紅ほっぺやさちのか等、おいしいイチゴの品種の育て方を紹介| タキイネット通販
春を告げる果物として人気が高いイチゴ。ビタミンCや食物繊維が豊富で、栄養価の面でも優れています。真っ赤に熟した果実は、生のまま食べるほか、煮込んでピューレやジャムにするなど用途も多彩。大粒で甘~いイチゴの収穫を目指して、さっそく栽培してみましょう。
北条雅章
千葉大学環境健康フィールド科学センターを経て、栃木県益子町で稲作や野菜の栽培と菜園管理手法を開発中。農学博士。著書・監修書に「はじめての野菜づくり図鑑」(新星出版社)、「野菜の上手な育て方大事典」(成美堂出版)など。
イチゴってどんな野菜?
イチゴは江戸時代末期にオランダから伝来した比較的新しい野菜です。ビタミンCがミカンの2倍ほど含まれ、葉酸や食物繊維も多く、美容と健康に効果があるといわれています。
イチゴは秋に花芽が分化し、冬は休眠して春に開花・結実する植物で、本来は初夏が旬の野菜です。俳句でも夏の季語になっています。しかし、農家の栽培では花芽分化後に温室に植え付け、保温を行い休眠させずに年内から収穫する「促成栽培」が主流になっています。
露地栽培では秋に圃場(ほじょう)に植え付け、冬越し後にマルチを張り、5月ごろから収穫します。マルチと同時にトンネルをかけて保温すれば、4月下旬からの収穫も可能です。また、年間を通じて花が咲く「四季なり性」の品種を栽培すれば、夏の高温期を除く5~11月に収穫が可能です。
DATA
生育適温:18~25℃
科名:バラ科
※中間地で一季なり品種を露地栽培する場合の一般的なスケジュールです。
1土づくり、畝(うね)立て
有機質主体の元肥でしっかり土づくりを
元肥として、1㎡当たり堆肥(たいひ)3kg、苦土石灰100g、油かす50g、化成肥料(チッソ、リン酸、カリの割合が各10%のもの)100gを施用します。初期の肥料が効きすぎると、草勢が強すぎたり乱形果の発生が増えるので、有機質や緩効性の肥料を主体に施用します。また、イチゴは肥やけを起こしやすいので、植え付けの2週間前までに元肥をまいてよく耕し、 肥料を土になじませておく事が大切です。深さ20㎝以上までよく耕し、ベッド幅70~80cm、高さ約10cmの畝をつくり、表面を平らにします。
植え付けの2週間前までに元肥を入れて土づくりをしておく。肥料をすき込んだらきれいにベッドをつくり、表面を平らにする。
2苗選び
本葉4~5枚のクラウンが太い苗を選ぶ
イチゴの栽培は、市販の苗を購入して始めるのが手軽です。通信販売や園芸店などで購入できます。苗は、本葉が4~5枚で葉色が濃く、厚く、病気の痕がない根張りのよいものを選びましょう。
苗選びのポイントは?
- クラウン(株元の短縮した茎)が比較的太くてしっかりした株は、栄養状態がよく、植え付け後もよく育つのでおすすめです。
大きさの揃った葉がついていて、葉が厚く葉色が濃く、病気の痕がない株で、根がよく発達しているものがよい。
3植え付け
葉の付け根を埋めないように注意する
株間約30cm、条間30~40cmにして、ランナーの切り跡が畝の内側に向くように植え付けます。イチゴの成長点はクラウンの先端部分のため、ここが土に埋まると生育不良や病気になりやすいので、深植えにならないように注意します。
- ランナーの切り跡を畝の内側に向ける
イチゴの果実は、株元から出るランナー(ほふく枝)の反対側につける性質がある。植え付け時は、ランナーの切り跡を畝の内側方向に向けておくと、果実が通路側につき、収穫作業がしやすくなる。
イチゴの成長点はクラウンの先端なので、葉の付け根やランナーの切り跡を必ず地表面から上に出し、深植えしないことが大切。
4追肥、マルチ張り
冬越し後、雑草を防ぐマルチを張る
冬越し後の2月下旬~3月上旬に、追肥とマルチ張りを行います。追肥として、1㎡当たり20~30gの化成肥料を列の間にまきます。土の表面をほぐすようにしながら肥料と土を混ぜ、株元に土寄せします。併せて除草を行い、株元の茶色く枯れた葉も取り除いておきます。
追肥後、畝の上から黒マルチをかぶせ、両端を土で押さえます。黒マルチは、春先の地温を上昇させたり雑草の発生を抑えるだけでなく、土の乾燥や泥のはね返りを防ぐ効果があります。生育が盛んになる3月下旬~4月上旬の追肥は、1株当たり2~3gの化成肥料をマルチの穴からまき、指先で土と混ぜておきましょう。
黒マルチを畝の上に広げ、両端のすそを土で押さえる。株の位置を手で探り、カミソリなどで十字に切り開く。
マルチの下から葉を傷つけないようていねいに株を引き出す。穴が大きく広がらないように注意する。
マルチの表面にしわが寄らないように畝のサイドも土で押さえたら完成。黒マルチは地温を上げるとともに雑草の発生を抑える。
5人工授粉
開花後は、筆などで優しくなでよう
花が咲いても、訪花昆虫が少ないと受粉ができません。花の中心を穂先のやわらかい筆でなでて、花粉を均一に雌しべにつけ授粉させます。イチゴの表面のつぶつぶがタネ(果実)ですが、花の雌しべ1本1本がそのタネになります。 受精が不完全な部分は、肥大せずに奇形果実になってしまうので、人工授粉は忘れずに行いましょう。
ランナーが出てきたらどうする?
- 果実が肥大するころに伸び出すランナーは早めに摘み取ります。こうすることで果実に栄養がいき、大粒の実ができやすくなります。
花を筆や耳かきの梵天(ぼんてん)などでなでて、花粉を均一に雌しべにつける。肉眼では花粉の付着を判別できませんが、花全体をなでれば授粉できているので大丈夫。
6収穫
実が赤くなったらていねいに収穫しよう
花が咲いてから40~50日で収穫適期です。果実はやわらかく非常に傷みやすいので、ていねいに取り扱います。先端から赤くなってくるので、大きく育ち完熟したものから手で優しく持ち、果梗(かこう:果実の柄部分)を外すようにして収穫します。 イチゴの甘みは先端にいくほど強くなるので、へたの方から食べ進めると最後に先端の甘い部分が味わえます。
実が赤くなったら、果梗を外すように収穫する。手のひらの中に優しく包み込み、手首を返すと果梗がへたから外れる。
次年度の苗を作るには
収穫終了後の健全な株を親株として、伸びてくるランナーから次年度用の子株を作ることができます。親株を50cm間隔で畑に植えるか、幅約60cmのプランターに2株植え付けます。親株から伸びたランナーの2~3番目の子株を選び、土の上に置いてピンで押さえます。ポリポットに受ければそのまま苗として利用できます。 しっかりと根が活着し、ランナーを切り離したら子株の完成です。ただし、子株をとり続けると次第に親株の勢いが衰えるので、2~3年を目安に新しい親株に更新します。
子株をポリポットに受け、ピンなどで押さえて育てる。根が活着したら、ランナーを3㎝ほど残して親株から切り離す。
ランナーから伸びた子株をポリポットに受けた様子。乾燥させないように灌水(かんすい)する。