近ごろ、自宅で野菜のプランター栽培をされる家庭菜園愛好家の方々が増えておりますが、それに伴い培養土も数多くの種類が揃うようになりました。各社で値段の高いものから安いものまで、そして使用別・重量・容量の違う培養土がいくつもありますが、何を基準に選択すればよいのでしょう?
「よい培養土とは何か?」「なぜ値段に差があるのか?」
「用途別に培養土を使い分ける必要があるのか?」などをQ&Aでお答えしながら、タキイ培養土の特長を説明いたします。
安全・高品質なタキイの培養土
タキイ研究農場
増田 晃士
Q1よい培養土の条件とは?
A1
タキイでは、まず第一に「病気がなく、品質の安定したもの」と考えています。
タキイの培養土は、原料として病原菌が含まれるような汚泥や産業堆肥などは使用しておらず、病気の心配のない培養土です。原料チェックだけでなくロット別に生育試験を行っていますので、安心してお使いいただけます。
次に、保水性(水分をため込む)、通気性(培養土内に空気が多く存在する)、排水性(水をやりすぎてもきちんと抜ける)を兼ね備えた「団粒構造」がよいと言われており、タキイの培養土も厳選した原料を使用し、「団粒構造」になるように組み合わせています。
品質チェック
タキイの培養土としてロットごとにできあがった製品は、pHとECの検査だけでなく、実際にタネまきをして生育テストを行い、約2〜3週間かけて合格したものだけを出荷していく。
団粒構造の仕組み
Q2培養土の原料にはどのようなものが入っているのですか?
A2
以前の培養土には、腐葉土やバーク堆肥、赤玉土、砂など重い原料を使用していましたが、最近はピートモスやバーミキュライトなど軽くて効果の高い原料が使われてきています。
これらを主に組み合わせた培養土(堆肥や腐葉土等を使用していない)は、一般的に人工培養土と言われており、タキイの培養土のほとんどがこの人工培養土になります。
ピートモス
寒冷な湿地帯で生育している水ゴケが堆積し、分解して繊維状になったもの。保水性に優れた原料。
バーミキュライト
ひる石を高温で焼いて発泡させることで、薄い板状に多層になったもの。軽くて保水性と通気性に優れた原料。
パーライト
真珠岩を高温で焼き、発泡させたもの。多孔質で非常に軽く、通気性に優れた原料。
ココピート
ココヤシの実殻の繊維分を発酵して粉砕したもの。ピートモスよりも繊維が粗く、通気性に優れた原料。
赤玉土
関東地方に広く分布している粘土質で赤褐色の火山灰土を乾燥させたもの。保水性に優れており、粗い粒状のものを使用すると排水性が向上する原料。
鹿沼土
栃木県鹿沼地方で産出される火山灰土を乾燥させたもの。赤玉土より軽く、白っぽい。通気性と保水性に優れた原料。
腐葉土
落ち葉を堆積し、発酵させて堆肥化させたもの。バーク堆肥と同様、未熟なものは注意。保水性に優れ、微生物を多く含んだ原料。
バーク堆肥
樹皮を堆積し、発酵させて堆肥化させたもの。未熟なものは植物を枯らす可能性があるため注意。保水性に優れ、微生物を多く含んだ原料。
Q3各社で培養土の値段に差があるのはなぜ?
A3
培養土で使用している原料によって値段が変わります。
特に安く販売されている培養土の中身は、バーク堆肥や腐葉土を半分以上使用したものがほとんどです。品質のよいバーク堆肥や腐葉土は、微量要素が豊富で微生物が含まれているため、植物にとってよい効果がありますが、品質の悪いものを使用していると、根腐れを起こして枯れたりする場合がありますので、注意が必要です。タキイでは、販売する培養土には品質が常に安定した原料を使用するという理念から、バーク堆肥などは極力使用せず、ピートモスやバーミキュライト、パーライトなどの品質が安定した原料を使用しています。
培養土による生育比較
定植2週間後の画像(左:タキイ培土、右:未熟堆肥主体の培土)
未熟堆肥を使用した培養土に定植した苗は、根に悪影響を及ぼし発根を阻害する。
そのため、地上部の生育が抑制されて下葉から枯れていく。
Q4用途別に培養土を使い分ける必要はあるの?
A4
培養土は、タネまきやポットへの鉢上げ等に使用する「育苗用」、そして、プランターや鉢に苗を定植する「栽培用」と大きく2つに分けられます。
特にタネまきで使用する培養土については、培養土の品質によって発芽や生育に大きく差がでますので、粒子の均一性や袋に表示されている肥料成分を確認することが必要です。栽培用については、品質だけでなく作物1株に適した培養土の量がポイントになります。特に果菜類や結球野菜の栽培を成功させるためには、ある一定以上の培養土量を使用することが成功の秘訣です。
育苗用
タネまき用
育苗箱やセルトレイ、ポットに直接タネまきするため、なるべく粒子が細かく揃ったものを使用すると発芽が揃いやすくなります。最近では、ピートモスとバーミキュライトを使用した培養土が多く見られます。
全体的に粒子が細かく、均一に混ざった培養土。
たねまき培土
平均肥効日数が30〜40日余り続く長期肥効型でタネまき全般に適します。
■肥料添加量(mg/L)
チッソ380、リン酸290、カリ340
ねぎ培土
安定した速効性肥料と緩効性肥料を配合した平均肥効日数が60〜70日余り続く長期肥効型。
■肥料添加量(mg/L)
チッソ600、リン酸1200、カリ570
含水セル培土(初期肥効型)
発芽後約5〜7日目で肥効が落ちる完全追肥型の高温期育苗向けセル培土です。
■肥料添加量(mg/L)
チッソ45、リン酸40、カリ130
含水セル培土(中期肥効型)
平均肥効日数が約2週間で、以後追肥型の冬季向けセル培土です。
■肥料添加量(mg/L)
チッソ190、リン酸190、カリ250
鉢上げ用
使用する土の量が多いため、根腐れが起こりにくい排水性に優れた培養土が必要となります。タネまき用と違ってやや粗めの原料(鹿沼土、赤玉土)を使用している場合が多くあります
タネまき用に比べて、 やや粗めの培養土。
栽培用
細かい原料と粗い原料がバランスよく均一に混ざり合った培養土がよいでしょう。苗の定植がメインとなるため、育苗用ほど粒子の揃った高品質の原料は求められませんが、前述の通り、一部では未熟なバーク堆肥や汚泥を使用した低価格の培養土が出回っているので注意します。実際に店頭で販売されている培養土も、大半は育苗用と栽培用では粒子の大きさと均一性に大きく違いが見られます。できれば、育苗用と栽培用では培養土を使い分けるほうがよいでしょう。
原料の細粗のバランスがよい培養土。
培養土は栽培の基本となる最も重要な部分になります。よいタネと苗、栽培に適した気象条件や管理方法であっても、培養土の品質が悪ければ栽培はうまくいきません。ですから、培養土の選択が成功の半分を決めると言っても過言ではないのです。タキイでは、家庭菜園愛好家の裾野を広げるためにも、購入されたお客様がいかに失敗せず栽培が成功できるかを第一に考えた培養土開発を行って参りました。タキイの培養土は、使用したお客様が「育てて楽しむ」「見て楽しむ」「食べて楽しむ」を必ず実現できる培養土だと思っております。ぜひ一度お使いください。