ポポーの人気・最新品種と栽培方法・生長カレンダー
最近「ポポーで町おこし」というニュースを聞いた覚えはありませんか。島根県三郷町や茨城県日立市では古くから一般家庭の庭先でトロピカルフルーツのポポーが栽培されていたそうで、それを利用した町おこしが盛り上がっています。クリーミーで甘い実は、そのまま食べておいしいのはもちろん、ジャムやピューレにして保存もでき、またジェラートにするのもおすすめ!大きな実がたくさんとれる品種も登場しているので、ぜひご家庭で栽培して、そのおいしさを実感してください。
北アメリカ原産のポポーは、垂れ下がるようにつく葉がエキゾチックで、樹形も美しい魅力的な果樹です。秋にはおいしい実が味わえ、晩秋になると美しく色付いた黄金葉も楽しめます。また、強健で病虫害の心配も少なく容易に栽培できます。原産地では先住民が薬用に栽培していたようです。とろりとした甘い果肉から「カスタードアップル」とも呼ばれ、現在では高価な果物の一つとされています。栄養価が高く人気がありますが、果皮がやわらかく傷つきやすいため、日本ではまだ実の流通は難しいのが現状です。そんな果樹こそ、ぜひ家庭で育ててみたいもの。クリーミーで滑らかな食感、濃厚な甘さをご自身の舌で味わい、ポポーの魅力に触れてみてください。
日本にポポーが導入されたのは意外に古く、明治時代といわれています。今でも国内の所々で庭木として植えられていて、民家の庭先でトロピカルな実が実っている景色に驚かされることもしばしばです。私がポポーという果樹を知ったのは小学生のころで、父親から「ポポーは外国から入った果物でとてもおいしいらしい」と聞いたことを覚えています。家で果樹園を開園するにあたり、ポポーもすすめられたようですが、結局ナシを栽培することに決めたようです。その後、何度かポポーを味わう機会があり、父から聞いた通りとてもおいしかった記憶があります。私自身が園芸職についてから、ポポーの栽培に力を注ぐようになったのも、子ども時代のおいしい思い出があったからだと思います。今では大木になり、毎年よく実をつけています。
近年ポポーはアメリカから新しい品種が導入されるようになり、自園においても15年ほど前に導入し栽培してきました。「NC-1」「プロリフィクス」など大実系の果実は400gくらいになることもあります。在来品種に比べ、アメリカから導入した品種は大実で、しかも果実がしまり、甘く濃厚な味わいの品種が多いと感じます。ポポーは日本ではまだまだマイナーなフルーツですが、健康志向の中、アメリカやヨーロッパでは熱い眼差しが向けられているようです。狭い場所でも栽培できるので、家庭果樹として、今後は日本でも人気が定着していくのではないかと期待しています。
耐寒性が強く病虫害にも強いので、九州から北海道南部まで栽培が可能です。有機物に富んだ日当たりのよい場所を好みますが、半日陰でも育ちます。また、深く耕した排水のよい場所が適しています。 植え穴は深く耕し、堆肥、元肥を施し植え付けます(pH5.5〜7)。鉢植えの場合は、保水性、排水性のよい用土に植え付けますが、寒冷地の場合は鉢を土に埋め、凍害を防ぐとよいでしょう。植え付け後、支柱を立て、株元に敷きわらなどでマルチし、たっぷりと水やりします。
ポポーは主幹が伸びます。植え付けの後2〜3年は生長が緩慢ですが、その後はぐっと大きくなります。場所にあわせて主幹を1.5mくらいで切り戻し、主枝の角度を広げ、側枝を誘引し樹形を整えます。枯れ枝、傷ついた枝、交差した枝などがあったら剪定します。
花期は4〜5月で、充実した新梢の葉腋(ようえき)、葉の付け根につきます。完全花で、雌しべの方が先に熟し、雄しべの開花が始まるころには受精能力がなくなるため、異品種を混植した方がよく実がつきます。
元肥として12月〜翌年1月、追肥として5〜6月、お礼肥として9月中旬〜10月中旬に、果樹用配合肥料を施します。
特に問題になるような病気は発生しませんが、カイガラムシ、ハマキムシなどが発生することもあります。見つけたらすぐに駆除します。
晩夏から秋にかけ、グリーンからグリーンイエローになり完熟すると、濃厚な香りがします。甘くクリーミーな食感で、バナナ、マンゴー、パイナップル、チェリモヤをミックスしたようなトロピカル感いっぱいのおいしさです。完熟すると果実は自然に落下します。熟す前に収穫し、冷蔵庫で保存することも可能です。まずは、完熟した果実は輪切りにして、そのままスプーンで食べるのがおすすめです。果実はジェラートやパイ、ケーキなどのスイーツに使ったり、カクテルの香りづけにも利用できます。
1949年、静岡生まれ。43年間にわたり果樹の栽培、育種を手掛ける。
植物のもつさまざまな力を上手に利用して、人間と植物がよい関係で共存することを理想とし、日々、育種や管理に没頭。新聞、雑誌などに園芸記事を執筆するほか、講習活動も行う。