教える人白石 好孝 (しらいし よしたか)
東京都練馬区大泉で300年続く白石農園・園主。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」を主宰。実践で培ったノウハウを体験農園での指導に生かし、野菜作りの魅力を多くの生徒たちに伝えている。NPO法人「畑の教室」代表。
農業体験農園「大泉 風のがっこう」の授業を、毎回、生徒の目線でレポートします。
通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開します。
実践的なノウハウを、ぜひ家庭農園で参考にしてください。
ソラマメ、エンドウは10月下旬から11月上旬がタネまきの適期。
冬を越しておいしいマメが収穫できるのは初夏のころ。少し時間はかかりますが、
その新鮮なおいしさをぜひ味わってみてください!
秋に育苗、定植をしたソラマメは、露地で冬の寒さに耐えながらじっくり育ち続け、春から初夏にかけて収穫が楽しめます。「出荷するにはまだ早いくらいの、ちょっと若めのものを収穫し、ゆで上がったマメを皮付きのまま味わう…そうすると、なんだかとても春を感じるんですよねえ」と白石さん。「その甘くてやわらかい食感が、熟したマメのほろ苦さとは違う、若いソラマメだからこその魅力」なのだそう。ちなみに体験農園は3月から翌年1月が期間なので、更新時期をまたぐ栽培となるソラマメは作ったことがないのです。
それでは栽培ポイントを。一つ目は育苗です。「畑に直まきするより、小さなポットで育苗したものを畑に定植する方がおすすめです。これまでの経験からいって、その方が発芽までの管理がしやすいし、定植後の生育もよいですね」。二つ目のポイントは定植。「土づくりでは、ソラマメを植え付ける場所の真下に元肥をしっかり入れておくことが大事です。ただし、チッソ成分が多すぎると根粒菌の働きが悪くなるので注意してください。定植後は寒冷紗をかけておきます。こうすると虫よけや鳥よけになりますし、冬場の保温効果も見込めます」。そして三つ目は、春先の支柱立て。「ソラマメの株は倒れやすいので、支柱と麻ひもを上手に使って支えてあげましょう」。
莢は鮮やかな濃緑色で3粒莢が多く、やわらかくて甘みに富んだ大粒の実になるなど、農家にとっても魅力たっぷりのソラマメ品種。「生育が旺盛で育てやすいから、家庭菜園にもおすすめです」と白石さん。
実際に「大泉 風のがっこう」で作業した日付で具体的に紹介します(一般平坦地基準)。
※タキイの通販ガイドなどに記載の適期表とは時期が異なることもありますが、ご了承ください。
育苗用の培養土を用意し、直径6〜8pのポットに入れ、ソラマメのタネを2粒まく。おはぐろ(黒いスジの部分)を下にして、タネが土にぎりぎり隠れるくらいに埋める。
発芽し、本葉が出たら、1株に間引く。本葉を鳥にねらわれないよう寒冷紗などのネットをかけておくことも忘れずに。
発芽し、本葉が出たら、1株に間引く。本葉を鳥にねらわれないよう寒冷紗などのネットをかけておくことも忘れずに。
(1)タネまきの2週間前までに幅60pの畝に1u当たり苦土石灰カップ小2分の1を全面散布し、よく耕しておく。(2)タネまきの1週間前までに、苗を植え付ける場所を中心に、クワの幅で深さ20p程度の溝を掘り、溝の底に1u当たり牛ふん堆肥カップ大2、配合肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)カップ小4分の3、ヨウリンもカップ小4分の1をまいて土となじませ、溝を埋め戻す。(3)ベッドをつくり、30〜40p間隔で苗を1株ずつ植え付ける。
アブラムシなどの害虫がつきやすいので、定植後に必ず寒冷紗をかけておく。冬の間は風よけや防寒対策としても効果がある。
春先になって枝が伸び始めたら寒冷紗を外し、畝の両側に支柱を立てる。支柱の間に張り巡らせた麻ひもで、生長した株が倒れないように支える。写真は支柱を立てた後に花が咲き始めた様子。
花が咲き始めたら追肥をする。畝の両側に浅く溝を掘り、畑1u当たり配合肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)カップ小4分の3を溝に散布して土を埋め戻す。
ソラマメの莢が5〜6段までついてきて、順調に生育している。莢が空に向かって突き出すように伸びているのが分かりますか?
莢が下向きに垂れてきたら、ちょっと若めのうちに収穫を。やわらかく甘みがあっておいしい。収穫せずにおいておくと、だんだんマメがかたくなるので注意。
「エンドウといえば、かつてはキヌサヤでしたが、最近はスナップエンドウが大人気ですよ」と白石さん。白石農園では早めの収穫や収量アップのためにハウスで栽培されていますが、もちろん露地でも問題なく育てられます。ところで、エンドウのマメが熟したものがグリーンピースになり、未熟な状態で莢ごと食べるものがスナップエンドウやキヌサヤだということ、ご存じでしたか?私は知りませんでした…。
それでは白石さんが実践するエンドウの栽培ポイントをご紹介しましょう。「(1)タネは1カ所に4〜5粒ずつ直まきにします。鳥にねらわれないよう、発芽するまでは寒冷紗で覆っておくことを忘れずに!冬場の保温のために春先までそのままにしておきます。(2)間引きはしません。何本もの苗が寄り添うように育てます。(2)エンドウは自立できないので、早めに支柱やネットを使い、つるが巻きつくように仕立てます。かつては、枝がついたままの竹などを支柱にして、そこにエンドウのつるを這わせていたのですが、今はエンドウネットという専用ネットやキュウリネットが使えるので本当に便利になりました」。なるほど栽培方法も進歩しているんですね。
さっとゆでるとさらに鮮やかな緑色に。お吸い物に入れたり、親子丼の上にのせたり、キヌサヤは日本料理の名脇役。
タネまきの7〜10日前までに、1u当たり牛ふん堆肥カップ大2、配合肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)カップ小4分の3、ヨウリンもカップ小4分の1を散布して、よく耕しておく。
30p間隔で1カ所に4〜5粒のタネをまく。土を一にぎりまいて、上から軽く叩き、タネを土と密着させる。
エンドウの小葉もソラマメ同様マメの中にあるので、地上にはいきなり本葉が現れる。
(1)長さ240pの支柱を畝の両側に立てる。(2)支柱の下から30p(1段目)、1m(2段目)、2m(3段目)の高さの所に麻ひもを渡す。(3)支柱と麻ひもを利用してエンドウネットまたはキュウリネット(メッシュ間隔20p程度)を張り巡らせ、エンドウの株を両側から挟み込むようにする。
本葉が数枚出た後は地を這うようにつるが伸びてくる。
エンドウは生育旺盛で、どんどんつるが伸びていく。支柱と麻ひもとネットを使ってエンドウのつるが絡むように立体的に仕立てる。花が咲いたら1回目の追肥をする。畝の両側に溝を掘り、畑1u当たり配合肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)カップ小2分の1を溝に散布して土を埋め戻す。写真はキヌサヤ。
下の方からどんどん莢がつくので、収穫も忙しい。キヌサヤは、未熟な状態の莢だからこそ、おいしい。莢の中のマメが膨らんでくると、グリーンピースになる。
たすき掛けにしたカゴに、収穫したエンドウを入れていく白石さん。「スナップエンドウは、キヌサヤよりも大きくふっくらさせてから収穫します。キヌサヤは料理の添え物に利用しますが、スナップエンドウはゆでたものをそのまま食べると、歯応えがあって食べ応えがありますね」。
ふっくら育ったスナップエンドウは食べ応えがある。
莢ごとゆでたものにマヨネーズをつけて食べる。そんなおつまみ感覚で味わえるのがスナップエンドウの魅力。
若々しく繊細な食感が魅力のベビーリーフを、ぜひ朝食のおともに!作り方はとても簡単です。1種類でも、また数種類をミックスしてタネまきをしてもOK。10〜15pほどに生長したらまとめて刈りとり、食卓へ。次々に新しい葉が伸びてきますから、何回も収穫できます。しっかり寒冷紗をかけておけば、害虫の心配もなく無農薬で作れます。下で紹介する3種なら、11月にタネまきすれば約1カ月で収穫できるので、畑の一角やコンテナでぜひ栽培してみてください。
赤色系や緑色系など葉色や葉形が異なる数種類のリーフレタスのミックス。変化に富んだ彩りが楽しめる。
赤紫に色づいた極細切葉が美しいカラシナ。生で食べるとピリッとした辛みがさわやかなアクセントになる。
光沢のある濃緑色をしたフダンナの一種で「スイスチャード」の別名でも知られる。葉柄と葉脈が黄、赤、白などに色づく。和え物、お浸し、油炒め、サラダなど幅広く楽しめる。
雪が積もった真冬の畑で白石さんが収穫しているのは、中国原産の四川児菜(シセンアーサイ)。カラシナの一種で「子持タカナ」とも呼ばれる。大きくなったわき芽の部分を収穫し、天ぷら、炒め物、スープなどにして食べる。タネまきは9〜10月が適期なので、来秋の栽培計画に加えてみては?
1株から15〜20個のわき芽が収穫できる。独特の辛みと食感が楽しめる。
東京都練馬区大泉で300年続く白石農園・園主。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」を主宰。実践で培ったノウハウを体験農園での指導に生かし、野菜作りの魅力を多くの生徒たちに伝えている。NPO法人「畑の教室」代表。
コピーライター。50代になって、ふとしたきっかけから「大泉 風のがっこう」で人生初の野菜作りに出会う。野菜を育て味わう楽しさに魅了されて、まもなく10年。その間、白石さんの教えを守らず失敗した経験多々。今回は基本に忠実に実践!
「はなとやさい」2016年11月号より
花と野菜はもちろん、果樹、山菜など、多岐にわたる植物の育て方や新品種情報、さらにガーデンデザインや土づくり、病害虫防除等々…、
花作りと野菜作りに不可欠なさまざまなジャンルの情報を、季節に応じて毎月解説してきます。
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