タネイモの切り分け方は、親イモにつながっていたヘソの部分を下に、反対側の芽が集中している部分を上にして、縦切りにするのが基本(輪切りにしないこと)。切り分けたら、殺菌のため切り口に灰をまぶすか、日光によく当てて乾燥させてから植え付ける。
東京「大泉 風のがっこう」体験レポート 野菜作りはこんなに楽しい!
農業体験農園「大泉 風のがっこう」の授業を、毎回、生徒の目線でレポートします。
通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開します。
実践的なノウハウを、ぜひ家庭農園で参考にしてください。
野菜別栽培ポイント
同じイモ類でも植え付け時期が異なる!ジャガイモ、サトイモ、
サツマイモ
毎年3月中旬に開校する体験農園「大泉 風のがっこう」で、
真っ先に植え付けるのがジャガイモです。
白石さんの畑ではサトイモやサツマイモも栽培しているので、
今回はイモ類の栽培ポイントを教えてもらいました。
ジャガイモ
体験農園の春の野菜作りはジャガイモからスタートします。タネイモを地中深く埋めるので、地上に芽が顔を出すころにはすっかり暖かくなって、霜が降りる心配もなくなっているはず。5月中旬には可憐な花を咲かせ、6月下旬には生い茂っていた葉や茎が枯れ始めます。ここで、いよいよ収穫です。
白石さんの生産用の畑も体験農園も、ジャガイモの植え付け方は基本的に同じです。そのポイントは「石灰を使わないこと。アルカリ分が強すぎて、そうか病にかかりやすくなります。それから、同じ畑での連作は避けること。この二つは絶対に守ってください」とのこと。6月から7月上旬の梅雨の晴れ間に収穫したジャガイモは、コンテナに入れて常温で暗い所に保存し、11月まで少しずつ出荷し続けるそうです。
味はいかがですか?「正直なところ、秋の北海道の新ジャガ、あのホクホク感には勝てません。でも、ポテトサラダや煮物にはピッタリですよ」。そのメニューはわが菅野家の食卓でも好評です。
白石さんの畑では3月10日前後にタネイモを植え付ける。写真は5月19日の様子。順調に生育して葉が生い茂り、可憐な花もたくさん咲いている。
男爵薯(だんしゃくいも)
梅雨の晴れ間に収穫した白石さんの畑の「男爵薯」。日本で一番食べられているとされるジャガイモで、ホクホク感が特長。「梅雨のない北海道では、畑の土が乾燥しているでしょう。そういう所で育ったジャガイモは、ホクホク感がすばらしいわけです。それには勝てないけど、うちの男爵薯もおいしいですよ」と白石さん。
キタアカリ
「男爵薯」の改良品種で作りやすく味もよい。ビタミンCが豊富で、電子レンジでの調理に最適。白石さんの畑では、このほかに「メークイン」も栽培している。
ジャガイモの栽培カレンダー
実際に「大泉 風のがっこう」で作業した日付で具体的に紹介します(一般平坦地基準)。
※タキイの通販ガイドなどに記載の適期表とは時期が異なることもありますが、ご了承ください。
土づくりは数週間前に
体験農園でも、白石さんの畑でも、ジャガイモ植え付けの数週間前に堆肥を1u当たり約2s全面散布して、よく耕し土となじませています。全面散布しない場合は、タネイモを植え付ける際に、溝の長さ1m当たり約1sの堆肥を化成肥料と一緒に投入しましょう。
植え付けタネイモは適したサイズに切り分け、切り口を下にして植え付ける
1クワの刃先で土を削りとるようにして、クワの幅で深さ20pほどの溝を掘る。溝の底に化成肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)1m当たり約200tを目安に散布(事前に堆肥を全面散布していない場合は、化成肥料と一緒に溝の長さ1m当たり1sの堆肥も投入)し、土とよく混ぜあわせる。その後、深さ10pくらいまで土を埋め戻しておく。
タネイモの切り分け方
タネイモにはS、M、Lサイズがあります。入手したタネイモの大きさによって切り分けましょう。その目安は、S(40〜60g)なら2等分、M(60〜120g)なら3等分、L(120〜190g)なら4等分にします。
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タネイモの切り口を下にして30p間隔で配置し、溝に土を埋め戻したら軽く踏みかためておく。「土とタネイモが密着し、霜を防ぎます」と白石さん。
追肥と土寄せ5月中旬に追肥と土寄せを。肥料のやり過ぎは厳禁!
タネイモ1個から4〜6本の芽が出てくる。5月上旬に元気のよいものを2〜3本残して芽かきをしたら、5月中旬に畝の周りに化成肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)1u当たり約200tを散布し、軽く耕して土と混ぜあわせる。
ジャガイモは、株の脇に出た茎が膨らんでイモになる。「株元への土寄せが少ないと、イモが緑化して食べられなくなるので気をつけて」と白石さん。
収穫地上部がほとんど枯れたら収穫のサイン。天気のいい日に一気に掘り上げる
ジャガイモの収穫は6月〜7月上旬。白石さんの畑では毎年6月中旬から新ジャガの出荷が始まる。目安としては、写真のように葉が黄色くなり株が倒れてくれば収穫適期。私の畑では梅雨明けの7月上旬、土がすっかり乾いてから収穫した。
株元をしっかり持って引き抜く方法もあるが、小さなイモが土中に残ってしまうのが心配で、株の周りの土をスコップで掘り起こすことにした。
ジャガイモが見えてきたら、傷つけないように小さなショベルや指先で掘り出す。ちょっと慎重すぎるかなぁ?
サトイモ
サトイモはその地域でよく作られている品種を選ぶのがおすすめです。寒さに弱いので早植えは禁物(植え付けは4月中旬以降に)。また、乾燥にも弱いので夏場の水やりも大切です。 畑の仕立て方は、まずクワの幅で深さ30pほどの溝を掘り、元肥として溝の長さ1m当たり化成肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)約200tと堆肥約3sを溝の底にまんべんなく散布し、土を平らに埋め戻します。その上に穴なしビニールマルチを敷き、溝に沿って60p間隔(株間)で穴をあけたら、芽を上にしてタネイモを植え付け、芽の先が5pほど埋まるように土をかぶせます。「霜に当たって芽が凍らないように」と白石さん。サトイモの魅力は?「何といっても、掘りたてのイモを皮のまま蒸した、あのみずみずしさとホクホクした食感でしょう」。同感です!
サトイモの栽培カレンダー
4月中旬の植え付けから約半年後のサトイモ畑。梅雨の初めにビニールマルチをはがして1回目の追肥(化成肥料1u当たり約100t)と土寄せ、梅雨の終わりに2回目の追肥(1回目と同量)と土寄せをしている。
10月下旬、サトイモの試し掘り。根元近くで茎をカットする。
株の周りにスコップを差し込み、土がついた塊のままで親イモと子イモをまとめて掘り上げる。
親イモを中心にして子イモや孫イモが塊になっている。貯蔵する場合は、このまま新聞紙でくるみ、ダンボールや発泡スチロールの箱に入れておくと、乾燥を防ぎ日もちがする。白石さんは畑に穴を掘り、室をつくって貯蔵している。
出荷の際は、室からイモを掘り出し、土を落とす。「サトイモ生産は、けっこう手間がかかるんです」と白石さん。親イモも食べられますか?「適当な大きさに切って煮込めば、食べられますよ。ちょっとゴリゴリと歯ごたえはあるけど(笑)」
ねっとりした食感で味がよいヤツガシラも作っています!
サトイモの中で姿も味もかなり違うのがヤツガシラ(八ツ頭)。「サトイモは大きな親イモにたくさんの子イモがついているけど、ヤツガシラは親イモと子イモがひとつの塊になっていて、本当に八つの頭があるみたいでしょ?」と白石さん。ねっとりした食感と味のよさで、お正月のお節料理に欠かせない食材として生産しています。
ヤツガシラは茎もおいしく食べられます。「いわゆるズイキです。甘辛く煮ても、酢の物にしても、みそ汁に入れても、なかなか絶品。うちの奥さんの得意料理です」と、白石さん。それはぜひ一度ごちそうになりたいもの!
根元からカットした茎の部分がズイキ。1株から一抱えもあるズイキが収穫できる。しゃんと元気に立っているうちに収穫することがポイント。
「ヤツガシラ」は中心にある親イモ(タネイモ)と同じくらいの大きさに育った子イモが、一つの塊になる。調理する時は包丁で切り離す。
サツマイモ
サツマイモはジャガイモやサトイモと異なり、植え付けるのはタネイモでなく、発芽して20pほどに伸びた芽の部分。栽培のポイントも違います。「肥料は少なめで育てるのがサツマイモ」と白石さん。
畑に堆肥を1u当たり約2s全面散布して耕し、幅80p、高さ30pの畝をつくって、35p間隔で苗を植え付けます。「船底植えといって、土を船底のように浅く掘り、その中に苗を寝かせます。苗の先が埋まらないように気をつけながら全体に土をかぶせてやると、葉の付け根部分から発根します」と白石さん。定植後は手間もかからず、初心者にもおすすめ!私も育ててみたいです。
サツマイモの栽培カレンダー
紅あずま
ポピュラーな品種で、病気に強く、イモの肥大が早い。おすすめは何といっても焼きイモ。皮をむくと鮮やかな黄色で、甘くてホクホクした食感が楽しめる。
パープルスイートロード
紫イモの人気品種。収穫したてをカットしてみるとご覧の通りの鮮やかな色。栽培方法は「紅あずま」と変わらない。加熱しても色が変わらないので、お菓子の材料やサラダの彩りとして人気が高い。あっさりした甘みでホクホク感がある。紫色には目によいといわれるアントシアニンが豊富に含まれている。
切ると鮮やかな紫色で、すぐさま糖分の白い液が染み出てくる。
白石さんのサツマイモ畑、8月27日の様子。サツマイモの場合、土中のチッソ分が多いと葉ばかりが茂ってイモは太らない。そのため白石さんの畑では化成肥料を使っていないのだが、それでもこんなに繁茂するのだから本当にたくましい。
サツマイモの収穫適期は10月中旬から11月中旬。収穫前に地上部のつるや葉を刈りとっておくとイモを掘り出しやすい。
よい土をつくるには
〜団粒構造と落ち葉堆肥について〜
野菜の栽培には、どんな土が適しているのでしょうか。白石さんに聞いてみました。「よい土は、握ると固まるけど、つつくとすぐ崩れるような土です。団粒構造といって、細かい粒子がくっつきあい、塊になっています。土の中に適度なすき間ができて、空気や水分や栄養分がとどまりやすく、根も張りやすくなります。団粒構造の土をつくるには、落ち葉を発酵させた腐葉土を堆肥として入れるのが一番です。何百年、何千年もの時間をかけて原生林に堆積した、あのすばらしい腐植土のようにはいかないけれど、自然の営みをできるだけまねながら、短期間で豊かな土をつくりたい。それには落ち葉に米ぬかや鶏ふんなどを混ぜ込み、水分を加えて発酵・熟成させた堆肥が最適なのです。ところが…」と白石さんは少し怒ったような口調で続けました。「福島の原発事故の影響で、この4年間は落ち葉の堆肥がつくれないため、次善の策として牛ふんとチップを混ぜた堆肥でまかなっています。それがちょっと残念で…」。落ち葉堆肥の復活が待ち遠しいです。
体験農園では利用期間終了前に利用者がそれぞれの畑に堆肥を散布する。2月中旬、白石さんがトラクターで畑を耕うんして堆肥を土になじませ、新年度のスタートに備える。
教える人白石 好孝 (しらいし よしたか)
東京都練馬区大泉で300年続く白石農園・園主。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」を主宰。実践で培ったノウハウを体験農園での指導に生かし、野菜作りの魅力を多くの生徒たちに伝えている。NPO法人「畑の教室」代表。
教わる人菅野 俊一郎 (かんの しゅういちろう)
コピーライター。50代になって、ふとしたきっかけから「大泉 風のがっこう」で人生初の野菜作りに出会う。野菜を育て味わう楽しさに魅了されて、まもなく10年。その間、白石さんの教えを守らず失敗した経験多々。今回は基本に忠実に実践!
「はなとやさい」2016年2月号より
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