンプランツは以下の通りです。(地域・環境により、効果には差がある場合がありますことをご了承ください。)
- ネギ類…土壌病害のつる割病、青枯病を予防し、アブラムシの発生を抑えます。さらに、生育が促進されます。
- リーゴールド…センチュウやコナジラミの発生を抑えます。
- オレガノ…風味がよくなります。
- トウモロコシ…風よけになります。
病害虫にも作物の好き嫌いがあり、同一作物がまとまって植えられていると被害を受けやすくなります。いろいろな作物を混植すると一般的に発生が抑えられる傾向があります。また、草丈の高い植物を周辺に植えると、アブラムシなどの飛来を防ぎ、風よけの作用も期待できます。
- 望田 明利
- 1945年生まれ、千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸で薬剤・肥料の開発普及一筋で勤務。現在は薬剤の適正指導に携わる傍ら、家庭菜園を楽しんでいる。今年の目標は多作物少量栽培で、50作物の世話をすること。
キュウリのタネの販売