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特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design

特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design

毎回季節の草花をピックアップ。その特性を生かしたガーデンでの使い方を、相性の良い植物とあわせてご紹介していきます。通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開しますので、ぜひご覧ください。

vol.5

オーナメンタルグラス

英語の“オーナメンタルグラス”という言葉も、いつの間にかそのまま外来語として定着してきました。直訳すれば、「観賞用のイネ科植物」という意味で、派手な花は咲かせませんが、変化のある草姿や葉色、花穂や果実までが観賞の対象となり、春の芽出しから、霜が降りて枯れるまで、さまざまな表情で楽しませてくれます。最近では、カヤツリグサ科やイグサ科の植物など、イネ科以外のものでも、草姿が似ていれば、グラス類として一括りにされています。数多くの園芸品種が手に入るようになりましたが、その特徴、性質もさまざまです。多くは日当たりを好みますが、中にはウラハグサ(フウチソウ)やカンスゲ(カヤツリグサ科スゲ属)のように日陰を好むグラスや、イグサの仲間のように水の中に育つものもあります。

湿地生のイグサ科の植物、ジュンカス‘アフロ’。

湿地生のイグサ科の植物、ジュンカス‘アフロ’。

 シマススキ(中央奥)、カレッ クス(左手前)、ヘメロカリス(右奥)を使ったボーダー花壇

ススキの仲間Miscanthus spp.
イネ科ススキ属

オーナメンタルグラスの代表的存在。もとは自生種なので、丈夫で放任でもよく育つ。斑や大きさの違いから数多くの園芸品種が選抜されている。

シマススキと宿根草の組み合わせ。
シマススキMiscanthus sinensis ‘Variegatus’

高さ:150p 広がり:100p

白斑が入り、遠目から、その白さが浮き立つ美しい品種。パステル調の花とよく合う。
よい組み合わせ:エキナセア、セイヨウニンジンボク

斑入り姫パンパスグラス
‘スプレンディッド・スター’
Cortaderia selloana ‘Splendid Star’
イネ科シロガネヨシ属

斑入り姫パンパスグラス
‘スプレンディッド・スター’
高さ:80〜100p 広がり:70p

葉に黄色の斑が入り、花期以外でも楽しめる。従来種に比べ小型なので、一般家庭の庭にもよくフィットし、また、コンテナに植えてアクセント的にも利用できる。
よい組み合わせ:ヘレニウム‘マーディ・グラス’

カレックス・コマンス
‘ブロンズ・カール’
Carex comans ‘Bronze Curls’
カヤツリグサ科カヤツリグサ属

カレックス・コマンス
‘ブロンズ・カール’
高さ:40p 広がり:60p

一見、枯れたようにも見えるユニークな赤褐色の葉が特徴的。こんもりとコンパクトにまとまり、花壇でほかの植物と組み合わせたり、コンテナに単独で植え込んで玄関先に飾ったりしてもおもしろい。
よい組み合わせ:イトバハ
ルシャギク(コレオプシス)
Vムーン・ビーム’、ヘメロカリス淡黄花品種、カリオプテリス‘ウースター・ゴールド’、ダリア‘ミッドナイト・ムーン’、ヘレニウムVマーディ・グラス’

スティパ・テヌイシマ(エンジェルヘアー)Nassella tenuissima
イネ科ハネガヤ属

スティパ・テヌイシマ(エンジェルヘアー)
高さ:60p 広がり:50〜60p

旧学名のスティパ・テヌイシマで知られているが、現在の正式な名前はナセラ・テヌイシマ(Nassella tenuissima)。常緑で、細かい葉が霧のように広がり、繊細なイメージを花壇に醸し出す。華やかな花と組みわせるとよい。
よい組み合わせ:エキナセア、ヘメロカリス、ロシアンセージ

パニカム・ヴィルガータムPanicum virgatum
イネ科キビ属

パニカム・ヴィルガータム
高さ:100〜170p 広がり:40p

北米に広がる大草原に自生するグラス。たいへん丈夫で日本でもよく育つ。横に広がらず直立するので、あまり場所をとらないが、背はよく伸びるので、場合によっては一度地際で切り戻すとよい。いくつもの品種が流通しているが、青色の葉が美しい‘ヘビーメタル’や‘プレーリースカイ’がおすすめ。
よい組み合わせ:エキナセア、セイヨウニンジンボク、ヘリオプシス、カクトラノオ、モナルダ、キキョウ白花、ソリダゴ

フェスツカの仲間 Festuca spp.
イネ科ウシノケグサ属

フェスツカの仲間
高さ:30p 広がり:30p

小型で針のような細くて青い葉が魅力的なグラス。色、草姿がよく似たコーレリア・グラウカ(Koehleria glauca)も 丈夫で、おすすめのグラス。
よい組み合わせ:ベロニカの仲間、サルビア・ネモローサ、ニガヨモギ

ペニセタムの仲間 Pennisetum spp.
イネ科チカラシバ属

あまり背は高くならず、コンパクトに収まるグラスで、支柱も必要ない。日当たりを好む丈夫なグラス。

ペニセタム・セタケウム‘ルブラム’とメランポディウム、カンナの植栽。
ペニセタム・セタケウム‘ルブラム’ Pennisetum setaceum‘Rubrum’

高さ:90p 
広がり:60p

パープル・ファウンテン・グラスの名前で流通。暑さに強く、濃赤紫の葉と花穂は長期間にわたって楽しめる。寒さに弱く、越冬には5℃以上必要。
よい組み合わせ:センニチコウ、サルビア
・レウカンサ、メランポディウムほか多数。

ペニセタム・ビローサム
ペニセタム・ビローサムPennisetum villosum

高さ:60p 広がり:45p

ギンギツネの名で流通することがある。白い羽毛のような花穂が特徴的。マイナス15℃前後までの寒さに耐えられる。
よい組み合わせ:イトバハルシャギク(コレオプシス)‘ザグレブ’

日本で入手できる主なグラスの生育型

オーナメンタルグラスはその生長パターンから、春に生長し、夏にはほぼ休眠状態になるクールシーズングラス(寒地型)と、暑くなればなるほど調子が出てきて、夏から秋にかけて花穂を上げるウォームシーズングラス(暖地形)の2つに分けることができます。この生育パターンの違いにより、栽培方法や、組み合わせる植物も異なってくるので、どのタイプのグラスなのかを把握しておくことが必要です。

クールシーズングラス(寒地型)
  • カラマグロスティス・
    アクティフロラ‘カール・フォスター’
  • コーレリア・グラウカ
  • フェスツカの仲間
ウォームシーズングラス(暖地型)
  • ススキの仲間
  • スティパ・テヌイシマ
  • パニカムの仲間
  • パンパスグラスの仲間
  • ペニセタムの仲間

ガーデンでの使い方

バラエティに富んだグラスは、さまざまな使い方をすることができます。花壇のアクセントとしても利用できますし、ほかの宿根草と組み合わせて野趣に富む花壇をつくることもできます。フェスツカなどの小型種は、何株かまとめて植えると、それぞれが持つ特徴を存分に生かすことができるでしょう。
個々のグラスは、それほど主張することはなく、どんな植物ともうまく合わせることができます。まずは、細い葉で“繊細な”イメージのグラスに対して、まったく違った形をもつ植物を組み合わせてみましょう。エキナセアやヘメロカリスなど、華やかなイメージの、大きな花を咲かせるものでもよいですし、タチアオイのような大きな葉を持つものでもよいでしょう。
このように“繊細”と“華やか”など、色の違いだけでなく、質感や草姿の違いを対比させることで、変化に富んだ魅力的な花壇を演出することができます。

グラス類を用いた玄関前の植栽

グラス類は葉が放射状に伸び、たいへん均整のとれた形をしていて、見方によっては無機質な印象を与えます。構造物に囲まれ、モダンな雰囲気を持つフォーマルな庭でも、おもしろい対比をつくり出します。単体でテラコッタなどに植えて、玄関先のオブジェにしてもよいでしょう。

〔使用している植物〕

  1. オリーブ
  2. パニカム・ヴィルガータム‘プレーリースカイ’
  3. 斑入り姫パンパスグラス‘スプレンディッド・スター’
  4. ペニセタム・セタケウム‘ルブラム’
  5. へレニウム‘マーディ・グラス’
  6. スティパ・テヌイシマ(エンジェルヘアー)
  7. エリゲロン・カルビンスキアヌス(ゲンペイコギク)
  8. フェスツカ・グラウカ
  9. ニイタカビャクシン‘ブルーカーペット’
  10. ルドベキア
  11. カレックス・コマンス ‘ブロンズ・カール’
  12. ニューサイラン

オーナメンタルグラスの栽培方法

クールシーズングラスの管理

高温多湿を嫌うものが多く、できるだけ日当たりと排水のよい場所を選んで植え付けます。夏はほとんど生長せずに休眠状態になるので、潅水の間隔をあけます。肥料は不要です。常緑種が多いので一度にばっさり刈り込まずに、傷んだ葉を適宜根元から抜き取るようにします。

ウォームシーズングラスの管理

耐暑性のあるものが多く、高温多湿の環境でもよく生長します。その半面、ススキやパニカムなどの仲間は、暖地では繁茂しすぎて背が高くなり過ぎたり、倒伏したりすることがあるので、6月の終わりごろに地際近くで切り戻すと、適当な高さで花穂を上げることができます。
通常の土壌であれば、肥料はほとんど必要としません。
落葉種は降霜後、枯れてしまいますが、穂の形が残りそれはそれで風情があるので、残しておいてもかまいません。萌芽前までには地際まで刈り込んでおきます。

株分け(共通の管理)

どちらのタイプも、株が古くなって中央がドーナツ状に枯れ込んでくると、株の更新時期です。掘り上げて株分けを行います。スコップ、もしくは鎌でざっくり割っても大丈夫です。

グラス類、春先の芽出しの様子。さまざまな色、形を楽しむことができる。

グラス類、春先の芽出しの様子。さまざまな色、形を楽しむことができる。

月江 成人 (つきえ しげと)

ホルティカルチャリスト。潟vランタス代表。地域の景観と調和した、植物が主役の庭づくりを提案。2年前に山間の小さな町に移住。古民家再生と理想の庭をつくるべく日々奮闘中。兵庫県在住。

「はなとやさい」2009年11月号より

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