スイートコーンの上手な栽培方法・育て方
スイートコーンの基本情報
- 学名
- Zea mays L.
- 和名
- とうもろこし
- 英名
- Sweetcorn
- 原産地
- メキシコ高原と南米ボリビア
- 分類
- イネ科トウモロコシ属
- 上陸時期
- 明治37年
スイートコーンの住みやすい環境
スイートコーンは高温性作物です。
- 発芽適温
- 25~30℃で最低温度は10℃、最高温度は43℃です。日平均気温の積算温度が125~175℃で圃場発芽に達します。播種最低地温は14℃で、地温が確保できないときには温床育苗として、本葉2.5枚で定植します。
- 生育適温
- 日平均気温22~30℃ですが、生育初期と後期は比較的低温で、中期は高温が望ましいです。
- 土壌適応性
- 肥よくな壌土が多収につながり、早出しには砂壌土が好適です。乾燥害に弱く、湿害にも弱いので有機質を施し適湿を保つような土壌条件にしてやります。
- 土壌酸度
- pH5.5~6.5程度がよく、強酸性は好ましくありません。
スイートコーンとは
(スイートコーンってどんな野菜?)
残暑きびしいトウモロコシ畑に風が吹き、葉ずれの音が夏の終わりを告げます。一つひとつの実がびっしりと並び、赤茶けたちぢれ毛がそこからのぞいています。最近では一年中出回りますが、やはり美味しいのは夏。焼いたり、塩ゆでにしてそのまま食べたり、実をバターで炒め、スープなどにも用います。
栽培手順 各ポイント
菜園向け
スイートコーン栽培カレンダー
発芽
- ■発芽適温
- 20~28℃ (積算温度160~180℃必要 地温20℃で9日程度)
- ■播種可能最低地温
- 14℃ (これ以下では発芽しない)
現在、スーパースイート系が栽培の中心になっており、子実中の糖含量がスイート系より高くなっています。
その反面、子実中のデンプン含有量が少なく種子のシワが多くなり、発芽勢が低くなる傾向があります。
播種(直播)
播種の目安は、最低地温が14℃以上になったころです。
一般地のマルチ栽培では4月中旬ごろ、トンネル栽培では3月中旬ごろになります。
マルチは生育初期の地温を高め、水分と肥料分を保持する働きがあるのでぜひ利用しましょう。
欠株を防ぐため1穴に3~4粒播種し、本葉3~4枚の時に最も生育のよい1本を残して、そのほかの株を根元からハサミで切り取ります。
1列よりは、2列に植えるほうが花粉がよくつき、実入りがよくなります。
- ■施肥量
- 元肥は目安として10㎡当たり成分量で、チッソ、リン酸、カリをそれぞれ150~200gを施用します。
スイートコーンは多肥を好みますが、生育初期に肥料による濃度障害を起こしやすいため、追肥を適期に施用することで生育を進めるようにします。
ポット育苗
スイートコーンは、発芽には比較的高温が必要なので、育苗には温度を確保できる場所が必要です。
最低気温が15℃以上になったころ根鉢をくずさないように定植します。
ポリ鉢に直接タネをまいて、そのまま育苗
受粉
稈の頂部に雄穂、中間に2~3本の雌穂がつきます。この雌穂から実の数だけ絹糸が出て、飛散する雄穂の花粉がついて受粉すると実がなります。
- キセニアとは…
- スイートコーンは、デントコーンやポップコーンの花粉で受粉すると粒が硬くなり、甘みが低下して食味が悪くなります。
このように花粉の影響が直接現れる現象をキセニアといいます。
また白色種が黄色種の花粉で受粉するとその部分は黄色の粒になります(白色よりも黄色の方が優性)。
生育
- ■生育適温
- 22~30℃(35℃以上は高温障害。トンネル栽培は注意が必要)
※温度の日較差は10℃ぐらいあるほうが糖度が上がりやすい。
[スイートコーン生育ステージ別ポイント(中早生種)]
分けつ
分けつを残すことで根量と葉面積が増えて、増収と倒伏防止の効果が得られる上、省力にもなります。たくさん分けつが出る場合は、2~3本残してあとは除去してもよいでしょう。
[無除けつ栽培の長所と短所]
長所
- ①葉面積が大きくなる
- ②根量が増える
- ③分けつ雄花の花粉利用 (先端不稔の減少)
- ④省力化
- ⑤倒伏しにくくなる
- ⑥葉面積と根量が増えるため、増収の効果が見込める
短所
薬剤散布や収穫作業の能率低下
追肥と潅水
- ■追肥時期
- 1回目:本葉6~8枚 2回目:雄穂出穂期
- ■追肥量
- チッソ成分40~50g/10㎡ 速効性肥料を使用
- ■潅水
- 発芽~1回目追肥:普通~やや少なめ
~雄穂開花期:普通
~収穫期:乾燥させないこと(やや多め)
[良質な大穂を作る条件]
- ①雄穂出穂期までに、ある程度強めの草勢を維持し、茎が太いこと
- ②出穂期から収穫期まで肥料切れを起こさず、土壌を乾燥させないよう適湿に保つ
[先端不稔の原因]
- ①密植過ぎる
- ②雄穂出穂期までの草勢が弱すぎる
- ③出穂~収穫期の不良条件(雨天、低温、高温、乾燥)
- ④花粉量の不足
- ⑤雄穂と雌穂の開花期のズレ (乾燥の場合になりやすい)
収穫
[除房]
除房栽培は、上から2番目の雌穂の絹糸が出始めたころ、2穂目を除去して1株1穂にする方法で、除房しないよりは1穂目がある程度大きくなります。
しかし、除房の際に茎葉を傷つけてしまうことが多く、除房による増収効果は薄いため、省力の意味でも除房は行わなくてもよいでしょう。
収穫が早すぎると糖度が十分に上がりません。遅れると粒皮のしなびや糖度の低下につながります。収穫適期は開花後20~25日ごろで、絹糸が褐変し、先端の子実が黄変した時が適期です。試しむきをして熟期を確認し、収穫を行いましょう。
常温では、収穫後5~6時間で糖分が減り始め、その後どんどん甘さが減少します。家庭菜園ではもぎたての味をすぐに楽しむようにしましょう。
[クリーニングクロップとして利用]
イネ科なので一般の野菜との関連病害がほとんどなく、土壌中に残っている肥料分を吸収する能力が高いため、畑のクリーニングクロップとして利用できます。
長年の栽培で塩類集積や連作障害などで、作物がうまく育たない場合はスイートコーンを作付けするとよいでしょう。
病害や生理障害
<病気>
総監修・イラスト原図 : 駒田旦・本文監修:大阪府立環境農林水産総合研究所 草刈眞一
<害虫>
総監修 : 大阪府立環境農林水産総合研究所 田中寛 監修 : 草刈眞一、柴尾学・写真提供 : 田中寛(HT)、木村裕(YK)
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Q&A
- 4月にまいたスイートコーンが今年はうまく発芽しませんでした。原因は何でしょうか。
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スイートコーンの発芽適温は25~30℃、最低温度は10℃で、これ以下では発芽は極端に悪くなります。例年と同じ時期にタネをまいても、気温が低ければ時期を遅らせ、晩霜の心配がなくなってからまきます。気温が低いと発芽は遅れ、雑菌に侵されて腐敗することがあります。スイートコーンのタネは殺菌されていますが、多湿で土壌に病原菌が多いと、罹病しやすくなります。
スイートコーンは乾燥に弱く、発芽まで十分に吸水させておく必要があります。そこで播種床に適度な水分があることが望ましいです。しかし、水分が多すぎても発芽に先立って盛んになる呼吸が十分にできず、発芽は抑えられてしまいます。
タネまきした後の降雨量が多かったり覆土が厚すぎると、やはり発芽は悪くなります。特に排水の悪い土壌や粘土質の土壌では、覆土を0~5㎜としてタネが見えるか見えない程度にしてまきます。保存状態が悪かった古いタネや未熟なタネも、やはり発芽は悪くなります。
- スイートコーンの実が歯抜けのようになっています。どうしてでしょうか?
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スイートコーンは元気な株ほど大きな実がとれますが、先端部で粒がない歯抜けがよく発生します。原因は、うまく受精できなかった粒が充実しなかったためです。雌穂では1粒に1本の雌しべ(絹糸)がつながっていて、これに雄穂の花粉がしっかりつくことが大切です。
不良となる条件としては、①雄穂の開花時期に雨が多く、花粉が濡れて受精ができない。②草勢が弱くて花粉量も少なく、また雄穂と雌穂の開花期がずれている。③1条植えのため、花粉が風で横に飛散してしまうと下部の自株の雌しべに十分付着しない、などが考えられます。
対策としては、天候は変えられませんので、栽培法や管理で改善します。①複条植えにして花粉が左右互いによくかかるようにする。②草勢を強く育て、株元の側芽で強いものを1~2本残して雄穂を増やし、花粉の飛散する期間を長くする。③家庭菜園では最後の方法として、人手によって積極的に交配してやる、などが効果的です。交配は粉状の花粉がよくついている雄穂を取り、雌しべに直接つけてやるとよいでしょう。