教える人白石 好孝 (しらいし よしたか)
東京都練馬区大泉で300年続く白石農園・園主。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」を主宰。実践で培ったノウハウを体験農園での指導に生かし、野菜作りの魅力を多くの生徒たちに伝えている。NPO法人「畑の教室」代表。
農業体験農園「大泉 風のがっこう」の授業を、毎回、生徒の目線でレポートします。
通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開します。
実践的なノウハウを、ぜひ家庭農園で参考にしてください。
1年の始まりは、ちょうど畑の栽培計画を立てる時期。
そこで、プロの農家、白石さんの畑の栽培計画をご紹介します。
どの時期にどの野菜を作るか、じっくり計画を立ててみてください。
定番野菜のほかに、ぜひ新しい野菜にも挑戦を!
おかげさまで連載レポートも2年目を迎えました。そこで改めて白石さんに農家の野菜作りのポイントを伺ってみました。
「野菜作りといいますが、基本的に、野菜は作るものではなく育てるもの。その生命の営みをサポートするのが、われわれ農家の仕事です。自然界の中で育っていく野菜たちに、われわれが何をしてやれるのか。大事なポイントは@適期適作の品種を選ぶ、Aよい土壌環境をつくる、B病虫害から守る、この三つです。例えば春と秋では、それぞれの季節にあった品種を選ぶ必要があります。また、よい土をつくってあげることや、気温や日照の変化に応じてビニールマルチや寒冷紗で環境を整えてあげることも大切です。病気や虫の被害にあわないように、いろいろ工夫しなければならないこともあります。これらは人間でなければできないことです」
そこで今回は「適期適作の品種選び」について詳しく教えていただきました。白石さんは自分の畑で、どの時期に、どんな野菜を育てているのでしょうか。これまでの体験農園の作付け予定表にはない、ズッキーニ、タマネギ、ソラマメなどの品目もあり、こんな野菜も育てていたのかと驚きです。
さて、これからご紹介する栽培カレンダーは、夏の果菜類、季節を通して活躍するデイリー野菜、じっくりおいしく育てる野菜、夏から秋のタネまきで旬の味を楽しむ野菜、と四つのグループに分けてまとめました。これを元に、今年の栽培計画を考えてみてください。
栽培カレンダー1
※栽培カレンダー1〜4では、実際に白石農園(東京都練馬区)で作った時期を紹介しています(一般平坦地)。タキイの通販ガイドなどに記載の適期表とは時期が異なることもありますが、ご了承ください。
丸ナス、米ナス、ヒモナスなど、ナスにはいろんな形があるので、少しずつ異なる品種を育ててみても楽しそう!
ラッカセイは漢字で書くと「落花生」。そのイメージの通り、花が自家受粉した後、子房の付け根が土の中に潜り込んでピーナッツの実になる、じつに不思議な野菜。
昨年まで定番で作っていた「夏すずみ」がウイルス病に強い「VR夏すずみ」に。耐病性が強くなると家庭菜園でも作りやすい。
ヒョウタンみたいな形のユニークなカボチャ「バターナッツ」もおすすめ。「なめらかな肉質でポタージュにするとおいしいですよ」と白石さん。
栽培カレンダー2
生で食べるとおいしい赤軸ホウレンソウ「早生サラダあかり」
赤紫色の軸が美しいミズナ「紅法師」。
ハクサイの「きらぼし65」は、春まきも可能な晩抽早生種。ただし、タネまきから育苗の期間中は温床栽培が必要なので、設備がない場合は夏まきがおすすめ。
夏以外はいつでも収穫可能な短形ダイコン「三太郎」。
秋にまいたタネがまだ残っていたなあ。もったいないから春にもまいちゃおうか。「それは、やめた方がいいですね」と白石さん。「野菜の生育には春のステージと、秋のステージがあります。春は気温が上昇し暖かくなりますが、その反対に、秋は気温が下がり涼しくなっていきます。こうした生育環境の違いを見極めて、季節にあった品種を選ぶ必要があるのです。春まきは、暖かくてもじっくり育つ品種を。秋まきは、寒くなってもどんどん育つ品種を選びます。そしてもう一つのポイント。秋まきのタネを春にまくとトウ立ちしやすいので、特にダイコンやホウレンソウは注意しましょう」
秋まき初夏どりに向くキャベツ「YR春空」。
7月中旬から8月上旬のタネまきに向くキャベツ「コーラス」。
栽培カレンダー3
栽培カレンダー4
とりたてのソラマメのおいしさは格別。それを味わいたいならぜひ自分で育ててみて!
「スナップエンドウはとりたてをさっとゆでてマヨネーズで食べるとおいしいですよ」と白石さん。
ブロッコリーやカリフラワーは収穫後も蕾がどんどん開いてしまう(開花)ので、早めに食べた方が絶対美味。ユニークな形のロマネスコも育ててみよう!
白石さんはかつて市場出荷向けの野菜作りをしていましたが、市場出荷を徐々に減らして直接販売に切り替え、体験農園も手掛けるようになりました。その過程で品種選びのポイントが大きく変わったそうです。「市場出荷向けで重要なのは@収穫の安定性、A収量、B病虫害への耐性。おいしいだけでなく、形がきれいに揃って、しかもたくさん収穫できることを重視します」。では直売向けや体験農園の場合は?
「味が最優先!形が不揃いでも構わないし、一度にたくさん収穫できなくてもいい。むしろ収穫時期にばらつきがある方が、大きくなったものから収穫して楽しむことができるでしょう」。優先順位を決めて、それにあった品種を選ぶ。これはプロならではの卓見ですね。参考にしてください。
中玉トマトの「フルティカ」は直売所でも人気の品種。
東京都練馬区大泉で300年続く白石農園・園主。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」を主宰。実践で培ったノウハウを体験農園での指導に生かし、野菜作りの魅力を多くの生徒たちに伝えている。NPO法人「畑の教室」代表。
コピーライター。50代になって、ふとしたきっかけから「大泉 風のがっこう」で人生初の野菜作りに出会う。野菜を育て味わう楽しさに魅了されて、まもなく10年。その間、白石さんの教えを守らず失敗した経験多々。今回は基本に忠実に実践!
「はなとやさい」2016年1月号より
花と野菜はもちろん、果樹、山菜など、多岐にわたる植物の育て方や新品種情報、さらにガーデンデザインや土づくり、病害虫防除等々…、
花作りと野菜作りに不可欠なさまざまなジャンルの情報を、季節に応じて毎月解説してきます。
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