長卵形ナスのロングセラー「千両二号」のトゲをなくした品種です。名前の通り、植物体、果実のどこにもトゲが発生しませんので、管理作業や収穫時、調理の際にトゲが刺さる心配がありません。夏秋・露地栽培向けの極早生品種で、草勢が強くて安定した収量が望めます。
果実の大きさは「千両二号」と同じく100g程度です。果皮がやわらかく、煮炊きから炒め物、天ぷら、漬け物まで調理の幅が広い万能品種です。苗を購入される場合は、長期多収や連作障害回避のため、接木苗がおすすめです。購入の際のポイントは「葉が黄色く変色している苗」や「花が咲いてしまって老化している苗」は避けて、葉色が濃く、若い苗を選んで植え付けます。
家庭菜園で使ってみたい イチオシ品種!
タキイ研究農場浦霜 聡一(うらしも そういち)
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地方の在来種には、大長タイプのナスがいくつかありますが、「庄屋大長」は、それらの品種のおいしさをそのままに、在来種よりも早生で、「着果の悪さ」や「果皮色の薄さ」を改良したF1品種です。果長は35〜40cmにもなりますが、大きくなってもかたくなりにくく、焼きナスにするとふっくら仕上がります。草勢が強いため、夏場の高温期でもバテない点が長所です。
栽培上の注意点として、草勢が強いため、1段目の花を確実に着果させておかないと、草勢が強くなりすぎて以降の花の回転が悪くなります。定植後、1段目の花が開花したら、ホルモン処理剤トマトトーン50倍液を花に噴霧し、確実に着果させることをおすすめします。ハチの訪花が少ない場合、3段目まではトマトトーン処理を行うとよいでしょう。 -
果皮がやわらかく、多汁質で甘みがあり、浅漬けに最適なナスです。果形は長卵形で、極早生種のため栽培初期から多収を見込める品種です。分枝の発生が早く、やや開帳性の草姿ですので、誘引は早めに行ない、枝折れを予防します。また、水を切らしてしまうと、せっかくの果実のみずみずしさが失われ、かたくなって食味が落ちてしまいます。梅雨明け以降、高温、乾燥期に入ったら、特に多めに水をやりましょう。畝の上にわらを敷き、畝の水分の蒸発を防ぎ、地温を下げてやることも品質維持と食味維持に効果的です。
タキイ研究農場横川 武弘(よこかわ たけひろ)
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大玉トマトの中でおすすめは「桃太郎8」。販売開始から20年以上経つロングセラー品種で、優れた食味や栽培性に支えられ、長年産地の主力品種として栽培されてきました。
近年の夏越しのトマト栽培では、夏の暑さや梅雨時期の天候不順などによる草勢低下で着果が不安定になりがちですが、「桃太郎8」は元来草勢が強く、葉がしっかりと茂ることで暑さや天候不順にも左右されにくく、良質な花が咲くことで着果が安定し、おいしいトマトを収穫することができます。
栽培上の注意点として、盛夏期に相当する7〜8月は暑さの影響で花粉が出にくくなるので、受粉の補助作業としてホルモン処理剤トマトトーン150倍液での散布を3日間隔で行います。また、病害防除に関しては、葉かび病の耐病性がないので、病気の発生に気を配り、薬剤予防散布や初期防除に努めてください。 -
新発売のミニトマト「千果99」は、「千果」シリーズ由来の食味のよさを継承し、加えて異常主茎(メガネ)が出にくく改良されているので、露地栽培でも安心して栽培できるようになりました。
異常主茎は肥料の効きすぎや、天候不順などで吸収した肥料が消化し切れないことで発生しやすくなりますが、この品種はそのような状況でも異常主茎が出にくいのが特長です。
栽培上の注意点としては裂果が出やすいので、露地栽培では簡易雨よけの設置を心掛け、毎日決まった量の水を入れるようにし、潅水量のムラをつくらないことが重要です。収穫が始まり、連日30℃以上超えるような日は、1株当たり毎日2〜3Lを目安にして潅水してください。 -
調理用トマトでは、「クックゴールド」をおすすめします。通常のリコピンより体に吸収されやすいとされる機能性成分シスリコピンを多く含む、オレンジ果色の品種です。
調理用トマトの多くは、生長点が連続的に止まる芯止まり型と呼ばれる草姿で、低段に集中着果することで一斉収穫して短期間で栽培が終了するタイプが多いのですが、この品種は従来のトマトのように連続して収穫でき、長期間収穫を楽しむことができます。
栽培上の注意点としては、草勢がややおとなしいので、肥料をしっかり効かせ、草勢を少し強めに維持することを心掛けます。「千果99」と同様に異常主茎が出にくいので、積極的に追肥を施してもかまいません。
タキイ研究農場馬塲 大悟(ばんば だいご)
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露地栽培で問題となるうどんこ病とべと病に強く、さらに中程度の*ZYMVウイルス病の耐病性を備え、「夏すずみ」の作りやすさをさらにレベルアップした品種。初めてキュウリを作られる方や農薬に頼らない栽培をしたい方におすすめです。
草勢は夏すずみよりも強く、つる伸びもよくなっているので、栽培後半も側枝が安定して発生します。側枝の果実をすべてとり終えるころからは、茂りすぎないように摘葉や病葉の除去を定期的に行い、スッキリした状態を維持すると栽培後半も質のよい果実がたくさん収穫できます。 -
「Vアーチ」は葉が小さく、節間も間延びしないので、整枝などの作業が省力でき、後半は半放任栽培が可能です。推奨の作型は普通露地〜露地抑制です。うどんこ病、べと病、*ZYMVウイルス病に耐病性であるため、農薬の使用を控えることができます。また、高温でも雌花が安定して着生するため、多収を目指したい方におすすめです。
栽培のポイントは、定植後から潅水をたっぷり行い、しっかりとした株を作ります。枝発生が鈍い場合には、主枝10節を目安に雌花を除去します。最初の果実が肥大し始めたタイミングで追肥は始め、草勢を落とさないように注意します。尻太果などのなり疲れが見られる場合には、薄めの液肥(1000倍)を潅水時に繰り返し与え、さらに、不良果の摘果を行って草勢の回復を図ります。収穫最盛期を過ぎたら草勢の低下を招く芯摘みは控え、茂りすぎないように摘葉を適宜行います。 -
四葉系の「シャキット」の特長は歯切れのよい食感と作りやすさです。外観はイボが多く存在感がありますが、中の果肉はやわらかく、みずみずしいのでキュウリ本来のおいしさが感じられます。おいしいキュウリといえば「シャキット」という声も多数いただいており、特に家庭菜園をする方に人気が高い品種です。
栽培面においては、ウイルス病(*ZYMV)をはじめ、うどんこ病とべと病に耐病性で減農薬栽培が可能です。葉が大きく、初期より草勢が強いので元肥はやや少なめにして、1〜2本収穫が始まってから追肥を開始することが上作のポイントです。
*ZYMV=ズッキーニ黄斑モザイクウイルス
※この印の品種には、若干のオフタイプが発生することがあります。切れ込みの深いギザ葉の苗は定植しないでください。
タキイ研究農場阪口 敬太郎(さかぐち けいたろう)
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おいしくて、作りやすいカボチャの定番は「えびす」でしょう。甘みが強く、うまみ成分で知られるグルタミン酸を多く含み、特に煮物におすすめです。また、樹勢が中庸でつるボケしにくく、着果や果実肥大も非常によいので多収となり、産地のプロの皆さまに半世紀以上ご愛顧いただいているほか、家庭菜園でも育てやすいと人気の高い品種です。
元肥は1m2当たり堆肥2kg、チッソ10〜12g、リン酸15〜20g、カリ10〜12gを基本に施し、着果までに十分な体づくりを行うほか、着果後に1m2当たりチッソ3g程度の追肥を行うと、食味と収量性がさらに向上します。
収穫適期は果梗部のコルク化の状態で判断し、収穫後、風通しがよく直射日光の当たらない場所で10日ほど寝か せると、甘みが乗っておいしくなります。 -
食べきりサイズで便利なミニカボチャ「ほっこり姫」。おいしさが小さな玉にギュッと詰まった濃厚な味わいで、ふかしただけでもおやつとして楽しむことができます。カボチャの皮はかたいので調理も大変ですが、「ほっこり姫」ならラップに包んで電子レンジで加熱すればやわらかくなるので、簡単に切り分けて調理できます。
また、収量性も高く、大玉品種レベルの多収が期待できます。かわいいカボチャがコロコロなる様子は見ていて楽しいもの。ぜひお子さんと一緒に菜園で作ってみてはいかがでしょうか。栽培ポイントは、元肥のチッソを1m2当たり8g程度に抑えることと、株元から6節目以降の雌花すべてに着果させることで、そのほかは「えびす」に準じます。 -
ユニークなラグビーボール形の「ロロン」は、ホクホク感、滑らかな舌触り、濃厚な甘さにこだわった、カボチャのおいしさを極めた品種です。煮物や天ぷらはもちろん、スープに利用するととても濃厚に仕上がりますし、カボチャプリンなどスイーツのこだわり素材として利用しても仕上がりに差が出ます。栽培方法は、元肥のチッソを1m2当たり8g程度に抑えること以外は、「えびす」に準じます。
タキイ研究農場神戸 雅人(かんべ まさと)
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「キャンベラ90EX」は、倒伏に強く、安定した穂形状で、糖度も高くて家庭菜園におすすめの作りやすい品種です。熟期は中生で、一般地マルチ栽培の場合、播種後約90日が収穫の目安となります。
根張りがよくて、株がしっかりしているので風が吹いても倒れにくいのが特長です。甘さが強く、粒皮がしっかりとしているため、ゆでてから網焼きにしても身崩れしません。また、粒色が濃く、加熱することでより鮮やかな黄色になり食欲をそそります。秋の行楽シーズンはバーベキューでコーンを味わってみてはいかがでしょう。
秋収穫の場合、最暑期での生育になるため、高温下でも株生長が早まりすぎず、一定のペースでしっかりと株を作ることが重要です。その点、「キャンベラ90EX」はじっくり型ですのでこのような作型にも適します。抑制栽培の播種は7月下旬〜8月上旬に行い、10月下旬までに収穫します。 -
生育が旺盛で倒伏に強く、栽培性が高い品種です。熟期は82日タイプの極早生品種で、俵型の美しい穂形状と肥大力が特徴で、穂の先までしっかりと粒が詰まります。
可食部が多く、大粒で食べごたえがあり、ただ甘いだけでなくコーン特有の豊かな風味が広がりますので、ゆでるのはもちろんのこと、焼いたり、レンジで調理したり、サラダやスープなどの料理への利用がしやすい品種です。 -
バイカラー種で草勢が強く、がっしりとした株を作ってから穂をつけるので倒伏に強く栽培が容易です。播種後約86日が収穫の目安となります。
特長は、抜群のボリュームです。通常の品種より一回りほど大きく、先端までしっかりと着粒するためボリューム満点で、粒色が濃く黄色と白のコントラストが美しい品種です。
甘さは十分で、粒皮がしっかりとしているため、ゆでても焼いても身崩れせず、サラダからカレーなどの煮込み料理まで幅広く使用できます。
タキイ研究農場前田 匡夫(まえだ まさお)
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土壌を選ばない栽培安定性をもち、根部病害であるしみ腐病にも強いため、非常に作りやすい品種です。
1985年の発表以来、抜群の作りやすさから、今でも全国の産地で利用されています。家庭菜園でも高い実績がありますので、初めて春まきニンジンを作る場合は、まずはこの品種「向陽二号」を栽培されると安心です。
栽培時に注意する点はすべてのニンジンにいえることですが、排水対策です。極端に水はけの悪い畑では、病気だけではなく、生育不良や裂根も助長します。緑肥や堆肥などの有機物の投入や、高畝栽培の実施などの排水対策を行い、水はけに優れる畑づくりを心掛けてください。 -
歯切れのよい肉質で甘みに富恋ごころ」は特に食味に優れます。根色も表皮、芯ともに鮮濃紅色に着色するため、ジュースやサラダといった生食用から惣菜加工用まで、幅広い用途に適しています。
栽培ポイントは春まきで特に注意が必要な病気、しみ腐病の対策です。根の肥大期に、この病気の原因となる糸状菌が、高温多雨により活発となるためです。畑に有機物を投入することで、有用な微生物の密度を高めるとともに、連作を避けて、菌の密度を高めないように心掛けます。播種前に殺菌剤を用いることや、畑の排水対策に努めることも有効な防除手段です。 -
「Dr.カロテン5」は収穫物が濃鮮紅色で、食味がよく、品質に優れます。また、草勢が強いため、減農薬・減肥栽培にチャレンジしたい方にもおすすめできる、たいへん作りやすい品種です。
春まき栽培のポイントは、生育後半が高温時期に当たるため、施肥量に注意することです。チッソ成分が多すぎると、葉が強くなりすぎて、根の肥大が悪くなり、また、病気や害虫が発生しやすくなるためです。本種を栽培する場合の施肥量の基準は、「向陽二号」の2割減程度を目安としてください。