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柿(カキ)の栽培方法・育て方

柿(カキ)の栽培方法・育て方

カキは秋の風物詩。古くから日本人に親しまれ、歌にも詠まれてきた果物です。古い家の庭先には必ずといっていいほど植えられ、人々を楽しませてくれました。また機能性成分も豊富で、「カキが赤くなると医者が青くなる」ということわざもあるくらいです。そんなカキを自分でおいしく作ってみませんか。

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古くから親しまれる果実

昔ながらの風景の中に、カキが実っている写真をよく見かけます。日本で親しまれているカキですが、実は原産地は中国で、日本には7世紀ごろ(奈良時代)に伝わったとされています。10世紀ごろにはかなり普及し、17世紀(江戸時代)に入ってからは一層栽培が発展し、現代に続く品種の大部分がこのころから栽培されているようです。
日本では古くから栽培されているので、昭和初期には1000品種以上あったといわれています。正式に昭和54年の種苗特性分類調査で明らかにされたものだけでも326品種あります(地域によって違う名前で呼ばれている品種もあります)。
カキには甘柿と渋柿があり、さらにどちらにも属さない中間的なものがあります。もともと渋柿しかなかったところに突然変異で甘柿が生まれたとされています。そのため、タネの有無に関係なく樹上で甘くなる完全甘柿は10数品種しかありません。
カキの甘渋の違いは、果実の中に含まれる渋(タンニン)が水に溶ける可溶性であるか不溶性であるかで決まります。可溶性の渋は舌を刺激して渋みを感じるというわけです。甘柿では成熟期になると樹上で渋が不溶性に変わり、口の中では溶けないので甘く感じます。その一方、渋柿は渋抜き(脱渋)を行ったり、熟柿や干し柿にすることで不溶性の渋に変えて食べています。
ただし、同じ甘柿の品種でも寒冷地で栽培すると、渋が抜けないことがあります。渋を抜くには温度も影響しますので、品種選びには十分注意しましょう。東北より北の地域や標高の高い地域で栽培する場合は、渋柿品種を選び、渋抜きして味わうことをおすすめします。

不完全甘柿では、受粉してタネが全体に入り、ゴマ(不溶性の渋)が多い部分は甘くなる。

おいしくて機能性成分も豊富

カキは食味のよさだけでなく、栄養分や機能性成分でも優れていることが分かってきました。糖質とビタミンを豊富に含み、ビタミンAは温州ミカンと、ビタミンCはイチゴと同程度含まれます。さらに、利尿作用があるカリウムも多く含み、二日酔いによいとされています。渋み成分であるタンニンはポリフェノールの構成要素で、色素に含まれるカロテンなども機能性効果が期待されています。
新緑から紅葉の時期まで果実や葉が色づく様子を眺め、適熟の風味が味わえるのも家庭でカキを栽培する魅力といえるでしょう。

カキの栽培カレンダー

(関東地方以西基準)

(鉢植え):鉢の大きさによって潅水量、施肥量は違ってくるが、20〜40L鉢(ポット)を参考にしている。水やりと施肥以外は(庭植え)の管理作業に準じる。
防除のタイミング:  一般的な防除時期  渋柿のみ(アザミウマ対策)  晩生品種のみ

カキの栽培管理

植え付けから収穫まで3〜4年以上かかりますが、じっくり育てることで樹勢が強くなり、長く収穫が見込めます。コンパクトに仕立てるコツもご紹介します。

「さえふじ」の雄花。

植え付け

●11〜12月(秋植え)、または2〜3月(春植え)

休眠期に植え付けます。秋植えの方が活着は早いですが、寒冷地では春植えにします。日当たりと排水のよい場所が適します。
植え付け手順は、まず30〜50cmの植え穴を掘り、掘り上げた土に完熟堆肥10〜20L、苦土石灰100g程度、熔成リン肥(熔リン)50g程度を混ぜます。植え穴にバケツ1杯程度の水を入れます。水が引いたら、掘り上げた土を半分程度埋め戻します。その上に、根を広げて苗木を置き、残りの土をかぶせ、20〜30cmの高さの盛り土とします。深植えにはしないで、接ぎ木部は必ず地上に出すようにします。最後にもう1度水をたっぷりやり、添え木(支柱)を立て、地面から50〜70cmの芽の上の所で切り戻します。

年次別の仕立て方

●12月中旬〜翌年2月

  • 1年目
    ①地面から50〜70cmの芽の上で切り戻す。
  • 2年目(未着果)
    ①すべての1年枝を2分の1の長さの外芽の上で切り戻す。
  • 3年目(未着果)
    ①先端の1年枝は2分の1の長さで切り戻す。
    ②上向き、下向きの枝は元から切る。
    ③主枝候補を3本程度に絞る。
  • 4年目以降(着果)
    ①主枝の先端は2分の1の長さで切り戻す。
    ②枝が重なる所は間引く。
    ③上向き、下向きの枝は元から切る。
    ④実をつけるため、切らない枝を適度に配置する。

基本となる樹形のイメージ

  • ①主幹形

  • ②変則主幹形

  • ③開心自然形

成木となった最終的な樹形のイメージは、おおむね3樹形です。カキは高木性で上へ上へと伸びる習性があり、①が樹の生理にあっているため授粉樹や鉢植え(ポット)ではこの樹形が好ましいです。しかし、高くなりすぎて管理ができなくなるので、徐々に切り下げ②へ移行し、さらに低い樹高にするためには③に移行もできます。
多くの産地では苗木からBの樹形をつくるように仕立てています。ただし無理に低く仕立てようとすると、反発して長い枝が太い枝の背面から多く発生するので、整枝・剪定の管理が重要です。

整枝・剪定

●12月中旬〜翌年2月

●結果習性どこに雌花をつけるのか?
カキは前年に伸びた1年生の枝の先端に花芽が形成されます。そのため枝が長いという理由から途中で切り詰めると花がつかなくなり、果実がなりませんのでしっかり覚えておきましょう。

どこに雌花をつけるのか?

●剪定のポイント
樹を支える骨格となる主枝・亜主枝を明確にします。骨格が多すぎると実がなる枝が起きにくくなります。主枝、亜主枝の先端を決め、そこから基部に向けて二等辺三角形になるように枝を配置します。立ち枝、垂れ枝は取り除きます。初めにのこぎり作業を行い、その後にハサミで作業を行うと効率的です。
側枝(2〜3年生の実をならせる枝)、結果母枝(1年生の実をならせる枝)は、早めに更新します。カキは残した枝から発生した新梢に果実をつけるので、枝と枝の間は広めにあけましょう。

剪定前→剪定後

摘蕾(てきらい)

●5月上旬〜中旬

大きなカキを作るには欠かせない作業です。蕾の時期に、新梢1本につき蕾が1個になるよう数を制限します。新梢の長い枝で5〜7個の蕾をつけますが、真ん中くらいの位置にあり、下向きで傷や虫の被害のない蕾を残しましょう。葉が5枚以下の枝の蕾はすべて取り除きます。

摘蕾前→摘蕾後

受粉

●5月下旬

甘柿を作るには受粉が必要です。雄花をつける受粉用の品種が近くにある場合は、ミツバチやほかの昆虫によって受粉がされますが、ない場合は花粉を入手して授粉する必要があります。
「平核無」や「刀根早生」といった渋柿や、甘柿の「次郎」は、受粉の必要はありません。

ミツバチによる受粉。

摘果

●7月〜8月上旬

大きくて甘いカキ作りには、ならせすぎは禁物です。摘蕾で数を制限し、梅雨時期に生理落果を確認した後、葉の枚数が15〜20枚につき実が1個になるよう摘果すると大きくて甘いカキができ、来年の花芽の確保にもつながるので、毎年安定して収穫できます。

収穫

成熟程度は実の色づき具合で分かります。緑→黄緑→黄→橙→朱→紅色へ変化し、適熟の色は品種によって異なります。「富有」「さえふじ」「次郎」「蜂屋」は橙〜朱色で、「太秋」「刀根早生」「平核無」は黄〜橙色で収穫します。「早秋」は朱〜紅色で収穫すると非常においしく食べられます。適熟前に収穫すると、甘みも果汁も少なくなってしまいます。

施肥

成木の元肥は、2月下旬〜3月上旬にチッソ成分量で100m2当たり1kg程度(1,000m2当たり40本植えの場合、1樹当たり250g)与えます。枝を伸ばし果実をつけるためのもので、着果量に応じて増やします。着果するまでの1〜3年は施肥せず地力だけで十分です。
成木の追肥は、チッソ成分量で100m2当たり300〜500gを6月下旬〜7月中旬に与えます。果実を大きくし根を伸ばし、翌年のための貯蔵養分をつくる肥料です。生理落果して枝の伸びが旺盛な場合は減らします。やりすぎは着色不良や枝の遅伸びの原因になります。10月上旬までに収穫が終わる品種は、収穫後にお礼肥としてチッソ成分量で100m2当たり100〜200gを施用し、樹勢の回復を図ります。

渋柿の渋抜き方法

庭で行う渋柿の渋抜き方法は、アルコール脱渋が簡単です。35度程度の焼酎を利用してカキのへたに焼酎をつけ、ポリエチレンの袋に入れて密封して20℃くらいの部屋で5〜6日置けばできあがりです。
また、樹にならせたまま渋を抜く方法も開発されました。8月下旬以降、固形アルコールを入れたポリ袋を果実にかけます。へたは袋の外に出します。2日後に袋を切って固形アルコールを取り出し、色づいてきたら収穫する方法です。手間は掛かりますが、外観はきれいに仕上がります。

固形アルコール

樹上脱渋処理の方法
①固形アルコールを入れたポリ袋を、輪ゴムでへたの付け根に止め、密封する。
②2日後に袋の下部を切って固形アルコールを取り出す。
③適期の果皮色になったら収穫する。

病虫害防除

落葉病は9月ごろから葉に斑点が生じ、次第に紅葉して早期落葉します。被害果は糖度が低く軟果しやすいです。症状が発生してからの防除では効果がなく、胞子が感染する5〜7月の防除が重要です。また、落ち葉の除去などの予防的作業も大切です。
カキノヘタムシガはカキ特有の害虫で6月上旬と8月上旬ごろに発生します。幼虫がへたから侵入して食害し、果実が落果するので薬剤で防除します。ほかにうどんこ病、炭そ病、アザミウマ類、イラガ、フジコナカイガラムシ、ハマキムシ類、カメムシ類に気をつけ、適期に薬剤で防除するとよいでしょう。

落葉病の例。

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尾関 健

岐阜県農政部農業経営課 園芸技術支援係長尾関おぜき たけし
昭和61年に明治大学農学部を卒業後、岐阜県に入庁。農業大学校、農業改良普及所、農業試験場等を経て現在の所属に勤務。入庁以来、岐阜県の果樹農業に関わり、特に岐阜県の代表的な果樹であるカキの研究や普及を推進。現在は農業革新支援専門員として、果樹産地指導や普及員指導員の育成に当たっている。