夏まき野菜 上作のポイント
ダイコンの品種は多彩。丸い桜島ダイコンは世界で最も大型の野菜で、重さが10kgにもなり、細長い守口ダイコンは長さが1mを超えるものまであります。しかもダイコンは生長に応じた利用ができ、子葉の時はカイワレダイコン、間引いたものはオロヌキダイコン(「疎抜き」と書き、間引きのこと)や葉ダイコンとして、最後は根と葉を収穫します。
ダイコンの辛味成分はイソチオシアネートで、食欲を増進します。また、消化酵素のジアスターゼは胸やけ、胃もたれを解消してくれます。葉にはビタミンC、葉酸、カルシウムが含まれ、食物繊維も豊富なので、家庭菜園では新鮮な葉も大いに利用しましょう。
畑を深く耕して土を細かく砕き、タネまきの2週間前に、1m2当たり苦土石灰100g、1週間前に化成肥料(チッソ:リン酸:カリ=8:8:8)200gと細かい完熟堆肥1〜2kgを全面にまき、よく耕うんします。粗い堆肥は又根や曲根のもとになるので避けましょう(第1図)。
畝間は70〜80cmとし、排水がよく耕土の深い畑では平らな畝に、耕土の浅い畑では20cm程度の高畝にします(第2図)。
株間25〜30cmとし、まき床にくぼみをつけ、1カ所に5〜6粒まきます(第2・3図)。
- タネまきのポイント
- 株間は秋まきと春まきでは25cmが標準ですが、夏まきは葉が茂るので30cm程度にし、通気をよくします。密植では互いに押されて根が曲がったり、青首の色づきが悪くなったりします。
タネの深さは1cmが標準で、覆土は火山灰土のような軽い土では厚めに、粘土質の重い土では薄めにしましょう。タネまき後は、手のひらでしっかり土を押さえて、タネと土を密着させておきましょう。
1回目は本葉1〜2枚までに、子葉が不整形な株、葉が重なる株を抜いて土寄せします。2回目は本葉4〜5枚のころ、しっかりした株を1本に残し、株定めとします(第4図)。
1回目は株定めの後に、畝1m2当たり化成肥料50gを畝の片側に施して土寄せします。2回目は本葉10枚ぐらいの時に、畝1m2当たり化成肥料50gを反対側の畝の片側に施して土寄せします(第5図)。
小さい時の害虫の被害は甚大なので、初期防除に重点をおきます。アブラムシ、コナガは、オルトラン水和剤などで駆除します。
青首ダイコンは首の太さが8cmほど、重さ1kgぐらいが適期です。若どりして、若い葉も利用しましょう(第6図)。
- 肌のシミを防ぐ
- ダイコンの肌に点々と小さい水ぶくれ状のシミが現れ、その被害が大きくなるとアバタ状となって外観が著しく悪くなってしまいます。これは、ダイコン、ニンジン、ゴボウなどに寄生するキタネグサレセンチュウの被害です。このセンチュウは野菜を作り続けると、徐々に増えて被害が目立つようになります。
このような畑では、対抗植物のマリーゴールドを作りましょう。マリーゴールドの根に含まれる成分でセンチュウを防ぐ方法です。3カ月間、マリーゴールドの根を十分張らせてから、それを抜きとった後でタネをまくようにします。
- 赤芯症を防ぐ
- ダイコンを切ったら、中心部が褐変したかたい部分が…。これは「赤芯症」と呼ばれるホウ素欠乏で、山を削ってつくった畑や、低地を埋め立てた畑で見られることがあります。
赤芯症の原因は、(1)畑のホウ素が不足している、(2)気温が高くて畑が乾いている、(3)土の酸度がアルカリ性である、などです。
対策は、(1)堆肥にはホウ素が含まれているので堆肥を施す、(2)石灰質資材を多く施用しない、(3)畑の乾きが激しい時には水やりを行う、などです。
- ダイコンを収穫したら、又根のダイコンができてしまいました。
- 伸びていく直根の先端が障害を受けると、傷んだ部分に新たな根が発生し、これが太るため「又根」となったのです。原因は、(1)直根が伸びていく直下にかたい土や石などがあった、(2)畑の極端な乾燥や過湿で直根が途中で傷んだ、などです。
対策として、(1)「ダイコン十耕」といわれるように土を深く耕し、細かく砕いておく、堆肥や肥料は1〜2週間前に施し、よく土と混和させておく、(2)畝を高くつくり、水はけをよくして適度に水分を保つようにする、などが必要です。
一つだけ選ぶとすれば、生食、煮物、漬物に万能な青首ダイコンがおすすめ。おでんや風呂吹きを楽しみたいなら煮物に向く品種がよいでしょう。
耐病総太り青首ダイコンの定番中の定番。サラダ、煮物、漬物など幅広く利用できる品種で、若どりから利用でき、太くなってもス入りしにくい。
おふくろ煮物でおいしい、まさにおふくろの味。
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- 神奈川県農業技術センターなどで野菜の研究と技術指導に従事後、(社)日本施設園芸協会で施設園芸および加工・業務用野菜の生産・流通振興に携わる。現在、園芸研究家、野菜ソムリエ。