ベロニカVeronica spp.
ゴマノハグサ科クワガタソウ属
聖女ベロニカの名を冠し、映画や小説にもしばしば登場するベロニカは、私たちになじみ深い響きをもった名前です。ベロニカは、クワガタソウ属のラテン名で、300種近くが北半球の温帯に広く分布しています。また、最新の研究による分類の見直しでは、南半球のニュージーランドに分布するヘーベ属なども本属に統合され、500種を超える大所帯になります。道端に生えるちっぽけな雑草から、鮮やかな瑠璃色の花を咲かせる高山植物まで、その生態は多様で、一見、これが同じ仲間かと疑いたくなるほど、草姿も多様です。日本には、ルリトラノオやクワガタソウをはじめ、約20種が北から南の端まで分布しています。道端でよく目にするオオイヌノフグリは、ヨーロッパからの帰化植物で、これも本属に属します。 園芸的には、小さな花をびっしりとつけた細長い槍形の花序をつくるものが、ベロニカの代名詞ともなっています。縦に細長く伸びる草姿は、ほかの花壇苗の中で、際立った印象をつくり、植栽に変化をつけたり、アクセントとしても用いられる貴重な存在です。一方、地面を這うように伸びながら花を咲かせるものは、コンテナでの寄せ植え、ロックガーデンの植栽に利用できます。最近は、斑入りや黄葉品種も導入され、ますますガーデンプランツとして目が離せない存在になってきました。
ベロニカ・ロンギフォリアV. longifolia
ヨーロッパからアジアに広く分布し、ほかの種に比べて草丈が高いのが特徴。日本にも変種のルリトラノオV.lon- gifolia var. subsessilisが滋賀県の伊吹山に自生する。切り花生産用を中心に多くの園芸品種がある。
ベロニカ・スピカータV. spicata
ヨーロッパに広く自生し、最近国内で流通している園芸品種の多くが、この種を元につくられている。草丈が低く、扱いやすい品種が増えてきている。