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東京「大泉 風のがっこう」体験レポート 野菜作りはこんなに楽しい!

東京「大泉 風のがっこう」体験レポート 野菜作りはこんなに楽しい!東京「大泉 風のがっこう」体験レポート 野菜作りはこんなに楽しい!

農業体験農園「大泉 風のがっこう」の授業を、毎回、生徒の目線でレポートします。
通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開します。

vol.1

野菜別栽培ポイント

じっくりおいしく育てよう!タマネギ、根深ネギ、ニンジン

東京都練馬区大泉町。ここで農園を営む白石好孝さんが指導にあたる野菜のカルチャースクール、それが農業体験農園「大泉 風のがっこう」です。小さな畑でもさまざまな種類の野菜を豊富に収穫できるという、白石さんが教えてくれる実践的なノウハウは、家庭菜園でも大いに参考になります。そこで農業体験農園の利用者である菅野俊一郎さんに、毎回、生徒の目線で「大泉 風のがっこう」の授業レポートしていただきます。

夏の果菜類の収穫が終わりに近づくと、次は根深ネギ(長ネギ)の定植、ニンジンのタネまきと、畑の作業は続きます。
今回は、根深ネギはタネまきから、またタマネギ栽培もタネまきからご紹介します。

タマネギ

タマネギは食材としてのレパートリーが幅広く、さまざまな料理に欠かせない存在です。体験農園でも作ってみたいけれど、9月のタネまきから翌年6月の収穫までの間に契約年度が切り替わるので難しそう。そこで、白石さんのタマネギ畑におじゃましました。
「タマネギは生育期間が長いため、よく肥えた土づくりは一番重要な栽培ポイントです。この畑にも元肥として有機質に富んだ緩効性の肥料をたっぷり入れています」と、白石さん。作付けの方法には、苗床で育てた苗を植え付ける場合と、苗を買ってきて植え付ける場合、そしてタネを直まきする場合の3通りがあります。「白石農園の畑は直まきです。タネからじっくり育てて一冬越したものを、春先に間引き、葉タマネギとして出荷しているんです。これが甘くておいしいとご近所でも評判に。6月のタマネギの収穫とあわせて、ダブルで楽しめるというわけです」。収穫したタマネギは洗わずに、根も葉もつけたまま5〜6個ずつを束ねて縛り、風通しのよい日陰につるしておけば、12月まで約半年間も保存できるそうです。


O・P黄

強勢で作りやすい中生種。「初めて作りましたが、大玉で味もよいですね。近所の小学校などに学校給食用として出荷し、とても喜ばれました」と、白石さんの評価も上々。


猩々赤(じょうじょうあか)

スライスすると鮮やかな紫色の層になって、見た目も美しいレッドオニオン。「香りがよくてみずみずしく、甘みもあって、サラダにすると本当においしい」と、白石さん。赤玉としては貯蔵性の高い品種。

タマネギの栽培カレンダー(白石農園・露地)

用土・肥料の分量表記について

  • ●カップ大=1L
    ●カップ小=200cc

実際に「大泉 風のがっこう」で作業した日付で具体的に紹介します(一般平坦地基準)。
実際に「大泉 風のがっこう」で作業した日付で具体的に紹介します
(一般平坦地基準)。

タマネギの畑づくり

タネまきの2〜3週間前に、1m2当たり牛ふん堆肥カップ大3、緩効性の配合肥料(チッソ8・リン酸8・カリ8)カップ小1.5、ヨウリンはカップ小3分の1を全面散布し、よく耕しておく。畝には4条の穴あきビニールマルチを使用する。

タネまき

マルチの穴に深さ1cmほどのまき穴を掘る。

1穴にタネを5〜6粒まく。

まき穴が浅く埋まるくらいの土をかける。

土を軽く押さえてタネと密着させる。

発芽

タネまきから2〜3週間で発芽する。

通常はこのまま冬を越す。ただし保温のため、トンネル状に寒冷紗をかけることもある。

間引き追肥

3月中下旬、草丈が20〜30cmくらいまで生長したら、1穴に1〜2株を残してあとは間引く。白石農園では間引いたものを葉タマネギとして出荷するため、あえて間引きを少し遅らせている。間引いた後は、追肥として1m2当たり配合肥料(チッソ8・リン酸8・カリ8)カップ小1を、マルチの上からバラまきする。

収穫

球が肥大するとともに自然に茎が倒れ、葉も枯れてくる。これが収穫目安。球を持ち引き抜く。

レッドオニオンの「猩々赤」もこんなに大きく生長。

(左)葉の部分を1〜2cm残して切り落とす。切りすぎないように気をつけて。
(右)球が肥大するとともに自然に茎が倒れ、葉も枯れてくる。これが収穫目安。球を持ち引き抜く。

出荷用に処理を済ませたタマネギ。長期保存する場合は、根も葉も切らずに5〜6個ずつを束ねて縛り、風通しのよい日陰につるしておく。

根深ネギ

軟白部(土の中の白い部分)を長くして利用する根深ネギは、和食の代表的な食材というイメージですが、最近ではオーブンで焼いて食べるなど、イタリアンやフレンチ風の楽しみ方も広がっています。春に苗を植え付ける夏ネギと、夏に植え付けて秋冬に収穫する秋冬ネギがあり、年2回の栽培ができます。「特に秋冬ネギはやわらかくて甘みがあります。そして10月下旬から年明けの2月いっぱいまでと、収穫期間が長いのが特長です」と、白石さん。炭火でじっくり焼いた秋冬ネギのおいしさは格別で、体験農園でも毎年収穫が楽しみな野菜の一つです。
白石さんの栽培アドバイスは、①苗床で丈夫な苗を育てること、②元肥なしで植え付けて追肥で育てること、③土寄せを繰り返して軟白させること。この中で特に重要なのが軟白です。「少しずつ何回も土寄せすることで、軟白部をできるだけ長く伸ばしていきましょう」。

ホワイトスター

生育が旺盛で、伸びや太りに優れた品種。「肉質がやわらかく甘みもあって評判がよいですね。畑に隣接している野菜レストランのシェフは野菜の味にとても敏感なのですが、よく使っていただきました」と白石さん。菅野家でも鍋の具材として大活躍!

根深ネギの栽培カレンダー(秋冬ネギ・露地)

根深ネギの苗床づくり

苗床に1m2当たり配合肥料(チッソ8・リン酸8・カリ8)カップ小1と苦土石灰カップ小2分の1を全面散布し、よく耕す。

農園ではたくさんの苗を作らなければならないので、苗床もそれなりの広さが必要。市民農園や家庭菜園であれば、苗床の畝幅を半分にして2条まきにしてもよい。

根深ネギの畑づくり

クワの幅で深さ20cm程度の溝をできるだけ垂直に掘る。掘った土は溝の両脇に積み上げておく。

元肥は入れず、耕す必要もない。

タネまき

苗床に深さ1cm程度の溝を4条つくり、溝に沿ってタネを1〜2cm間隔でまく。

間引き

発芽した苗が密集している場合は、苗が5cm間隔になるように間引く。草丈が約40cmを超えたら植え付け。

植え付け

(左)4〜5cm間隔で1本ずつ、溝の壁に立てかけるように、垂直に植え付ける。
(右)苗が倒れない程度に、土を5cmほど根元にかけて押さえる。

(左)体験農園では溝の中に収穫の終わったエダマメの残骸などを入れて、ネギの苗が倒れないように支えとしている。通気性がよく苗を傷めないのが利点。
(右)白石さんの畑では、収穫の終わった小麦のわらを溝の中に敷き詰めている。

追肥土寄せ

体験農園では、溝の中にエダマメの上からさらにスイートコーンの残骸を敷き詰めているが、そのままの状態で追肥と土寄せをする。溝の土手に長さ1m当たり配合肥料(チッソ8・リン酸8・カリ8)カップ小2分の1をまいて土と混ぜあわせ、深さ10〜15cm程度まで溝に埋め戻す。これが1回目の土寄せとなる。①が追肥、②が土寄せしているところ。この後、3〜4回の土寄せを繰り返す。

(左)白石さんのネギ畑。ネギが伸びていくのにあわせて、何度も繰り返し土寄せをしていく。
(右)2回目以降の土寄せは、分けつしているところが埋まらないように気をつけて。

ニンジン

ニンジン栽培で一番のポイントは発芽です。「タネまきは梅雨が終わらないうちにするのがおすすめです。乾燥に弱いため発芽するまでたっぷり水やりをする必要がありますが、雨の多い時期であれば、その手間が省けるわけです」と、白石さん。また、ニンジンのタネは好光性といって明るさに反応して発芽するので、できるだけ浅くまくのが基本です。
 間引きも重要なポイントです。「草丈が10〜15cmまで生長したら1回目の間引きで、株の間隔が5cmほどになるようにします。草丈が20cmを超えたら2回目の間引きをします。目安は1条につき7〜8株にすること。株間が広くなったり狭くなったりしてもあまり気にせず、よく育っているものを残すようにしましょう」と、白石さん。間引きと追肥が終わったら、あとはほとんど手間が掛かりません。

陽州五寸

白石農園の定番品種で「生育がよく、甘みがあり、この界隈の農家では一番人気。プロの種苗店もこれをすすめます」と絶賛。ニンジンを保存する場合は、葉を落とし、新聞紙などに包んで日の当たらない場所に置く。

ニンジンの栽培カレンダー(露地)

ニンジンの畑づくり

土づくり
1m2当たり配合肥料(チッソ8・リン酸8・カリ8)と苦土石灰それぞれカップ小1ずつを全面散布。肥料と土が十分に混ざるようにしっかり耕す。ここで手を抜くとニンジンが又割れしやすい。

条間が10〜15cm間隔となるように、板の側面などを使って深さ1cm程度の溝を掘る。

タネまき

タネは条まきにする。たくさんタネをまいて発芽させ、大胆に間引くという作戦。

タネをまいたらたっぷり水やりをして、乾燥防止のために寒冷紗をかけておく。

発芽

双葉の次の本葉が出ている。これでもう安心。水やりは必要ない。寒冷紗も外す。

間引き

タネまきの1カ月後までに2回目の間引きを終えること。1条当たり7〜8株にする。

追肥

2回目の間引きの時に、1m2当たり配合肥料(チッソ8・リン酸8・カリ8)カップ小2分の1を条間にまいて、移植ごてなどで土と混ぜあわせ、株元に寄せる。

間引きと追肥のおかげで生長が著しい。でも、この様子を見た白石さんが「まだ、間引きが足りないなあ。もっと大胆にやりましょう」。つい、もったいなくて間引けなかった…。

(左)間引く時は、茎がしっかりした丈夫そうなものを残す。この場合は、隣りあった3本のうち右側の1本を残す。
(右)キアゲハの幼虫に要注意!体長が5cmほどにもなり、放っておくと葉はすべて食べられるので、見つけたらすぐに捕殺する。ニンジンのほかに、パセリやミツバ、セルリーなどセリ科の野菜が好物。

白石農園ではプロならではの
便利な道具で作業の手間を軽減!

播種機を使っているところ。ベルトを替えることでいろいろな野菜のタネがまける。

肥料散布機で、追肥もラクラク。

収穫

体験農園よりも早く、白石さんの畑では10月下旬から収穫開始。よく育っているものから間引いて収穫するので「間引き収穫」。こうした収穫が翌年2月まで続く。葉の部分は、かき揚げやチヂミに入れるとおいしい。

白石 好孝

教える人白石 好孝 (しらいし よしたか)

東京都練馬区大泉で300年続く白石農園・園主。同敷地内で農業体験農園「大泉 風のがっこう」を主宰。実践で培ったノウハウを体験農園での指導に生かし、野菜作りの魅力を多くの生徒たちに伝えている。NPO法人「畑の教室」代表。

菅野 俊一郎

教わる人菅野 俊一郎 (かんの しゅういちろう)

コピーライター。50代になって、ふとしたきっかけから「大泉 風のがっこう」で人生初の野菜作りに出会う。野菜を育て味わう楽しさに魅了されて、まもなく10年。その間、白石さんの教えを守らず失敗した経験多々。今回は基本に忠実に実践!

「はなとやさい」2016年7月号より

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