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特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design

特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design

毎回季節の草花をピックアップ。その特性を生かしたガーデンでの使い方を、相性の良い植物とあわせてご紹介していきます。通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開しますので、ぜひご覧ください。

vol.8

ヘレボルス
(クリスマスローズの仲間)

ヘレボルス(クリスマスローズの仲間) Helleborus spp.
キンポウゲ科クリスマスローズ属

ヘレボルス・アルグチフォリウスとカレックスの混植。可憐な一重咲きのものからバラを思わせる豪華な八重咲きのもの、また、花や葉の色もバラエティ豊かなクリスマスローズの仲間たち。これほど花色、花形、葉、草姿が豊富で変化のある宿根草は、ほかにはあまり見当たらないのではないでしょうか。冬の貴婦人とも呼ばれるクリスマスローズは、日本人の心をつかみ、今、最も人気のある宿根草の1つといえます。
主にヨーロッパ、地中海沿岸地方に分布し、約20種が知られています。例外が、チベタヌス種で分布の中心地から遠く離れた四川省を含む中国西部に隔離分布します。もともとクリスマスローズの名は、クリスマスのころに咲くニゲル種に与えられていた英名でしたが、日本ではその馴染みやすい響きと相まって、同属に含まれる種や品種すべてに使われるようになっており、混乱が生じているところがあります。最近はこうした混乱を防ぐため、属名の「ヘレボルス(ヘレボラス)」を使った表記が一般的になってきています。日本では以前からオリエンタリス種が主として栽培されていましたが、近年、ヨーロッパから優れた系統が導入され、バリエーションが増えたことにより、人気に火がつきました。
ほかの多くの植物が休眠状態の季節に、大きな花を咲かせて艶やかに庭を彩るクリスマスローズは、寂しい冬の花壇になくてはならない存在です。

原種

茎を伸ばして葉を展開し、その先に花を咲かせる有茎種と、地際から花茎と葉を別々に伸ばす無茎種の2つの形態に分けることができます。繁殖や花後の管理も少し異なりますので、どのタイプか知っておくとよいでしょう。

原種有茎種

ヘレボルス・アルグチフォリウスH.argutifolius

ヘレボルス・アルグチフォリウスH.argutifolius
高さ:45〜80p 広がり:40〜60p
花期:3〜4月

地中海に浮かぶコルシカ島、サルディニア島原産の大型種。葉は銀緑色でかたく、縁に鋭い鋸歯がある。3月ごろから黄緑色の花を多数咲かせる。ほかの種に比べてより明るい環境を好み、直射日光に当てても問題ない。栽培には排水のよい場所を選ぶ。

ヘレボルス・アトロルーベンス H. atrorubens

ヘレボルス・アトロルーベンスH. atrorubens
高さ:30〜45p 広がり:45〜60p
花期:3月下旬〜4月中旬

スロベニア、クロアチア原産。外弁は赤紫色で、内弁は緑を帯びるが、花色の変異が大きく一様ではない。排水のよい、明るい半日陰で管理する。落葉性。

ヘレボルス・フェチダス H. foetidus

ヘレボルス・フェチダスH. foetidus
高さ:30〜60p 広がり:30〜60p
花期:3月中旬〜4月中旬

ヨーロッパに広く自生する。径2〜3pの小さな緑色の花を多数咲かせる。細く切れ込んだ葉との対比が美しい。夏の高温多湿は苦手で、水はけのよい場所に植え付ける。

ヘレボルス・ニゲル H.niger

ヘレボルス・ニゲルH.niger
高さ:20〜30p 広がり:20〜30p
花期:12月下旬〜2月

ヨーロッパ中央部の山岳地帯に自生。ちょうどクリスマスのころから咲き始めるので、クリスマスローズの名がつけられた。水はけのよい場所に植え付けておけば乾燥にも強く丈夫。咲き始めは白だが、次第に赤みを帯びてくる。いくつもの園芸品種が選抜されている。

‘ジョセフ・ レンパー’ ‘Joseph Lemper’
ドイツで作出されたニゲル種の園芸品種。原種は、通常、花が葉に隠れてしまうことが多いが、この品種は葉より上に花茎が伸びて突き出るので、白い清楚な花をより楽しむことができる。

原種無茎種

ヘレボルス・リグリクスH.liguricus

ヘレボルス・リグリクスH.liguricus
高さ:10〜30p 広がり:30p 
花期:12月〜3月

ムルチフィダス種の変種として扱われていたが、数年前に独立した種として発表された。北イタリアのごく限られた地域に自生する珍しい種。白色で大きな花には、さわやかな香りがある。

ヘレボルス・オドルスH.odorus

ヘレボルス・オドルスH.odorus
高さ:25〜50p 広がり:30〜60p
花期:3月下旬〜4月

イタリア〜アルバニアの開けた林縁や草原に自生する。径5pの大きな黄緑色の花には香りがある。光を好み、できるだけ明るい場所に植え付ける。

ヘレボルス・チベタヌスH.tibetanus

ヘレボルス・チベタヌスH.tibetanus
高さ:20〜30p 広がり:30〜40p
花期:3月下旬〜4月中旬

中国西部原産。数多くの植物を西欧に紹介したフランス人宣教師A.ダビッド神父によって発見された後、自生地がわからなかった幻の植物。最初の発見から120年後の1989年、日本の植物学者荻巣樹徳氏によって再発見され、世界的に話題になった。水はけのよい用土に植え付ける。夏に落葉して休眠する。

ヘレボルス・オリエンタリスH.orientalis

ヘレボルス・オリエンタリスH.orientalis
高さ:30〜45p 広がり:35〜45p
花期:2〜3月

トルコ、コーカサス地方に自生。最も普及している種で、この種を中心に数多くの園芸品種が作出されている。性質は強く、地植えでも何年も育ち、容易に大株に仕立てることができる。

園芸品種

ヘレボルス‘シルバー・ダラー’H.‘Silver Dollar’

ヘレボルス‘シルバー・ダラー’ H.‘Silver Dollar’
高さ:20〜25p 広がり:30p
花期:1月中旬〜4月上旬

緑に薄紫色が入る上品な花色。常緑の葉は美しい銀緑色で、縁には細かな鋸歯がありヒイラギを思わせる。花期以外でも周年楽しめる。

ヘレボルス・ニゲルコルス‘スノー・ラブ’ H.× nigercors‘Snow Love’

ヘレボルス・ニゲルコルス‘スノー・ラブ’ H.× nigercors‘Snow Love’
高さ:30〜40p 広がり:30p
花期:12月下旬〜3月

ニゲル種とアルグチフォリウス種の交配で選抜された園芸品種。クリームがかった白い花を多数咲かせ、次第に緑色に変化する。銀灰色を帯びた光沢のある革質の葉とのコントラストも美しい。

ヘレボルス・ニゲルコルス‘キャンディー・ラブ’ H.× nigercors ‘Candy Love

ヘレボルス・ニゲルコルス‘キャンディー・ラブ’ H.× nigercors ‘Candy Love
高さ:30〜40p 広がり:30p
花期:12月下旬〜3月

ベルギーで育成された園芸品種。ニゲル種が片親になっており、葉や草姿はそれに似る。咲き始めはピンクを帯びたクリーム色で、次第に色が濃くなる。

ガーデンでの使い方

コンパクトな草姿で、家と塀の間など、狭くてあまり日が差し込まない場所での栽培に重宝します。また、冬には光が差し込み、夏には日陰になる落葉樹の株元はへレボルス(クリスマスローズの仲間)を育てるには理想の環境です。ウメやマンサクの仲間など、早春に開花する花木と組み合わせるとよいでしょう。初夏に美しい花を咲かせるアスチルベやギボウシも、同様の環境を好みます。冬には地上部が枯れてしまいますが、へレボルスと組み合わせることにより、冬から夏にかけて切れ間なく庭を彩ることができます。
冬の寒さで、若枝が真っ赤に色づくサンゴミズキや同様に黄色く色づくコルヌス・ストロニフェラ‘フラヴィラメア’(流通名:黄金ミズキ)との組み合わせは、冬の庭をにぎやかにしてくれます。花色の濃い品種は濃い緑の葉と合わせると沈んでしまうことがあるので、明るい葉色のヒューケラなどと組み合わせるとよいでしょう。スノードロップやスイセン‘フェブラリー・ゴールド’‘テタ・テート’など早咲きの秋植え球根を組み合わせると一層華やかになります。
まだまだ寒く、庭に出るのをためらう時期、へレボルスで、冬が待ち遠しくなるようなウインターガーデンをつくってみませんか。

ヘレボルスの植栽イメージ

〔使用している植物〕

  1. ユキヤナギ
  2. サンゴミズキ
  3. サンシュユ
  4. ジンチョウゲ
  5. ヘレボルス・白
  6. ヒマラヤユキノシタ
  7. スノードロップ
  8. ヒューケラ黄緑種 ‘ライムリッキー’
  9. ヘレボルス ‘ルーセブラック’
  10. ヒューケラ紫葉品種
  11. ヘレボルス‘チュチュ’
  12. クロッカス

ヘレボルスと相性のよい植物

花木類

サンゴミズキ
  • ウメ
  • カシワバアジサイ
  • コルヌス・ストロニフェラ‘フラヴィラメア’
  • サンシュユ
  • ジンチョウゲ
  • ハイドランジア‘アナベル’
  • フイリサンゴミズキ
  • マホニア‘チャリティ’
  • マンサク
  • ミツマタ
  • モクレン
  • ヤマブキ

草本類

トラデスカンティアとホタルブクロ
  • アスチルベ
  • ギボウシの仲間
  • クサソテツ
  • シュウメイギクの仲間
  • トラデスカンティア(ムラサキツユクサ)の仲間
  • ヒマラヤユキノシタ
  • フイリアマドコロ
  • ホタルブクロ

球根類

スノードロップ
  • スイセン‘ テタ・テート’
  • スイセン‘ フェブラリー・ゴールド’
  • スノードロップ

グラス類

ウラハグサ(フウチソウ)とギボウシ
  • ウラハグサ(フウチソウ)
  • カンスゲ‘アイスダンス’

カラーリーフプランツ

ヒューケラの黄葉系品種
  • アジュガの仲間
  • ギボウシの仲間
  • ヒューケラの仲間

グラウンドカバー

イカリソウ
  • イカリソウの仲間
  • セイヨウキヅタ(アイビー)の仲間

ヘレボルスの栽培方法

栽培適地

へレボルスの多くは高温によって、休眠もしくは半休眠状態になります。そのため、夏季は、肥料はもちろん、ほかの草花と同じように潅水すると根腐れを起こすことがあります。肥料は、秋に緩効性のものを与え、暑さに弱い品種は、特に排水に気をつけ、レンガや石などを積み上げて囲み、底上げしたレイズドベッドをつくって植えるなどの工夫が必要になります。
系統により性質に違いがあり、栽培条件も異なってきますが、基本的には、明るい木漏れ日の差すような環境を好みます。暗すぎると、花つきが悪くなります。

ヘレボルス・ニゲル

ヘレボルス・ニゲル

植え付け〜花後の管理

植え付け、株分けは、生長が始まる秋に行います。その際、完熟腐葉土を混ぜ込むとよいでしょう。花後は、株の衰弱を防ぐために、早めに花がらを摘むようにします。有茎種では、花を咲かせた茎は枯れますので、春、次の芽が伸び始めた時に株元で切り取るようにします。常緑種は、11月ごろに古い葉を取り除くと、花が葉に隠れることがなく、光もよく当たるのでよいでしょう。

病害対策

多湿条件で風通しが悪いと、さまざまな病気が発生します。ウイルスによって引き起こされる黒死病(ブラックデス)は、大変怖い伝染性の病気です。そのウイルスは、アブラムシなどの害虫やハサミで伝染します。枯れ葉などはできるだけ手でむしり取るようにし、ハサミを使う時も消毒して使用する方がよいでしょう。

月江 成人 (つきえ しげと)

ホルティカルチャリスト。潟vランタス代表。地域の景観と調和した、植物が主役の庭づくりを提案。2年前に山間の小さな町に移住。古民家再生と理想の庭をつくるべく日々奮闘中。兵庫県在住。

「はなとやさい」2010年2月号より

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