教える人白石 好孝 (しらいし よしたか)
東京都練馬区大泉で300年続く白石農園・園主。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」を主宰。実践で培ったノウハウを体験農園での指導に生かし、野菜作りの魅力を多くの生徒たちに伝えている。NPO法人「畑の教室」代表。
農業体験農園「大泉 風のがっこう」の授業を、毎回、生徒の目線でレポートします。
通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開します。
実践的なノウハウを、ぜひ家庭農園で参考にしてください。
サラダ、おろし、みそ汁の具、おでん、煮物、漬物…。
ダイコンは用途が広く、1年中欠かせない野菜です。
年に2回栽培して新鮮なダイコンを日々の食卓で楽しみましょう。
今回はダイコンの品種や栽培ポイントについて詳しく紹介します。
日本は世界一のダイコン消費国だそうです。しかも品種が豊富で、大きいものでは20〜30sにもなる「桜島大根」、長さが1mを超える細長い「守口大根」、下ぶくれの形で愛嬌のある「ねずみ大根」、スラッと伸びた美脚のような「練馬大根」など、昔から各地でいろいろなダイコンが作られています。
ダイコン作りの魅力は、春にも秋にも作れること。そこで春秋の品種選びのポイントを白石さんに教えてもらいました。「春まきのダイコンは、気温が上がってきてもトウ立ちしにくい品種を、秋まきのダイコンは、気温が下がってきても生育のよい品種を選びます」。おすすめの品種は?「私たち関東の農家にとっては、青首ダイコンの『耐病総太り』ですね。作りやすいし、味もよいし、病気にも強いので、この辺りではずいぶん前からポピュラーな品種です。最近では、食べ切りサイズの『三太郎』も人気ですよ」。
栽培ポイントは?「何といってもダイコン十耕ですね。同じ場所を10回耕すくらいのつもりで、丹念に耕してください。地中深くに根を伸ばすダイコンは、土の中に小石や肥料の塊などがあると又割れを起こします。深く耕して小石などを取り除いたり、肥料を土とよくなじませたりして又割れを防ぐようにしましょう」。私も十耕を実践していますが、やりすぎて腰が痛くなることも…。ちなみに、わが家で人気の食べ方はダイコン1本をすりおろして加えた豚みぞれ鍋。新鮮なダイコンでつくると最高のおいしさです!
青首総太りダイコンの代名詞的存在。作りやすく、特にス入りが遅い。尻の肉づきがよく、肌は白くてつやがあり、青首とのコントラストが美しく肉質も上々。
家庭菜園向きに、作りやすさと煮ダイコンのおいしさを追求した短形ダイコン。トウ立ちとス入りが極めて遅く、秋から初夏まで幅広く栽培できる。0.5〜3s程度の好みのサイズで収穫可能。
実際に「大泉 風のがっこう」で作業した日付で具体的に紹介します(一般平坦地基準)。
※タキイの通販ガイドなどに記載の適期表とは時期が異なることもありますが、ご了承ください。
春まきの場合は、タネまきの1週間〜10日前に、1u当たり牛ふん堆肥をカップ大2、配合肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)カップ小1、苦土石灰カップ小2分の1を全面散布してよく耕しておく。
秋まきの場合は、牛ふん堆肥と苦土石灰については春まきと同量だが、配合肥料はカップ小1.5に増量する。
※肌のきれいなダイコンを作る場合には、牛ふん堆肥は控えめにする。
畝幅よりも広めに肥料を散布し、少なくとも20p(クワの刃の長さ)程度の深さまでしっかり耕す。
1回耕した所を、さらに2回、3回と往復して耕し、肥料と土をよくなじませ、ふかふかの土にする。
指を差し込んでタネが隠れるくらい、深さ1〜2p程度の穴を掘る。
1穴に3粒ずつタネをまく。
一握りの土をかぶせ、上から軽く押さえてタネと土を密着させる。
タネをまいたら寒冷紗をかけ、発芽後の苗をダイコンシンクイムシなどの害虫から守る。トンネルのすそもしっかり土に埋めて害虫の侵入を防ぐ。
3粒とも無事に発芽。あとで間引くのがもったいないくらい元気な双葉だ。
ギザギザの形をした本葉が出てきた。ここまでくれば一安心。
タネまき後20〜25日が経過し、葉が寒冷紗に当たるようになったらトンネルを外す。一番元気のいい苗を1本残してあとは間引く。秋まきの場合は間引き後に追肥。マルチの両側に1u当たり配合肥料(チッソ8、リン酸8、カリ8)カップ小1を散布し、土となじませる。
いいダイコン!間引かずに残しておきたかった。
間引いてみると、又割れダイコンになっていた。
春はどんどん気温が上がります。春まきダイコンは肥料の吸収が早く、どんどん生長してしまうため、元肥だけにして肥料は切らしぎみの方が、いい春ダイコンができます。
秋まきダイコンの収穫適期。葉が立ち上がっている左側が「耐病総太り」。右側の、葉が横に広がっているものは練馬大根。体験農園では1畝に2条まきで、1条ずつ異なる品種を栽培しているが、生長過程で品種の違いがはっきり出ておもしろい。
ずんずん上に伸びてきた「耐病総太り」。根の長さ38p、直径8p程度が収穫適期。
白石さんのダイコン畑では30p間隔の穴あき3条マルチで「三太郎」を栽培している。別の畝で「耐病総太り」や練馬大根も栽培している。
収穫間近の「三太郎」。根の長さ20〜30pが標準サイズだが、放っておくと大きくなる。
ダイコンをしっかり両手で持って、折らないようにまっすぐ引き抜くのが収穫のコツ。
収穫後の泥つきダイコンは、ブラシの付いた野菜洗浄機で洗うと、あっという間に真っ白に。葉もおいしいので、白石農園では葉付きダイコンで出荷している。
外皮は白で首が緑色の丸っこいダイコン。切ると驚くほどの鮮やかな紅色で、このきれいな色を生かしてサラダやおろし、漬物に利用したい。白石農園に隣接する野菜レストランでは、「紅心大根」をイタリアンの煮物料理やソテーなどに使っている。甘みがあっておいしいと評判。
ミニ赤ダイコンは表皮ごとカットしてサラダにすると彩りがよい。
「日本中どこに旅しても、東京の練馬から来ましたというと、ああ、あの練馬大根の、と言われるんですよ」と、白石さん。江戸時代に栽培が始まり、昭和の初めごろまで盛んに作られてきた「練馬大根」ですが、その後、モザイク病の大発生や食生活の西洋化などによって衰退してしまいました。私たちが住む練馬区では、それを何とか復活させたいと種の保存事業に取り組み、白石さんも仲間たちと協力しています。「練馬大根の特徴は、首が細く中太りでスラッと伸びた形と、皮がかたく歯応えがあり、辛みが強いこと。昔から、たくあん漬けにして保存食として重宝されてきました」という白石さんは、この伝統野菜をテーマに、地域の子どもたちが食文化について考えたり野菜作りを体験したりする活動を20年近くも続けています。「最近では、学校開放日などにダイコン感謝祭という催しがあって、子どもたちが研究発表したり、自分で育てたダイコンの絵や感想文を手渡してくれるんです。うれしいものですね」。
練馬区内の農家で1万本以上の「練馬大根」が作られていて、そのうち8000本ほどがたくあん漬けとして提供されているそう。白石農園では直売所などで販売しているが、すぐに売り切れるほどの人気ぶり。昔ながらの伝統の味、次の世代にもぜひ伝えていきたいもの。
選抜を繰り返して「練馬大根」のタネを採種。「種の保存事業に参加している仲間で約5万粒のタネを練馬区に提供し、そのタネが小学校や幼稚園、保育園に配られています」と白石さん。
東京都練馬区大泉で300年続く白石農園・園主。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」を主宰。実践で培ったノウハウを体験農園での指導に生かし、野菜作りの魅力を多くの生徒たちに伝えている。NPO法人「畑の教室」代表。
コピーライター。50代になって、ふとしたきっかけから「大泉 風のがっこう」で人生初の野菜作りに出会う。野菜を育て味わう楽しさに魅了されて、まもなく10年。その間、白石さんの教えを守らず失敗した経験多々。今回は基本に忠実に実践!
「はなとやさい」2016年9月号より
花と野菜はもちろん、果樹、山菜など、多岐にわたる植物の育て方や新品種情報、さらにガーデンデザインや土づくり、病害虫防除等々…、
花作りと野菜作りに不可欠なさまざまなジャンルの情報を、季節に応じて毎月解説してきます。
POINT1
カタログ・ネット通販での
お買い物が10%割引!
※書籍・農園芸用品ほか、
一部対象外の商品を除く。
POINT2
商品購入額が
5,000円未満でも気にならない!
送料が無料に!
※一部農園芸用品に限り、
離島送料が必要な商品を除く。
POINT3
野菜勉強会など
タキイのイベントに
ご招待!