秋ジャガイモの作り方・栽培方法や貯蔵方法を解説!おすすめ品種も紹介
ジャガイモ栽培といえば春作が一般的ですが、冷涼地を除いた比較的暖かい地域では、夏の終わりに植え付け、霜が降りる前までの期間を利用した秋作のジャガイモを作ることができます。
今回は、秋ジャガならではの栽培のポイントをご紹介。タネイモの保存法や収穫後のイモの貯蔵法もぜひ参考にしてください。
森一幸
1973年長崎県生まれ。1996年に長崎県入庁。2001年より長崎県総合農林試験場愛野馬鈴薯支場育種栽培科(現長崎県農林技術開発センター農産園芸研究部門馬鈴薯研究室)に勤務し暖地二期作向けバレイショ品種「春あかり」「アイユタカ」「西海31号」「さんじゅう丸」を育成。2011年神戸大学農学研究科博士課程修了。
秋ジャガ
夏から秋にかけて栽培する「秋ジャガ」は、暑さが残る9月ごろに植え付け、11~12月に収穫する作型です。春ジャガと同様、植え付けから約3カ月で収穫できます。
秋ジャガは、春ジャガに比べて収穫量はやや少ないものの、イモのでんぷん価が高くなり、ホクホク感が増すのが特長。気温の低い時期に貯蔵するため、3カ月ほど貯蔵してもほとんど芽が伸びず、長期間にわたって料理に利用できるのが魅力です。
栽培期間の夏から秋は、害虫発生や台風被害の危険性も高くなりますが、植え付け時期を守る、秋ジャガ栽培向け品種を選ぶなど、秋作ならではのポイントを押さえれば栽培は簡単。春ジャガとはまた違った味、食感が楽しめるので、ぜひチャレンジしてみてください。
秋ジャガ栽培のポイント
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1
秋植え向け品種を選ぶ
春植え専用品種ではうまく育たない。
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2
石灰量は控えめに
与えすぎはそうか病の原因にも。
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3
タネイモはなるべく切らない
暑さで切り口から腐敗しやすい。
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4
植え付け時期を守る
適期はとても短いので注意。
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5
収穫は十分に茎葉が枯れてから
茎葉が元気ならイモは太り続ける。
秋ジャガ栽培カレンダー
秋ジャガ栽培の流れ
1栽培計画
秋作に適した品種を選び、時期を逃さず植え付ける
秋ジャガの栽培では、①秋作に適した品種を選び、②地域に適した時期に植え付けをすることがポイント。栽培に適した品種を植えないと、出芽が遅れ、その後の霜や寒さで枯れてしまいます。また、植え付け時期が早いと、暑さでタネイモが腐敗し、芽が出なかったり、青枯(あおがれ)病にかかりやすくなります。一方、植え付けが遅れると、生育後半の寒さでイモが十分に大きくならず、収量が少なくなるので注意が必要です。
- 植え付け適期
- ●中間地:8月下旬~9月上旬
●暖地:9月上旬~9月下旬
2タネイモの準備
小さいタネイモは切らずに植え付けて腐敗を防ぐ
秋ジャガの植え付けは、暑い時期に行うので、タネイモを切って植え付けると、腐りやすくなります。そのため、50g以下のタネイモの場合、できるだけ切らずに植え付けると腐敗は少なくなります。50g以上の大きいタネイモを切って植え付ける場合は、各片に芽を均等につけるため、イモの頂部を中心に切断します(写真1)。その後、風通しのよい場所で2日程度置き、切り口を十分に乾燥させてから植え付けます。その際、切り口に「じゃがいもシリカ」(土壌改良剤)をつけて植え付けると腐敗しにくくなります(写真2)。
(写真1)タネイモを切り分ける場合は、頂部(芽のついた部分)を中心に切る。
(写真2)切り口には「じゃがいもシリカ」をまぶしておくと腐りにくい。
3土づくり・植え付け
そうか病を防ぐため石灰を控えめにする
ジャガイモは連作すると、そうか病(写真3)や青枯病などの土壌病害が発生しやすくなるので、連作を避けてください。畑は排水性、保水性がよく、強風が当たりにくい場所を選びます。そうか病の発生を抑えるために、1m²当たり石灰の施用量は少なめ(50g)にし、堆肥(たいひ)は500gとして十分に耕うんします。幅60~70cmの畝(うね)の中央に深さ5cm程度の植え溝を掘り、タネイモを株間25~30cmで置きます。2~3cm覆土し、その上に化成肥料(8-8-8)を1m²当たり100~150gまき、タネイモの上に10cm程度覆土をして畝をつくります(図1)。植え付け後に雨が降らない場合は、水やりすると出芽が早まり、収量が多くなります。
(写真3)そうか病の症状が見られるジャガイモ。
4管理作業
株元に土寄せすると大きなイモが育つ
生育が順調だと、植え付けの2~3週間後に出芽してきます。出芽が揃った時期(茎の長さが5~10cm)に、根張りをよくするため、除草を兼ねて株元に土寄せします。土寄せの時期が遅れると、伸びた根を傷つけることがあるので時期を逃さないよう注意します。また、ヨトウムシ類の幼虫による葉への被害や、気温が20℃前後で降雨が続く場合には疫病が発生することがあるので、定期的に生育状況を確認し、被害が見られる場合には、早めに殺虫剤、殺菌剤による防除を行います。
5収穫
茎葉が枯れるまで畑におき、イモを十分に生育させる
生育が進むと茎葉が枯れてきます。また、生育後半に霜にあい、茎葉の一部が枯れる場合があります。しかし一部の茎葉が枯れていても、イモは大きくなり続けるので、収穫は茎葉がすべて枯れる12月ごろを目安に行います。地域によって、地表面近くは氷点下になることもあるので、その場合はイモの凍結を避けるために早めに収穫します。腐敗防止のため、収穫は晴天が続き、イモに土がつきにくい状態で行います。土が湿った状態でイモを収穫した場合には、風通しのよい場所でイモの表面を乾燥させます。
ジャガイモの収穫風景。
タネイモ&収穫後のイモ 管理・貯蔵のポイント
タネイモを入手した後の管理方法は?
秋ジャガ用は暑さによる腐敗に注意
秋ジャガ用のタネイモは、8~9月に入手できます。タネイモが腐敗しないよう、入手後すぐにコンテナに移し、植え付けまでの間は20~25℃で多湿にならない暗い場所で貯蔵します。コンテナの中に腐敗したタネイモがあると、健全なイモまで腐敗させる原因になります。定期的にコンテナ内の状況を確認し、腐敗したイモは取り除いておきます。
春ジャガ用は浴光育芽をする
春ジャガ用のタネイモは、入手後、寒さで芽が傷まないよう室内で貯蔵します。3月ごろになるとタネイモから白い芽が動き出します。気温が低く、芽の動き出しが遅い場合は、タネイモを20℃前後の場所で貯蔵します。植え付けまで暗い場所で貯蔵すると、タネイモの芽は伸び続けてしまうので、芽の伸長を抑えるために、植え付けの2~3週間前に、日光が当たる場所に置き、こんぺいとうのような緑色の太い芽にする浴光育芽(写真4)を行います。このような芽にすると植え付け後の出芽が早くなり、その後の生育の揃いもよくなります。ちなみに秋ジャガ用のタネイモは、入手時にはすでに休眠が明けて芽が伸びているので、浴光育芽は必要ありません。
(写真4)浴光育芽で太い芽を出したジャガイモ。
収穫後のイモの保存法は?
腐敗したイモを選別して貯蔵する
秋ジャガは、12月ごろを目安に収穫を行います。収穫時にはイモの表面についた土を除去し、コンテナに入れて貯蔵します。春ジャガも秋ジャガ同様に収穫しますが、梅雨入り前後で畑の土が湿った状態となるためイモに土が付着しやすく、ジャガイモ疫病や軟腐敗病に感染しているイモがあります。腐敗がないイモを選別し、コンテナに入れて風通しのよい冷暗所で貯蔵します(写真5)。イモは日光に当たると緑化し、食中毒やえぐみの原因となるアルカロイドを生成するので注意します。また、芽の部分にジャガイモガの幼虫の糞や数mmの食害痕(写真6)が見られるイモも除去します。
(写真5)表面をよく乾燥させ、腐ったイモを取り除いてからコンテナに入れて保存する。
(写真6)ジャガイモガの食害痕。
秋ジャガは寒さによる凍結に注意
秋ジャガを貯蔵する場合は、冬季の気温が氷点下となる地域では、ビニールシートや不織布などでコンテナを覆い、イモが凍結しないように注意します。3月以降、暖かくなると休眠が明け、芽が伸びてくるので、できるだけ冷暗所に貯蔵します。春ジャガの貯蔵は、夏季の高温で貯蔵中に腐敗しやすいので、腐敗したイモは必ず除去し、20~25℃の室内もしくは冷蔵庫で貯蔵します。また、イモの芽が伸びた場合には、芽を取り除き、エネルギーの消耗を防ぎます。