山芋(ヤマイモ)の栽培方法・育て方を解説!
食べたいヤマイモを上手に育てて、おいしくいただきましょう。
ヤマイモの呼び名は地方で異なるため、栽培する時はまず、よく品種を確認することが大切です。ここでは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属ナガイモ種のヤマイモ(ナガイモ)を中心にご紹介します。
日本で栽培されているヤマイモは、自然薯を除いてはナガイモ種で、形状によりナガイモ群、ツクネイモ群、イチョウイモ群の3種類があります。長いイモだけがナガイモ種なのではなく、丸いものも、イチョウ型のものもナガイモ種なのです。自然薯は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属ヤマノイモ種で、野生種が近年では栽培されるようになりました。
ヤマイモは一般的な食べ方として、とろろにして食べることが多いと思います。それで「とろろイモ」と呼ばれるわけですが、トロロイモという品種はありません。
そして、ヤマイモをもらった時、これはナガイモなのか自然薯なのかが分からなかったり、はたまたお嫁さんとお姑さんの出身地が違えば、呼び方が違うということもあるかもしれません。そこで、まずは栽培品種についてご紹介します。
流通量が最も多く、スーパーなどでもおなじみなのが、ナガイモ。主な産地は鳥取県、長野県、青森県、北海道です。円筒形の長い形をしていてやや水気が多く、千切りにしてサクサクした食感を楽しんだり、短冊切りにしてサラダや酢の物にしたり、すりおろして山かけにしていただきます。目の細かいおろし金やすり鉢ですりおろすと、滑らかに仕上がります。
秋に収穫されたナガイモは、未成熟の場合アクが強く黒ずんだりすることがあります。そのような場合は酢水でさらしてから調理してください。
主な産地は兵庫県、奈良県、三重県などです。丸みを帯びたイモで粘りが強く、自然薯と同格のおいしさとされています。通称「ヤマノイモ」と呼ばれています。兵庫県丹波市、篠山市産は丸型黒皮種、奈良県産も丸型黒皮種で「大和芋」とも呼ばれています。関西で「大和芋」といえば、このツクネイモのことです。三重県産はやや不規則な塊状の白皮種で「伊勢芋」とも呼ばれることがあります。
おいしいのはやはり、とろろ。だし汁で割っていただきます。独特の粘りをもつため、和菓子などに利用されています。
主な産地は関東です。形状は扁平で下部が扇型に広がっており、三味線のバチに似ているから「バチ芋」、手に似ているから「手芋」などといわれているのがこの仲間です。ごつごつした「仏掌芋」というイモもあります。呼び方でややこしいのは、関東ではイチョウイモのことを「大和芋」と呼んでいることです。関西の人と関東の人が「大和芋」の話をする時に、混同が起こることがあります。よく産地を確認することをおすすめします。
日本の山野に自生しているつる植物で、細長いクネクネとした形状をしています。品質は大変優れており、以前は栽培が困難で山掘りが主流でしたが、パイプ栽培が普及し、形状の真っすぐな自然薯が流通するようになりました。(「自然薯栽培に挑戦」を参照)
平均気温13〜14℃となる葉桜のころが植え付け適期です。
生育は17℃以上の高温多湿を好みます。成熟期には日照が多く、夜間は冷涼で温度格差のある気候が適します。
土質はあまり選びませんが、耕土が深く排水のよい肥沃な土壌が適しています。特にナガイモ群は耕土の深いことが必須条件となります。
粘質土壌では肉質のしまりがよく、砂質土壌や火山灰土壌では、比較的細長い形状になります。
地力にあわせた施肥が必要ですが、有機質完熟堆肥を施すのがよいでしょう。養分吸収率は初期生育で20%、7月下旬以降の成熟期に80%が吸収されます。
◎元肥(もとごえ)
いずれのヤマイモも肥料焼けしやすいので、植え付けの2週間ほど前に元肥を散布します。吸収根は表層面に多く分布するので、全面散布します。◎追肥
タネイモから養分の吸収が切り替わる6月下旬と生育が旺盛になる7月下旬〜8月上旬までに施します。
農家ではトレンチャーという機器を使って耕起を行いますが、家庭菜園では難しいので、なるべく深耕して畝を高く盛土します。
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深さ
ナガイモ群:50〜100cm(高畝の場合は高さ分浅くする)
ツクネイモ群:40〜50cm
イチョウイモ群:40〜50cm栽植距離ナガイモ群:畝幅80〜90cm、株間20〜30cm
ツクネイモ群:畝幅120〜150cm(2条植え)、株間35cm
イチョウイモ群:畝幅70〜80cm、株間20〜25cm
定植後に支柱立てをします。支柱は植え付け溝の外側に2m間隔で立て、ネットなどを張ります。
ツクネイモ群、イチョウイモ群は支柱を立てず、地這い栽培も可能です。
ナガイモ群は芽が出るまでに日数がかかり、茎葉が伸びるまでの期間が長いので、除草と中耕を適時行います。除草と中耕のタイミングは、芽が出揃ったころに土寄せを兼ねて実施します。
生育初期の除草剤:トレファノサイド乳剤
生育中の除草剤:プリグロックスL
梅雨明け後の7〜8月、ナガイモ類の根は浅根性なので傷みやすく保護する必要があります。敷きわらをして保護し、乾燥が続くようであれば水やりをしてください。
タネイモから養分の吸収が終わり、土壌からの養分の吸収に切り替わる6月下旬と、梅雨が明けて生育が旺盛になる7月下旬〜8月上旬までに施します。追肥が遅れると、アクが生成されるので遅れないようにしてください。成分量はヤマイモ(ナガイモ種)の栽培方法の表(1m2当たり施用例)の通りです。
生育が旺盛になり葉が込みあってくると、アブラムシやヤマノイモコガが発生しやすくなります。発生したら、茎葉の裏側や先端部分に下記薬剤をていねいに散布してください。また、葉渋病や炭疽病にも注意が必要です。
アブラムシ、ヤマノイモコガの使用薬剤:トレボン乳剤、マブリック水和剤20
葉渋病の使用薬剤:Zボルドー、ラビライト水和剤
炭疽病の使用薬剤:ダコニール1000
茎葉が黄化し、養分の転流蓄積を開始します。褐色落葉が進行し、先端部まで葉色が褐色に枯れ上がるころ、地表面の茎を10cm残して刈りとります。この刈り残した茎が枯れ上がるまで地中のイモを成熟させてください。茎葉が枯れても根が養分を吸収してさらに甘みを増加させます。
掘り上げが早いと、収穫したイモの切り口やすりおろしが褐色に変色する場合がありますが、これはポリフェノール系物質によるもので、成熟とともに減少するので、成熟を待って収穫しましょう。
泥つきのまま新聞紙に包んで、風通しのよい場所や冷暗所で保存してください。長期間保存したい時は、少し湿らせたおがくずや土に埋めます。また、春になって芽が出てしまった場合は、芽の摘みとりやカットをすると、イモの劣化を遅らせることができます。