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特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design

特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design特性を生かして 宿根草と球根のGarden Design

毎回季節の草花をピックアップ。その特性を生かしたガーデンでの使い方を、相性の良い植物とあわせてご紹介していきます。通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開しますので、ぜひご覧ください。

vol.3

アスチルベ

アスチルベ Astilbe spp.
ユキノシタ科チダケサシ属

初夏に、木陰の花壇を明るく彩るアスチルベ。淡い色合いの小さな花を密につけた花穂が、涼しげに風に揺れます。
アスチルベはもともとチダケサシ属を意味するラテン名ですが、そのまま同属の園芸品種を総称する意味で使われるようになりました。カタカナの名は外来種の響きがありますが、元をたどれば日本や中国に自生する植物から作られた園芸植物です。そのため、当然ながら日本の気候によく合い、あまり手を掛けなくても毎年美しい花を咲かせてくれる、優れた多年草です。
アスチルベの仲間(チダケサシ属)は、東アジアと北米に約20種が自生します。そのほとんどは、日本、中国をはじめとするアジアに分布しており、重要な園芸品種の交配親にもなっています。その交配は、今から100年ほど前にドイツで本格的に始まり、その時に選抜された系統が、今も多くの園芸品種の元となっています。それらは、育種者の名をとりアレンジー系とも呼ばれます。最近では、さらに別の種も交配に加わり、多くの魅力的な園芸品種が続々と紹介されています。

アスチルベ‘アメジスト’
アスチルベ‘アメジスト’ A.‘Amethyst’

草丈70〜80cm 広がり40〜50cm
花色:淡桃紫

花茎がよく伸び、風になびく姿が優雅。背が高いので、ぜひ前の位置にギボウシを組み合わせたい品種。アレンジー系。

アスチルベ‘エリー’
アスチルベ‘エリー’ A.‘Ellie’

草丈40〜50cm 広がり40cm
花色:白

雪を被ったように純白の花を密につける。濃緑の葉、赤褐色の花茎と美しいコントラストをつくる。アレンジー系。

オオチダケサシ‘ビジョン・イン・レッド’
オオチダケサシ‘ビジョン・イン・レッド’ A.chinensis.‘Vision in Red’

草丈40〜50cm 広がり40cm
花色:濃赤紫

中国と日本では対馬だけに自生するオオチダケサシから選抜された園芸品種。アレンジー系に比べて、日当たり、乾燥にも強い丈夫な品種。分枝した花枝はあまり長くなく、花が密にかたまって咲く印象がある。

ガーデンでの使い方

縦にすらりと伸びる草姿は、空間を有効に使うことができ、せまい場所でもその魅力を存分に引き出すことができます。色は華やかながらも、優しい質感の花は、ほかの草本植物やエゴノキ、ヤマボウシなどの落葉樹と組み合わせやすく、自然風の庭づくりには欠かせません。花が終わっても、シダに似た光沢のある葉は観賞価値が高く、秋までグラウンドカバーとして地面を覆ってくれます。その際は、花がらの部分を切り取り、葉は枯れるまで残しておきます。花穂はドライフラワーとしても利用することができます。
1株でも十分にきれいですが、1つひとつの花が小さく、線が細い印象があるので、できれば2〜3株をグループにして植栽する方がボリュームが出て、アスチルベがもつ美しさを最大限に引き出すことができます。広い場所があれば、グループにした色違いの品種を組み合わせても華やかです。また、同じように湿地を好むオランダカイウとの組み合わせは、梅雨空に艶やかな色みを加えてくれるでしょう。
アスチルベの一番のパートナーはギボウシです。双方とも生育環境がよく似ており、どっしりとした存在感のあるギボウシと、すらっと背筋を伸ばすアスチルベは、色合い、質感とも変化に富み、互いに引き立てあいます。

〔使用している植物〕

  1. アスチルベ
  2. ギボウシ‘エレガンス’
  3. カンパニュラ‘サラストロ’
      (ホタルブクロの仲間)
  4. ヒューケラ
  5. キンウラハグサ(フイリフウチソウ)
  6. ハイドランジア‘アナベル’
  7. シラン
  8. エゴノキ
  9. サルビア‘インディゴ・スパイアズ’
  10. サラサウツギ
  11. ヘレボルス(ヘレボラス)

アスチルベを中心とした
洗練された初夏の庭

桃や白花のアスチルベに、青葉や白斑の大葉系ギボウシの品種を組み合わせます。背景にはちょうど開花期を同じくするバイカウツギの仲間やウツギの仲間を配置すると、洗練された初夏の庭の趣が醸し出されます。

アスチルベを中心とした
洗練された初夏の庭
アスチルベとギボウシ、ハナショウブの植栽。

アスチルベとギボウシ、ハナショウブの植栽。

アスチルベは落葉樹と組み合わせやすく、自然風の庭づくりに欠かせない。

アスチルベは落葉樹と組み合わせやすく、自然風の庭づくりに欠かせない。

アスチルベと相性のよい植物

カラーリーフプランツ

ヒューケラの仲間
  • ヒューケラの仲間
  • ラミウム・ガレオブドロン

青紫

アジサイの仲間(ガクアジサイ)
  • アジサイの仲間
  • アジュガ
  • タイワンホトトギス
  • フウロソウの仲間
  • ムラサキツユクサ

シラン
  • イカリソウ
  • キョウガノコ
  • クリスマスローズの仲間
  • ケローネ(スピードリオン)
  • シラン
  • ヒマラヤユキノシタ
  • シュウメイギクの仲間
  • フウロソウの仲間

カシワバアジサイ
  • ウツギの仲間
  • オランダカイウ
  • カシワバアジサイ
  • サンゴミズキ
  • ジギタリス
  • シュウメイギクの仲間
  • ティアレラの仲間
  • ハイドランジア‘アナベル’
  • バイカウツギの仲間
  • 斑入りアマドコロ

キンウラハグサ
  • ギボウシの仲間〈葉〉
  • キンウラハグサ(フイリフウチソウ)〈葉〉
  • ヤマブキ

その他

ニシキシダ
  • クサソテツ
  • ニシキシダ

アスチルベの栽培方法

  栽培適地

十分に水を与えることができれば日当たりでも植栽可能ですが、理想は木漏れ日の差すような明るい日陰です。特に、夏、午後の強い光で葉焼けを起こしやすいので、日光が当たっても午前中の光程度の方がよいでしょう。生育するための日光の環境条件が、ギボウシやヒューケラとよく似ているので、これらがうまく育っていれば、アスチルベも問題なくよく育ちます。
生育旺盛で、生長期にはかなり水を欲しがります。丈夫なので、少々水が切れても枯れることはありませんが、葉が傷んで見苦しくなることもあるので、できるだけ腐葉土などを多くすき込み、保湿性を高めて、乾燥しないようにします。逆に、湿地のような環境でもよく育ちますが、この場合も腐植質は必要です。粘土質になっているような場所は避けます。
耐寒性はすこぶる強く、日本全国ほぼどこでも植栽可能です。風通しがよければそれほど深刻な病害虫は発生しません。

アスチルベの栽培方法

肥培管理

肥料切れを起こしやすいので、毎年、花後に乾燥防止も兼ねて腐葉土でマルチをするとよいでしょう。また、秋には翌年の花芽を形成し、地下茎が充実してくるので、固形の有機肥料を与えると効果があります。

株分け

繁殖は落葉している休眠期に、株分けで行います。あまり根が深く張らないので寒冷地では春に行う方がよいでしょう。

月江 成人 (つきえ しげと)

ホルティカルチャリスト。潟vランタス代表。地域の景観と調和した、植物が主役の庭づくりを提案。2年前に山間の小さな町に移住。古民家再生と理想の庭をつくるべく日々奮闘中。兵庫県在住。

「はなとやさい」2009年9月号より

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