種駒を用いたキノコの原木栽培は、適切な管理を行えば自家栽培も可能です。
今回は、シイタケ、ナメコ、ヒラタケの育て方をご紹介します。
とれたての新鮮なキノコを味わってみませんか。
1.原木の準備
キノコの栽培に使用する原木は、例えばシイタケの栽培に最適なナラ類の場合は樹齢15~20年、クヌギなら樹齢10~18年で、幹の太さ10~15㎝ぐらいが適当です。
伐採の適期は、秋の紅葉半ばから翌春(萌芽期)までです。伐採してから3~4週間枝干しして、玉切りを行うのが理想です。積雪地以外は、原木の乾燥に注意してください。
原木栽培に適した樹種
2.種駒の植え付け
植え付けは、11月ごろから翌春の4月ごろまでの間に、原木水分が35~40%の範囲になった時に行います。
電気ドリルまたは穿孔器で(種駒用の刃先を使用)樹皮面と直角に直径8.5㎜、深さ20㎜以上の穴をあけます。
種駒を植え付ける数(穿孔数)は、原木の太さや長さによって決まります。原木の長さが約1mの場合、1本当たりの数と配置は下図のようにします。
3.仮伏せ
保温や保湿をして、原木内に完全にキノコ菌を伸ばすための作業が「仮伏せ」です。種駒の植え付け後すぐ行います。
ここでは、「横積み式」を紹介します。原木を高さ50~60㎝ぐらいに積んでいきます。積み上げたら、全体を段ボールで囲み、寒冷紗で覆って、さらに外側をビニールシートで被覆します。2週間後に点検して、種駒から菌が白く吹き出ていない場合には散水を行います。種駒の植え付けから30日前後に、原木の上下、表裏を積み替える「天地返し」を行うのも効果的です。
気温が高くなり、また周期的に雨が降るようになったら、上部のビニールシートを取り除きます。仮伏せの期間は一定したものではなく、空中湿度の高くなる梅雨期前後までが一般的です。
段ボール、寒冷紗、ビニールシートなどの3重構造で、木口面も必ず覆うように管理する(段ボールと寒冷紗の代わりに、キノコムシロ、わら束などで周りを囲み、上部をカヤや枝などで覆うのもよい)。
4.本伏せ
「本伏せ」は、必要外の水分を抜き、深部まで菌糸を伸長させるために行います。
シイタケ
ホダ場は、東南の緩傾斜の広葉樹及び松林内で、通風や水はけがよく、日当たりは木もれ日が入る程度の、暖かい環境がよいです。
伏せ込みは「ヨロイ伏せ」(約40度傾斜)とし、通路は十分にとります(60㎝以上)。
天地返し
ホダ木内の菌糸を均等に繁殖させるために、ホダ木の上下、表裏を反転させる作業を「天地返し」といいます。1回目は7月上旬、2回目は9月上旬に行います。
ヨロイ伏せの姿勢は、夏場はやや高め、冬~春はやや低めが理想です。日照り続きの時は順延し、雨を待って実施します。
伏せ込み中の管理
ホダ場は常によく見回り、好ましい温度・湿度、環境維持に努めましょう。以下の三つがポイントです。
①直射日光を避け、高温(28℃以上)・過乾にならないように注意する。
②通風をよくし、温度を下げて害菌類の胞子発芽を抑える。
③通風をよくするため下草、灌木などの下刈りを行う。
ナメコ
やや通風があり、湿度が幾分多めの水はけのよい、比較的明るい場所が理想です。低地だと北~北東の傾斜地で雑木林、針葉樹林で、奥地の場合は南面の傾斜地を利用します。大木樹林は避けます。日光のまったく差し込まないじめじめした場所では、菌糸の伸長が遅れるばかりでなく、雑菌に侵されやすいので注意しましょう。
梅雨に入ったら、必ず本伏せを行います。地面に直接並べて置く「地伏せ」にするのが一般的です。
ヒラタケ
排水が良好で、直射日光の当たらない、散水管理の可
能な林内が理想的です。伏せ込み方法は、「地伏せ」管理とし、ホダ木の間隔は、収穫に支障のないように10~15㎝あけます。周囲に落葉を敷いて、乾燥と泥はねを防止します。
5.発生と収穫
シイタケ
シイタケは気温10~20℃になると発生し始めます。植え付け後の初秋、種駒の周囲で少々発生が見られますが、本格発生は2夏経過してからです。3~4年目が最盛期で、その後漸減して、寿命を終えます。
発生期の乾燥は収穫減につながりますので、散水施設や風の強い所では風囲いなどを設けます。
採取は、樹皮を傷めないように指でキノコの柄の根元を持ってねじり取るように収穫します。この時、ヒダには絶対に手を触れないようにしましょう。
生シイタケを出荷する場合は6~7分開き(傘の膜が切れかかったころ)、乾燥シイタケの場合は7~8分開きで、適期を過ぎた場合は全開(10分開き)の状態で採取します。
ナメコ
ナメコは、秋、気温が6~10℃になると発生し始め、5℃以下になるころ終了します。シイタケと同じように、植え付け後の初秋に、種駒の周囲で少々発生が見られますが、本格発生は2夏経過してからです。3~4年目が最盛期で、ホダ木の太さにもよりますが、通常6~7年で寿命が尽きます。
収穫のポイントは、傘の開いていない蕾のうちに採取することですが、1カ所からまとまって発生する傾向があるので、傘の直径が10~15㎜前後のものが多い時に株のまま採取します。
発生期間中、ホダ木を動かしたり移動したりすると、発生が止まることがあるので、注意が必要です。
ヒラタケ
ヒラタケの発生は、種駒の植え付け年内の9月下旬ごろから若干始まりますが、本格発生は二夏経過後の秋からですので、収穫適期を逸しないよう注意しましょう。
原木栽培の場合は、それほど大きな株状となって群生しないことから、5~8㎝の大きさに成長した時点で、株ごと収穫します。特に、外気温の高い時期には害虫などの被害を受けやすいため、早めの収穫を心掛け、柄の部分(石づき)をホダ木に残さないように気をつけてください。ホダ木の太さによっても異なりますが、3~5年の発生が可能です。
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