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フェイジョアを育てよう

フェイジョアを育てよう
今回は、香り高くて甘酸っぱい、ジューシーなフェイジョアにスポットを当てました。
その魅力や特性、育て方のポイントについて、幅広くご紹介します。

完熟果は甘酸っぱく絶妙な食感マイベストワンのフルーツ

 フェイジョアは中南米が原産ですが、それをニュージーランド人が自国に持ち帰って品種改良を行い、果樹として世に出して約50年が経過しています。フェイジョアは塩害に強く、生垣を形づくるような強剪定も可能です。そのため、ニュージーランドでも当初はキウイフルーツの防風対策に、生垣用樹としての需要が主でした。
一方、日本では30年ほど前に始まったキウイフルーツの栽培熱に刺激され、キウイに次ぐ新果樹としてフェイジョアが紹介されるや、瞬く間にブームになりました。あっという間にフェイジョア生産地域ができあがり、多くの果実が収穫されました。同時に、ニュージーランドからも多くのフェイジョアの果実が輸入されましたが、外観からそのおいしさの判定がしにくいうえ、輸送の都合で未完熟のまま収穫されていたために品質が悪く、店先ではほとんど売れませんでした。そのため、国内で生産された品質の高いフェイジョアの果実も、輸入果実に対する悪評に邪魔されることに。結局フェイジョア熱はあっという間に終わってしまいました。
大株に育ったフェイジョア。旺盛に生育し、密綿毛に覆われた銀白色の葉を密に茂らせる。
大株に育ったフェイジョア。旺盛に生育し、密綿毛に覆われた銀白色の葉を密に茂らせる。

日本ではそんな経歴をもつフェイジョアですが、実際には完熟果の味はリンゴ、パイナップルにバナナをミックスしたような、何ともいえぬ甘酸っぱさです。特に果肉の中心部には、グミを少しやわらかくしたようなゼリー状の部分とその周りの石細胞が多く含まれる部分との、ミスマッチともいえる食感の違いが、逆に絶妙なコンビネーションをつくり出しています。
フェイジョアを紹介する度にいっているのですが、私にとってフェイジョアは出あった30年前からずっと、秋に収穫する果実の中ではベストワンの果物です。もちろん私の経営する園内にも数品種を植えています。古くからの友人で、近くの青空市で販売するために栽培している農家から毎年いただく果実は、わが園よりも温暖な気候のためか、果実も大きく味も最高です。毎年、10月末の収穫期が待ち遠しくてなりません。

  • 開花後に子房が肥大し始めた様子。
    開花後に子房が肥大し始めた様子。
  • ユニークな姿で咲くフェイジョアの花は観賞価値も高い。虫の代わりに、長く伸びる柱頭へ受粉を促す。
    ユニークな姿で咲くフェイジョアの花は観賞価値も高い。虫の代わりに、長く伸びる柱頭へ受粉を促す。

さあ始めよう!フェイジョアの育て方

 フェイジョアはフトモモ科の常緑果樹で、グアバなどのバンジロウ類の近縁種です。原産地はパラグアイ、ブラジル南部、ウルグアイ、アルゼンチンで、山野に自生しています。国内では1970年代に需要が高まり、一時は栽培面積150ha、生産量400tを数えたこともあります。
成木は自然放任だと高さ3〜4mの潅木となり、根元から枝が多く発生します。葉は対生し表面は緑色で光沢があり、裏面は白地に密綿毛に覆われ、銀白色に見えます。葉だけを見るとオリーブと同じような色あいをしています。オリーブは生食にはできませんが、フェイジョアだと生で食べられるので、より家庭園芸向きだと思います。花は両性花で、春に発生する新梢の基部に着生します。
花の大きさは直径4〜5cmで花弁4枚の外面白色、内面淡紫色です。この花弁を口に含み歯先でかじると、ほのかに甘い味を楽しめるので、エディブルフラワーとしての用途もあります。また、花と葉が美しいので、花木としての価値も十分です。

果実の特徴

 果実は卵形、長卵形、長楕円形と品種によって形が違います。果皮表面には、濃緑色でかたくコブ状のデコボコがあります。果実の先端にはフトモモ科特有の宿存萼があり、果皮が薄く、果肉はクリーム色です。表皮の近くは石細胞で、内部は透明なゼリー状。グアバより小さい数個のタネがあります。このタネは食味上は抵抗なく食べることができ、甘酸っぱくて熟すと芳香があります。収穫期は品種によって多少異なりますが、10月下旬〜11月上旬です。果実は50〜100g程度ですが、栽培条件によっては200g以上の果実を収穫することもできます。糖度は平均15%、完熟だと19%程度です。

栽培の適地

温度

耐寒性が強く、木自体はマイナス7℃までもちますが、果実の成熟は11月以降になることが多く、成熟期の果実はマイナス5℃以下の低温にあうと果実内部が褐変し品質が低下するので、現存のミカンの産地が適地といえます。しかし「ベタがけネット」などを利用して開花の時期を早めたり、収穫期には低温に当てないようにしたりすれば、栽培は広範囲で可能です。収穫前にできるだけ温度が氷点下にならないような工夫ができれば、果実の収穫も可能です。

葉が小型なので、強風や潮風害には強い一方で、枝が鋭角に発生しやすく、果実も樹冠内部に結実するので、傷つきやすい傾向にはあります。果実生産を考えるなら、防風対策が必要です。

日照

年間を通して、十分に日光が当たる方が、木の生育もよく果実もおいしくなります。

土壌

土壌適応性は広く、あまり土質を選びません。しかし、腐植に富んだ水はけのよい土壌が最適です。

植え付け方

苗木

今でもほとんどニュージーランドから輸入され、国内で鉢上げ一作したものが販売されています。

定植適期

春の3〜4月。

樹間、列間、本数の目安

平地の場合は列間3m、樹間3m、10a当たり98〜100本。階段畑の場合は列間3.5m、樹間4.5m、10a当たり55本。

混植

1本でなる品種もありますが、2品種以上を混植するとより実つきがよいです。
定植の1カ月前までに深さ50cm、直径50cmの穴を掘り、掘り上げた土に完熟堆肥を30%程度、骨粉2kg、熔リン2kgを混ぜて植え付けます。若苗で1本主枝のものは、地上部から60cm程度で切り戻します。

開花

 1結果枝に5〜6花咲きます。「マモス」は6月に開花し、その後熟期の遅い品種が続きます。開花の順序は木の外側から始まり、次第に樹冠内に移ります。

受粉

 受粉樹を混植しても開花期がずれたり天候不順、訪花昆虫がいないと結実は不安定になります。その場合は開花期間中に、毎日毛ばたきで花をこするように人工授粉を行いましょう。

結実

 受粉が不十分な場合は落果します。樹冠上部の上向き枝に着果したものは落果しやすい傾向にあります。7月下旬には生理落果がほぼ止まり、8月下旬には果実は中指程度の大きさになります。9月に入ると急激に太り始めます。

整枝・剪定

 発芽前の3〜4月が最適です。生育が旺盛な場合は、6月に新梢の葉を10枚ほど残し、上は摘芯します。そこから発生した新梢を再度葉を10枚残し、先端を摘芯します。
間引き剪定では地際から発生する枝、および木全体の小枝を整理し、主幹内部と枝配置をはっきりさせます。木の高さが目標に達した後、木の萌芽が旺盛になった時に切り返し、枝の更新を図りましょう。

結果習性

 前年に発生した枝の先端数芽が花芽となり、その芽から発生した新梢の基部の葉腋部に結実します。

病害虫

 コウモリガが植え付け1〜2年の苗木に被害を及ぼします。その他、ハダニ、コナジラミ、ハマキムシ、ミノムシも発生する場合があります。殺虫剤による防除が必要です。
ミノムシの食害にあったフェイジョアの葉。ミノムシの食害にあったフェイジョアの葉。

木の年齢に応じた肥料の与え方

 1年間に与える肥料の総量の目安は有機質肥料1kg程度で、肥料成分としては左記を参照ください。3月下旬、6月下旬、11月中旬の3回に分けて、総量の3分の1をそれぞれ均等に与えます。
樹齢2年生/N:P:K=3:4:2
樹齢4年生/N:P:K=6:6:8
樹齢6年生/N:P:K=9:8:10

貯蔵と収穫

 フェイジョアの収穫時期の判断は、非常に難しいものです。最も分かりやすいのは、果実が木から自然に落果してから収穫することです。ただし、植え付け地面によっては、果実の傷みが生じるので、敷きわらなどしておけば傷みは少なくなります。落果前に収穫する場合は、果皮の緑色が鈍い色になり、果梗の分離層が暗い色に変わった時が目安です。
収穫後はそのままポリ袋に入れて、家庭用冷蔵庫で4〜5週間は貯蔵できます。できれば乾燥剤などをポリ袋の中に入れて、湿度を上げないように工夫すると日もちがよくなります。
収穫後すぐはかたくて食べられませんが、西洋ナシと同じく、ある程度追熟し、果実を触ってやわらかくなったら食べ頃です。

おすすめの品種

「トライアンフ」Triumph

「トライアンフ」Triumph

現在の品種の中では果実が最も大きい方に属し、果皮はかたく、デコボコがある。少しだけ長楕円形ではあるが形はよい。香りがよく豊産性。自家結実性もあるが、「マモス」と相互に交配親和性があり、結実をよくするには混植がよい。果実の大きさは100g以上。

「マモス」Mammoth

「マモス」Mammoth

果実が大きく、円形ないし卵形。果皮は「トライアンフ」より滑らかで可食部が多く香りもよい。ただし、軟化しやすく「トライアンフ」と比較して貯蔵性がやや劣る。樹勢はトライアンフよりやや弱い。結実を安定させるためには受粉樹との混植が必要。ニュージーランドでは最もおいしいとされている。成熟期は「トライアンフ」より2〜3週間早い。

「クーリッジ」Coolidge

「クーリッジ」Coolidge

中型の果実で、長円形または西洋梨形。果皮は荒く形と大きさが一定していないのが難点。毎年整枝が必要。収穫量は多く自家結実性である。

フェイジョアの実のつき方

整枝・剪定:摘芯

整枝・剪定:間引き

整枝・剪定:切り返し

大森 直樹さん

大森 直樹

1958年生まれ。岡山大学自然科学研究科修士課程修了。岡山県赤磐市にて果樹種苗会社を営むかたわら、家庭園芸としての果樹栽培の研究を行っている。