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特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design

特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design

毎回季節の草花をピックアップ。その特性を生かしたガーデンでの使い方を、相性の良い植物とあわせてご紹介していきます。通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開しますので、ぜひご覧ください。

vol.7

ベロニカ

ベロニカVeronica spp.
ゴマノハグサ科クワガタソウ属

聖女ベロニカの名を冠し、映画や小説にもしばしば登場するベロニカは、私たちになじみ深い響きをもった名前です。ベロニカは、クワガタソウ属のラテン名で、300種近くが北半球の温帯に広く分布しています。また、最新の研究による分類の見直しでは、南半球のニュージーランドに分布するヘーベ属なども本属に統合され、500種を超える大所帯になります。道端に生えるちっぽけな雑草から、鮮やかな瑠璃色の花を咲かせる高山植物まで、その生態は多様で、一見、これが同じ仲間かと疑いたくなるほど、草姿も多様です。日本には、ルリトラノオやクワガタソウをはじめ、約20種が北から南の端まで分布しています。道端でよく目にするオオイヌノフグリは、ヨーロッパからの帰化植物で、これも本属に属します。 園芸的には、小さな花をびっしりとつけた細長い槍形の花序をつくるものが、ベロニカの代名詞ともなっています。縦に細長く伸びる草姿は、ほかの花壇苗の中で、際立った印象をつくり、植栽に変化をつけたり、アクセントとしても用いられる貴重な存在です。一方、地面を這うように伸びながら花を咲かせるものは、コンテナでの寄せ植え、ロックガーデンの植栽に利用できます。最近は、斑入りや黄葉品種も導入され、ますますガーデンプランツとして目が離せない存在になってきました。

ベロニカ・ロンギフォリアV. longifolia

ベロニカ・ロンギフォリア

ヨーロッパからアジアに広く分布し、ほかの種に比べて草丈が高いのが特徴。日本にも変種のルリトラノオV.lon- gifolia var. subsessilisが滋賀県の伊吹山に自生する。切り花生産用を中心に多くの園芸品種がある。

ベロニカ・スピカータV. spicata

ヨーロッパに広く自生し、最近国内で流通している園芸品種の多くが、この種を元につくられている。草丈が低く、扱いやすい品種が増えてきている。

‘ハイドキンド’
‘ハイドキンド’ ‘Heidekind’

高さ:約30p 広がり:30〜45p
開花期:5月下旬〜10月

コンパクトな草姿。濃桃色の鮮やかな花穂と、白を帯びた葉とのコントラストが美しい。耐暑性に優れる。

ロイヤル・キャンドル
ロイヤル・キャンドルRoyal Candles

高さ:30〜35p 広がり:30〜45p
開花期:6〜9月

コンパクトな草姿だが、花穂は太く、存在感がある。数株まとめて植えた方がこの品種が持つ特性を生かすことができる。

ベロニカ・ウンブロサ‘ジョージア・ブルー’Veronica umbrosa ‘Georgia Blue’

ベロニカ・ウンブロサ‘ジョージア・ブルー’
高さ:15p
広がり:30〜40p
開花期:3〜5月

オックスフォード・ブルーの名で流通する。匍匐性で、冬は常緑の葉が銅色を帯び、グラウンドカバーとしても利用できる。早春から、鮮やかな青色の花を咲かせる。

トウテイランV.ornata

トウテイラン
高さ:30〜40p
広がり:30〜40p
開花期:8〜9月

日本固有種で、銀白色の葉と澄んだ青色の花とのコントラストが美しい。耐暑性があり、一番暑い季節に涼しげな花を咲かせてくれるのは貴重。日当たりで排水がよい場所であれば、ほとんど手間がかからない。

ベロニカ‘パープルアイシウス’V. ‘Purpleicious’

ベロニカ‘パープルアイシウス’
高さ:40〜50p
広がり:30〜45p
開花期:6〜9月

オランダで交配された最新品種。よく分枝し、濃紫色の花穂をよく伸ばす。今までにはなかった花色で、切り花にも適する。

ベロニカ・ゲンチアノイデスV. gentianoides

ベロニカ・ゲンチアノイデス
高さ:30〜45p
広がり:30〜40p
開花期:4月下旬〜5月

原産地は、コーカサス〜アジア南西部。白、もしくは淡青色で青色の脈が入るさわやかな花色。花径1p程度で、他種に比べて個々の花がよく目立つ。暑さには弱いので暖地では排水をよくし、午後からの光は遮られるような場所で育てるのがよい。

ガーデンでの使い方

品種により、草姿、性質が異なるので、庭での使い方もさまざまです。とはいえ、コンパクトなものが多いので、花壇の前面や、コンテナなどの寄せ植え材料に適し、狭い庭でも扱いやすい宿根草であるといえます。
ベロニカの細長く伸びた花序は、縦のラインが強調されてインパクトがあり、花壇のアクセントとして最適です。場所があれば、何株かまとめて植える方が、ベロニカの美しさをより効果的にアピールできるでしょう。

ベロニカの植栽イメージ

〔使用している植物〕

  1. アサギリソウ
  2. アガパンサス
  3. ベロニカ・ロンギフォリア
  4. アグロステンマ
  5. テイカカズラ
  6. ロシアンセージ(ペロブスキア)
  7. サルビア・ウリギノサ
  8. トウテイラン
  9. ローズマリー
  10. ベロニカ・スピカータ
  11. リクニス・コロナリア
  12. フェスツカ・グラウカ

さまざまな植物と組み合わせて

黄色の花を咲かせるルドベキアやコレオプシスなど、黄色系で花冠の丸い花と組み合わせれば、コントラストの効いた花色だけでなく、形にも違いがでて、変化に富んだ明るい印象の花壇ができあがります。また、パステル調の花色は、ほかの色とも合わせやすく、アキレアやサルビア・スペルバとは、生育環境も花期もよく似ていて、最適の組み合わせといえるでしょう。 フェスツカやコーレリア・グラウカなど、小型で青葉のグラスとの組み合わせは、とてもシックで洗練された雰囲気をつくり出すおすすめのコンビネーションです。グレーや白が基調の石畳やタイルなどともよく合い、少し落ち着いたエントランスの演出にも適します。
梅雨明けごろ、春から咲き続けて姿が乱れてきたサンジャクバーベナを半分程度に切り戻しておけば、晩夏に開花するトウテイランのよいパートナーとなります。

ベロニカと相性のよい植物

ルドベキア
  • アキレア
  • コレオプシスの仲間
  • ヘメロカリス
  • ルドベキア

桃・赤

モナルダ
  • アキレア
  • エキナセア
  • クロコスミア
  • タチアオイ
  • モナルダ
  • リクニス・コロナリア(スイセンノウ)

アグロステンマ‘オーシャンパール’
  • アガパンサス
  • アキレア
  • アグロステンマ‘オーシャンパール’
  • タチアオイ
  • リクニス・コロナリア(スイセンノウ)

青・紫

ツルバキア
  • アガパンサス
  • サルビア・スペルバ
  • サンジャクバーベナ
  • ツルバキア
  • リアトリス
  • ロシアンセージ

カラーリーフプランツ

アサギリソウ
  • アサギリソウ
  • サントリナ
  • スタキス・ビザンティナ(ラムズイヤー)

グラス類

フェスツカ
  • カレックスの仲間
  • コーレリア・グラウカ
  • フェスツカ

ベロニカの栽培方法
夏越しがポイント

管理

流通している園芸品種の多くが、ヨーロッパ由来の種からつくられた品種ですので、耐寒性があり、寒さに関してはほとんど問題ありません。むしろ夏の暑さの方が問題になってきます。夏が涼しい地域では、花期も長く楽しむことができますが、猛暑が続く暖地では、初夏に開花した後、半休眠状態になります。そこへ過湿状態になると、根腐れを起こして株が枯れてしまうこともあります。できるだけ排水のよい場所に植え、花がらはまめに取り除き、真夏の施肥も控えます。少々見苦しい姿になっても、涼しくなるまで我慢させて夏越しできれば、秋に再び開花するものもあります。
暖地では、秋に植え付けて、来夏までに根がしっかり張るようにすれば、いくらかでも夏越しが楽になります。

ベロニカの管理は、夏越しが重要なポイントになる。

ベロニカの管理は、夏越しが重要なポイントになる。

日照条件

日照条件も品種により異なってきます。スピカータ種、ロンギフォリア種系の品種は、基本的に日当たりを好みますが、暑さの厳しい地域では、午後からの強い光は遮る方がよいでしょう。ただし、日当たりが悪すぎると、花数が少なくなったり、うどんこ病にかかりやすくなりますので注意が必要です。トウテイランは、朝から夕方まで日が当たる場所がベストです。

月江 成人 (つきえ しげと)

ホルティカルチャリスト。潟vランタス代表。地域の景観と調和した、植物が主役の庭づくりを提案。2年前に山間の小さな町に移住。古民家再生と理想の庭をつくるべく日々奮闘中。兵庫県在住。

「はなとやさい」2010年1月号より

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