緑のカーテン特集
最近いろいろなところで話題になる緑のカーテン。ベランダや窓辺にネットを縦に張り、ニガウリやヘチマ、アサガオなど身近にあるつる性植物を絡ませてつくる自然のカーテンです。誰にでも簡単にできて快適なだけでなく、たくさんの楽しい「おまけ」があるため、全国に広まりつつあります。
今年は、緑のカーテンをつくり夏の日光を遮るという自然な方法で、涼しい夏を目指してみましょう。
収穫できたニガウリとキュウリ。 | 屋内から緑のカーテンを臨むと、見事日光を遮っているのが分かる。 |
道路から見上げた筆者宅。
日光の当たる面を緑のカーテンで覆っている。
わが家で初めて緑のカーテンをつくったのは2002年、今のマンションに入居した夏のことでした。アサガオを植えて、そこからの風の通り道を家の中につくった(南と北の窓を開ける)だけで、ふと気づけば猛暑だった夏を、我慢せずに、エアコンを使うことなく過ごしていました。なぜこんなに涼しくなるのか、それは植えた植物の葉に秘密があったのです。
夏の日差しを浴びると植物の葉の表面は50℃ほどになり、そのままでは生きていけません。そこで、葉の裏にある気孔という穴から水分を出して蒸発させ、その時に葉の熱を奪っていきます。この蒸散作用によって、太陽側の葉の表面温度は約40℃に、日陰側の部分は約29℃に抑えられ、窓辺に涼しい空間をつくることができるのです。
大きな緑のカーテンができあがり、
子どもたちも大喜び!
私の勤務先の小学校で、実際に子どもたちが緑のカーテンの効果を測定しました(表1)。
これからも分かるように、気温の差はもちろんですが、実は床の温度の差が室内の環境に大きく影響してくるのです。太陽や外部からの熱を遮り、ベランダや室内の壁面、そして床の温度を上げないことが涼しさにつながるポイントです。
また別のデータでは、同じ窓辺でも緑のカーテンがある所では30℃前後、ない所では40℃を超えるなど、10℃以上も温度差が出ています(第1図)。もちろんエアコンのような涼しさというわけではありませんが、やわらげられた温度が体感できることは夏を過ごすうえで非常に助かります。
熱を遮る力はすだれで40〜60%ですが、緑のカーテンでは80%ほどといわれ、その力の大きさがお分かりいただけると思います。一番肝心なのは「体感温度」で、外部からの熱を防ぐことにより、気温は仮に32℃でも「涼しい」と感じる環境をつくることができるのです。
緑のカーテンは水のカーテン。建物や床が暖められて蓄熱するのを 防いでくれる。〈写真提供:(株)リブラン〉 |
壁面を覆った厚みのあるヘチマのカーテン。 外部からの熱を遮り、体感温度を下げてくれる。 |
植物の選び方のポイントは、葉が美しく茂る時期の長い植物を選ぶことです。
一年草で緑のカーテンの素材として最も人気があるのが、ニガウリです。育てやすいだけでなく葉の大きさがほどよく、やわらかい緑色が目に優しく、収穫を楽しむこともできるからです。かなり大きい範囲を覆いたい場合はヘチマがおすすめです。
キュウリやヒョウタンは葉が下から枯れていってしまうので、収穫を楽しむために部分的に植えるならよいかもしれません。
宿根草なら、琉球アサガオは葉がどんどん大きく茂るので便利です。秋になり、根元のあたりで切り詰めておくと、春にはまた新しいつるを伸ばします。また、風に強いブドウもおすすめの素材です。わが家では昨年4カ所にブドウを植え、不揃いながら甘い実を味わいました。ほかにも使用できる植物はたくさんありますので、ご自分でいろいろ試してみてください(表2)。