毎回季節の草花をピックアップ。その特性を生かしたガーデンでの使い方を、相性の良い植物とあわせてご紹介していきます。通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開しますので、ぜひご覧ください。
ヘレボルス(クリスマスローズの仲間) Helleborus spp.
キンポウゲ科クリスマスローズ属
可憐な一重咲きのものからバラを思わせる豪華な八重咲きのもの、また、花や葉の色もバラエティ豊かなクリスマスローズの仲間たち。これほど花色、花形、葉、草姿が豊富で変化のある宿根草は、ほかにはあまり見当たらないのではないでしょうか。冬の貴婦人とも呼ばれるクリスマスローズは、日本人の心をつかみ、今、最も人気のある宿根草の1つといえます。
主にヨーロッパ、地中海沿岸地方に分布し、約20種が知られています。例外が、チベタヌス種で分布の中心地から遠く離れた四川省を含む中国西部に隔離分布します。もともとクリスマスローズの名は、クリスマスのころに咲くニゲル種に与えられていた英名でしたが、日本ではその馴染みやすい響きと相まって、同属に含まれる種や品種すべてに使われるようになっており、混乱が生じているところがあります。最近はこうした混乱を防ぐため、属名の「ヘレボルス(ヘレボラス)」を使った表記が一般的になってきています。日本では以前からオリエンタリス種が主として栽培されていましたが、近年、ヨーロッパから優れた系統が導入され、バリエーションが増えたことにより、人気に火がつきました。
ほかの多くの植物が休眠状態の季節に、大きな花を咲かせて艶やかに庭を彩るクリスマスローズは、寂しい冬の花壇になくてはならない存在です。
原種
茎を伸ばして葉を展開し、その先に花を咲かせる有茎種と、地際から花茎と葉を別々に伸ばす無茎種の2つの形態に分けることができます。繁殖や花後の管理も少し異なりますので、どのタイプか知っておくとよいでしょう。
原種有茎種
ヘレボルス・アルグチフォリウスH.argutifolius
- 高さ:45〜80p 広がり:40〜60p
花期:3〜4月
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地中海に浮かぶコルシカ島、サルディニア島原産の大型種。葉は銀緑色でかたく、縁に鋭い鋸歯がある。3月ごろから黄緑色の花を多数咲かせる。ほかの種に比べてより明るい環境を好み、直射日光に当てても問題ない。栽培には排水のよい場所を選ぶ。
ヘレボルス・アトロルーベンス H. atrorubens
- 高さ:30〜45p 広がり:45〜60p
花期:3月下旬〜4月中旬
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スロベニア、クロアチア原産。外弁は赤紫色で、内弁は緑を帯びるが、花色の変異が大きく一様ではない。排水のよい、明るい半日陰で管理する。落葉性。
ヘレボルス・フェチダス H. foetidus
- 高さ:30〜60p 広がり:30〜60p
花期:3月中旬〜4月中旬
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ヨーロッパに広く自生する。径2〜3pの小さな緑色の花を多数咲かせる。細く切れ込んだ葉との対比が美しい。夏の高温多湿は苦手で、水はけのよい場所に植え付ける。
ヘレボルス・ニゲル H.niger
- 高さ:20〜30p 広がり:20〜30p
花期:12月下旬〜2月
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ヨーロッパ中央部の山岳地帯に自生。ちょうどクリスマスのころから咲き始めるので、クリスマスローズの名がつけられた。水はけのよい場所に植え付けておけば乾燥にも強く丈夫。咲き始めは白だが、次第に赤みを帯びてくる。いくつもの園芸品種が選抜されている。
- ‘ジョセフ・ レンパー’ ‘Joseph Lemper’
- ドイツで作出されたニゲル種の園芸品種。原種は、通常、花が葉に隠れてしまうことが多いが、この品種は葉より上に花茎が伸びて突き出るので、白い清楚な花をより楽しむことができる。
原種無茎種
ヘレボルス・リグリクスH.liguricus
- 高さ:10〜30p 広がり:30p
花期:12月〜3月
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ムルチフィダス種の変種として扱われていたが、数年前に独立した種として発表された。北イタリアのごく限られた地域に自生する珍しい種。白色で大きな花には、さわやかな香りがある。
ヘレボルス・オドルスH.odorus
- 高さ:25〜50p 広がり:30〜60p
花期:3月下旬〜4月
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イタリア〜アルバニアの開けた林縁や草原に自生する。径5pの大きな黄緑色の花には香りがある。光を好み、できるだけ明るい場所に植え付ける。
ヘレボルス・チベタヌスH.tibetanus
- 高さ:20〜30p 広がり:30〜40p
花期:3月下旬〜4月中旬
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中国西部原産。数多くの植物を西欧に紹介したフランス人宣教師A.ダビッド神父によって発見された後、自生地がわからなかった幻の植物。最初の発見から120年後の1989年、日本の植物学者荻巣樹徳氏によって再発見され、世界的に話題になった。水はけのよい用土に植え付ける。夏に落葉して休眠する。
ヘレボルス・オリエンタリスH.orientalis
- 高さ:30〜45p 広がり:35〜45p
花期:2〜3月
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トルコ、コーカサス地方に自生。最も普及している種で、この種を中心に数多くの園芸品種が作出されている。性質は強く、地植えでも何年も育ち、容易に大株に仕立てることができる。
園芸品種
ヘレボルス‘シルバー・ダラー’H.‘Silver Dollar’
- 高さ:20〜25p 広がり:30p
花期:1月中旬〜4月上旬
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緑に薄紫色が入る上品な花色。常緑の葉は美しい銀緑色で、縁には細かな鋸歯がありヒイラギを思わせる。花期以外でも周年楽しめる。
ヘレボルス・ニゲルコルス‘スノー・ラブ’ H.× nigercors‘Snow Love’
- 高さ:30〜40p 広がり:30p
花期:12月下旬〜3月
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ニゲル種とアルグチフォリウス種の交配で選抜された園芸品種。クリームがかった白い花を多数咲かせ、次第に緑色に変化する。銀灰色を帯びた光沢のある革質の葉とのコントラストも美しい。
ヘレボルス・ニゲルコルス‘キャンディー・ラブ’ H.× nigercors ‘Candy Love
- 高さ:30〜40p 広がり:30p
花期:12月下旬〜3月
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ベルギーで育成された園芸品種。ニゲル種が片親になっており、葉や草姿はそれに似る。咲き始めはピンクを帯びたクリーム色で、次第に色が濃くなる。